【インタビュー】「こだわりを持って作品作りを」谷佳樹・小西成弥「わが友ヒットラー」インタビュー

インタビュー

12月11日、新国立劇場 小劇場にて「わが友ヒットラー」が開幕する。本作は、演出家・松森望宏による演劇ユニット「CEDAR」主催による三島由紀夫生誕100周年記念作品。2022年に上演された初演は読売演劇大賞の上半期作品賞ベスト5を受賞した。再演となる2025年版は、主演のアドルフ・ヒットラーを演じる谷佳樹、グスタフ・クルップ役の森田順平は続投。エルンスト・レーム役に小松準弥、グレゴール・シュトラッサー役に小西成弥がキャスティングされている。また、2025年版は朗読劇・近代能楽集もマルチキャストにて同時上演される。

メディアクトでは、「長いナイフの夜」を題材とした、4人だけの出演者による息をのむ会話劇による本作への意気込み、稽古への思い、役者としてのこだわりについてなどを、谷佳樹と小西成弥へインタビューした。

――はじめに、本作ご出演の話が決まったときのことからお聞かせください。谷さんは2022年版から続投になります。

谷 佳樹(アドルフ・ヒットラー役):「再演をやりたい」という話はちらほら聞いていたのですが、続投するとは自分でも思っていませんでした(笑)。あの時は、過酷な稽古を乗り越えておこなった公演の1回、1秒に至るまで、すべてを注ぎ込んでいましたからね。再演するとなれば、前を超えていかなければいけない。あの時の自分を超えていけるだろうか…? と自信を持てずにいましたし、あれはひとつの芸術として残したい、という気持ちもありました。
でも役者はバカですからね。正式にオファーをいただいたら「やります!」とお受けしてしまいました(笑)。2025年の締めくくりとなる、最後のひと勝負でもあると思っています。

――小西さんは今回からのご参加ですね。

小西成弥(グレゴール・シュトラッサー役):2022年度版が読売演劇大賞の作品賞にノミネート(上半期作品賞ベスト5受賞)されたタイミングで、実は谷やん(谷)に会っていたんですよ。その時に、熱烈に「おめでとうございます!」と伝えました。

谷:そう、お祝いしてくれて「ちゃんとそういう賞もチェックしているんだな、俳優としてすごい」と感じました。

小西:「こういう作品に出演したい」と思っていたところ、今回お声がけいただいて出演できることになって…まさかのことで驚きました。昨年の7月に『ヒストリーボーイズ』でご一緒した演出家の松森望宏さんが代表をつとめられるCEDARさんと、またご一緒できる。それから谷やん、小松準弥くん(エルンスト・レーム役)、森田順平さん(グスタフ・クルップ役)。すごい役者さんたちが集まっているとお聞きして、まずは楽しみでありうれしかったです。
同時に、読売演劇大賞上半期作品賞ベスト5を受賞した作品に新キャストとして入る、そのプレッシャーは感じています。けれども、プレッシャーも含めて楽しもう! という気持ちで稽古に励んでいるところです。

――現在の稽古の様子と、稽古に入る前にした準備について教えてください。

谷:2022年のときは、演出の松森さんも含めてみんなで「どう立ち上げていこうか」と手さぐりで作り上げていきました。ホワイトボードに当時の歴史やセリフの解釈を書いて、戯曲について勉強するなど、“三島由紀夫と戦う”のような時間を多く取っていたように思います。でも今回は、前回の土台があるので、研磨された状態から始められています。良い意味で近道を通り、有意義な時間を過ごせていますね。

小西:テーブル稽古で時代背景や情勢をリサーチしたものを共有して、作品の核となる部分を頭に入れてから立ち稽古に入っています。松森さんの作品は2度目なのですが、しっかりとテーブル稽古でディスカッションをしていくスタイルが自分にとても合っていると感じています。テーブル稽古をおこなわずに立ち稽古に入ると、役がまだしっかりと入っていないので、ふわふわした状態になってしまうんですね。でもテーブル稽古をしっかりとしてからだと、核となる部分がカチッとなるので、とてもやりやすいです。

谷:テーブル稽古は大事だね。座組が向かって行く方向や姿勢をそこでしっかりと共有できるので、後から「ここ、どうする?」と考え直す時間を持たなくてもいい。無駄なく効率的に稽古が進められるので、僕も成弥と同じく、テーブル稽古はしっかりやった方がいいと思います。

小西: 稽古に入る前の準備は、シュトラッサーが生きていた当時のドイツがどんな時代で、彼がどんな思いを抱えて生きてきたのかを調べるところから始めました。今の日本に生きていたら分からないことばかりですからね。それから、課題になったのはやっぱり…セリフ量です(笑)。

谷:僕も、前回の思い出しから始めました(笑)。稽古に入るにあたって、役者バカである成弥と準弥くんがどんなものを持ってくるのかとても楽しみにしていたんです。涼しい顔をして高いハードルを越えてくる2人との戦いでもあると思っていたので、セリフを頭に叩き込みながら入念に準備してきました。

小西:僕と準弥くんは“いち”からセリフを頭に入れていかないといけないけれども、谷やんは1回やっていますからね。そのアドバンテージはやっぱりあると思いますよ!(笑)

谷:「思ってもみよ、諸君」の演説から始まる膨大なセリフの量は、「あれを覚えられたのだから」と、自信や支えになりました。強烈な言葉の数々も印象的でしたしね。でも再演にあたって台本を開きなおしてみたら、覚えていない…。記憶というものは恐ろしくて、どんなに印象が深くても薄れていってしまうんですよ。それからはもう、時間があれば台本を読んで、セリフを頭に入れる生活がまた始まりました(笑)。

小西:と言っても谷やんと森田さんはもうセリフが入っていたので、テーブル稽古の最後のあたりでは立ち稽古のようになって、準弥くんと僕で「おいおい待って」「まだ立ち稽古じゃないよ?」と突っ込みそうになったんですよ(笑)。

谷:準弥くんには「勘弁してくださいよ!」と言われました(笑)。

小西:稽古場の雰囲気はとてもいいですね。昨日レーム(小松準弥)とクルップ(森田順平)のシーン稽古のときに稽古場に入っていったら場内が真っ暗だったので、「暗!」「何をやっているんだろう?」って(笑)。暗くしていたのは、お芝居に集中できるように、オレンジ色の小さなライトを上からひとつ照らしているだけの状態にしていたんだと聞いて、いい現場だなと改めて感じました。

――小西さんは「涼しい顔をして高いハードルを越えてくる」とのことですが、谷さんは小西さんをどんな役者だととらえていますか?

谷:しばらく共演する機会がなかったのですが、その間にもさまざまな経験を積んできて、さらに「役者バカ」になったのだろうな、と感じています。成弥は、明るくて陽気でフレッシュで…と見られがちなのですが、実際はそうでもないんですよ(笑)。男らしくてまじめで、曲がったことが嫌い。頭の回転が速くて、前日に何か課題が生まれれば、翌日の稽古にはすぐに違うものを持ってくる。芝居に対して熱いし、同じような熱さを持っている人を同朋として求めているのを感じます。僕も、成弥の「芝居に熱い人カテゴリー」に入れてもらえるように努力しなければと思っています。

――冒頭で谷さんがご自身を「役者バカ」とおっしゃっていて、小西さんもまた「役者バカ」とのことですが、お2人が思う「役者バカ」とは、どんな人のことだと思いますか?

谷:面倒くさいことをとことん一生懸命やる人かな、と思います。いいものをお客さまに届けたいからこそこだわりを持って、たとえぶつかり合う可能性があっても意見をしっかりと話し合っていく。ご都合主義や、妥協をして流されずに、よりよいものを作っていきたいというこだわりを持っている人。

小西:にじみ出るものがあるんですよね。本当にお芝居が好きなんだなぁ…と。一緒に作品を作っていると一目瞭然でわかります。こだわりを持たずに楽しくやろう、過ごそうと思えばそれなりにできてしまいます。でも、おのおのがそれぞれのこだわりを持ち寄ってぶつけ合っていけば、お互いの考えていることがよく分かって、よりよいものができると思うんです。役者の仕事は、どこか職人のような部分があります。お互いにこだわりを持っていればいるほど、僕は作品がより良いものになっていくと感じています。

――この現場ではいかがですか?

谷:松森さんは、僕たちの気持ちの動きを優先して演出をつけてくださっています。こだわりは持ちつつも、役者に寄り添ってくれていると感じます。普段なかなか触れられないようなジャンルの作品だからこそ、僕たちもこだわりを持って、松森さんに相談しながら作っていきたいですね。

――こだわりを持った皆さんによる作品作り、上演が楽しみですね。では最後に、本作への意気込みとファンの皆さんへメッセージをお願いします。

小西:この、三島由紀夫作「わが友ヒットラー」を上演できることを、まずはうれしく思っています。今後の役者人生において代表作と言える作品になるのでは、と思いますし、これからもっと稽古を詰めていきます。難しそうな作品…と思われるかもしれませんが、リアルで生々しい人間ドラマなので、皆さんにも楽しんでいただけるはずです。劇場でお待ちしております!

谷:作品に関わること自体は、実は3度目になります(2021年版はコロナ禍の影響で中止、2022年へ延期)。3度目ではありますが、ひとつひとつのセリフをまた丁寧に伝えていけるように。そして前回とは違った形式の劇場なので、客席と舞台がシームレスになったように感じていただけると思います。劇場全体が息をのむような空気の作品を作っていけたらと思っていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

取材・文:広瀬有希/写真:ケイヒカル

【公演概要】
〈『わが友ヒットラー』〉

◆上演日時・出演
12月11日(木)18時半/12月13日(土)18時半☆/12月14日(日)12時
12月16日(火)18時半☆/12月18日(木)13時☆/12月20日(土)12時
12月21日(日)12時
☆出演者全員によるアフタートークあり

アドルフ・ヒットラー 谷佳樹
エルンスト・レーム 小松準弥
グレゴール・シュトラッサー 小西成弥
グスタフ・クルップ 森田順平

◆スタッフ
作:三島由紀夫 演出:松森望宏
美術:平山正太郎 照明:小原ももこ 音響: 青木タクヘイ 音楽:西川裕一
衣裳:藤崎コウイチ ヘアメイク:ナリタミサト 舞台監督:筒井昭善 演出助手:石川大輔
制作 間宮春華 製作:児玉奈緒子 票券:サンライズプロモーション 著作権管理:酒井著作権事務所
主催・企画・製作 一般社団法人CEDAR/株式会社MAパブリッシング
◆公式WEBサイト https://cedar-produce.net/mishimakinen/
◆Twitterアカウント @cedar_engeki
◆料金 9,000円(全席指定・税込)
「わが友ヒットラー」 18歳以下:無料(19歳以上の同伴者 4,500円)
◆お問合せ
 サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)