【インタビュー】『Dミュ』と『ドリミ』が人生に与えてくれたもの」脚本・広瀬格、演出・國重直也、原作シナリオディレクター特別鼎談
12月14日(土)に、東京・飛行船シアターでミュージカル「DREAM!ing~White Maze~」が開幕する。本作は、2020年から上演されているミュージカル「DREAM!ing」(通称・Dミュ)シリーズの第4弾。今作は『DREAM!ing』シナリオディレクター脚本監修のもと、シリーズ初の完全オリジナルストーリーでの上演となる。
メディアクトでは、本作脚本の広瀬格、演出の國重直也、原作アプリゲーム『DREAM!ing』(通称・ドリミ)のシナリオディレクターに鼎談取材を実施。本作ができあがるまでの工程から、好きだからこその難しさや苦労、今思う「自分にとっての『DREAM!ing』とは?」まで。原作『ドリミ』・ミュージカル『Dミュ』への愛をたっぷりと語り合う時間となった。
※本文中に使われている画像は過去公演のものです。
――第4弾となる今回のミュージカル「DREAM!ing~White Maze~」は、シリーズ初のオリジナル脚本での上演です。オリジナルで、と聞いた時のお気持ちを教えてください。
國重直也(演出):本当にうれしかったです。大好きな『ドリミ』の、原作では描かれていないことを想像して形にできる! と、やりたいことを脚本の広瀬と一緒にどんどん書き出してプロットを作っていきました。最初はひたすら楽しかったのですが、じょじょに、自由であるがゆえに果てしなくて「これは大変だぞ…」と思い始めて(笑)。ただただよろこんでいた当時の自分に「大変になるんだぞ!」と言ってやりたいですね!
広瀬 格(脚本):決まったと聞いたときは「パンクするかもしれない!」と思いました(笑)。もちろんうれしかったのですが、同時に、これまでの『Dミュ』で展開の都合上入れていたオリジナルシーンを作る苦労を思い出してしまったんですよ。「その人物として成立しているだろうか?」と考えたり検証をひたすら重ねたりしていたので。それを、今度は1本の作品として作り上げなければいけない…。頑張らないと! と気持ちを引き締めました。
ⒸCOLOPL・ミュージカル「DREAM!ing 」製作委員会
――今作では、シナリオディレクター(以下SD)さんは監修という形で本作に関わっていらっしゃいますね。「オリジナルのストーリーでミュージカルを」と聞いたときはどのように感じましたか?
シナリオディレクター(以下SD):「大変なことに取り組まれるんだ、すごい!」と思いました。ミュージカル第3弾の「FUN!:C'est la vie」の後に、ジョニーさん(國重)さんと広瀬さんからお話を聞く機会を設けていただいて、お2人が本気でやりたいことがあるのだな、とうれしく感じていたんですよ。お2人から「これを形にしたいんです」という勇気と覚悟が伝わってきたので、私も覚悟を決めて「お力になれるのであれば」と参加させていただくことにしました。
――案・プロット出しから今作の脚本ができあがるまで、どのような工程で進んでいるのでしょうか?
國重:まず僕が「こういうのをやりたい!」と書き出したものをプロットとして広瀬に渡します。それを広瀬が整えて、僕に戻してもらって…を何往復かして揉んで作ったものをSDさんに見ていただいて。
SD:私は、プロットや脚本を拝見して、登場人物たちの行動と感情の流れを見ながら、気持ちの解決への方向を提案させていただいています。ジョニーさんと広瀬さんがやりたいことを優先しつつ、同時に原作『ドリミ』のファンの方々が楽しめるものにすることが自分の役目だと思っているんです。彼らの物語が、どう動いていけば彼ららしく紡がれていくのか、そしてファンの皆さんがどういうものを見たいと思ってくださるのか。その点に気を付けてお2人と綿密にやりとりをさせていただいています。
國重:SDさんからいただいている資料がすごいんですよ!
広瀬:あれはすごいね!
國重:僕は「やりたいこと」をばばっと文章にして書いているだけなのですが、「ここまで綿密に色々なことを考えて作られているんだ…」と驚くばかりです。
――今日も「壁Tシャツ」(『ドリミ』グッズ)を着られているほどに原作ファンの國重さんと広瀬さんですが、今作も含めて、ミュージカル化するにあたって原作を好きだからこその難しさがあったら教えてください。
國重:“引き算”の苦しみですね…。上演時間は無限ではないので、やりたいことを足し算のように何でも入れていっては収まらない。決められた時間内に、やりたいことをどれだけ詰め込めるか。でもそれだけではミュージカルのストーリーとしては成り立たないし、お客さまにお見せする形にはなりません。何を入れて何を削るかの取捨選択が本当に難しいです。
これまでのミュージカル第1弾から第3弾までは、原作のストーリーがあったので、歌詞を書くときもストーリーの流れも、原作という絶対的な指標をもとに作り上げられました。でも今回はすべてが手さぐりです。先ほど言ったこととつながりますが「こんなに苦しいんだ…」と生みの苦しみを味わっています。
広瀬:本当に好きだからこそ難しいです。大きな流れから細部に至るまで原作が大好きなので、どこも変えたくないんですよ(笑)。でもミュージカル化にあたっては、登場人物のセリフを、舞台の上でおこなう会話になるように手を入れていかなければいけません。その作業はとても楽しいのですが、ものすごく神経を使うし大変です。書いても書いても違う気がする…。だからこそ、自分ひとりだけでやるのではなく、見てくれる人がいるのはありがたいことです。
國重:深夜に“おじさん会議”をしながらね!(笑)
広瀬:そう、ジョニーが「こんなことをしたい!」と夢を語り、僕が「それは成立しないぞ!」ってダメ出しを(笑)。ジョニーがやりたいことや演出プランを聞き取りながら、原作と演出との橋渡しをきちんとできていたら…と思っています。
ⒸCOLOPL・ミュージカル「DREAM!ing RD」製作委員会
――SDさんは、そんな愛と苦労が詰まったプロットと脚本をご覧になっていかがでしたか?
SD:ミュージカルを観たときも感じていたのですが、あらためて、お2人は『ドリミ』を本当に愛してくれているんだ…と。ご自分のやりたいことと、原作の『ドリミ』との間に化学反応を起こそうとしていらっしゃるのが伝わってきて、私もクリエイターの1人として「これを形にしたい!」と強く思いました。
良い意味で、原作の『ドリミ』と『Dミュ』は別物だと思っているんです。だからこそ『Dミュ』が作ってきたものをリスペクトしつつ、原作ファンの皆さんが楽しめるものにしたい。私も含めて、皆さんが同じ思いを持っているから、やりとりもスムーズかつ濃密にできていると感じています。
――これまでの『Dミュ』をご覧になって、新たに気づいたことやインスピレーションを受けたことはありますか?
SD:『Dミュ』には、舞台ならではの表現方法が多くあって憧れます。例えば、第2弾の「Rainy Days」は真也(柴咲 真也/演:宮本 弘佑)・時雨(白華 時雨/演:上仁 樹)のペアと、巳影(浅霧 巳影/演:塚本 凌生)・一生(虎澤 一生/演:白石 康介)の2つのペアの物語が、舞台を2つに分けて同時進行で交互に描かれているシーンがありました。1画面という媒体のゲームではここまで軽快なスイッチングはできないので「あ、このリズムで進められるんだ!」と思いました。
それから、第3弾「FUN!:C'est la vie」でのリボンを使ったシーン。ああいった抽象的な表現は、現実離れした表現方法でありながら関係性を視覚的にうまく伝えられますよね。ゆめ空間でない限り物理法則を無視できないゲーム側に取り入れるのは、なかなか難しい演出なのですが、大きな刺激を受けます。
登場人物たちも興味深いですね。ちょっとした首の角度や呼吸のリズムにも、役者さんそれぞれの解釈を感じ取れて。「FUN!:C'est la vie」のあるシーンで、巳影が柱に手を掛けながら喋っていたのですが、その掛け方がとてもセクシーだったんです。彼ら1人ひとりの深掘りもできて、参考になる…と感じました。
――お話に出てきた、ミュージカル第3弾「FUN!:C'est la vie」(前回公演)についてお聞きします。この公演は、フルボイスがついていない原作第3部の舞台化でしたが、キャストの皆さんはどのように役作りをされていましたか?
國重:すでにキャラクターが“人間として”各々の中に落とし込まれていたので、キャラボイスが無いという点では役作りに苦労している様子は見えなかったです。湊(牛若 湊/演:遊馬 晃祐)として、幽(志部谷 幽/演:坪倉 康晴)として「このシーンではどういるべきなのか?」という悩み方をしていました。“キャラクター”ではなく“人間に”と、ミュージカル第1弾の公演からずっと言っているので、そういう落とし込み方をしてくれたんだと思います。
そんな中、主演の遊馬はとても悩んでいました。 第1弾と第2弾では支える側としての立ち位置だったのが、第3弾ではほぼすべてのものを1人で背負ってもらうことになったので、かなりのプレッシャーだったはずです。何度も食事に行ったり飲みに行ったりして、いろいろなことを話しました。可能性を広げるために負荷や制限をかけたり、あらゆる表現方法を試してみたりしながら稽古を進めて。遊馬は苦しんでいましたね…でも、苦しんだからこそあの芝居ができあがったのだと思っています。
SD:シナリオを書くときには、頭の中で「こういう表情で」「こう動いて」と想像しながら書いているのですが、ほぼそのとおりだったんですよ。いい意味で自分の想像と違うものを見せていただいたシーンもあって、新鮮な驚きと喜びがありました。舞台化されて、お芝居がついてよかったなぁ…と感じています。
ⒸCOLOPL・ミュージカル「DREAM!ing FC」製作委員会
――次に、今作「White Maze」について伺っていきます。ネタバレにならない程度に、今作の見どころなどを教えてください。
國重:本編で語られていない2人(新兎 千里/演:樋口 裕太)(獅子丸 孝臣/演:長江崚行)の姿を描きたかったんです。彼らはペアではあるのですが、とてもキャラクター性が強いがゆえに、別々の状況や場所でそれぞれ活躍してきました。だからこそ、この2人の関係性を舞台では掘り下げたいと思っていて。
公式ビジュアルのキャッチコピーにもある「嘘」、これが今作の軸であり、テーマになっています。「嘘」は、この2人の関係の間に横たわっている問題だと思うんですよ。今までのシリーズ以上に“ゆめシステム”を駆使しながら、「嘘」と2人の関係性を描いていきます。
SD:“ゆめシステム”は、人間の裏側を見せられるものです。それによってキャラクターにギャップを生み出して、より魅力的に見せられます。ギャップは、キャラクター作りにおいては王道とも言えるものであり、私はそれが好きなんですよね(笑)。それから大人が読んでも心に届くような話作りも好きで、それはずっと意識しています。
――SDさんはミュージカル公式サイトに「たくさん抱えている『ドリミで描きたいもの』を混ぜた」とメッセージを寄せてくださっていますね。
SD:千里と孝臣は、原作の第2部で大事なキャラクターとしてフォーカスされていました。でも当時の私の技量では、メインとなる他ペア2組と同じ濃度で彼らを描くのが難しくて「メインであるペアをつないで立ち回る役の人物」として描いたんです。「千里と孝臣を深掘りしきれていない」とずっと思っていたところに今回のお話をいただいて、願ってもないことだと。ジョニーさんと広瀬さんがやりたいことをお聞きしながら、自分が「千里と孝臣が軸になるのなら…」と考えていることや描きたいことをいくつかお渡しさせていただいたので、きっと原作ファンの皆さんが喜んでくださるものになっていると思いますよ。
――ちなみに、この2人の話以外にも他にも書きたいと思っていらっしゃるものがあれば、どんなネタがあるか教えていただけますか?
SD:そうですね、時雨の過去を…とか、孝臣の探偵シリーズもいいですし、2年が入学するあたりの時系列や、卒業後の彼らを描いてみたい! などいくらでもあります!(笑)
――機会があったらぜひ読んでみたいですね! ところで今作が上演される「飛行船シアター」は、270°のプロジェクションマッピングが導入されている劇場です。この劇場ならではの演出など、現時点でのプランや見どころを教えてください。
國重:これまでと違うことをやろうと思っていると同時に、映像が映える劇場だからこそ今まで以上にマンパワーを使いたいです。もちろんしっかりと映像は使いますが、映像でできることをあえて映像でやらない、とか。やっぱり人が演じる舞台なので、人間ありきだと思うんですよ。観終わって「映像がすごかった」という印象にはしたくない。
原作の『ドリミ』は、動くアニメーションではなく立ち絵でストーリーが進んでいきます。だからこそ、舞台になって登場人物たちが動いている、という衝撃が大きいと思うんです。これまでと同じく、そしてこれまで以上に「人間としてのドラマ」を皆さんの記憶に残せたら…と思っています。
――今思う、皆さんにとっての『ドリミ』『Dミュ』とは何でしょうか?
広瀬:思い返せば、『Dミュ』の第1弾は2020年の12月、コロナ禍真っ盛りのころでした。自分がもともと持っているものとは違う感性の作品を、噛み砕いて舞台の脚本としての言葉に再構築させるためにまとめる…その作業はとても楽しかったです。セリフを書いているとき、その言葉を発しているキャラクターと同じ表情になってしまったりね(笑)。若い彼らの葛藤を1番近い距離で感じながら、青春を一緒に過ごさせてもらいました。原作を大好きになって、自分の生活そのものにも大きな影響を与えてくれた作品です。
國重:僕の人生を変えてくれた作品ですね。まず、この作品の演出に僕を選んでくださったこと、『DREAM!ing』という作品に出会えたことに感謝しています。携わり始めてもう5年になりますか。やりたいことをたくさんやらせていただいて、楽しいことも大変だったことも全部含めて、“人生”だな、って。おおげさな表現ではなく、人生の一部になっています。
SD:ありがたい体験をさせてもらっている“代表作”です。今作「White Maze」を監修するにあたって、これまでの原作すべてを読み返したところ、過去の自分に嫉妬してしまうほど「好きだな」と感じたんですよ。
作品を作るときには、人間の関係性や感情を再定義する作業をおこないつつ、ネガティブな面やどろどろとした気持ちもエンタメとして受け止めていただけるように…と思っています。私自身がいわゆる「重い」と言われる傾向のものを書くのが好きということもありますが(笑)、笑えて泣けて、そして人生について考えたり。ストーリーを読み返してあらためて、『DREAM!ing』は、自由度が高くてあらゆるテーマに対して懐の深い土壌が醸成された作品だと感じました。
それは、原作・ミュージカル問わず、『DREAM!ing』に関わる全ての人が、高い熱量と深い愛情を持っているからだと思います。大変だけれども、好きだからできてしまう。制作に携わる皆さん、俳優さん、声優さん…。みんなが同じくらいの熱と愛を持って真剣に作品に向き合って力を合わせているからこそ、お互いをリスペクトしあって結果いいものが作れているんだな、と。いい作品だな…と心から思います。“人生”ですね(笑)。
――愛あるお言葉をありがとうございます! では最後に、ミュージカル「DREAM!ing~White Maze~」開幕に向けて、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
広瀬:今作をご覧になってからあらためて原作の4部を読みなおすと、さらにおもしろく感じるのでは? と思います。これまでの『Dミュ』1~3弾、原作『ドリミ』の1~3部で出てくる要素を、細かいところでも何とか出せないか工夫しました。オリジナル脚本ではあるのですが、『Dミュ』が作り上げてきたものを大事にしていますので、変わらず『Dミュ』として楽しんでもらえたらうれしいです。
國重:本編で語られなかった「混ぜるな危険」ペアの物語と、オリジナルキャラクター「バク」(演:吉田邑樹)がどんな活躍をするのか楽しみにしてもらえたらうれしいですね。舞台化に際してオリジナルキャラクターを出すというのは、とても勇気がいるものです。バクが、ファンの皆さんに愛される人物になってくれたら…と思っています。
SD:千里と孝臣、2人のキャラクター設定をしたときから「こうしたい」と思っていたアイデアの1つを託しています。それが、どういう形で舞台になるのか私自身とても楽しみですし、ファンの皆さんも一緒に楽しんでもらえたらうれしいです。
取材/文:広瀬有希・写真:ケイヒカル
ミュージカル「DREAM!ing~White Maze~」公演情報
◆公演タイトル:ミュージカル「DREAM!ing~White Maze~」
◆日程:2024年12月14日(土)~12月22日(日)
◆会場:飛行船シアター(〒110-0015 東京都台東区東上野4-24-11)
2024年12月 | |||||||||
14日(土) | 15日(日) | 16日(月) | 17日(火) | 18日(水) | 19日(木) | 20日(金) | 21日(土) | 22日(日) | |
昼 | 12:00 | 12:00 | 休演日 | - | ★14:00 | ★14:00 | 休演日 | 12:00 | 12:00 |
夜 | 17:00 | ◎17:00 | ◎19:00 | ★19:00 | ★19:00 | 17:00 | 17:00 |
アフターイベント開催
◎撮影会 ★お見送り会
※アフターイベントは状況により変更・中止の場合がございます。予めご了承ください。
詳細はこちら
◆脚本:広瀬 格 ◆演出:國重 直也
◆監修:『DREAM!ing』運営チーム
◆脚本監修:『DREAM!ing』シナリオディレクター
◆音楽:TOKYO LOGIC Ltd. ◆振付:MAMORU
◆衣装:オサレカンパニー ◆ヘアメイク:西村裕司(earch)
◆制作:バンダイナムコミュージックライブ、S-SIZE ◆宣伝美術:水野沙弥香
◆キャスト:新兎 千里 役:樋口 裕太、獅子丸 孝臣 役:長江 崚行
針宮 藤次 役:反橋 宗一郎、三毛門 紫音 役:杉本 凛
虎澤 一生 役:白石 康介、浅霧 巳影 役:塚本 凌生
久磨 凛太朗 役:宮内 伊織、バク 役:吉田邑樹
桐谷 洋介 役:磯貝 龍乎
仲田祥司 多田滉 伊東征哉 丸山武蔵 三小田芳樹
◆原作:コロプラ「DREAM!ing(ドリーミング!)」
◆企画制作・プロデュース:4cu
◆主催:ミュージカル「DREAM!ing WM」製作委員会
【公式サイト】https://musical-dreaming.com/
【公式X】@mu_dreaming(推奨ハッシュタグ:#Dミュ)
ⒸCOLOPL・ミュージカル「DREAM!ing WM」製作委員会