『最遊記歌劇伝-外伝-』悟空役・椎名鯛造さん、哪吒太子役・北村諒さんインタビュー

インタビュー

『最遊記歌劇伝』シリーズの最新作『最遊記歌劇伝-外伝-』が2023年9月29日より幕を開けます。峰倉かずや原作の漫画『最遊記』をミュージカル化した『最遊記歌劇伝』は2008年に初演を迎え、現在までにシリーズ9作品を上演。
今作は『最遊記』シリーズ本編の前日譚に相当する物語で、500年前の天界が舞台となります。脚本・演出は三浦香、音楽は浅井さやかが引き続き担当し、出演キャストは鈴木拡樹、椎名鯛造、平井雄基、藤原祐規の続投が発表されています。

今回メディアクトでは、初演より悟空役として出演を続ける椎名鯛造さんと、今作で初めて登場するキャラクター・哪吒太子を演じる北村諒さんの2人へのインタビューをお届けします。

――『最遊記歌劇伝-外伝-』の公演が決まったときはどのような気持ちでしたか?

椎名:『最遊記歌劇伝』が始まったころは、まだ原作の『最遊記外伝』が完結していなかったんですよ。その頃から三蔵役の鈴木拡樹とかと、いずれ「外伝」まで舞台でやれたらいいなって話してて。いざ公演が決まったときは、ここまでたどり着けた嬉しさを感じました。ただ、長く悟空を演じるなかで作品への愛も増していて、本編より幼い悟空を俺が演じていいのかなって葛藤や、ファンの方はどう感じるんだろうって不安もあって。今は楽しみと不安が半々なので、これから始まる稽古の中で不安を取り除いていけたらいいなって思っています。

北村:僕も同じで、今は楽しみと不安が半々です。歴史の長い作品なので、出演が決まったときは正直プレッシャーも感じました。ただ見知ったキャストも多く、過去『最遊記歌劇伝』を実際に観劇したときにすごく楽しかったので、自分がこの作品に関わることができるんだって嬉しく思いました。「外伝」は『最遊記歌劇伝』のファンの方はもちろん、楽しみにしている原作ファンの方もとても多いと思うので、期待に応えつつ素敵な作品にしていければなと思っています。

―――『最遊記』本編の悟空と、今作・「外伝」での幼い悟空を演じ分けるうえで何か意識されたことはありますか?

椎名:悟空は今までの旅の中で、いろんな経験をして徐々に成長してきたんですよ。今回はそれを全部無くした状態っていうことで、どうしようかなと。ただ思い返すと、三蔵と出会ったばかりのチビ悟空も演じたことはあるんですよね。だから今回も無邪気に自由に、舞台上ではやりたいことをやって、みんなを振り回してみようかと思います(笑)今回は三蔵じゃなく金蟬たちとだけど、悟空は人見知りせず、近くにいる人みんな友達!ってタイプなので。

―――今作の脚本を初めて読んだときの感想を教えてください。

北村:曲多いなって思いました。

椎名:ミュージカルだからね!(笑)

北村:観劇してたときはそんなに曲が多いイメージがなかったので、こんなに多かったっけって(笑)

椎名:曲数は多分いつもと一緒だよ。でも俺もいつも曲多いなって思ってる(笑)毎回、まずチェックするのはソロがあるのか。俺はあんまり歌に自信がないので、いつも演出や歌の先生に抗議します。歌が難しい!って(笑)

北村:『歌劇伝』だからね(笑)

椎名:そうそう、いつも『歌劇伝』だからって丸め込まれる(笑)物語については、よくこのボリュームを一回の舞台で分かりやすくまとめたなって思いました。

北村:僕も、ほぼ原作通りの、このボリュームのある内容をどう演出していくのか、演じるうえでこれから考えることも多いだろうなって。哪吒は特に前半の出番が多いので、集中してしっかり哪吒を演じたいです。

椎名:きたむーとは共演したこともあるので、哪吒とのやり取りはなんとなく想像しやすくて心強いですね。稽古の中で変わってくるものもあると思うし、これから楽しみです。

―――「悟空と哪吒」という関係性で共演されることについて、どのようなお気持ちですか?

北村:今まで共演したなかで一緒に行動したりする役はあったけど、ここまでペア感のある役は初めてだよね。

椎名:うん、初めてかも。

北村:鯛ちゃんの悟空を目の前で感じられるのは楽しみだし、自分が哪吒としてどう悟空に影響を与えられるのか、一緒に作り上げていけることにワクワクしています。

椎名:「外伝」やるって聞いたときはまだ哪吒を誰が演じるのか決まってなくて、金蟬役の拡樹と一緒に「誰がやるんだろうね」って話をしてたんですよ。きたむーがやるって決まったときは、安堵しました。これで18歳の子とかだったら気遣うわって思ってたんで(笑)そりゃ幼く見えるだろ、バランス考えてくれって(笑)だから、同類の童顔若見えおじさんですごく安心しました(笑)悟空も哪吒も見た目は子どもだけど、今回は内面がすごく大切なお話だと思うので、そこを伝えられたらなって思っていて、きたむーとならそれができるなって。

―――新キャスト・西海竜王 敖潤(ごうじゅん)役の佐奈さんはお二人より少しお若いですよね。

椎名:佐奈ちゃんは若いけど若く見えない(笑)

北村:しっかりしてるよね。

椎名:佐奈ちゃんは堂々として大人っぽいから、すぐ現場にも馴染めると思う。でも噂によるとすごく緊張してるらしいよ(笑)

北村:え、そんなタイプじゃないよね。

椎名:鈴木拡樹にびびってるんじゃないかな(笑)あの世代にとって鈴木拡樹っていわゆるレジェンドだから。

北村:レジェンドだね。

椎名:だから、ちゃんと脅していこうかなって。「拡樹に失礼のないようにな!(怒)」って。

北村:そんな怖い人じゃないってすぐバレる(笑)

椎名:すぐバレるよね(笑)拡樹は多分「大丈夫だよ~」って優しく言うから(笑)

―――今回演じられるキャラクターに、自分と似ているところや共感できるところはありますか?

椎名:俺もう15年近く悟空と関わってるんですよ。

北村:すごいよね。

椎名:だから、公演中はもちろん、その他のときでも常に頭のどこかに悟空がいて。初めて『歌劇伝』に出たときはまだ未熟で舞台に立つのも3本目とかで、役について考えるとか台本深読みするとか一切できなかったんで思ったようにやってたんですよね。それを見てお客さんがどう感じたかは分からないけど、それでもここまで長く悟空を続けさせてもらってるのは、自分のどこかに悟空っぽいものがあるのかなって感じてます。

北村:哪吒はちょっと特殊で難しいんですよ。彼は父親とか、いろんなものに縛られているんです。でもよく考えたら僕も、大人になるにつれていろんなものに縛られてるなって。

椎名:住民税とか?

北村:そう、住民税とか(笑)本当に、生きてるだけで縛られてる(笑)あと哪吒って本当は無邪気でいたずら好きで、そういうところは分かるなって思います。

椎名:俺、子どものときってスーパーで目に付くもの全部試食したり、走り回ったりしてたんですよ。今でこそ大人として発言とか行動とか社会に適合できるようになったんですけど(笑)ただそういう子どもっぽさってずっと自分の根底にあると思うので、そこを引き出すことができれば悟空に似るというか、共通点がたくさんあるかなって。唐橋さん(你健一&烏哭三蔵役)によく言われます。「お前は悟空やってるときが一番可愛い、それ以外は可愛くない」って(笑)

北村:そういえば最近、子ども時代の僕を知ってる親戚が授業参観に行って他の子どもたちを見たとき、「子どもってこんなに騒がしいんだ!」ってびっくりしたらしいんですよ。

椎名:俺その騒がしい子ども代表だったわ。

北村:僕は小さいときめっちゃ大人しくて、良い子だったんで。

椎名:小さいときから格好つけてたんだ?

北村:はい(笑)だから親戚から、あんたは周りの子どもと違ってたって話を聞いて、どこか浮世離れした哪吒の要素がもしかしたら自分にもあるのかなって思いました。

―――悟空や哪吒といった幼いキャラクターを演じるにあたって、役作りのこだわりなどはありますか?

北村:哪吒は二面性のあるキャラクターなので、まずは無邪気な姿であったり、悟空といるときの笑顔であったり、楽しさを前面に出すことで、もう一面も際立つのかなと。バランスを上手に表現したいですね。でも鯛ちゃんといれば自然と無邪気に過ごせそう。

椎名:悟空は今回、嬉しさとか、悲しさとか、怒りとか、感情を100%で出すことになると思います。全力の感情を出して、受け止めてもらって、そこで生まれる何かをお客様に伝えられたらなって。俺はもう発信だけするので、あとはキャストのみんなに受信してもらって、良い物語にしたいですね。

―――椎名さんは今回で『最遊記歌劇伝』への出演が最後ということですが、どのようなお気持ちですか。

椎名:『最遊記歌劇伝』は、実は5年くらい公演に間があいたことがあるんです。そのときは、もう終わりなのかなって考えてて。でも、再始動して、最近は1年に1回とか公演ができて。「これが最後」って形で挑むのは初めてで、長く関わってきたぶん、やっぱり寂しいって気持ちが一番強いですね。とりあえず公演中に「この景色最後なんだ」って思い出して冒頭から泣かないようにしたいです(笑)

北村:それはもう悟空じゃなくて鯛ちゃんなんだよ(笑)

椎名:そうなの、悟空でいなきゃいけないから。これが最後だってあまり思い出さないようにしてるので、質問しないでもらってもいいですか?(笑)

北村:もう泣きそうじゃん(笑)

―――今作の見どころを教えてください。

椎名:詳しくは言えないんですが、楽しい場面も、心に刺さる切ない場面もあって、どれも見どころだと思います。あとは『最遊記歌劇伝』って毎回原作にない、いい意味でふざけてるオリジナルシーンがあって、「外伝」でも多分用意されてると思うので、そこを楽しんでほしいです。

北村:僕は悟空と哪吒の、お互い年齢の近い友達がいない環境の中で唯一出会えた友達っていう二人の関係の尊さとか、お互いにとっての大切さとかを見てほしいですね。

椎名:あとまだ秘密だけどand moreなスペシャルゲストもね。三上俊は常に出るけど。

北村:それもうゲストじゃないじゃん(笑)

椎名:コスパがいいレギュラーだよね(笑)

―――原作『最遊記外伝』の中で好きな場面はありますか?

椎名:『最遊記』において、「手を差し伸べる」場面っていうのが原作でも『歌劇伝』でもすごく大切にされている印象的な場面なんですけど、なぜあの場面が大切なのかの答え合わせみたいなものが「外伝」の中にあって、漫画を読んだときは鳥肌がたちました。

北村:僕は悟空と哪吒との出会いの場面かな。二人が友達になって、一緒にイタズラしたりする無邪気な場面を読んでると、この時間が一生続けばいいのになって幸せな気持ちになります。

―――これから稽古が始まるということで、意気込みなどがあれば教えてください。

北村:『最遊記歌劇伝』の稽古現場ってどんな感じなの?

椎名:演出家も役者も、みんな対等な現場。なんでも言い合えるし、演出の三浦さんは俺たちと同じ目線で作ってくれる。俺がただただ「難しい!」ってわがまま言ってるだけかもしれないけど(笑)

北村:三浦さん初めましてなんだよね。

椎名:けっこう奇抜な稽古させられるよ。悟空は500年孤独の中で過ごしたんだけど、その思いが芝居に乗ってないって言われて、誰も来ない地下の駐車場に「拡樹が来るまで待ってなさい」って稽古時間中ずっと閉じ込められたことある。永遠に来ないの(笑)

北村:やば(笑)

椎名:斬新だよね(笑)三浦さんはリアルを求めるから、きたむーと二人で遊んで来いって言われるかもしれない。「今から三蔵一行として山に登って、止めるまで自由に歩きなさい」って即興劇をさせられたこともあるよ。「腹減ったー八戒おんぶしてー」って俺は自由に動いて、アドリブの中で絆を深めるみたいな。即興劇が採用されてそのまま本番で使われたこともある気がする。

北村:楽しそう、クリエイティブな現場だね。哪吒が何求められるかどきどきしちゃう。

椎名:前作の稽古では三蔵を探して、見つけて、引っ張り出すってシーンで、稽古場の一番奥のロフトみたいなところから「三蔵どこにいんだよー!」って実際に探して、セットの下の隙間にいる拡樹を見つけて助けるとかやらされたよ。狭いから絶対出られないんだけど、悟空だったら引っ張り出そうとするだろうなって思って全力で引っ張って拡樹がすごいことになってて(笑)八戒が「それじゃ取れませんよ」って隙間から出してくれたり。

―――ファンのみなさまに一言をお願いします。

北村:「外伝」は、今まで『最遊記歌劇伝』を作ってきたキャストやスタッフ、そして応援してくれるファンのみなさまにとって、とても思い入れの強い作品だと思います。その思いを受け取って、「観に来て良かった」「『最遊記歌劇伝』の集大成だ」って思ってもらえる作品になるよう尽力するので、ぜひ劇場でともに歩んでいただけると嬉しいです。

椎名:『最遊記歌劇伝』に最初から関わってきて、悟空だけでなく作品自体が好きで、愛着もあって、自分もファンの一人のような感覚でいます。幼い悟空を大人が演じることに賛否もあるかもしれませんが、芝居で見せられる、伝えられる部分がたくさんあると思っています。妥協せず、心強いキャストのみんなと、観に来た人に「良かった」と思っていただける作品をしっかり作り上げていくので、楽しみに劇場に足を運んでいただければ嬉しいです。魂ぶつけて頑張ります!

―――長時間のインタビューありがとうございました。

取材・文:岡 里衣奈/撮影:ケイヒカル

『最遊記歌劇伝-外伝-』 公演情報

◆上演スケジュール
【東京公演】2023年9月29日(金)~10月12日(木) 
品川プリンスホテル ステラボール
【大阪公演】2023年10月19日(木)~10月23日(月) 
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

◆チケット
【料金】
桃源郷チケット:13,500円 ※非売品グッズ付(全席指定/税込)
一般チケット:10,500円(全席指定/税込)
※未就学児入場不可
※桃源郷チケットは非売品グッズ付チケットであり、前方席を保証するものではない

◆スタッフ・キャスト
【原作】峰倉かずや『最遊記外伝』(一迅社刊)
【脚本・演出】三浦香
【音楽】浅井さやか
【出演】
金蟬童子役:鈴木拡樹、悟空役:椎名鯛造、捲簾大将役:平井雄基、天蓬元帥役:藤原祐規
西海竜王 敖潤役:佐奈宏紀、李塔天役:山﨑雅志(劇団ホチキス)
観世音菩薩役:髙﨑俊吾、二郎神役:うじすけ
哪吒太子役:北村諒

橋本有一郎、轟大輝、森田龍、仲田祥司、多田滉、山口渓、杉本佳幹、望月祐治、佐藤且之、降矢佳典

<スぺシャルゲスト>
三上俊 and more・・・?

公式HP:https://saiyukikagekiden.jp/sb/
公式X(Twitter):https://twitter.com/saiyuki_kgkdn

©峰倉かずや・一迅社/『最遊記歌劇伝』製作委員会2023