【インタビュー】岡田藩側の視点から描くエンターテインメント時代劇 舞台『義民2025〜國への想い〜』(佐藤弘樹、鵜飼主水、小原卓也、鹿島良太)

インタビュー

2025年7月23日(水)、東京・新宿村LIVEにて舞台『義民2025〜國への想い〜』が開幕する。

本作は、2023年に上演された舞台『義民』を大幅にリメイクし、岡田藩側の視点から当主の葛藤や時代のうねりを描くエンターテインメント時代劇。実話をもとにした物語に、迫力ある殺陣や人間ドラマが加わり、新たな魅力が詰まった舞台となっている。

メディアクトでは、主演の佐藤弘樹、鵜飼主水、演出の小原卓也、そして鹿島良太の4名にインタビューを実施。

強い信頼関係で結ばれた彼らの言葉からは、舞台への熱意とチームの絆があふれていた。和やかな雰囲気の中で語られた、作品に込めた想いや見どころをお届けする。

――今作のあらすじを教えてください。

小原:2023年に皇帝ロックホッパーの旗揚げ公演として、僕の地元で実際にあった出来事をもとにした『義民』を上演しました。当時は「生活が苦しくなった農民が立ち上がって直訴に向かう」という農民側の視点を軸にしたお話でした。今回はその視点を逆転させて、岡田藩のお殿様側の苦悩や葛藤をメインに描き直しています。

――岡田藩側の視点に変えた理由は?

小原:今回は、アクションや殺陣が多く、派手でエンタメ性のある作品にしたいと思ったんです。前回は史実に忠実でした。映像作品ならそれでもいいんですけど、舞台だと盛り上げ方が難しくて。そこで今回はスケールも広げて、派手な戦いのある舞台に挑戦しようと考えました。
主演2人の存在も大きいです。一年半前くらいに弘樹さんと主水さんに声をかけさせてもらっていたんですけど、2人とも「農民じゃないな」と思って(笑)。立ち回りや殺陣もできる方たちなので、戦わせないのはもったいないなと。

鵜飼:そんなことないよ、農民やるよ! 鍬アクションやるよ!(笑)

佐藤:やるよ! 全然やるよ!(笑)

――それぞれの役どころと、役作りで意識したことは?

佐藤:僕の演じる伊東⻑救は実在した人物で、当時としては珍しく長生きした人なんです。直訴って、実際にはどれくらいあったんだろう?と調べながら、歴史にも触れました。直訴した農民は処刑されてしまう。現代の感覚でいえば、総理大臣に直接訴えたら処される、というくらいのことです。
でもそれがファンタジーじゃなくて実際にあったことで、しかも「処されるのが当然」とされていた時代。じゃあ、当時の人たちはそれをどう捉えていたのか、どう生きていたのか。主人公として疑問を投げかけ続けながら、他の人たちとの関係の中で答えを探していく役です。まだ作っている最中ですが、どんどん深めていきたいと思っています。

鵜飼:僕は池田門左衛門という役で、作中では門左衛門って呼ばれることが多いですね。僕自身が“鵜飼主水”という名前なので、名前に親近感があって(笑)、ちょっと素が入りがちなんです。鹿島さんに「門左衛門!」って呼ばれると、自分と役が5:5くらいになってしまう(笑)。
でも、時代劇って言葉遣いも雰囲気も固くなりがちなので、そこに人間味がにじみ出るのはむしろ良いのかなと。人間らしい生き方をできるよう、名前を味方につけて生きたいですね。主君が二人いるんですけど、好きな人を立てるって、これ以上に楽しいことはないです。会話を重ねながら、皆さんを引っ張っていけるように頑張ります。

鹿島:僕が演じるのは弘樹くんの演じる長救の父親です。僕は時代劇を昔からよく演じていて、実在の人物を演じるときはその人について調べたり、ゆかりの地に行ったり、お墓参りをしたりもします。今回は岡山まで行けなかったけど、いろいろ史実を調べました。資料があまり残っていないので、小原くんが書いた設定や、自分の父親としての感覚を頼りに考えています。
黙っていても存在感のあるような立場を目指して、舞台を引き締められるような在り方をしたいと思っています。

小原:僕は、村長的なポジションで登場します。実際の時系列とは違うんですが、小坂逸八という、新本村の初代村長の名前をお借りしました。農民は今回はサブストーリー側になるので出番は少ないんですが、物語が動き出すきっかけになるような存在です。僕が出る場面では、一体感を作れるようになれたらと思っています。

――佐藤さんと鵜飼さんにはかなり前からオファーをされていたそうですね。その理由を教えてください。

小原:実は、特に深い理由はなくて(笑)。主水さんとは共演経験もなかったんですけど、僕は「やりたい人とやりたいことをやるために」この団体を立ち上げたので、それを改めて考えた時に、彼らの顔が自然に浮かびました。

――鹿島さんをお誘いした経緯は?

小原さん:シンプルに「一緒にやりたい」って片付けちゃうのはおこがましいかもしれないんですが(笑)

鹿島:おこがましいねえ!(笑)

小原:(笑)。鹿島さんとは一番長い付き合いなんです。もう10年くらい、一緒に芝居をやっていて、しかも硬めの演目ばかり。その鹿島さんに、いつか自分の作品に出ていただけたらという思いがあって。ちょうど一年半前に共演したタイミングでこの作品の話が出たので、その勢いで声をかけました。

鹿島:楽屋で声かけられましたね。僕、夏が嫌いなので夏の仕事は基本断るんですけど(笑)、やりたいことはやるので今回は受けました。オファーを受ける際はまず作品のことを調べるんですが、小原くんは人間的にも魅力があって、彼の人柄に惹かれたのが一番大きかったですね。しかも「鵜飼主水と佐藤弘樹が出るよ」って、小原くんが口説き文句みたいに言うから(笑)、これはもうやるしかないなと。

――オファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか?

鵜飼:僕も「いいよ!やるやる!」っていう二言返事でした。たくちゃん(小原さん)の熱い思いと、何より彼の人柄が一番の理由ですね。「エンタメとして大きくやってみたい」という彼の意志が明確だったし、信用できると思ったので。

佐藤:以前から知り合いではありましたが、小原さんとはコメディの現場が多くて。でも、ふざける一方で芝居のことは真剣に考えてくれる人なんです。過去に皇帝ロックホッパーさんの作品を観たこともあって、面白そうだなと感じていましたし、オファーにも熱意があったので「やろうやろう!」と即決でした。

――皆さん、小原さんが演出する作品への出演は初めてとお伺いしています。演出家としての小原さんはどんな印象ですか?

鹿島:違和感が全然なかったですね。元から感覚が近いと思っていたし、笑うポイントや面白いと思うところが一緒。芝居を長年一緒にやってきているから、彼の芝居のことはよく分かってるんですよ。
それに、彼はどんなに酔っぱらっていても、芝居のときはちゃんとやる!(笑) メリハリも切り替えもすごい。彼の言うことには疑問を感じたことがないし、柔軟性もあって頭もやわらかい。とても素敵な演出家です。

鵜飼:鹿島さんの言うとおり、本当に柔軟な方です。今日も稽古中に「こういうのどうかな?」と提案したら、すぐ受け入れてくれて。他の場面でも、「だったらこういうふうにしよう」って即座に対応してくれる。
“こだわりを持って、こだわりがない”っていう姿勢がすごいなと思います。相談しやすいし、すごく助かっています。

佐藤:そう、相談しやすいっていうのが一番感じていることで、彼の魅力でもあります。こちらが出した提案に対してちゃんと見て考えてくれるし、適当には流さない。「自分はこっちの方が好きだな」とか「それはアリだね」と、対話してくれるんです。提案する側にも責任があると思うんですが、彼はしっかりとディスカッションをしてくれるので作品づくりにちゃんと向き合える。それがありがたいですね。

――皆さんのコメントを受けて、今のお気持ちはいかがですか?

小原:これはもう、肴にしてお酒が飲めますね…(笑)
主演の2人をはじめ、鹿島さんも含めて皆さんすごく協力的で、作品をよくしようと前のめりで取り組んでくれているのが本当にありがたいです。演出家としても主宰としても、空気づくりは自分ひとりでは難しいので、一緒になって作ってくれているのが心強いですね。
今回、若手の役者も多く参加してくれています。彼らが現場で感じたり学んだりして、それを次に繋げてくれると、さらに良いチームになっていくと思っています。

――佐藤さん、鵜飼さん、鹿島さんは舞台の上での共演は今回が初めてですね。稽古場や、他の皆さんも含めたチームの雰囲気について教えてください。

鹿島:3人が揃うのは久しぶりですね。弘樹とは朗読劇で共演したことがあって、主水はカメラもやっているから、『役者100人展』などで写真を撮ってもらったり。だから今回3人で同じ舞台に立てるのが本当に嬉しいです。

鵜飼:今回の座組の2/3は初対面の方です。最近参加する作品は30〜40代が多かったんですけど、今回は20代の演劇に対してフレッシュな気持ちを持っている方が多くて、すごく活気を感じます。
そのエネルギーを久しぶりに浴びて、自分の感覚も更新されている実感がありますね。勢いのある現場なので、その空気を作品づくりにも生かしたいです。

佐藤:今回は2人と絡むシーンだけでなく、村人たちとも関わる場面が多くて、若手の皆さんの緊張感やフレッシュさがしっかり伝わってきます。それに僕らも負けていられない、という気持ちになりますね。
役者としてだけじゃなく、キャラクターの立場としても緊張感を与えたいと思っているので、そこに応えてくれる方が多くて頼もしいです。
2人には安心感しかありません。奇をてらったこともしてくれるだろうという期待もあるし、その中で舞台上でどこまで昇華できるか、楽しみにしています。僕自身、本番がすごく楽しみです。

――本作を通して伝えたいメッセージや、観客に感じ取ってほしいことは?

小原さん:(深く考えながら)……伝えたいことか……。(沈黙)

鵜飼:あれよ!(笑)

佐藤:四文字で言える?(笑)

小原:あり過ぎて考えてるんだよ!(笑)その時代の背景や、史実を通して、「生きていることの重さ」や「当たり前ではないこと」を感じていただけたらと思います。

鹿島:この作品、登場人物全員が脇役じゃないんですよね。一人一人にちゃんと人生がある。それを小原くんが丁寧に描いています。観る人によっては、主演の二人が主役に見えるかもしれないし、農民側が主役に感じられるかもしれない。

小原:そう、一度きりの人生を、必死に、我武者羅に生きている。それがこの作品に登場するすべての人たち。だからこそ、一人一人が主人公なんだ、ということが伝わってくれたら嬉しいです。

――最後に、作品への意気込みや舞台を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

小原:団体を立ち上げたばかりで、まだまだこれからなんですが、この作品を通して一緒に成長できる仲間を作れたらという思いがあります。ありがたいことに、オーディションにもたくさんの方が集まってくれました。キャストもスタッフも意識が高くて、ちゃんと自分の役割を理解しているクリエイティブな人たちが集まっています。
その分楽しみも大きいですが、プレッシャーもあります。でも、全員の思いをまとめて、ちゃんとお客さんに届けたいです。主題歌も殺陣もハイクオリティで、カッコいいものをお見せできると思います。お祭りだと思って、ぜひ気軽に観に来てください!

取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル

■公演概要
舞台『義民2025〜國への想い〜』

公演日:2025年7月23日(水)~2025年7月27日(日)
会場:東京都 新宿村LIVE
殺陣:小笠原竜哉

出演:
佐藤弘樹 / 鵜飼主水
 
碕理人 / 咲良 / 榎木薗郁也 / 村上渉 / 花崎那奈 / 樫村みなみ / 倉本琉平 / 明日翔 / 仙波好基 / 眞砂佳奈子
 
いろは:葛飾心 / 絃ユリナ / 神﨑飛鳥 / 平森友捺 / 百瀬うか
ほへと:織田俊輝 / 柊木みずほ / 工藤広誠 / 美波花音 / 水川碧
 
小泉丞 / 湯浅雅恭 / 村上拓哉 / 吉田愛花 / 倉本みな / 橘佳蓮
 
小原卓也
 
鹿島良太

チケット:(全席指定・税込)
前方 S席 9,800円・前方 2列目までの席を確約 ※ 1
前方 A席 8,500円・前方 3列目〜 5列目までの席を確約 ※ 2
通常 A席 6,900円・ 6列目〜 9列目
通常 B席 4,000円・ 10列目以降
バルコニー席 7,700円・数量限定の特別席
https://ticketme.io/event/group/e1288efd-4699-4707-96a4-c9459d99af77/97b6750f-51cc-4c8a-a380-bc70597f4320
※ 1 公演パンフレット+非売品 2L版ブロマイド(サイン付き)特典付き
※ 2 非売品 2L版ブロマイド(サイン付き)特典付き

STAFF:
脚本:卜日十也 / 演出:小原卓也(皇帝ロックホッパー) / 舞台監督・美術:本多亮太(LDA) / 演出部:前田圭一(LDA) / 舞台映像:坂内友樹(ビッグバンバン)・Ume(ビッグバンバン) / 音響照明:DISCOLOR Company / 主題歌:『想い華』栗原大河 作・編曲:野田"s.i.s"浩平 / 振付:栗原大河(皇帝ロックホッパー) / 殺陣:小笠原竜哉(JAE) / 衣装・小道具:劇団KⅢ / 物販撮影:Rocky / 物販ヘアメイク:望月香織 / 演出助手:丸山紗代(SPM) / 宣伝美術:坂藤秀峰 / 制作・票券:玉永賢吾(SENTRAL PRODUCE) / 主催:株式会社Vtoly / 企画:皇帝ロックホッパー / プロデューサー:小原卓也(皇帝ロックホッパー)

協力:
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