【インタビュー】水田航生×小野塚勇人がWキャストで演じる「共感しかない」主人公とは|音楽劇「アカネイロのプレリュード~赤坂の奏~」インタビュー

インタビュー

音楽劇「アカネイロのプレリュード~赤坂の奏~」が、3月16日(月)から東京・草月ホールで上演される。本作は、ピアノ1台の生演奏とキャスト4人による音楽劇。歴史と伝統が息づく赤坂の街を舞台に、この街で生まれ育った一人の青年の身に起きたあるハプニングと、それにまつわる人々との関わりを明るいタッチで描く。

主人公の鮎川浩太役は、ミュージカル『ウェイトレス』、舞台『受取人不明 ADDRESS UNKNOWN』、ミュージカル『マリー・キュリー』と話題作に立て続けに出演する水田航生、ミュージカル「ヒーロー」ドラマEX『仮面の忍者 赤影』に出演するなど舞台から映像まで幅広く活躍する小野塚勇人が、ダブルキャストで務める。

また、音楽Bar「アカネ」の店員・須藤淳一役に陳内将/鈴木康介、「アカネ」の再建を担う謎の男・新垣渉役に瀧澤翼/鈴木曉、元シャンソン歌手・美咲亜紀役に珠城りょう/久城あすと、全ての役がダブルキャストというユニークなスタイルで上演される。

メディアクトでは、主人公・鮎川浩太をダブルキャストで演じる水田航生、小野塚勇人にインタビュー。赤坂の街にまつわる思い出から、本作の印象、公演に向けての意気込みなどを聞いた。

——まずは、本作への出演が決まった際の思いをお聞かせください。

水田航生(以下、水田):完全新作のオリジナル脚本、しかも音楽劇というスタイルに、なんともいえない魅力を感じました。劇場である草月ホール、そして製作を担うTBSさんの本社がある、赤坂の街を舞台にしている点もおしゃれですよね。それに、今回はキャスト陣も初共演の方々がほとんどなんです。デビューから20年経ちましたが、こんなに「初めまして」の方ばかりの現場は久しぶり。初めての皆さんと一緒に、一つの新作を作り上げられるのは、とても光栄で幸せな経験だなと感じました。

——水田さんのキャリアですと、ほとんどの方が初共演という状況はたしかに貴重ですよね。

水田:そうですね、だいたい1人か2人は「お久しぶりです」という方がいらっしゃいます。でも今作はキャストの皆さんや、演出の元吉庸泰さんをはじめとしたスタッフの方々も、初対面の方ばかりだったんですよ。音楽を担当されている桑原まこさんとは何度かご一緒したことがあるのですが。

小野塚勇人(以下、小野塚):じつは僕もそうです。キャスト陣では陳内将さん、スタッフ陣では桑原さん、脚本の粟島瑞丸さんとご一緒したことがあるくらいで、他の方々はほぼ初対面の座組なんですよ。

——本日インタビューを受けていただいているお二方も、初対面でいらっしゃったのですか?

小野塚:そうなんですよ。

水田:年を重ねるにつれ人見知りしなくなってきたので、心細さみたいなものはないんですが、作品をつくる上での新鮮さは大きいですね。「どんなお芝居をされるんだろう?」というワクワク感が、稽古前の段階で大きな楽しみになりました。それぞれのキャストが考え抜いた役を持ち寄って、稽古場で化学反応が起きる。それは、役者としてすごくときめく瞬間ですから。

小野塚:僕は、出演が決まったときに演出の元吉さんのプロフィールを拝見して、「この経歴を持つ方が、今回の音楽劇をどんなふうに演出されるんだろう?」と想像を膨らませてしまいました。日常を描くと見せかけて、よもや刀を持って戦うのか、超常的な力でバトルを繰り広げるのか、と。

水田:(笑)それはそれで面白そうですね。

小野塚:2.5次元作品、それもバトルものを多々演出されてきた方が、今作のような家族物語をどんなふうに色付けするんだろう?と思いましたし、初めてご一緒する元吉さんがどんな演出をつけてくださるのか、それ自体もすごく楽しみだったんですよ。

水田:僕は観客としてですが、元吉さんが演出されたミュージカル『白爪草』を観劇したことがあって、繊細な人間模様やお芝居を描かれるのがお上手な方だなと感じたんです。細やかなセットの使い方や、映像を使った魅せ方も面白くて。

小野塚:あっ、その作品僕も映像で観て、めっちゃ面白そうだと思いました!

水田:発想がユニークな演出家さんですよね。ちょっと変態チックといいますか(笑)、分かりやすく「こうです!」と示すのではなく、「気づく人は気づいてね」という隠れた遊び方がお上手な方ですよね。

小野塚:今回はBARが舞台だけど、どんなふうになるのかな。そこも楽しみですね。

水田:本作は脚本のト書きが少なめで、あまり具体的に描かれていないシーンが多いんです。「◯◯、はける」とか、「(時間経過)」とだけ書かれて次のシーンが始まるとか。それをどう捉えてどう表現するかというのは、演劇人として腕の見せどころじゃないですか。「舞台中央にピアノ」と書かれたト書きをどう解釈するか、ピアノをどう使うのか、とか。自由度が高い脚本を、初めての演出家さんやキャストの皆さんとつくっていくのは本当にワクワクします。

小野塚:本当にそう。初めての方とお芝居をつくるのって、とにかくワクワクしますよね。思いもよらない良いものができる可能性もあるし、できたときには「わぁ!!」って嬉しくなりますし。今作は、ピアノの生演奏を用いた音楽劇というところも新鮮で、楽しみです。赤坂の街を舞台にした、ある意味町おこしの要素を含む作品に参加できるのも光栄です。このプロジェクトを大成功させることで、形を変えていろいろな企画が盛り上がっていくかもしれない。だから絶対面白い作品にしていきたいし、僕らのお芝居をまだ観たことがない赤坂マダム、赤坂ジェントルマンたちにも、ぜひこの機会に観てほしいです。

——今作の脚本を読んでの第一印象はいかがでしたか?

小野塚:邦画の雰囲気がただようヒューマンドラマ、という第一印象でした。心温まる家族の話、地元の話、という印象ですね。壮大な物語ではなく、BARという小さな空間を描くワンシチュエーションの作品。それを音楽劇という形で、ピアノの生演奏に乗せてどう描くのか、どんな形で観客の皆さんの心に浸透していくのだろうかと、いろいろ想像しました。会話劇に近い部分もあるので、お客さまを飽きさせないためにはどうしたら良いかな、というのも考えましたね。「赤坂あるある」のような笑えるネタも、どちらかというとちょっとシュールな方向性なので、どう演じたら良いかなと。

でも悩むというよりは、やはり楽しみな気持ちが大きかったです。僕自身、舞台をやるのが1年ぶりくらいなんですよ。初めての共演者同士ということもあり、お互い新鮮な気持ちで楽しくやれたらいいなと思いました。

水田:僕は「登場人物、全員すっごい"おせっかい"だなぁ」と思いました。でもこのとき感じた「おせっかい」って、決してネガティブな意味じゃないんですよ。読み終えて、ニヤニヤしながら「ほんとこいつら、なんておせっかいなことしてくれるんだよ」という温かい気持ちでいっぱいになったんです。

「おせっかい」って、じつは「家族」を語る上では切っても切れない要素ですよね。現実世界でも、家族ってお互いにおせっかいを抱えながら生きていて、おせっかいの気持ちがあるからこそ、思いやりや心温まるような愛情も生まれるんだと思います。そういう関わり合い方は、ときに「うざい」と言われてしまうこともあるけど、この赤坂の地にはなんとなくしっくり来る気がするんですよ。

——「赤坂の地にしっくり来る」?

水田:僕は大阪出身なのですが、赤坂に対して「東京の中にある京都」みたいなイメージを持っているんです。老舗の料亭がたくさんあって、本音を見せすぎず、「皆までは言わないよ」といういい感じの雰囲気があるところが、ちょっと京都に似ているなと。僕が知ってる京都って、外から見ると「冷たそう」とか「怖い」と感じることもあるけど、じつはとても愛情深い人たちで、どんな街よりも「おせっかい」が活きている気がします。大好きだからこそちょっとツンとした態度をとってしまう、不器用な愛情みたいなものを感じるんです。この脚本を読んだとき、赤坂の人にもそういう天邪鬼な可愛らしさがあるのかな、と思いました。

——なるほど。「赤坂が京都っぽい」という視点は、水田さんならではですね。

水田:それから、先ほど小野塚くんも言っていたとおり、今作はワンシチューションの舞台です。壮大ではなく、ト書きもシンプルで、頼るべきものが少ないからこそ、役者のマンパワーが非常に試される作品だなと思いました。4人のキャストがステージという檻の中に入れられて、「はい、どうぞ!」と言われるような、役者としては逃げられないスリルがあります。身が引き締まる思いがしましたね。

——お二人は、「赤坂」という街に対して、もともとどういったイメージをお持ちでしたか?

小野塚:やっぱり、「高級な街」という印象が一番強いかな。自分の知っている東京とは別世界のようなイメージです。東京に住んで13〜14年になりますが、プライベートで赤坂に来た記憶がほぼないんです。来るときはだいたい仕事やオーディションなので、赤坂で電車を降りるときにはピッと襟を正すような気持ちになります。

水田:僕も同じです。じつは、自分が大阪を出て、お仕事で初めて降り立った「東京」の街が赤坂なんです。

小野塚:赤坂に住んだことがあるんですか!?

水田:いやいや、まさか! この業界に入って初めてのオーディションを受けたのが赤坂だったの。

小野塚:へえー!

水田:そのとき、生まれて初めて一人で乗った新幹線が、なんと遅延してしまって……。オーディションにも遅刻してしまったんですけど、プロデューサーさんやスタッフさんたちは僕のことを待っていてくださったんです。そのときにいただいたBS-TBS(旧BS-i)さんの深夜ドラマの役が、僕の役者としての初仕事でした。赤坂に来るたびにそのときのことを思い出しますよ。記憶が、映像みたいにリアルに蘇ります。

当時と比べると、赤坂の町並みも大きく変わりましたよね。飲食店の種類も増えて、和食の料亭だけではなく、いろいろな国の料理が食べられるようになりましたし。昨年の夏に赤坂RED/THEATERで二人芝居の舞台に出演させていただいたんですが、そのときも共演者やスタッフの皆さんといろいろなお店に食べに行きました。「ドイツ料理を食べに行こう!」ってみんなでお店を探して、予約して。行ってみたら、ドイツ出身の方が経営している、すごく本格的なドイツ料理店だったんです。そのときの作品に出てきた、珍しい名前のメニューもちゃんとあって、古風なイメージのある赤坂で本場のドイツ料理が食べられるのが新鮮でした。

今の赤坂って、昔ながらの老舗の空気感も残しつつ、多国籍な文化が融合されたイメージがあります。赤坂見附の方などはとくに雑多な空気感があるし、でも路地を一本入ったら驚くくらい閑静な住宅街が広がっていたりもする。不思議な街です。

小野塚:その感覚、わかるかも。今作に登場する「赤坂のBAR」という空間にも、ちょっと特別な印象がありますね。

水田:同じ東京でも、銀座、渋谷、青山、どの場所とも違う「赤坂」のBARならではの良さがあるんですよね。僕、脚本を読んだ後に赤坂のBARの歴史や雰囲気について調べてみたんですよ。そしたら、ある種の「間」を大切にする文化、という結果が出てきたんです。

あまり大声で話したりせず、店員も客もお互いに人の詮索をしない。「秘密を抱えたまま、1杯のお酒を黙って味わって、飲んだらクールに店を去るのが一番のプロ」みたいなことが書いてあって、「かっこいいー!」って(笑)。赤坂という街の精神そのものが「大人」なんだなと感じました。

——素敵ですね。今回お二人が演じる主人公の鮎川浩太は、そんな赤坂の街で育ってきた人物です。彼の印象を一言で表すとしたら、どのような言葉になりますか?

水田:(少し考えて)一言で言えば、「くすぶってるなぁ」と。現実にくすぶっている男、という第一印象でした。

小野塚:僕は「一度でも本気で夢を追ったことがある人間なら、全員が通る"ある時期の自分"」かな、と。

——共感する部分はありますか?

小野塚:むしろ共感しかないです。

水田:僕もそう、共感することばかりでした。浩太は今、ちょうど夢と現実のはざまの場所に立っているタイミングです。抱いていた理想と、いざ現実が近づいてきたときに感じるギャップで揺れている。「あれ、思ったのとなんか違うな」と気づいたときって、誰だって不安定になるし、ぐらぐら揺らぎますよね。とくに僕らの仕事では、思い描いたとおりの人生を歩める人は非常に稀有で、たいていの場合はそのギャップに心を折られることや、つらくてどうしようもなくなる経験をしているもの。「願った未来はこうじゃないのに」「こんなはずじゃないのに」という思いは、たぶん役者はほぼ全員経験しているんじゃないかと思うんです。

小野塚:(何度もうなずき)本当にそう。

水田:浩太のそういう感情には心から共感しましたし、観客の方々にも響く部分があると思います。ただ、浩太の場合かわいそうなのは、自分のものではない借金まで背負わされているところかな。本当に運がないというか……でも、そういう運のなさすらも、浩太自身が引き寄せているのかもしれない。「しょせん今のオレは偽物なんだ」みたいな投げやりな思いや態度が不運を引き寄せてしまって、その不運によってまた投げやりになって、自分じゃない何かのせいにしたくなる、というか。そんなループにも共感できてしまったので、初めて脚本を読んだときには役づくりよりも「わかるなぁ」という気持ちで読み進めていました。

小野塚:人って、未来に向けて目標や夢を考えるとき、そのときの自分が考える「最高」の姿を設定するじゃないですか。「この年齢までにこうなっていたい」とか「こういう人生を歩むんだろうな」とか。でも、現実ではなかなかそのとおりにはいかないですよね。かつて思い描いた理想と、実際に直面している現実との誤差を実感して、もどかしさや悔しさ、妬み、嫉み、いろいろな感情が渦巻いてしまう。これぞまさしく浩太が今食らっている現実なんです。現実を否定して「オレは違う、夢を現実にするんだ」って思い続けるのにもパワーが必要で、「まあ、しょうがないな。オレはこんなもんだよ」と認めてしまえば楽になる。で、そのはざまに要るのが今の浩太だと思うんですよ。「違う」と言って夢を追うエネルギーもなく、「オレはこんなもの」と認める踏ん切りもつかない、一番しんどい状態なんですよね。

水田:たしかに……。

小野塚:僕、今年で33歳になるんですよ。浩太と同年代なんです。自分もやっぱり、デビュー前後の10代の頃に思い描いていた理想とは違う人生を歩んでいて、そのギャップについては毎日のように考える。でも、自分の場合は「それでも目標を追いたい」という思いが強くて、エネルギー消費は半端ないけど、どんなに疲れてもあきらめたくないって思うんです。浩太は反対に、今の自分を肯定して苦しさを手放したいのかもしれない。でも、夢を完全に諦めることができない。そんな「はざま」で足踏みしている浩太が答えを出すまでが、彼を演じる上での軸になるんだと思います。

——彼の成長が、大きな見どころの一つなのですね。

小野塚:でも浩太が偉いなと思うのは、他人の借金っていう理不尽な重荷を背負って苦労しながらも、なんだかんだ、ちゃんと状況と向き合っているところです。BARに集まってくる人間はみんなおせっかいだし(笑)。こんなにおせっかいされたら、自分だったら「もう関わらないでくれー!」って全部突き放したくなってしまうと思う。でも浩太は「ブチギレて全部放り出す」みたいなことはしないから、優しい奴なんだろうなと思って。

水田:優しいし、きっと頭がいい人なんだよね。頭で考えちゃうからこそ、勢いで「もういいや、投げ出しちゃえ!」っていうのもできなくて。

小野塚:そう! その、優しさと頭の良さゆえに全部中途半端になっちゃうところも、浩太らしくていいなと思います。

——そんな浩太という人物を、今回お二人はダブルキャストで演じられます。一人一役とは異なる感覚や、とくに意識していることはありますか?

小野塚:意識の上では何も変わらないです。ダブルキャストはあくまでも作品全体の打ち出し方であって、自分は役と一対一で向き合うだけで、お芝居としてやることは何も変わらないと思うなぁ……。水田さん、どうですか?

水田:そうですね、基本的には変わらないです。ただ、「1つの役を2つの頭で考える」ことができるのは、ダブルキャストならではの良さですかね。言葉を選ばずに言えば、僕は「パクるべきところは全部パクる」と決めているんです。

小野塚:あ、いいですねその宣言。

水田:「パクる」って言うと言葉が悪いかもしれないけど、たとえば同じシーンの稽古を小野塚くんがやるのを見ていて「ああ、そうだな、浩太なら絶対にこうするな」と感じたことは、あえて避けてはいけないと思うんです。どうしても「違うことをやろう」と考えてしまうのは役者の性(さが)だし、可能性を広く探る上では良いことだと思うんですけど、別のお芝居を選ぶ理由が「先にやられたから」というだけなら、それは違うなと思います。

たとえ同じ芝居をしたとしても、個性が違えば違うものになるはず。2人で考えたことをそれぞれが体現すれば、役の幅も広がるはずです。それを意図的に「違うことをしよう」とだけ考えるのは、もったいないなと思います。だから、小野塚くんにも「今のめっちゃ良かったから、僕もそれやるわ」って言うと思う。

小野塚:大歓迎です、僕も同じ考えなので。一つの作品をみんなで良くしていくのが舞台だと思うし、いいものは共有していったほうがいい。もちろん、「負けたくねえ」っていう思いで、競い合ってやる良さもあると思うんですよ。それは人それぞれ、ケースバイケースだと思うけど。でも、この作品はお客さまに見せるためにつくっているのであって、意地を張って「どっちが引き出し多いか合戦」になってしまうと、本筋からズレてしまうから。

そもそも真似されるってことは、自分がやった芝居を「いい」と思ってくれたってことですからね。僕が真似するとしたらそうだし。

水田:自分1人なら映像でしか確認できない役の稽古を、目の前で直接見ることができるのも、ダブルキャストの良さですよね。まあ、もし引っ張られて自分の芝居の軸がブレちゃいそうなときには、「見ない」という選択もできますから。

小野塚:その辺りは繊細に分けていかないといけないですね。でもやっぱり、相手からインスピレーションを得られるのは強みだと思います。2人の芝居が出揃ったときに、お互い「そういう手もあるのか、じゃあこういうやり方もあるな」と、第3、第4の答えが導き出せることもあるし、基本的にマイナスになることはないですね。

——素敵なお話をありがとうございます。最後に、これまで多くのミュージカルに出演されているお二人に、役と歌の関係性について質問です。今作は音楽劇ですが、「役として歌う」とき、とくに意識されていることはありますか?

小野塚:(朗々と歌い上げる仕草で)「今オレ、歌ってるなぁ〜!」という感覚にならないことですかね。役として歌うときには、「歌」があるのではなく「セリフがそのまま音に乗る」という解釈で演じています。セリフというか、役の思いが大きくなったり昂ったりしていった結果、思いそのものが音楽のかたちになる、というか。

あくまでも、役の魂の声が音のかたちをとっているだけだから、「オレの歌を聞いてくれ」という感覚になるのは違うと思うんです。「ビブラートがどうこう」とか考えるのも、歌稽古の中では大事だけど、本番でそれを考え出したらそこにいるのが役なのか自分なのか分からなくなっちゃう。だから役として歌うときには、自然な気持ちで歌に入っていけるよう、お芝居の中でコンディショニングしています。

水田:ミュージカルで歌うときには「そこに歌なんてないはず」なのに「実際は歌がある」という状態なんですよね。僕も小野塚くんと同じで、「感情の昂りによって歌が立ち上がる」という感覚はすごく意識しています。その昂りがポジティブにしろネガティブにしろ、役が言葉にして伝えたいことのピークが「歌」というかたちで表現されるわけですから、セリフの段階からそのピークを目指してお芝居を構築していく必要があるんです。そこまでのセリフと感情の積み重ねがあって、「だから歌うんだな」という説得力が生まれるので、その切り替わりの段差をできるだけシームレスに見せることは非常に気にかけながら演じます。

ナンバー中もやっぱり、音楽的なテクニックを守ることは大前提としつつも、「この役は、この歌詞をどんな気持ちで発しているのか」という部分は、セリフと同列に考えないといけません。ただ、僕の場合は感情が先走ってしまうことが多いので、そのせいで音楽が破綻しないようにするのがなかなか難しいです(笑)。

ただ、今回の音楽劇では「歌」の役割が少し異なる面があります。これは浩太という人物の芯にもかかわるポイントなので、観客の皆さまには「歌がどんなかたちで登場するか」も含めて、楽しみに観に来てほしいです。

取材・文:豊島オリカ、写真:ケイヒカル


■公演概要

【公演タイトル】
音楽劇「アカネイロのプレリュード~赤坂の奏~」

【公演期間】
2026年3月16日(月)~3月22日(日)

【会場】
草月ホール
(東京都港区赤坂7-2-21)

【出演】
水田航生/小野塚勇人(Wキャスト)
陳内将/鈴木康介(Wキャスト)
瀧澤翼/鈴木曉(Wキャスト)
珠城りょう/久城あす(Wキャスト)

【スタッフ】
演出・歌詞:元吉庸泰
脚本:粟島瑞丸
音楽:桑原まこ

【チケット】
S席(1階・2階):12,000円
A席(3階見切れ席):9,000円
※全席指定・税込

【公式サイト】
https://www.akaneiro-stage.com/