【インタビュー】雷太による一人芝居「Cue.01『Birdman』」通し稽古レポート&インタビュー(※一部ネタバレあり)
雷太による一人芝居「Cue.01『Birdman』」が、12月13日から15日まで東京・浅草花劇場で上演される。
※一部ネタバレあり。
雷太が立ち上げたR-Systemは、舞台芸術を上演するための新プロジェクト。その第1弾となる本公演では、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎の書き下ろし作品を、丸尾自身が演出する。初日を前に、ファンの期待も高まるばかりだ。
そこで、メディアクトは本作の稽古場取材を実施。通し稽古の様子と、稽古後に実施したインタビューをお届けする。
稽古場に組まれた武骨なセットの中で、まず目を引かれたのは10着以上のカラフルな衣装や鳥かご。衣装はコートやシャツと種類も多岐に渡り、これから何が起きるのかと早くも胸が躍る。
通し稽古が始まり、まずステージ上に現れたのは雷太本人。クリスマスに関する軽いトークを挟みながら、そのまま息づく自然さで本編が幕を開ける。
クリスマスの夜、ドードーイーツの配達員・火喰鳥夢(ヒクイトム)30歳は、東京の街を爆走していた。
才能がないながらも演劇への愛を持ちオーディションに挑み続けていた火喰。しかし全力で挑んだオーディションでひどくこき下ろされたり、バイトの配達先では港区女子に見下されたりと、惨憺たる日々を過ごしていた。
しかし宇宙から聞こえてくる声が、彼をヒクイドリ――バードマンへと変身させる。
『私だけは知っているよ。君が偉い奴だってことを』
こうして仮面をかぶったバードマン、火喰のたった一人の戦いが始まる。
トーヨコ女子、迷惑系Youtuber、老害団塊世代、虚偽の記事を書く週刊誌編集長らを相手に、黒を白に塗り替えるべく戦いを続けるバードマン。そうするうちに、バードマンは次第に社会的熱狂を巻き起こす存在になっていく。バードマンの存在を称賛するもの、憧れるもの、嘲笑するもの、あらゆる感情が蠢くさまはバードマン自身を駆り立てると同時に命を削り取っていくようでもあり、葛藤しながらも進み続ける姿に切なさが募る。
バードマンとして暗躍を続けるうちに、自己の境界が曖昧になっていく火喰。寝不足もたたって交通事故に遭い、兄の病院に運ばれた火喰はバードマンを続けることに疑問を抱き始める。
戦い続けたバードマンの中に、最後に残るものとは――…。
今作は一人芝居だ。当たり前だが、バードマンも彼が立ち向かう相手もすべて雷太が演じている。早着替えによる外見的変化はもちろん、纏う雰囲気も歌も踊りも何もかもが登場人物の数だけ様相を変え、雷太の中に存在するいくつもの才能を直に浴びることができる。一人として同じ人間が存在しないステージに、気がついた時には五感のすべてを奪われるような錯覚を覚える。頭のてっぺんから爪先まで、雷太が生み出す世界に没入できるこの空間はまさしく奇跡と呼ぶのが相応しい。
雷太が生み出す30歳最後の奇跡を、どうかその目で見届けて欲しい。
【通し稽古後取材】
――今作を上演するに至ったきっかけなどを教えてください。
役者をやっていこうと決めて早数年が経ち、芝居を突き詰めていくにあたって、一人芝居をしたいという漠然とした気持ちがありました。自分が今できる総合的なパフォーマンスに30歳の節目に挑戦したいということもあり、難しいスケジュールだったんですけど…今回見切り発車で挑戦することになりました。
――本作の見どころを教えてください。
今回一人芝居をするにあたって、まず一番に『ダリとガラ』でご一緒した脚本・演出の丸尾さんにお声かけさせて頂きました。僕が自分の個性で悩んでいた時に、『ダリとガラ』がターニングポイントとなって芝居の幅が広がって、自分の中の強みを発見するきっかけになりました。
いろいろと丸尾さんに相談して悩んだ結果、オリジナルの脚本を書いていただけることになりました。僕ができるダンスや歌を詰め込んで、でもそれをパフォーマンスではなく作品の中に落とし込んで、エンターテイメントとしてもお芝居としても楽しめるように…など、いろいろなお願いをしましたので、思い入れの強い作品です。
今作は丸尾さんをはじめとした音楽監督のYOSHIZUMIさんや、僕とずっと一緒にダンスもやってきた本田純也くん(株式会社HAK)など、いろいろなつながりのあるクリエイティブチームの皆様に集まっていただきました。今まで築き上げたスタッフの皆さんの力を借りた作品なので、お芝居はもちろん舞台美術や照明、脚本、音楽といろんな観点で楽しんでいただけたらと思いますし、それがひとつの物語として集約されているという点が見どころだと思います。
――今作は31歳のお誕生日前日が千穐楽ですね。30歳というひとつの節目を迎えた以降の目標などはありますか?
公演を終えたら一瞬だけ燃え尽きると思うんですけど(笑)。
この作品も、いい意味で一つの通過点になると良いなと。最終的に目指している自分の役者像とか、どういう風に自分が演劇界に関わっていきたいかなど、いろんな思いを詰めた作品なので、終わったあとに足りないものやできるもの、良い面も悪い面も発見することができると思うんですよ。それを自分の企画で見つけられることがプラスになると思います。垣根は作りたくないので、今後もおもしろそうな作品だったらミュージカルでもストレートでもどんなことでも挑戦したいですし、武器を見つけて今後の演劇を支える一人になれるように活動していけたらと思っています。
――観客の皆様へメッセージをお願いします。
今作は、どの瞬間も僕にとってかけがえのない作品になると思います。僕を応援してくださっている方には今の僕のできるすべてをお見せできると思いますし、僕をあまり知らない方にも楽しんで欲しいという気持ちもあります。「この作品を観てよかったな」「この瞬間に立ち会えてよかったな」と思ってもらえる作品になるよう稽古を積み重ねてきました。皆さんの胸の中にバードマンというヒーローが残るような作品になればいいなと思います、楽しんでいただけたら嬉しいです。
取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル
R-System Cue.01「Birdman」
■公演期間
2024/12/13 ( fri ) ~ 2024/12/15 ( sun )
■劇場
浅草花劇場(〒111-0032 東京都台東区浅草2-28-1)
最寄駅:つくばエクスプレス「浅草」駅(A1出口)
地下鉄銀座線・地下鉄浅草線・東武スカイツリーライン「浅草」駅(1出口)
■脚本・演出 ※敬称略
丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
■出演
雷太
■主催
R-System
■【 R-System 】とは
俳優・雷太プロデュースによる「舞台芸術」を上演するプロジェクト。
公演を重ねるごとにエンターテイメントのきっかけ=Cueをカウントしてい。