【インタビュー】松田凌×橋本祥平×有澤樟太郎が見つめた、"舞"の果ての景色とは? 映画『舞倒れ』上映スタート

映画『舞倒れ』の上映が、10月10日より池袋HUMAXシネマズにてスタートした。
本作は、「東京リベンジャーズ」「ブルーロック」など数々の舞台を手掛けるオフィスエンドレスが、新たな挑戦として贈るフィルム作品。主演の松田凌、橋本祥平、有澤樟太郎をはじめ、2.5次元舞台やグランドミュージカル等で活躍する俳優陣を筆頭に、新進気鋭の川添野愛、舞踏家の田村一行、演技派の黒沢あすかなど、人気と実力を兼ね備えたキャストを起用。監督はアメリカ・ベルギーに出自を持ち、独自の感性により作品を作り上げる横大路伸、脚本は様々な舞台作品のプロデュースを行う下浦貴敬が担当している。
物語の舞台となるのは、昭和九九年、戦時下の日本において、まだ穏やかな日常が残る"佐渡ヶ島"。能楽の大成者・世阿弥と縁の深いこの地を舞台に、島で受け継がれてきた能楽の流派・"鍍金流(ときんりゅう)"に属する人々と、その周囲の人物たちが織りなす青春群像劇だ。
メディアクトでは、舞に身を捧げる若者・"吾潟(あがた)"を演じる主演の松田凌、吾潟の弟弟子であり幼なじみの"下戸(おりと)"を演じる橋本祥平、二人が慕う兄弟子であり鍍金流の次代当主・"硲(はざま)"を演じる有澤樟太郎の3名に、対談インタビューを実施。撮影時の印象的なエピソードや、作品への思いなどを聞いた。
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——昨年開催された完成披露(先行上映イベント)から約1年半、ついに一般公開を迎えた本作。新たなシーンも追加され、改めて完成となった本作を観てのご感想をお聞かせください。
松田凌(以下、松田):作品の中では「昭和九九年」という架空の時代が描かれていますが、同じ数え方をすると、今年2025年はちょうど「昭和百年」になるんですね。そこに深い縁を感じますし、「もし本当に昭和が続いていて、もう一つの世界が実在したなら、こういうふうになっていたのかな」と考えながら完成したフィルムを観ました。
最初に台本を受け取ったときは、「この設定の中でリアリティを出すにはどうしたらいいんだろう?」と表現に迷う時間もあったんですが、完成した今振り返ると、「今僕らがいる世界とは確実に違うものの、じつは近からず遠からずの絶妙な位置にある世界観だな」と思います。不思議な感覚ですね。
有澤樟太郎(以下、有澤):本当に、斬新な設定のおかげで、インパクトのあるシーンが多いんです。たとえば、戦争に呼ばれる召集令状の「赤紙」が、郵送ではなくスマホに送られてくる、とか。もし本当に日本で戦争が続いていたら、こういうふうになっていたのかもしれないな、と感じられる妙な現実味があるんですよ。
完成した映像を見ると、スマホを見る硲の顔が、赤紙の画面に照らされて真っ赤に染まっていて……その演出も心にガツンと来ました。
橋本祥平(以下、橋本):「昭和九九年」というのは、あるようで無かった世界観ですよね。空気感は昭和だけど、登場人物たちの生活や持っているもの(スマホなど)は現代そのもので。そのギャップがまた面白いなと思います。
今回、昨年の完成披露でのお客さまのリアクションを受けて、監督が新たなシーンを追加したと聞いています。分かりやすいところでは、吾潟・下戸・硲・歌見(演:川添野愛)の幼少期のシーンが新たに挿入されているんですが、そのシーンが追い風になって、クライマックスシーンまでの心情描写に加速がついたように感じたんです。登場人物たちの関係性がより鮮明になった分、僕らが演じたシーンの意味もぐっと深まったというか。追い風を送り込んでいただけたようで嬉しかったです。
——佐渡ヶ島のロケで、印象的だった景色やエピソードはありますか?
松田:個人的な思い出なんですが、僕自身がクランクアップしたその日の夜、共演者の新田健太くんとホテルの一番高いところに上がって、星空を見ながら乾杯したんです。その星空が本当にきれいで、壮大で……こうして言葉にすると陳腐になってしまうんですけど、他では見られない景色だなと心から感じました。
撮影中はスケジュールがぎゅっと詰まっていて、ひたすら前進し続けることだけ考えていたので、初めてゆっくり佐渡ヶ島の景色に浸れたのが、その瞬間で。あの夜の景色は忘れられないですね。翌日も撮影が残っていた祥平には、ちょっと申し訳ないなという気持ちもありましたが。
橋本:ちなみに翌日の撮影は全力ダッシュするシーンで、ひたすら走り続けました(笑)。
有澤:舞のシーンの撮影では、現地で実際に使われていた歴史のある能楽堂をお借りしたんですが、その場所の空気感がものすごかったんです。お堂の床や壁から、なにか目に見えないエネルギーみたいなものがひしひしと伝わってくる気がして、舞にまっすぐ集中できる感覚がありました。僕はあんまりそういうものを感じ取る方ではないんですが、佐渡ヶ島はどの場所に行っても圧倒されるような雰囲気があって、島全体がパワースポットなんだなと感じました。
——今回は映画という媒体、しかも能楽というテーマに挑戦されたわけですが、能楽の舞を演じる上で、これまでの演技経験が活きた場面はありましたか? とくに、有澤さんは冒頭シーンで長尺の舞を披露されていますが、いかがでしたか。
有澤:僕が演じる硲は、鍍金流の次代当主。大役を任せていただけて身が引き締まる思いでしたし、「心身ともにしっかり準備しておこう」という心構えで臨みました。冒頭シーンの舞の撮影は、ロケの日程の中でも最後の最後に予定されていたので、ロケの間はずっと内心ドキドキしてました。
ただ、振付を担当された宮河愛一郎さん、現場で舞の指導をしてくださった飯作絵梨子さんのお二人が、ともに以前から親交のある方々だったので、そういった面での安心感はあったんです。振付も、能そのものというよりは現代風の動きも交えたものだったので、緊張はしましたが、今までの経験を活かして楽しめたかなと思います。
——なるほど。松田さん、橋本さんのお二方はいかがでしたか? とくに、舞を通して思いをぶつけ合うシーンは表現として難しかったのではないでしょうか。
橋本:難しさはありつつも、言葉で伝え合うのではなく「舞を通して心の会話をする」という選択がすごく衝撃的で。僕自身、日々お芝居の仕事をしながら常に「表現とは何だ」という問いに直面しているんですが、命がけで舞う3人を見ているうちに一つの答えが見えてきたというか。「ああ、表現というのは、突き詰めればここに行き着くのかもしれないな」という手触りが得られたんですね。これまでの経験が活きたというより、むしろこの映画の撮影が、今後の役者人生に大きなヒントをくれました。
吾潟と下戸の舞のシーンは、個人的に『舞倒れ』というタイトルのゴール地点になるんじゃないかと思ったので、台本を読んでからずっと「大切に演じよう」と気持ちを高めていきました。尊敬する先輩である凌くんと、「舞を通してぶつかる」という貴重な経験ができたことも嬉しかったです。
松田:あのシーンは登場する人数も非常に多かったので、キャストそれぞれがしっかり集中して臨む必要がありました。役柄としては戦いつつも、俳優としては支え合って完成することができたので、達成感がありました。
それに、天候や自然も不思議なくらい味方してくれたんですよ。風が変わるタイミングや日光の差し込み方などが、お芝居ときれいにマッチしてくれて……。僕らが積み重ねたものに呼応して、島の自然が背中を押してくれたように感じられました。
撮影自体が終盤に入っていたので、2人のシーンを全力で舞いきったことで一つ「山を越えた」という感覚もあって。最後、カメラを搭載したドローンが上にのぼっていって引きの画になるんですが、それと一緒に僕らの気持ちもグーッと空に昇華していくような感覚に包まれたのを覚えています。
——ありがとうございます。最後に、ご自身が一番好きなシーンや、観客の方にとくに注目してほしいシーンを教えてください。
有澤:やっぱり、硲の舞のシーンかな。それと、序盤にある吾潟・下戸・硲の3人でなにげない会話をしている、日常シーンも見てほしいです。この3人のキャストでああいった関係性を表現できるというのが、僕はとても嬉しくて。個人的にすごくお気に入りのシーンです。
橋本:僕は、硲の出征シーンがすごく好きです。演じながら本当に悲しくて、「送る人ってこういう気持ちだったのかな……」と思って。また樟太郎が似合うんですよね、あの衣装。後ろで生演奏してくれている子どもたちも含め、印象的なシーンなので、細かいところまでじっくり見てもらえたら嬉しいです。
松田:好きなシーンはいくつもあります。パッと出てくるのは、序盤の3人で会話するシーン。それと、僕と新田くんが乗っているレアな自転車のシーンかな。二人乗り用の自転車で、後ろの僕もちゃんと漕いでるので、足元までしっかりチェックしてみてくださいね。
あとは、吾潟と歌見が会話する神社のシーン。ロケ地の神社が秘境のような深い場所にあって、本当に自然が豊かで。川添野愛さんと初めてガッツリお芝居できたことも新鮮でしたし、吾潟の心情としても大切なシーンだったと思います。ぜひ注目してほしいです。

映画『舞倒れ』は、10⽉10⽇(⾦)より池袋HUMAXシネマズにて公開中。入場者には特典(非売品)の「フィルム風しおり」を配布している(お⼀⼈様につき1枚をランダム配布/無くなり次第終了)。
取材・文:豊島オリカ、撮影:ケイヒカル
■映画概要
映画『舞倒れ』
【CAST】
松田 凌/橋本祥平/有澤樟太郎
川添野愛/田村一行/黒沢あすか
新田健太/榎本 純/秋山皓郎/菊池宇晃/相澤莉多/滝川広大/伊崎龍次郎/深澤大河/本西彩希帆
黒岩紘翔/濱﨑 司/長尾 翼/須田杏梨
岸本康太/窪寺 直/後藤恭路/榮 桃太郎/坂本和基/田中雅士/次原恭兵/中村悠希/広瀬 蓮/福田拓也/瑞野史人/向田 翼/来夢/和田啓汰
【STAFF】
監督:横大路伸
脚本:下浦貴敬
主題歌:笹川美和「青海原」
プロデューサー:高木良之 下浦貴敬
企画:キャストコーポレーション/Office ENDLESS
製作:Office ENDLESS
音楽:こおろぎ
撮影監督:大川祥吾/撮影:神野誉晃/照明:津覇実人/録音:茂木祐介/美術:中根 克/小道具:平野雅史/衣装:雲出三緒/ヘアメイク:木村美和子/助監督:遠藤 晶/制作担当:岡本大輔/アクション指導:新田健太/舞い指導・振付:宮河愛一郎/舞い指導・振付補:飯作絵梨子/Webデザイン:EAST END CREATIVE
制作協力:オフィス・メイ
特別協力:フィルムコミッション佐渡
ロケ協力:駿河湾沼津FC『ハリプロ映像協会』
企画:キャストコーポレーション Office ENDLESS
宣伝・配給:Office ENDLESS
公式HP:https://officeendless.com/sp/movie_maidaore/
公式X:https://x.com/maidaore_2024
©映画「舞倒れ」製作委員会



