【インタビュー】スリルとユーモアが織りなす濃密な舞台「DUMB SHOW/ダム・ショー」小西成弥インタビュー

舞台『DUMB SHOW/ダム・ショー』が、4月11日(土)から東京・紀伊國屋ホールで上演される。
本作は、イギリスの劇作家ジョー・ペンホールが2004年に発表した、濃密でスリリングな会話劇。ジャーナリスト経験のあるペンホールが、現実にあったフェイクニュースにまつわる事件に着想を得て書き上げた脚本で、「現代社会の諸問題を提起する作品」として高く評価され、ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀新作賞にもノミネートされている。
作中では、人気テレビタレントのバリー(演:柳家花緑)、プライベートバンカーを名乗るグレッグ(演:小西成弥)とリズ(演:伊波杏樹)という3人の登場人物が、互いに出し抜き合う。それぞれの思惑に沿って「現実」を書き換えていく展開は、タブロイド紙の倫理観や報道の誠実さに疑問を投げかける。
今回演出を手掛けるのは、劇団ONEOR8の劇作・演出家、田村孝裕。自身にとって17年ぶりとなる海外戯曲の演出に、並々ならぬ意欲で挑む。

メディアクトでは、謎を秘めた人物グレッグを演じる小西成弥にインタビュー。報道倫理について斬り込むシナリオへの印象や、稽古の様子、自身初の3人芝居となる今作への意気込みなどを聞いた。
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——本作『DUMB SHOW/ダム・ショー』(以下:『ダム・ショー』)にご出演が決まった際のご感想はいかがでしたか?
小西成弥:昨年たまたま、『ダム・ショー』と同じくジョー・ペンホールさんが書いた『炎の風景』という舞台作品を観劇しました。その作品が非常に印象深く、まさか同じ劇作家さんの作品に出演させていただけるとは思っていなかったので、ご連絡いただいたときはとても嬉しかったです。きっと緻密で濃密な会話劇になるに違いないと思い、僕自身も楽しみにしていました。
実際にいただいた台本はやはり印象の通りでしたが、読み込むうちに考えがさらに深まっていくものでした。『ダム・ショー』はメディアの在り方や倫理観について、深く、鋭く斬り込んでいる作品です。そのテーマは、普段こうして表舞台に立たせていただいている僕自身にとっても無関係ではありません。とくに、人気者として持ち上げられている人物の立ち位置が、「騙し騙され」を経てひっくり返っていくところは、実際に見たことがあるわけではないけれど、すごく生々しく感じました。
——作中では、人気タレントである「バリー」が、スキャンダルを狙う新聞記者によって罠を仕掛けられる場面がありますね。
小西:そうなんです。作中に登場するのは新聞記者ですが、そこから時代が変わっても、雑誌、インターネット、SNSとメディアは変遷しつつ、現代でも同じ景色が繰り広げられているように思います。でも、「スキャンダルを通して知ることができるのは、その人物の一面でしかない」ということを、この作品を通して改めて実感しています。
というのも、僕自身が作中の「バリー」に対して、台本を読んだときと稽古場とで全く別の印象を受けたんですね。稽古場で柳家花緑さんが演じる生身のバリーは、どこかお茶目で憎めない印象が強くて、そんな彼が罠にかけられることに対して強く同情する気持ちが湧きました。これは一人で台本を読んでいたときには湧かなかった感情だったし、「スキャンダルを楽しむ」という感覚は、その人のことを深く知らないからこそ持てるのかもしれないな、と改めて思ったんです。
よく知っていくうちに思わず同情してしまう、という一面のほうが、バリーの持つ本質に近い部分なのではないか。人間はみんな色々な面を持っているのに、たった一面だけを見て断罪することができるのだろうか。そもそも記事というのは一方向から見たものであって、逆サイドからの意見を知ったり事実を探っていったりすると、見え方が変わることもあるのではないか……ということを、稽古を通して日々考えています。
——なるほど。いわゆる「社会派」的な魅力が強いストーリーなのでしょうか?
小西:うーん、そうとも言えないです。この作品の魅力も、人間と同じで多面的なんじゃないかと思います。テーマは社会問題を扱っていますし、緊張感があってスリリングな会話劇なんですが、一方でコミカルな面も強くて、要所要所でクスッと笑えるシーンもあります。どちらか一辺倒じゃなく、スリルとユーモア、そして緊張と緩和の連続を楽しめるはず。「社会派ストーリーを楽しみたい」という方にも、「軽妙で笑える会話劇を楽しみたい」という方にもおすすめです。

——小西さんが演じるグレッグは、どのような人物ですか?
小西:グレッグは、人当たりの良い仮面の下にとある顔を隠しているんですが、その「仮面の下の顔」も、また多面的なんです。冷徹でありつつ、人間的でもあるという、複雑な印象を受けます。演出の田村孝裕さんからは、「人格がコロコロと変わるイメージ」というオーダーも出ていて、演じる側にとっても一筋縄ではいかない役だなと感じています。
——ご自身とグレッグの共通点や、共感できる部分はありますか?
小西:一番共感できるのは、仕事に対する姿勢でしょうか。グレッグは、「どんな手を使っても自分の仕事をまっとうする」という強い意志を持っています。僕も役者という仕事には日々真剣に取り組んでいるので、その点は共感できるかなと。それにしたって「すごいことをするなあ」と感じるシーンも多いですけどね(笑)。
グレッグのセリフの中には、普段自分が絶対言わないようなこと、たとえば際どい下ネタもあったりして、どう演じたら良いのか日々試行錯誤、頭フルスロットルで稽古しています。
——となると、小西さんのファンにとっても、新たな一面を見る機会となるかもしれませんね。
小西:そうですね、それは僕も感じているところです。観た方たちの感想が色々な意味で気になる作品なので、観劇後はぜひみなさんが感じたことを教えてほしいです!
——続いて、稽古場のご様子についてお訊きしていきます。今回は、ご自身初の3人芝居。少人数での作品ですが、稽古において普段と異なることはありますか?
小西:違いは、やはりセリフ量ですね。もともと情報量が多い作品で、かつ少人数なので、一人ひとりのセリフ量が非常に多いんです。各々の役割をしっかり果たすため、全員必死で奮闘しています。ただ、稽古場の雰囲気はすごく和気あいあいとしていて、居心地が良いです! 共演者のお二人が気さくなのでお話ししやすく、演出の田村さんもとても穏やかなお人柄です。少人数ならではの濃密なものづくりを意識しながら、楽しく稽古を進められています。
演出の田村さんとご一緒するのは初めてなんですが、非常にアイデア豊富な方です。台本に書かれていない部分で「こんな動きを入れてみよう」「こうしたらもっと面白くなるかも」といったアイデアをどんどん出してくださるので、コミカルな場面がさらに面白くなっています。自分では到底捻り出せないようなアイデアも多くて、日々刺激的な稽古場です。

——それは素敵ですね。バリー役の柳家花緑さん、リズ役の伊波杏樹さんの印象はいかがでしょうか?
小西:お二人とも初めて共演させていただく方々ですが、とてもフレンドリーに接していただいています。
バリー役の柳家花緑さんは、本業が落語家さんというだけあって、お芝居の中での「間のとり方」が最高なんです。ナチュラルでありながら面白さもあるお芝居に、日々刺激を受けています。バリーの物凄いセリフ量も早い段階からしっかり覚えていらしたし、頼りがいのある座長ですね。
落語家さんは一人で色々な役を、次々と切り替えながら演じられているかと思いますが、そこは今回の僕の役にも通ずるものがあるので、花緑さんのお芝居から色々なことを学ばせていただいているところです。僕、「この公演が終わったら花緑さんの寄席を生で見に行く」と決めていて、今からワクワクしているんです。
大先輩にもかかわらずすごく優しくて、休憩中や稽古終わりにも気さくにお話してくださいます。座組の雰囲気の良さは、演出の田村さんとともに、座長の花緑さんの影響が大きいと感じています。
リズ役の伊波杏樹さんも、とても気さくでお話しやすい方です。伊波さんとは年が近く、演じる役柄も協力し合う関係性なので、他愛ないことから演技のことまで話す機会が多いです。お互い遠慮せず、率直にお話できる役者さんです。
伊波さんはお芝居の勘所を掴むセンスが抜群で、田村さんからのディレクションに対して、常にスピーディーなレスポンスを返していらっしゃるんですよ。しかも、熱量はありつつ、冷静で丁寧なんですよね。いつも「すごいな」と感じています。今は稽古中盤で、まだお互いにセリフ量に圧倒されているところもありますが、これからどんどんブラッシュアップして、リズとグレッグならではの良いテンポを作っていけたらと思います。

——ありがとうございます。では最後に、公演を楽しみにしている方々に向けて、意気込みとメッセージをお願いします。
小西:観ている方にとって、もしかしたら価値観がすべてひっくり返る瞬間があるかもしれない、そんな作品です。僕にとっては初めての挑戦となる3人芝居でもあり、とても気合が入っています。とはいえ、肩の力を抜いてお気軽に楽しんでいただける作品でもあります。
演出の田村さんを筆頭に、座長の花緑さん、共演の伊波さんと、少人数ならではの濃密で緻密な会話劇を作り込んでまいりますので、ぜひ楽しみに観に来ていただけたら嬉しいです。劇場でお待ちしています!
取材・文:豊島オリカ、撮影:ケイヒカル
■公演概要
タイトル:舞台「DUMB SHOW/ダム・ショー」
日程:2026年4月11日(土)~4月19日(日)
会場:紀伊國屋ホール
上演時間:約1時間45分
作:ジョー・ペンホール
翻訳:小田島創志 一川華
演出:田村孝裕
出演:柳家花緑/小西成弥/伊波杏樹
美術:久保田悠人
照明:鷲崎淳一郎
音響:大久保友紀
衣裳:藤崎コウイチ
ヘアメイク:平塚淳子
演出助手:たはらひろや
舞台監督:金安凌平
企画・制作:正川 寛
製作:インプレッション
公式サイト:https://dumbshow2026.jp/



