【インタビュー】舞台「逃亡者は北へ向かう」シリアスで重厚なテーマだからこそ表現できないものがたくさんある(高橋怜也・高橋健介)

インタビュー

『逃亡者は北へ向かう』「(新潮社刊)」は、『孤狼の血』『盤上の向日葵』などで知られる柚月裕子が、地元・東北を舞台に描いた震災クライムサスペンス。2026年、ついに舞台化される。

脚本・演出を手がけるのは吉村卓也。確かな演技力と存在感を兼ね備えたキャスト陣が集結した。

メディアクトでは、主人公・真柴亮役を務める高橋怜也と、藤島役の高橋健介にインタビューを実施。作品への思いや挑戦への覚悟、そして舞台に懸ける熱意を語ってもらった。

――本作への出演が決まった際のお気持ちをお聞かせください。

高橋怜也(以下、怜也):
今回が初主演ということもあり、プレッシャーは感じていますが、頑張りたいという気持ちが一番大きいです。かなり重厚でシリアスな作品ですし、震災という、日本人にとって忘れられない大切なテーマを扱っているので、真摯に向き合いながら大切に演じていきたいと思いました。

高橋健介(以下、健介):実は最初にお話をいただいた時、一度お断りしようと思っていたんです。最近は明るい作品や役柄が多かったですし、今作は気軽に楽しむというより、観た人の心に深く残るタイプの作品だ、と感じていて。原作自体はとても素敵だと思ったんですが、今の自分がやるべきなのかと迷っていました。

ただ、演出の吉村卓也さんについて役者仲間に聞いたところ、「天才だから一度は一緒にやった方がいい」と言われて。しかも、それを別々の二人から聞きました(笑)。一人だけだったら信じなかったかもしれないのですが、二人とも同じことを言っていたので気になって、お会いしてお話をさせていただきました。

実際にお話しすると、吉村さんもプロデューサーの熊坂涼汰さんも本当に真摯に作品へ向き合っていらっしゃって、ぜひご一緒したいと思いました。ベテランの方々も多く出演されますし、自分自身も役者として新しい一面をしっかり見せたいと思っています。

――吉村さんとのお話が、出演の決め手になったのでしょうか?

健介:そうですね。ビジネス的には返事を2~3日遅らせましたが(笑)、実はお話しした当日には出演を決めていました。

――それぞれが演じる役どころについて教えてください。

健介:作中には失ったものがある人が多く登場しますが、僕が演じる人物は、はっきりと何かを失っていない側の人間です。だからこそ、失っていない人間ならではの葛藤や行動がある。

コロナ禍や震災でも、僕自身は新しい仕事の形を見つけられたり、結果的にプラスになった部分もありました。大切な誰かを失った経験もない側です。だから、役とは近い感覚があるのかなと思っています。

作中には「僕も失えばよかったのかな」というニュアンスの台詞がありますが、本当に失った人からしたら信じられない言葉だと思います。でも、そう感じてしまう人間の感覚も、僕にはどこか理解できる気がしています。

怜也:真柴は、健介くんが演じる藤島とは反対で、“失い続けてきた側”の人間です。うまくいかなかったり、人に裏切られたり、恵まれない境遇の中で生きてきた人物。そこは自分自身とはかなり違う部分なので、演じる難しさを感じています。

なかなか実感できない感情をたくさん抱えている人間なんですが、それでも「たった一つの光を求めて行動する」という部分はすごく共感できました。そこを大切に演じていきたいと思っています。

――原作を拝読し、理不尽や不条理に直面しながらも人生に立ち向かっていく人物像が印象に残りました。お二人は、ご自身ではどうにもならない壁にぶつかったときにはどのように乗り越えてきましたか?

健介:以前、とある作品で「走って出てきて」と殺陣の方に言われて、その通りにしました。そしたら演出家の方に「なんで走ってきたんだ」と言われて(笑)。まあ、それは仕方ないとして、その後に殺陣の方から「走らなくていいから!」と言われた時は、「理不尽だな…」と思いました。

でも、僕はそういう時に反抗するというより、一旦受け入れるタイプなんですよね。理不尽に直面した時も、感情的になるというより「これを受け入れた結果どうなるんだろう」と客観的に見ている気がします。

怜也:僕はあまり理不尽を強く感じた経験がないんですが……。以前、先輩から「絶対に違うだろうな」と思うことを言われた時には一旦は受け入れて、あとで思い切り叫びました(笑)。僕も健介さんと似ていて、まずは受け入れるタイプかもしれません。

――怜也さんは本作が初主演ですね。現在の率直なお気持ちをお聞かせください。

怜也:やっぱりプレッシャーは感じています。キャリアのある方々とストレートプレイでご一緒するのも初めてですし、これまで演じてきた役は、どちらかというと派手だったり、突出したキャラクターが多かったんです。

でも、真柴はもっと現代にいる普通の人に近い。生い立ちも含めて、どこか流されながら生きてきた人物なので、そういうリアルな部分を演じる怖さもあります。ただ、その分、役者として成長できる作品になるんじゃないかと思っていますし、成長したいという気持ちも強いです。

――健介さんは、これまでのご出演作と比べて、今回はシリアスな印象の強い役どころかと思います。挑戦するうえでの楽しみや難しさをどのように感じていらっしゃいますか?

健介:まだ演出面がどうなるかはわかりませんが、台本を読んだ時、映像のイメージが浮かびました。映画やドラマのような画が見えたというか。それを舞台でどう表現していくのか、すごく楽しみですね。

波岡一喜さんと一緒に舞台に立つことが多いと思うので、個人的にはそういった第一線でご活躍されている方と深く関わる役を演じることで、自分が何を得られるのかが楽しみです。「自分には何ができるだろう」「もしかしたら何もできないかもしれない」という不安も含めて、すごくワクワクしています。

――今作が初共演とお伺いしています。お互いの印象について教えてください。


健介:イベントですれ違ったことはありましたが、しっかり共演するのは今回が初めてです。今作でも作中はずっと逃亡しているので、実はあまり絡まないんですよね(笑)。

僕の中では怜也くんは歌って踊る人というイメージが強かったですし、「歌がすごく上手い」と聞いていたので、「なんでこの作品に出てるの!?」って思いました(笑)。でも、年齢も近いですし、同世代の俳優として似たような葛藤を抱えているんだろうな、という印象があります。

怜也:健介くんは、周りからも「面白い人だよ」と聞いていたんですが、今日お話しして改めてその印象が強くなりました。話を聞いていても、すごくクレバーで面白い方だなって思います。

健介:嬉しいですけど、今作ではその要素、一つも活きないんですよね(笑)。いや、活きちゃいけないのか。ビジュアル写真もめちゃくちゃ暗いですし(笑)。

役柄的に「ご飯行こうよ!」みたいな関係性ではないですが……普段はどうなんですか?

怜也:実は舞台期間中に食事へ行ったりはするんですけど、自分から誘うことはあまりないんですよね。

健介:なるほど。じゃあ、まずは子役チームも含めて“帰りにコンビニでアイス買う”くらいから始めましょうか(笑)。

怜也:ぜひ、よろしくお願いします(笑)。

――本作をご覧になるお客様に、どのようなことを受け取ってほしいとお考えですか?

健介:気軽に楽しんでもらうというより、観る側にも何かを問いかけるような作品だと思っています。
台本を読んだ時、「同じ2時間を過ごすなら、ディズニーランドに行った方が単純な幸福度は高いかもしれない」とも思いました(笑)。でも、幸せなだけではない、何かに気づける作品ってあるじゃないですか。きっとこの作品にも、受け取れるものがたくさんあると思います。
ただ、今はまだそれを自分の中で掴み切れていないので……稽古終盤まで待ってもらえますか(笑)。これから無我夢中で探していきたいと思っていますし、その先に何かを受け取っていただけたら嬉しいです。

怜也:僕も本当に同じ気持ちです。今の段階では「何を伝えられる作品なのか」をまだ言葉にしきれなくて。だからこそ、これから稽古を通して探していきたいと思っています。

――最後に、本作への意気込みとファンの皆さまへのメッセージをお願いします。

健介:決して明るい物語ではないと思います。でも、映画やドラマでも、観終わった後に胸が苦しくなる作品ってたくさんありますよね。それでも「観てよかった」と思える作品は確かにある。
この作品も、簡単に何度も観に来てくださいとは言えないかもしれませんが、ぜひ一度は劇場で体感してほしいです。作品そのものはもちろん、高橋健介という役者の新しい一面も楽しんでもらえたら嬉しいですし、初めて僕を見る方にも「こういう役者なんだ」と感じてもらえたら嬉しいですね。

怜也:シリアスで重厚なテーマを扱った作品ですが、だからこそ劇場空間でしか表現できないものがたくさんあると思っています。普段のミュージカルとはまた違った繊細な感情表現もこの作品ではとても大切になってくると思うので、一つひとつ丁寧に届けたいです。
僕自身、初主演という大きな挑戦でもあります。応援してくださっている皆さんには、ぜひその姿を見届けていただけたら嬉しいです。

取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル

高橋怜也様:ジャッケット¥11,880/Casper John(シアンPR)、シャツ¥6,600/remer(リメール ストア)、リング¥24,200/4℃ HOMME +(エフ・ディ・シィ・プロダクツ4℃)

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〈公演情報〉
舞台「逃亡者は北へ向かう」

日程:2026年6月12日(金)~21日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
原作:柚月裕子『逃亡者は北へ向かう』(新潮社刊)
脚本・演出:吉村卓也
音楽:TAKE(FLOW)

出演
真柴亮:高橋怜也
陣内康介:波岡一喜
藤島:高橋健介
目黒:松田大輔(東京ダイナマイト)
郷田剛:八十田勇一
村木直人:山村翔/中谷薫風
村木圭祐:前川泰之
中島弘輝・樽見ありがてぇ・守山龍之介・飯山真衣・須田拓也
伽代子・仁志有皇麻・鶴目悦子・撫咲来/柿田光凜

スタッフ
原作:柚月裕子『逃亡者は北へ向かう』(新潮社刊)
脚本・演出:吉村 卓也
音楽:TAKE(FLOW)
プロデューサー:熊坂 涼汰
企画協力:新潮社

主催:Tie Works