【インタビュー】北川尚弥×大森夏向、『まほステ』卒業へ――アーサーと賢者として歩んだ軌跡とラストステージ

2025年9月、舞台『魔法使いの約束』きみに花を、空に魔法を 前編が上演された。前編は、賢者と魔法使いたちが、強敵オヴィシウス、そして彼を「お父様」と呼ぶ魔女たちと激闘を繰り広げる中、幕を閉じた。そして2026年5月、ついに後編が上演される。
メディアクトでは、本作をもって『まほステ』シリーズを卒業する、アーサー役・北川尚弥と賢者役・大森夏向にインタビューを実施。これまでの『まほステ』の思い出や、本作に懸ける思いを聞いた。
――北川さんは第1章(2021年5月上演)から、大森さんは祝祭Part1(2023年2月上演)から『まほステ』シリーズにご出演されています。少し前になりますが、初出演時のお気持ちはいかがでしたか?
北川尚弥(アーサー役):純粋に嬉しかったです。とても人気があるゲームだと伺っていたので、そのような作品に携われることにドキドキしながらも、ワクワクしていました。
原作ファンの方に受け入れていただけるかという不安もありましたが、こうして長く作品が続いているのは、ファンの皆様が愛して応援してくださっている証だと思います。そんな素晴らしい作品に出演できて、今もとても幸せです。
大森夏向(賢者役):めちゃくちゃ嬉しかったです。
ただ、同時に「こんなすごい作品に出るのか」と不安にもなりました。
前に賢者を演じていた新(正俊)くんは、事務所の先輩なんです。すごく尊敬しているのですが、それと同時に負けたくないという気持ちや、高い壁だなという思いもあり、プレッシャーも感じていました。


――北川さんから見て、大森さんが『まほステ』にご参加されたときの印象はいかがでしたか?
北川:僕が夏向と共演したのは祝祭シリーズPart2からなのですが、Part1で夏向と共演していたキャストの方々から、「どうしたらいいか分からなくて、稽古場で泣きそうになっていた」と聞いていました。
なので正直「大丈夫かな・・・」と思っていたのですが、『まほステ』の配信番組の収録で初めて会ったときには不安そうな雰囲気がまったくなくて。
「めちゃめちゃしっかりしたいい子じゃん!」というのが第一印象でした。
稽古が始まってからも、その印象は変わりませんでした。
大森:よかった!(笑)
北川:祝祭シリーズでは、賢者がすべての国の物語に登場するので、賢者を演じるのは本当に大変だったと思います。
僕は、賢者が物語の中心として、魔法使いたちの良いところも悪いところも引き出す役目を担っていると思っているのですが、実際に夏向と共演して、その役目をしっかり果たしている最高の役者だな、と思いました。
大森:嬉しい!よかったー・・・。
――祝祭シリーズPart1のお稽古はやはり大変でしたか?
大森:不安でした。不安でしたし、舞台経験もまだ多くなかったので、どうしたらいいかも分からなくて。
賢者は、原作で魔法使いたちほど明確なキャラクター像が描かれているわけではないので、役作りにもすごく悩みました。
しかも、西の国のお話にも、南の国のお話にもずっと出ているので、とにかくやることが多くて、それだけでアワアワしていました。
そこに役作りの悩みも重なって、Part1は本当に不安でした。
でも、稽古中に演出のほさか(よう)さんから、「何も考えずに、そのままやっていいんだよ」と言っていただいて。
それまでは、新くんの賢者像を目指していたところもあったのですが、ほさかさんのその一言で、吹っ切れました。そこから今のかたちが
見えてきた気がします。


――それぞれのキャラクターについて、どのように捉えていますか?
北川:アーサーは「光」ですね。17歳の王子様ですが、発言が17歳には思えないほど大人びています。いろいろなことを経験してきたから達観して見えるんだと思います。
人柄を含め、アーサーのすべてが素敵だと思います。
また、アーサーと賢者は対の存在だとも感じています。アーサーは、『まほやく』の世界で中心にいる人物で、魔法使いの世界で、賢者の世界での“賢者的な役割”を果たしているのではないかと。
自分の中で、賢者とアーサーは、別の世界にいる同じ人物なんじゃないかと想像していました。あくまで僕の中の想像ですが(笑)。
大森:賢者はすごく純粋な存在だと思います。
魔法使いの世界では魔法が当たり前ですが、物が浮く、人が飛ぶ、といった魔法に、魔法使いではない僕が驚くことで、「それって本当は普通じゃないよね」と示せる存在だと思っています。お客様と同じ目線で魔法を受け止められるのが大事な役割だと思うので、そこは大事にしています。
また、僕の解釈では、賢者は進んで真ん中に立つ人ではないと思います。自分で先頭に立って「よっしゃ!みんな行くぞ!」という主人公ではないけれど、それでも物語の中心にいる主役でありたいという気持ちがあります。
でも、賢者が真ん中にいられるのは、魔法使いのみんなが支えてくれているからこそだと思います。
――アーサーと賢者の関係性を、どう捉えていますか?
北川:自分にとってすごく大切な人。いるのが当たり前だけれど、いついなくなってしまうか分からないからこそ、儚いというか。この表現が合っているのか分からないですけど。
大森:僕は、賢者がこの世界で賢者として生きよう、魔法使いのことを知ろう、と思ったきっかけは、アーサーの言葉だったと解釈しています。
一章で、「一筋の光」を一緒に歌うシーンで、賢者の覚悟が決まったように感じました。
あと、エチュードシリーズPart2でアーサーが歌う、「歩み寄る心」もすごく好きです。
推しの布教をするにはマナーが肝心で、自分のことだけではなく、相手のことを理解するのも大切、という言葉が、賢者にも深く刺さっていると思います。
今回オヴィシウスが魔法使いたちを傷つけようとしますが、それでも対話をしようとするのは、「歩み寄る心」でのアーサーの言葉が影響しているのかな、と思います。
あまりにも大人びていて、17歳に見えないんですけど。
北川:そう。見えないよね。
大森:そういう大人びたところが、元々賢者と似ていたのか、それとも賢者がアーサーに影響されたのかはわかりませんが、二人には通じる部分があると感じています。


――初出演時と比べ、役との向き合い方などで変わった点はありますか?
北川:基本的にあまり変えているつもりはありませんが、『まほステ』は舞台の使い方が特徴的だと思っています。
これまでの作品は、会話の相手が隣や近くにいることが多く、その人の顔を見ながら会話をすることが多かったのですが、『まほステ』では客席や<大いなる厄災>を見ながらお芝居をすることが多いです。
360度すべて使って舞台を表現する作品なので、『まほステ』では、身体の面の使い方を意識するようにしています。
大森:常に新鮮でいたいので、大きくは変えないようにしています。
これまでは賢者のセリフから始まる歌で開幕することが多かったのですが、前回は賢者が冒頭に出ていなかったので、舞台を客観的に観る時間がありました。
今回はメインストーリーということもあり、自分が引っ張っていくという気持ちが強くなったので、その点も、今回楽しみにしていただけたら嬉しいです。
――今回、アーサーはオズ(伊勢大貴)だけでなくファウスト(矢田悠祐)やレノックス(白柏寿大)とも行動を共にするシーンが多いかと思います。アーサーから見たファウストやレノックスは、どのような印象ですか?
北川:本当に信頼できる2人だなという印象です。
アーサーとしてはもちろん、北川尚弥として舞台に立っているときも、矢田(悠祐)さんと(白柏)寿大くんには大きな信頼を寄せています。
寿大くんは一緒に稽古をしていて、「こう考えているからこう動きたい」というのを伝えてくれています。
いせだい(伊勢大貴)さんも含め、お芝居に対してストイックなメンバーがそろっているので、稽古をしていてすごく充実感があります。
受けのお芝居がしっかりできる人たちが集まっているので、お互いにディスカッションをしながら、間を埋めていける、すごくいい関係性だと感じています。
ファウスト、レノックス、オズ、アーサーの4人だと、おそらくアーサーが先頭に立つ立場にあると思うので、それを支えてくれる3人がいるからこそ、アーサーも自由に伸び伸び動けているのだと思います。
――前編は、魔法使いたちが数人ずつ分かれて魔女や魔獣と闘っているところで終わりましたが、賢者として一番気になる戦いはどちらですか?
大森:全部気になりますが、一番はシノ(田村升吾)、ヒースクリフ(内藤光佑)、リケ(新谷聖司)、ミチル(弦間哲心)のミノタウロスと闘っているチームです。魔法使いたちの年齢が低く一番ピンチそうに見えるので・・・。
脚本でも、ミノタウロスが鎌を振り上げたところで場面が転換するなど、続きが気になる描写が多いです。
バトル漫画のような緊張感もありますし、みんなが怪我をしながら必死に闘っている場面が想像できるシーンでもあるので、そういう意味でも一番気になっています。
――今までの『まほステ』で一番好きなお話をお教えください。
北川:僕はエチュードシリーズPart2の「神聖なる宝剣のエチュード」が好きです。
オズとの関わりや、リケに対するアーサーの発言がすごく素敵で。
チェーリオ司祭長(鈴木壮麻)を説得して宝剣を譲ってもらうシーンがあったのですが、そのやり取りにも胸を打たれました。
歌もすごく素敵で、それこそ、「歩み寄る心」もそうですし、「人と魔法使いがいつか手を取り合える」という思いを歌い上げるアーサーの姿は、まさに「光」だなと思いました。
大森:全部好きなんですけど・・・一個選ぶなら「雨宿りのカエルのエチュード」です。
北川:切ないよね。
大森:悲しいですが、すべてのものは有限で、いつかなくなったり、終わったりしてしまいます。
でも、カエルのエチュードのお話の中でも、「雨が降るたびに思い出す」というセリフがあったように、ふとした時に思い出せるのって、すごく素敵だと思うんです。
切なさはありますが、前向きな切なさというか、儚さというか・・・。
言葉にするのが難しいのですが、そういうところが素敵だなと思います。
僕も今回で『まほステ』を卒業しますが、振り返ったときに「素敵だったな」と思えるように、後悔のないようにやりたいと思います。


――今まで『まほステ』にご出演されてきた中で、印象に残っている出来事はありますか?
大森:リケの、つるんってなるところ(笑)。
(新谷)聖司くんが・・・
北川:ステージ上で転びやすくて、
「大丈夫?大丈夫?」ってなるよね(笑)。
大森:でも、それもリケっぽいなって。
北川:リケっぽくて可愛いよね。
それで言うと、前のオズ役の丘山晴己さんのアドリブも印象的です。
オズがアーサーを迎えに来たシーンで、やめてって言ってるのにアドリブを入れるんですよ(笑)。
本当は「今日の夜ご飯はシチューだ。」というセリフなのに「あっつあつの、シチューだ。」とか言うんです(笑)。
打ち合わせ無しでアドリブを入れてくるので、毎回ステージ上で必死に笑いをこらえていました(笑)。
はるちゃん(丘山晴己)のアドリブに、「オズ様!?」と思いつつ、でも、アーサーと本当にこういうやり取りをしているのかもしれない、と感じる瞬間もあって。
はるちゃんのアドリブが面白すぎて、「今日は何してくるんだろう」と逆に楽しみになっていました。
――お二人とも本作で『まほステ』へのご出演が最後となりますが、ご卒業を控えたお気持ちをお聞かせください。
北川:卒業の発表はありましたが、まだあまり実感はありません。
千秋楽を終えた翌日あたりに実感がわくような気がしています。
今は、とにかく、作品を全力でお客様にお届けすることを考えています。
これまで培ってきたものや、5年分の思いを、お客様にすべてぶつけて、悔いのないようにこの作品を作り上げていきたいです。
また、前のオズ様のはるちゃんがエチュードシリーズPart2の時に使っていた宝剣を、今回、いせだいさんのオズ様と一緒に使えるのがすごく嬉しいです。
こうしてキャストや作品がつながっていくことの喜びも、大切にお届けしたいです。
大森:卒業ということでいろいろな思いはありますが、それ以上に、「めちゃめちゃ面白いものを作りたい」「前編を超えたい」という気持ちが強いです。
今回の第1.5部は特に好きなお話で、『まほステ』に出演することが決まった時から、やりたいと思っていたお話なので、今回賢者を演じられることがすごく嬉しいです。
やるからには、全力で最高のものを作りたいと思っています。
そして、お客様やカンパニーの皆様をはじめ、いろいろな方への感謝の気持ちも、舞台上から届けられたらなと思います。
取材・文:大崎みき/写真:ケイヒカル









■公演概要
舞台『魔法使いの約束』きみに花を、空に魔法を 後編
<日程・劇場>
【東京】2026年5月2日(土)~5月17日(日)天王洲 銀河劇場
【大阪】2026年5月23日(土)~5月31日(日)SkyシアターMBS
<原作>
『魔法使いの約束』/coly
<脚本・作詞>
浅井さやか(One on One)
<演出>
ほさかよう
<音楽>
坂部 剛
<振付・ステージング>
本山新之助
<出演>
【中央の国】オズ:伊勢大貴 アーサー:北川尚弥 カイン:岩城直弥 リケ:新谷聖司
【北の国】スノウ:陣 慶昭 ホワイト:田口 司 ミスラ:鮎川太陽 オーエン:神永圭佑 ブラッドリー:中村太郎
【東の国】ファウスト:矢田悠祐 シノ:田村升吾 ヒースクリフ:内藤光佑 ネロ:坪倉康晴
【西の国】シャイロック:山田ジェームス武 ムル:橋本真一 クロエ:皆木一舞 ラスティカ:森田桐矢
【南の国】フィガロ:和合真一 ルチル:大海将一郎 レノックス:白柏寿大 ミチル:弦間哲心
真木 晶(賢者):大森夏向
ターリア:綾 凰華
オーレオリン:七木奏音 バイオレット:野本ほたる シアン:上杉柚葉 スカーレット:西葉瑞希 ビリジアン:今泉和歌子
オヴィシウス:内藤大希
【POW-ers(パワーズ)】土倉有貴 笹原英作 服部 悠 齊藤大士 澤谷一輝 岩間大樹 木村昌誉 原田暖之介
<一般発売日>
2026年2月28日(土)10:00
<チケット料金>
S席・S席サイドシート:11,500円(全席指定/税込)
A席・A席サイドシート:8,800円(全席指定/税込)
※サイドシートは、舞台・映像・演出が見えづらいお席となります。ご了承ください。
<チケットに関するお問い合わせ>
Mitt 03-6265-3201(平日12:00~17:00)
<公演に関するお問い合わせ>
ネルケプランニング
https://www.nelke.co.jp/contact/
◆公式サイト
https://mahoyaku-stage.com/
◆公式X
https://x.com/mahoyaku_stage
(@mahoyaku_stage)
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