【インタビュー】『Private Fears in Public Places』が日本初上演の意気込みをダブルキャストで演じる稲垣成弥と田中尚輝に問う

インタビュー

2026年4月24日(金)から5月24日(日)まで、東京・シアター代官山にて、アラン・エイクボーン作『Private Fears in Public Places』が日本初上演される。

2004年にイギリスで初演された本作は、“舞台上の映画”を意識して作られた作品。高速でクロスカットするシーン展開と、登場人物たちの人間関係から浮かび上がるそれぞれの孤独が見どころだ。2006年にはアラン・レネ監督によって映画化され、『Cœurs』として公開。第63回ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞(シルバーライオン賞)を受賞している。

メディアクトでは、不動産業者のスチュアート役をダブルキャストで演じる稲垣成弥と田中尚輝にインタビューを実施。作品の魅力やお互いの印象、そして公演への意気込みを語ってもらった。

――本作への出演が決まったときの率直なお気持ちをお聞かせください。

稲垣:出演陣のネームバリューの大きさに、まず純粋に驚きましたね。ミュージカルを得意とされているすごい方々が集まっているのに、今回はストレートプレイなんだという驚きもありました。でも同時に、とても楽しみでした。
しかも今回は2チーム体制。すごい方々と一緒に、今の自分がどこまでできるのか。すごくワクワクしましたね。

田中:僕も同じく、これだけミュージカル界のスターが集まっているのにストレートのお芝居なんだ、という驚きがありました。さらに、成弥くんと同じ役だと知ったときはびっくりしましたね。
僕と成弥くんって、同じ役を取り合うことってあまりないと思うんです。身長や体格も違いますし。だからこそ、同じ役を演じられるのが楽しみです。
僕は成弥くんのスチュアートにはなれないし、きっと成弥くんのスチュアートも僕とは違う。チームによってまったく違うスチュアートが生まれると思うので、どんな化学反応が起きるのか楽しみですね。

――2チーム制ということで、一緒の回に出演されることはないものの、同じ舞台に出演されるのは久しぶりになるかと思います。改めてお互いの印象や、俳優として感じている魅力を教えてください。

稲垣:魅力は……もう全部ですよ。

田中:ずるい!(笑)

稲垣:(笑)。今回改めて感じたのは、引き出しの多さですね。
俺のスチュアートと尚輝のスチュアートは、きっと全然違う人物になると思います。体格も違いますし、台詞の言い方や間の取り方も違う。稽古でそれを目の当たりにして、「そういうアプローチがあるんだ」「その台詞の言い方、面白いな」と新しい発見がありました。
いち役者として、俺にはない引き出しをたくさん持っている。自分が持っていない魅力を持っているところが素敵だなと思います。

田中:成弥くんは、とにかく優しいんです。人柄として優しいのはもちろんなんですが、その優しさが作品への熱を通して伝わってくるんですよ。
僕が少し遅れて稽古に入ったので、成弥くんが代わりに入ってくれていたんですが、バトンタッチのときってやっぱり申し訳なくなるじゃないですか。でも成弥くんは「2回もやらせてくれてありがとう」って言ってくれたんです。なかなか出てこない言葉ですよね。
さらに「俺はこういうやり方でやったけど、尚輝のやり方でやってね」とも言ってくれて。作品にも人にも愛を持って向き合っている方だなと思いました。
バチバチにやり合うのも楽しいですが、同じ目標に向かって一緒に頑張れるのもすごく楽しいんだなと感じました。こんなに素敵な人と同じ役を演じられることが嬉しいです。

――作品の魅力について、おふたりはどのように感じていますか?

稲垣:日常感、ですかね。きっと誰もが、誰かに感情移入してしまう作品だと思います。明日にでも起こりそうな出来事が、この舞台の上で起きるんです。だからこそ共感しやすい。もちろんそれぞれの人物の物語や、心が動く瞬間はあるんですが、個々の出来事って第三者から見るとそこまで大きな事件ではないんですよね。
でも、そういう出来事の積み重ねで日常は動いていく。
誰かが亡くなったり、魔法が使えたりするような大きな出来事はない。でも僕たちが生きている現実が、そのまま舞台の上で起きているんです。そんな日常を垣間見られる作品だからこそ、共感してもらえるんじゃないかなと思います。今回は実力のあるキャストが揃っているので、その日常がより魅力的に見える作品になっていると思います。

田中:役者って、結構タイプが分かれると思うんです。僕は自分をあまり出したくないタイプで、SNSでも素の自分を隠したいと思うことが多いんです。でもこの作品では、自分をすべて曝け出さないといけないと感じています。日常の物語なので、役と自分が離れているようで実はすごく近い。そういうつながりが、役者の数だけ見られるところがこの作品の魅力だと思います。

――おふたりが演じるスチュアートという人物について、役作りで意識していることを教えてください。

稲垣:正直、まだ分からない部分も多いんです。バックボーンとして必要なことは頭に入れていますが、「役作りをしなきゃ」と構えてはいません。
スチュアートって、本当に普通の人間なんですよね。だから役を作るというより、バックボーンを持った状態で日常を生きていくことで、自然とスチュアートが立ち上がってくるんじゃないかと思っています。
“作る”というより、“そこにいる”スチュアートを、みんなと一緒に見つけていきたいですね。

田中:スチュアートはある意味、とても普通の人間です。普通に仕事をして、家には妹がいて、気になる同僚がいて……等身大の青年なんです。
だからこそ、周りとの関わりによって日々の在り方が変わっていってもいいんじゃないかなと思っています。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

稲垣:本当に素敵な人しかいないですね。稽古が始まってから、役者としてはもちろん、人としての魅力もすごく感じています。
作品への向き合い方も含めて、稽古場の空気感に人間性が出ていて、本当に素敵な現場だと思います。

田中:2チームで空気感が全然違うんですよ。塩田康平くんに「波紋」と「荒波」くらい違うって言われました(笑)。今の時点でもそれだけ違うので、この先どう変化していくのか楽しみですね。

稲垣:(取材段階では)まだ立ち稽古4日目なんですが、もう皆さん台詞が入っているんです。
僕は最初から「何をしても大丈夫なんだ」と思えました。誰かが何とかしてくれるだろうと思えるし、実際に何とかしてくださる方々が揃っている。
僕は今35歳なんですが、下から数えた方が早い現場は久しぶりで。大先輩方に支えてもらいながら、自由にやらせてもらっています。試したことを自然に拾ってくださる安心感があって、本当にありがたいですね。

田中:僕も年齢的には下なんですが、皆さんがとても丁寧に受けのお芝居をしてくださるので、何があっても大丈夫という安心感があります。
先輩方が座組の空気を明るくしてくださっていて、全員が挑戦しやすい雰囲気を作ってくれているんです。「ミスなんて誰でもするでしょう!」という空気があるので、すごくトライしやすい。人としての土台の強さを感じる現場ですね。

――最後に、作品への意気込みと、観劇を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

稲垣:精度や練度はこれからさらに高くなっていくと思います。でも今の段階でも「この作品は確実に面白い」というヴィジョンが見えています。
それはキャストと作品が、とても純度の高い空気感の中で作られているからだと思います。
今回は2つのチームで上演されます。同じ作品でも、まったく違う化学反応が生まれるはずです。こんな作品、観ないのはもったいなくないですか?(笑)ぜひ劇場で体験していただきたいです。

田中:稽古中に「境界線をなくす」という言葉がよく出ているんです。演劇ってどうしてもステージと客席の境界があると思いますが、今作では「こんなところまで見ていいの?」と思えるような体験ができると思います。ストレートプレイですが、その場にいるような臨場感を味わえる作品になるはずです。
今の時点でもすごく面白いので、稽古が進んだらどうなるんだろうと僕自身も楽しみです。ぜひ両チームを観て、その違いや、その日だけの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル

【公演概要】

タイトル:
『Private Fears in Public Places』

作:
アラン・エイクボーン

翻訳:
小田島創志

演出:
元吉庸泰

公演期間:
2026年4月24日(金)~5月24日(日)

会場:
シアター代官山

チケット料金:
全席指定:10,000円(税込)

出演:
駒田一/鈴木壮麻
彩輝なお/樋口麻美
原田優一/塩田康平
増田有華/音くり寿
稲垣成弥/田中尚輝
冨川智加/山本咲希

一般発売:
2026年3月8日(日)

企画・製作・主催:
アーティストエージェントリンクス

公式サイト:
https://private-fears-in-public-places.studio.site/