【インタビュー】舞台『楽劇 フィガロ』主演フィガロ役の矢田悠祐&アルマヴィーヴァ伯爵役の山本一慶

インタビュー

舞台『楽劇 フィガロ』が、2026年1月8日(木)から、池袋・東京芸術劇場シアターウエストにて開幕する。

メディアクトでは、公演に先駆け、主人公であるフィガロを演じる矢田悠祐と、フィガロの婚約者を狙うアルマヴィーヴァ伯爵を演じる山本一慶へのインタビューを実施。本作にかける思いなどを聞いた。

―――本作『楽劇 フィガロ』はオペラ『フィガロの結婚』(モーツァルト/1786)をモチーフに、その前日譚となるオペラ『セビリアの理髪師』(ロッシーニ/1782)も織り込んだ作品ですが、ご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

矢田悠祐(以下「矢田」):お話をいただいたときには、どういう本になっているのかは全く分からなかったのですが、荻田さんとご一緒するのは今回でもう8作目なので、荻田さんの作品ということで期待をしていました。 

一慶(山本一慶)との共演も、朗読劇を除くと、『楽劇 フィガロ』の本番の時点でミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン以来12年ぶりと久しぶりなので、すごく楽しみです。

山本一慶(以下「山本」):僕ももちろん矢田ちゃん(矢田悠祐)と共演できるのが楽しみで、まず「矢田ちゃんだ!嬉しい!」という気持ちが先に来ました。
お話に関しては、元がオペラのコメディと聞いて、当時は、どのようなお話になるのかあまり想像ができませんでした。今となっては「そういうことか。」という感じですけど。

―――お二人ともご共演を楽しみにされていたとのことですが、実際にお稽古が始まっていかがですか?

山本:意外と矢田ちゃんと同時にずっと話してるシーンはないよね。

矢田:あんまりないかも。ずっと出てはいるし、人数も少ないけど。

山本:身分も違うしね。貴族と平民というか・・・

矢田:ド庶民なんで。フィガロは。笑

山本:僕の演じるアルマヴィーヴァ伯爵は、厄介事があると、巻き込まれないように逃げてしまうんですよね。フィガロはそれを追いかけて、という駆け引きのある関係値で。
だけどやっぱり楽しいですね。一緒に稽古をやっていて。色々な話もできますし。
11年間一緒に出演する機会がなく別の作品をやり続けていたので、懐かしくもあり、新鮮で毎日楽しいですね。

―――先日『舞台 ジョーカー・ゲームⅢ』にて、山本さんが日替わりゲストで矢田さんとご共演されていましたよね。

山本:そうですね。でもあの時はゲスト出演で出番が短かったのと、稽古も少なかったので、本番当日に軽く挨拶をして本番みたいな感じでした。笑

矢田:しかもゲストなのに殺陣もあって。

山本:矢田ちゃんからのタバコのパスもあって、落とさないかドキドキでした。あの時は本当に怒涛で、矢田ちゃんとは「フィガロよろしくね。」くらいしか喋れなかったので、今回の方が11年ぶりの共演という感覚は強いです。

―――お互いについて、役者として好きなところはありますか。

矢田:一慶は演出もやっていますが、僕はどちらかというと、脳みそがプレイヤー側なんです。ただ、視点は違えど、意見は一緒になることが結構多いので、やっぱり感覚は近いんだなと思います。そこはすごく安心できる部分でもありますね。
とは言っても、見ている角度が違ったりするので、そこはすごく尊敬できる部分ですね。

山本:矢田ちゃんと11年ぶりに一緒に稽古をして、「こんなに真面目だったんだ。」と思っています。すごい考えてるじゃん。

矢田:考えてやりますよ。そりゃ。笑

山本:その深みが素敵だなと思って。
言葉で表現するお芝居は、言葉一つ一つが大切だと思います。特に長台詞があるキャラクターは、誰かの台詞をきっかけにするのではなく、発する言葉のベクトルだったり、表現の方向を、自力で変えなければいけないと思うんです。矢田ちゃんは主演でセリフも多いなか、それを一つ一つすごく考えてやってるんだな、と尊敬しました。

―――11年前のミュージカル『テニスの王子様』の時とは結構印象が変わったんですかね。

山本:テニスの時何やってたっけ。ただ必死だったよね。身体痛いって言ってね。笑

矢田:毎日な。笑 あの年齢だからできた。

山本:そうだよね。今合宿ないんだって。

矢田:そうなの⁉

山本:寝るところも一緒だったしね。部屋一緒だったっけ?

矢田:もう全然覚えてない。笑

―――お二人の仲の良さが伺えるエピソードをありがとうございます。
本作のお話に戻りますが、矢田さんはフィガロというキャラクターに対して、どのような印象を抱いていますか?

矢田:庶民のヒーローであるべき、というのは、第一に思います。

現在を生きている皆様にはあまり縁のない話かもしれませんが、当時は身分制度があったので、身分差や、制度のせいで抗えないところなども表現できると、庶民であるフィガロが真ん中にいる意味があるかなと思います。

また、フィガロは地位もお金も持っておらず、何の力もありません。でも、持ち前の知力で相手を言いくるめたりして、問題をうまいこと解決していくというのが、当時フィガロと同じような境遇にいた皆様に受けたところだと思います。そういう点にリスペクトを持って、フィガロを表現できたらなと思います。

―――山本さんはアルマヴィーヴァ伯爵に対する印象はいかがですか?

山本:バカですね。

矢田:身分によりかかってね。笑

山本:ね。笑 でも、当時の階級的な社会では、舞台などで貴族や上流階級の人をディスっていたことが多いように思います。本作でも、アルマヴィーヴァのように、地位や権力やお金を使って、女性を自分のものにしようとしたり、自分の存在を証明しようとしたりしていた人達を、誇張してディスっているんだろうなというのはすごく感じています。
僕自身、昔の本のそういうところがすごく面白いと思いますし、演出的にも「アルマヴィーヴァはバカでいいと思う」と言っていただいたので、今回はとことんバカでやってみるか、と思っています。
でも、憎むべきバカというよりは、愛すべきバカに落ち着けたらな、とは思います。
本作に出てくるキャラクターのなかで、地位のある面々は、あり得ないくらい変な人が多いので、最終的には、皆愛されるキャラクターになるんじゃないかなと思います。そのような気持ちで、アルマヴィーヴァをやらせていただいています。

―――本作はコメディとのお話しでしたが、演じるという立場からすると、シリアスなお話や暗いお話とコメディのどちらがお好きですか?

矢田:今回はコメディをやらせてはいただきますが、完全な好みだと、僕はシリアスが好きです。笑

僕が演じる役どころ的にもそういう役が多いですし、どちらかというとヴィランをやることが多いので。

山本:コメディって難しいと言ったら難しいんだよね。

矢田:難しい。今回は現代でいう「コメディ」ともまた違うしね。コメディなんだ、と思って観劇するとちょっと違うかもしれないです。

山本:「喜劇」にも集約できないしね。

矢田:当時の時代背景などをわかっていると、より楽しめる深みがあるというか。

山本: 当時の貴族たちが観ていたプロフェッショナルのお芝居というよりは、お金の無い平民たちが、街の広場で風刺的なお話を演じて笑っているようなニュアンスだよね。

矢田:日頃の鬱憤晴らしというかね。だからこそ、さっき一慶が言っていたように貴族たちが誇張されてるんだろうね。

山本:当時、平民達が貴族達に対してそういうフラストレーションを持っていたんだということを知って観劇していただけると、一緒に笑えるかもしれないです。

矢田:笑わせにいくという意味でのコメディではないもんね。

山本:ギャグがあるというのではなく、風刺的な意味で誇張してお芝居をしているので、普通のお芝居をよく観ている方だと驚くかもしれません。でも、時代背景などを知ってから観ると、すごくふざけてるな、と思っていただけると思います。

もちろん、ゼロ知識で観に来ていただいても楽しんでいただけると思います。

観劇して、作品のことなどを調べていただいたときに、そういう意味もあるんだな、と理解していただけたら、更に奥深さが増すのかなとは思います。

矢田:で、一慶はシリアスとコメディどっちが好き?

山本:コメディが好きです。シリアスもすごく好きだし、舞台としての濃厚さもあるけれど、コメディの方が難しいんですよね。だから演じていて楽しいです。

コメディは緻密な計算がずっと連続してる感覚で、シリアスは最後に大きい計算を集約させるために細かい伏線などが張り巡らされて、緊張感をもって話が進んで、結末が来る、というのが面白いなという感覚です。

コロコロした緻密な計算をどうならしていくのか、お客さんが観ていて不自然じゃなく、また、お客さんを置いていかずにどう結末に持っていけるかという、お客さんとの駆け引きなども、コメディの魅力だと思います。語弊があるかもしれませんが、コメディの方がやることが多いなという感覚です。

矢田:お芝居をしていて、生理的に進んでいったらそうはならない、というところに話を進めていかないといけないという意味での難しさもあるよな。

山本:役者としての辻褄合わせも大変だし、お客さんについて来てもらわなきゃいけない、というのも難しくて、やりがいがあると思っています。

―――矢田さんは、今回で荻田さんとご一緒されるのが8回目とのことですが、今までで一番印象に残っているのはどちらの作品ですか ?

矢田:一番というと、主人公チャーリィ・ゴードンを演じたミュージカル『アルジャーノンに花束を』です。
彼は子供くらいの知能しか持たない青年なのですが、手術を受けて頭が良くなったことで、その後自分がどうなるのかというところまで理解してしまい、それによって絶望したり、頭が良くなるにつれて周りの人たちの対応がいい意味でも悪い意味変わっていって・・・、というお話で、人の一生を演じるような役でした。
僕は当時26歳だったのですが、荻田さんは細かくお芝居のディレクションをしてくださるので、普通の人が何年かをかけて学ぶことを、僕の引出しに詰め込んでいただいたな、という作品でした。初主演だったということもあり、今でも人生で一番くらいに印象に残っています。

―――今回の『楽劇 フィガロ』は今お話に上がった『アルジャーノンに花束を』など、矢田さんがご一緒されてきた荻田さんの作品とは雰囲気が違うような印象ですが、舞台の台本を読まれていかがでしたか?

矢田:前に『BARNUM(バーナム)』という、どちらかというポップな作品で、荻田さんとご一緒したことがあります。ただ、人数が多い舞台だったので、やはり、今回は今までご一緒した作品とは結構雰囲気が違うな、という印象です。
荻田さんは頭の中ですごく緻密に計算をしたうえで、それを僕たちに置き換えて渡していく、という演出をされるのですが、ポップなものでも同じように演出されるのだなと思いました。

―――山本さんは荻田さんとご一緒されるのが初めてとのことですが、実際にお稽古が始まっていかがですか?

山本:面白いです。荻田さんは知識量がすごいと思います。具体的な例を出しながら演出してくださるのですが、その例がわからないこともあります。笑

矢田:結構あるよね。笑

山本:僕の知らない領域の知識を持っている方のお話を聞けるのが、すごく勉強になりますし、面白いと思います。色々なものを観ていて、知識が豊富だからこそ、いろんな引出しから僕らに道を示してくれてるんだな、ということを強く感じます。面白い方だな、素敵な方だな、と思って日々稽古をしています。

―――本番を迎えるにあたって楽しみなことなどはありますか?

矢田:今日(12月中旬)の稽古で全体像がやっとみえるので、ここからどうなってしまうのかな、と思っています。いいとこでブレーキ踏まないとな。

山本:そうだよね。笑 さっき矢田ちゃんが引出しの話をしていたけど、今は引出しを全部並べてある状態だから。笑

矢田:もうてんこ盛り丼になってる。笑 まあ稽古もまだ一週目なので。

山本:ここから足し算、引き算をしていき、本番までにどうまとめられるのかが楽しみです。
あと、お客さんがどこで笑ってくれるのかも気になります。

矢田:あくまでキャラクター本人達は笑いどころを作っているわけではなく、元々そういう人というだけだからね。

山本:全力で、ただネジが外れて生きてるだけなんですよ。でも、そういうのって面白いよね。好きな人はハマったら全編大変なことになると思う。

矢田:酸欠で倒れるかも。

山本:腹筋割れるかも。でもそれくらい全力でバカに生きています。

矢田:あとは歌が楽しみです。普通のミュージカルみたいに、感情が昂ったところで歌が入るのではなく、なんていうんだろう・・・。
僕の役だと自己紹介の場面とか。

山本:ミュージカルとは違うところで歌が来るよね。なんて言ったらいいんだろうね。

矢田:うーん。皆さん観て教えてください。笑

山本:教えてほしい!これのジャンルってなに?でも、だからこそ「音楽劇」でも「ミュージカル」でもない「楽劇」なんだろうね。
・・・「楽劇」って「楽しい劇」ってこと・・・?

矢田:そういうこと?笑 コメディを漢字で書くとこうなるの?笑

山本:面白劇ってこと。音楽の「楽」だと思ってたけど。笑

―――作品のお話はから少し離れますが、お二人のお写真を撮影させていただいたとき、改めてお顔の若さを目の当たりにして非常に驚きました。お二人は美容で何か気を付けていることはありますか?

矢田:夏場は日焼け止め塗る!くらい。

―――夏場だけですか・・・?

矢田:はい。夏場だけじゃないんですか?日焼け止めって。笑

山本:このあいだ日焼け止めを買いました!それまでは塗ったことがなかったけど。笑
最近、脂っこいものを食べたときや、寝不足のときなどに、明らかに顔に出るなと感じています。

矢田:5歳くらい老けるよな。

山本:目開いてないもん。笑 だから何かやらないといけないかな、と思います。
俺らが若い時に35.6歳だった人ってすごく大人だと思っていたけど、この年代ってすごく若さも求められない?高校生の役とかずっとやってるし。

矢田:確かに。久しぶりに一緒にテニスに出ていたキャストに会っても、あんまり変わってないんですよね。10年経っても。

山本:求められるものが20代半ばぐらいから同じ環境で生きてるから、あの時のままで頑張っている気がします。

矢田:脳みそが騙されてるんじゃない?笑

山本:でも身体は時には抗えないじゃない。

矢田:座りたいってなるもん。笑

山本:立ちたくないってなるじゃない。そういう中で、求められるものに応えていかなきゃいけない、となった時に、何かやらないといけないんだろうな、とは思います。ただ、面倒くさいし時間もないんだよね。

矢田: 俺は最近ちゃんとバームでメイク落とすようになった。昔は・・・

山本:落とさない?

矢田:次の日も同じメイクするから勿体ないって?笑

山本:残しとこーって。笑

矢田:いやいや普通に適当に落としてました。笑 拭き取りとか。

久しぶりに2.5次元の舞台に戻ってきたときに、メイクさんに、そんな落とし方だとやばいことになるよ、と言われて、ちゃんと落とすようになりました。

―――最後に、公演を楽しみにしている皆様に一言お願いします。

山本:本作はコメディともミュージカルとも違う作品ですし、240年も前に書かれたお話なので、時代背景も今とは違います。貴族と庶民の考え方の違いという、現代ではあまり味わえない常識が存在する世界で、2026年1発目にこのドタバタ劇を観ていただければ、明るくて素敵な2026年になるのではないかと思います。

素敵な2026年になるよう、祈りを込めて届けさせていただきますので、ぜひ笑って楽しんでいただければと思います。

矢田:一慶も言いましたけど、お正月一発目の作品なので、全体的に面白おかしいハッピーな空間で、重いテーマだったな・・・、との感想を抱くような作品にはなりません。

バカやってるな、というようなお話の中で、例えばフィガロだったら、自分が不満に思っている部分に関して、そんなことをしてもいいんだ、と思うような行動をするなど、刺激的な部分もあるので、そこも楽しんでいただけるような作品だと思います。

何も考えずに観ても楽しめますし、荻田さんも緻密に計算して作ってくださっているので、時代背景を理解したうえで観ても楽しめる作品です。

あと、キャストが皆様歌える方ばかりなので、曲だけを聴いても素晴らしいと思います。

年明けにふさわしい舞台になると思うので、是非、肩の力を抜いて観に来ていただけたらな、と思います。

山本:あと、今回は愛の話だよね。

矢田:俺は演じるキャラクターが幸せになるのが結構珍しいんです。今まで出た舞台で、幸せになったことはあまりないと思います。笑

山本:大体不幸?

矢田:うん。俺もバッドエンドがすごい好きなんですよね。だから、ファンの方々には珍しいと思ってもらえるかもしれないですね。

山本:いいね。年明けにぴったり。

皆、愛を求めて、愛を知りたくて、愛を探している物語なので、今の時代にぴったりかな、と思います。時代は繰り返しているから。『楽劇 フィガロ』の時代も、愛が自由に選択できるようになった時代だと思います。一方、今はその自由さ故に愛がわからなくなっている時代なので。

矢田:皆さんにとっての愛を探してみてください。

取材・文:大崎みき/写真:ケイヒカル

【公演概要】
楽劇『フィガロ』 ~「フィガロの結婚」より~

上演台本・演出:荻田浩一 
音楽監督・編曲・歌唱指導:福井小百合
企画・製作:アーティストジャパン

出演:
フィガロ:矢田悠祐
アルマヴィーヴァ伯爵:山本一慶
スザンナ:皆本麻帆
ロジーナ:朝月希和
ケルビーノ:谷山知宏
ドン・バジリオ:柴原直樹
ドン・バルトロ:駒田一
マルチェリーナ:霧矢大夢

日程:2026年1月8日(木)~18日(日)


会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料金:S席9,900円 A席8,800円(税込・全席指定)
お問合せ:アーティストジャパン 03-6820-3500 
公式サイト:https://artistjapan.co.jp/figaro2026/
公式X:@aj_figaro2026