【インタビュー】「原点回帰であり転換期となる作品」“ヘタミュ”新シリーズ第3弾 ミュージカル「ヘタリア〜The glorious world~」イタリア役:長江崚行×イギリス役:廣瀬大介×フランス役:寿里 インタビュー

インタビュー

8月9日(金)、京都劇場を皮切りに、ミュージカル「ヘタリア〜The glorious world~」が開幕する。本作は、2021年に始まった「ヘタミュ」新シリーズの第3弾。メディアクトでは、主演を務める長江崚行(イタリア役)、本作での主軸となるイギリス役の廣瀬大介、フランス役の寿里に鼎談取材を実施。稽古場の雰囲気から、9年の付き合いだからこそ感じていること、お互いを役者としてどう見ているか、などについて語ってもらった。

――現在稽古中とうかがっています。稽古場の様子はいかがですか?

長江崚行(イタリア役):僕は今回、少し遅れて合流しました。稽古に入るときに、自分がいない状態のシーンを見ていたのですが、「ヘタミュってやっぱり面白いな」とあらためて思って。お客さまの視点になれたと同時に、作品を丁寧に作っている空気も感じて「すごくいいムードでやっているなぁ」と。久しぶりに戻ってきたおっきーさん(山沖勇輝/ロシア役)の影響も大きいですね。彼の太陽のような明るさや、まわりの雰囲気をやわらかくしてくれる魅力が、この現場を支えてくれているのだと再認識しました。

廣瀬大介(イギリス役):いつも誰かが笑っている楽しい現場です。でも納得のいかないことがひとつあって…。僕が稽古にいない日にみんなで集合写真を撮って、仲が良さそうにしていたんですよ! 僕も混ざりたい!

長江:今日撮ろう、今日!(笑)

廣瀬:こんな感じの楽しい現場なので、この空気のまま本番までいきたいですね。ヘタミュの稽古は進み方がエグいぐらいに速いのですが、今回は特にその傾向が強いです。稽古が始まってまだそれほど経っていないのに、もうそのシーンの完成の形が見えている…。ミザンスを付ける段階では、普段ならまだ台本を持っていていいはずなのに、すでに台本を持っていない人が8割くらいいて。中でも、最も出番もセリフも多い寿里さんが、もうセリフを全部覚えているんです。でも「みんなもやれよ!」とプレッシャーをかけてくるのではなく、黙々と自分の役割を果たしているので、その姿勢にみんな感化されて今回特に進行が速いのかなと感じています。

寿里(フランス役):主軸のキャラクターということで、上演時間のほとんど舞台上にいるので、いつもとは違った景色が見えて興味深いですね。

今回は、いろいろな面で「早いな」と感じています。ヘタミュは、物語の主軸になるキャラクターが変わると空気や色が大きく変わる作品なのですが、その違いが見えてくるのは、ふだんであれば稽古のもっと遅い段階なんです。通し稽古が始まったり、みんなの意志が疎通できるころあたり。でも今回は、すでに作品の味がしみ出してきているのを感じます。シーンごとに伝えたいことが明確であるのも理由のひとつですね。

長江:僕はそれは、今回主軸になっている寿里さんと大介さんの影響も大きいと思う。2人が、そのシーンの目的や感情のつながりなどを、明確に他のキャストに見せてくれている。だから周りのキャストはアプローチの仕方を見つけやすいし、大介さんがさっき言ってくれたように、シーンの完成形が早い段階から見えているんですよね。

――今回はシエスタ(お休み)の方が何人かいますが、中でも旧シリーズを含めて1作目から皆勤だった植田圭輔(日本役)さんと杉江大志(中国役)さんの不在で、カンパニーの空気にどのような変化がありますか?

寿里:(植田)圭輔は、気になるところがあると簡潔に核心をついた言葉でみんなにアドバイスをしてくれます。(杉江)大志は、苦手なことがあると率先して残って練習したり、誰かに積極的にアドバイスをもらいに行ったりしています。これまでは、その2人がカンパニーの大きな推進力になっていました。今回は、彼らの代わりに他の誰かが動いてくれています。今回戻ってきたおっきーがダンスリーダーであるように、各々がポジション的な役割を持ちつつも、お休みのメンバーの役割はみんなで補いあっていますね。

――ネタバレにならない程度に、どんな雰囲気の作品になりそうか教えていただけますか?

寿里:「原点回帰」感を強く感じます。登場するキャラクターたちを改めてしっかりと描きたい、という意図が伝わってきますね。

廣瀬:観やすくて分かりやすいと思います。注目して観るところ、盛り上がるところ、気楽に観てもいいところ…観ていて気持ちがいいんじゃないかな、と。泣いて笑って拍手して、のポイントがしっかりとしています。キャストそれぞれのポテンシャルが高くて、持っているスキルも回を重ねるごとに高くなっているので、シーンの完成度もより高くなっていて。いいことづくしで、ハッピーの詰め合わせです!(笑)

――みなさん回を重ねるごとにスキルが高くなっているということで、最近の、得たものや心がけていること、特に努力していることは何でしょう?

寿里:僕は今、ウォーミングアップに力を入れています。ひとつ前の現場が、アップをしっかりおこなう方が多かったんですよ。見ていて「いい習慣だな」と思いましたし、せっかくだから自分もやってみよう、と。昨日も、悠介(上田悠介/ドイツ役)と苦しみながら腕立て伏せをやっていました(笑)。

長江:うん、苦しんでいる寿里さんを見られるのは楽しいな…と思って見ていました(笑)。

寿里:それ、どういうことなの!?(笑) 今回は体力を使いますから、ベースアップとして体作りはがんばっていきたいですね。

長江:僕は最近音楽活動にも力を入れているので、そのことが大きいかな…。自分の実力と向き合う時間が増えましたし、音の取り方や、言葉やニュアンスを伝えるためにどう発語したらいいだろう? とこだわり始めたんです。本作はミュージカルですから、僕のそのこだわりがどう影響してくるかな、と楽しみにしています。

それから「プロとして自分を律しよう」という意識が、いつもよりも強いと感じていて。今回は遅れての合流だったので、早くみんなに追いつかなければいけない。いつも現場を締めてくれていた(植田)圭輔さんがいないから、みんなと一緒になって暴れてしまってはいけない。自分を律しながら、場をまとめる立場でいなければ、と思っています。

廣瀬:僕は髪の色を変えたので、視覚的な意味で現場に彩りを…というのは冗談ですが(笑)。振り付けのMAMORUさんが「今回は踊らせるよ!」と言っていたんですよ。寿里さんが演じるフランスは歌で魅せるパフォーマンスを、僕が演じるイギリスは激しい振り付けのダンスを。その違いが出るようにしたいですし、期待に応えられるようにダンスをこなせるように頑張ってきたのが、本作のために努力してきたことかなと思っています。

――次に、皆さんそれぞれにお互いをどんな役者だと感じているか教えてください。

長江:大介さんはリアクションの天才です。大介さんとお芝居をしていると、相乗効果が生まれやすいと感じているんですよ。柔軟なセンスを持っていて、僕たちが乗れば乗るほどに大介さんはそれを超えていく。「大介さん、乗ってるな」と思うときは、逆に言うと僕たちが乗っていると感じます。僕たちの乗りを察知して、自分のお芝居もアゲていける人。カンパニーの中で1番、乗ったら爆走してどこまでも行ってしまいそうな人ですね。

寿里さんは、圧倒的な知識を持っていて、それを自分の血肉としている人です。例えば急なアドリブが必要になったときなど、僕たちはつい“自分自身”が出てしまいそうになることもあります。でも寿里さんは膨大な知識というベースがあるから、そのキャラクターとして説得力があるふるまいができるんです。リアリティを持って存在できるというのは、役者としてすごいことだと思います。

これらのことは、もともとポテンシャルの高いおふたりがさらに兼ね備えている「特殊技能」ですね。僕はそれらを素晴らしいと思いますし、勉強できたら…と思いながら、この9年ほどを一緒に過ごさせてもらっています。

寿里:ずいぶん過信されちゃっているなあ(笑)。僕からは…大介は、ひとつのセリフに情報量をふんだんに入れられる人です。その言葉が持っているひとつの意味だけではなく、言葉の中や裏にあるあふれんばかりの感情が、セリフにパンパンに詰まっている。彼のその言葉を受け取るからこそ、僕もセリフが自然に出やすくて「相手役として、こんなにも頼もしい人がいる」と改めて感じています。これからの稽古や、通し稽古が本当に楽しみですね。

崚行は、出会った時からポテンシャルが高い人でした。先ほど崚行が、僕のアドリブに関してコメントをしてくれましたが、彼は逆に「役を自分に寄せる」のがうまいんですよね。崚行として発言していてもイタリアに見える。役と共存している崚行を見るのが楽しいです。それから、のびのびとしたきれいな歌声が、いつも幸せにしてくれますね!

廣瀬:今回、寿里さんを「本当にすごい」と改めて思うことがたくさんあります。まず、お芝居と作品に向き合う姿勢がすてきです。それから、シンプルに芝居がうまい。「勉強になる」という感覚ではなく、ただただ「…うまい」と、言葉がなくなってしまう。これまで座長を支える側のポジションだった人が主軸を任されると、こんなにも才能の引き出しを惜しみなく開けてくれるのか! と驚いています。寿里さん自身はいつもどおりにやっているのかもしれないけれど、「え、こんな寿里さんもいたの?」と。寿里さんが本気を出したらこんなにもすごいのかと驚いて、より大好きになりました。かっこいいですよ!

長江:分かる! 「もっと高い所まで行けるんだ、すごい!」ってなっています。

寿里:すごく褒められている! じゃあ頑張っちゃおうかな(笑)。

廣瀬:長江さんは、プライベートも含めて最近よく一緒にいるんですよ。だからこそ感じるのですが、もともと深かった懐がより深く、そして人間的に厚みを増したように感じています。吉谷(晃太朗/演出)さんに似てきたかもしれない(笑)。

長江:あっ、笑い方が似てきたかも!

廣瀬:そう、稽古場での居方も変わったし、視野がさらに広くなったなと。たくさんの現場で座長を経験してきたからこそなんでしょうね。

寿里:そうだね、重みが増した。崚行、何か落ち着いた?

長江:やっぱり音楽の影響かなぁ…。作詞作曲って、自分の中にある好きなものやそうではないものを見つめてアウトプットするから、自分自身をより整理できたというか。無理しなくなったし、腹がくくれた気がします。

寿里:うん、崚行も大介も人間としての階段を上ったね。変わっていないのは俺だけか…。

長江・廣瀬:いや、あなたすごいんだから!(笑)

――そんな仲のいい皆さんですが、長く付き合っているからこそのいい面と、逆に、難しいと感じていることがあれば教えてください。

長江:お互いのことをよく分かっていると、物事に対しての共通言語が多くなります。ヘタミュは、「ザ・ヘタミュ」というアイデンティティを大事にしながら同時に新しい風を吹かせていこうとしている最中です。その場に停滞せず前に進んでいこうとしている現場で、共通認識がたくさんあると、考えをすり合わせたり意見交換をし合ったりする必要がないので、時間やいろいろなものを無駄にしないで済みます。

逆に、共通言語が多くなると「言わなくても分かるだろう」という甘えが出てきてしまうんですね。勘違いや、かみ合わないことが生まれてしまう可能性もあって、お互いを大事にして寄り添いあっていく感覚が希薄になってきてしまう…。そうならないために、会話の頻度を増やして思っていることをちゃんと伝えていく必要があります。この座組はとても会話の頻度が高いのでそうはならないと思うし、なぁなぁになってはいけないとみんなが思っているからこそこれだけ長い間続けて来られているんだろうな、と。

“楽しい”と“難しい”は紙一重です。このバランス感に優れた座組のみんなと一緒に、見たことのないところまで行けたらいいなと思っています。

――作品としても、旧シリーズを含めて長く続いている本作ですが、同じように1作を長く続けているからこその良い面と、難しいと感じることはありますか?

寿里:実は、毎回「今回も挑戦しなければ…難しいな!」とは感じていないんですよ。いつの間にか挑戦して、いつの間にか終わっている。「何かをやらなければ」「成し遂げなければ」と思うと心が動かなくなってしまう。座組のみんなが、新しくて楽しいことに前のめりだということが大きいのでしょうね。初演の幕が開いた瞬間から、お客さまがこの作品を受け入れてくださっているからこそ、僕たちが楽しみながら走って行けるのだと思っています。

長江:そうね。いつも、ニュートラルでフラットなギアの状態でいたいですね。

廣瀬:ギアの話で言うと、今回の稽古で感じていることがあるんですよ。他の作品も含めてふだんであれば、他のキャストが今どんなギアの状態でいるか、というのは気にしないものです。はじめからトップギアの人もいれば、じょじょにギアを入れていく人もいる。だからこそ、そのスピードを合わせていくのが難しいのですが、今回の現場ではそのずれや差を感じない。みんながすでにトップに入っている。だから、いい意味でピリッとしていて集中力があるんですよね。

長江:それも、大介さんと寿里さんの影響だと思うよ。2人がギアをトップに入れたのは、稽古が始まってからじゃない。トップの状態で準備をしてきて、そのスピード感を保ったままニュートラルに稽古に入っている。そのスピードを肌で感じるから、置いて行かれないようにみんなもギアをトップに入れているんだろうな、と。作品の主軸が変わると、こんなにも舞台が変わるんだ…と興味深く感じています。

寿里:今ね、「本番前のメンタルで日々の稽古に臨む」というのをやっていて。例えば、いつも本番の前にやるアップを稽古の前にも必ずやる。そうしたら、悪い意味での緊張をせずに、同じ精神状態で本番にも臨めるんじゃないかなって思って。43歳で主軸を任せてもらえることもなかなかないからね、同年代の人にも夢を見せたい(笑)。

廣瀬:貪欲!

長江:この座組は、本当に誰一人として停滞する人がいませんね! 今回のヘタミュ、たくさんの人に観てもらいたいなぁ。

廣瀬:うん、すごいものができそうな予感がする!

――最後に長江さんから、本作を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします!

長江:本作は、原点回帰であり転換期となる作品になるんじゃないかなと感じています。人と向き合うこと、自分の意見をはっきりと言ってそれを通そうとするのは悪いことではない。お互いを高め合うことにもつながるんだ、と稽古しながら感じているところです。自分にできることをやり遂げるために、傷つくこともあるかもしれません。でも、傷ついた分だけ何かを成し遂げられる気もしていて。自分たちがこれまでヘタミュをどう生きてきたのかを見つめて、この先どうあるべきなのか? という課題に今向き合っています。皆さんにこれだけ愛されているヘタミュが、この先もどんどん大きくなってほしい。この先、僕たちがどう歩んでいくのかも期待してもらえたらと思っています。絶対に楽しませますので、劇場でお待ちしています!

取材・文:広瀬有希/写真:ケイヒカル

■公演概要
◆公演タイトル:ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」

◆日程:
[京都公演] 2024年8月9日(金)〜12日(月祝)

2024年8月
 9日(金)10日(土)11日(日)12日(月祝)
-12:3012:3013:00
18:0018:0018:00-

[大阪公演] 2024年8月17日(土)〜19日(月)

2024年8月
 17日(土)18日(日)19日(月)
12:3012:3013:00
18:0018:00-

[東京公演] 2024年8月24日(土)~9月8日(日)

2024年8月
 24日(土)25日(日)26日(月)27日(火)28日(水)29日(木)30日(金)31日(土)
-12:30休演日-12:3014:00-12:30
18:0018:0018:0018:00-18:0018:00
2024年9月
 1日(日)2日(月)3日(火)4日(水)5日(木)6日(金)7日(土)8日(日)
12:30休演日-12:3014:00-12:3013:00
18:0018:0018:00-18:0018:00-

◆会場:
[京都公演] 京都劇場(京都市下京区烏丸通塩小路下ル 京都駅ビル内)
[大阪公演] 森ノ宮ピロティホール(大阪市中央区森ノ宮中央1-17-5)
[東京公演] 日本青年館ホール(東京都新宿区霞ヶ丘町4-1)

◆原作:「ヘタリア World★Stars」日丸屋秀和(集英社「少年ジャンプ+」連載)
◆演出:吉谷晃太朗  ◆脚本:なるせゆうせい
◆音楽:宮里豊 ◆振付:MAMORU ◆音楽監督:田中葵 ◆歌唱指導・音楽助手:水野里香
◆舞台衣装デザイン:新朋子(COMO Inc.) ◆衣装製作:COMO Inc. ◆ヘアメイク:西村裕司(earch)
◆カメラマン:金山フヒト(Xallarap) ◆宣伝美術:羽尾万里子(Mujina:art)

◆キャスト
イタリア役:長江崚行、ドイツ役:上田悠介、
アメリカ役:磯貝龍乎、イギリス役:廣瀬大介、フランス役:寿里、ロシア役:山沖勇輝、
プロイセン役:高本学、ロマーノ役:樋口裕太、オランダ役:磯野亨
仲田祥司、町田尚規、伊東征哉、松崎友洸、安久真修、丸山武蔵、船橋拓幹、大嶌幸太

◆企画制作・プロデュース:4cu(Frontier Works Inc.) ◆制作:株式会社FAB
◆主催:ミュージカル「ヘタリアGLW」製作委員会

■TICKET
料金 10,900円(フラッグ付き/全席指定 ・税込)
※公演グッズ「フラッグ」が付属します
※未就学児入場不可 ※営利目的の転売禁止
※公演中止の場合を除き、お客様の体調不良ほか天変地異及びそれに伴う交通機関トラブルなど、事情の如何に関わらずチケットの変更・キャンセル・払い戻しは一切いたしません。ご了承の上、お買い求めください。

チケットぴあ https://w.pia.jp/t/hetamu-glw/
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【公式サイト】https://musical-hetalia.com/  
【公式X】@hetamu_official  https://x.com/hetamu_official
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©日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリアGLW」製作委員会