【ゲネプロレポート】願いと夢をかなえたその先には…今江大地主演・TBS 舞台『パイロット』開幕

リリース情報

TBS 舞台『パイロット』が2月18日(水)より東京・赤坂 RED/THEATERにて開幕。初日公演に先がけ、同劇場にて公開ゲネプロと、キャスト11名が登壇しての囲み会見がおこなわれた。

本作は、令和にタイムスリップしてきた特攻隊の青年を主人公とした作品。戦時中である当時の価値観と現代の価値観の差異や、生きてそこで成すべきこと、夢、現代社会でのジレンマなど、さまざまなことを描いたヒューマンドラマだ。

1945年、太平洋戦争のさなか。厳しい戦局の中、大転換をはかるために日本は“特攻隊”を編成した。お国のために命を捧げる。その日も、ある飛行訓練所で特攻隊への志願が募られた。映画監督を夢見る青年、遠藤(今江大地)。脳裏には両親、弟、妹の姿。しかし遠藤は「私のつとめ」と、震える指で希望用紙の「熱望する」欄に印をつけた。

翌日、パイロットとして遠藤は特攻の空に飛ぶ。夢は断たれ、死は間近。しかし、日本の未来のため、と操縦桿を握る。そんな時、特攻機にトラブルが発生する。何の攻撃も貢献もできずにこのまま海に落ちて死んでいくのか――。死ぬ前に一度でも映画を撮ってみたかった、そう思いながら海に墜落する遠藤だったが、不思議な現象に包まれて姿を消した。

場面替わり、令和のとあるさびれた遊園地。2人組アイドルユニットの夏寝(髙橋真佳把)と冬起(中染雄貴)が観客のいないステージでパフォーマンスをしていると、突然背後から特攻服を着た男が現れた。「気持ちしだいで願いは叶う」という2人の歌に心打たれたその男は、感動のあまり2人に握手を求める。男は遠藤だった。遠藤は80年前からタイムスリップしてきてしまったのだ。

とても現実とは思えない状況の中で遠藤は、映画の撮影現場になぜかエキストラとして入ることになる。さまざまなめぐりあわせと偶然により、映画の監督を任されることにもなり、80年の時を超えて遠藤の夢はかなったかのように見えたが…?

「戦争」「特攻隊」をモチーフにした作品、となれば相当重い作品なのだろうか…と身構えてしまう人も多いのではないだろうか。しかし本作は、描いていることはそのままに、時代背景を令和にしたことで、暗く重い気持ちになるのを回避している。伝えたいことや話の芯はブレずに、あくまでもタッチはライトに。そして必要以上に情緒を揺さぶるシーンは連発せずに、むしろ飄々(ひょうひょう)とした空気さえ感じさせる。それにより身構えずに見られるのだが、シーンのひとつひとつ、セリフのひとことに含みがあり、まずは1回通して観ると「あの時のあの表情は…」と振り返りたくなってしまう作品になっている。

恐ろしいほど順調に映画監督として夢をかなえてしまう遠藤だが、恐らく本題は、“夢をかなえたその後”。昭和の価値観が通じないというだけではなく、夢と希望と熱だけでは作品は作れない。配慮と忖度、そして時には信念を曲げなければいけないこともある。そんなものは全て取っ払って、キラキラした夢と希望で話を進めていってほしいと願ってしまうものだが、そうもいかない。リアルではこういうこともあるのだろう…と、観ていて苦しくなってしまうほどに、残酷なまでの現実と「大人の事情」を叩きつけられてしまう。しかし、熱が無ければそれは観る人にはしっかりと伝わってしまうものだ、ということも明示されているのは救いだ。

主人公である遠藤を演じるのは今江大地。数々の舞台で真ん中に立ってきた彼であるが、これだけの近さで、マイクを通さない生の声で、彼の芝居を浴びられるのは幸福なことだ。比較的小規模な劇場だからこそ、肉眼で表情や声色の変化を感じられる。声を荒らげたりはしない人物なだけに、わずかにある激しく感情を高ぶらせるシーンでの感情の爆発が印象に残る。特に、あるドキュメント映像の後からは「これをやりたい」と言わんばかりに意志の固まった目と表情になるのでぜひ注目して観てほしい。

登場人物のひとりひとり、その人なりの背景と事情があるのだろうと察することができる。現代の忖度にまみれた業界人であっても、心の底には熱いものがかつてはあったのかもしれない。本当にやりたいことが昔はあったのかもしれない。そして、今もその思いを持ち続けていて、果敢にチャレンジする人をまぶしくも妬ましく感じる瞬間があるのかもしれない。

令和の今の価値観と自分の考えにギャップを感じて苦しみながらも、緩やかに対応をしていく遠藤。それに対して、80年前から来た遠藤に影響されて生き方を変えていく人。人と人との関わりと価値観のすり合わせ、生まれていく変化にも注目をしたい。何もかもを諦めて「それなりに」生きてしまいがちな現代だからこそ、チャレンジしたいけれども…と迷っている人にとっては「願いは叶う」と背中を押す助けにもなるだろう。

「パイロット」とは、もちろん飛行機の操縦士ではあるが「試作」の意味もある。遠藤にとってこの経験が、この先彼が生きていく上での試作になるという意味もあるのだろうか…など、さまざまなことを考察、解釈して楽しめる作品だ。

以下、公式による会見レポート

特攻隊員の青年が「令和」へとタイムスリップする時空を超えたヒューマンファンタジー・TBS 舞台『パイロット』が2月18日(水)より開幕。今回、その開幕に先立って囲み取材とゲネプロを、会場となる赤坂RED/THEATERにて行った。囲み取材には本公演に出演する今江大地、井出卓也、椎名鯛造、中染雄貴、髙橋真佳把、設楽賢、石川貴一、宇佐美真仁、寺本晃輔、富田翔、吉満寛人の11名が揃って登壇し、公演に向けての意気込みや見どころを明かした。

本作は特攻隊員たちの貴重なインタビュー映像を織り交ぜ、過去と未来、そして夢と現実が交錯する感動の物語。

特攻隊員・遠藤を演じる今江は今回の出演に際し、戦争体験者へ実際にインタビューを行った。公演については「この舞台だからこそ見られる映像があります」とTBSに保存されている貴重な映像にも言及。

「色々なことが自由に選択できない戦時中でしたが、今は気持ち次第で、やりたいことをやれるということも伝えていけたら」と語る。

井出も「人が人の命を奪う時代、それを現代に生きる私たちが肌に感じることは難しいですが、その事実と空気は今日まで生き続けているものだと思います。色々な人生があるなかで、夢や希望につながるような物語を紡いでいきます」と、本作のファンタジーの枠組みを超えた魅力を挙げた。

さらに、椎名が「アイドルのマネージャー役ですが、この役がどのように今江くん(演じる遠藤)の気持ちを動かしていくのか注目していただけたら」、富田「戦時中と令和が描かれますが、昔の理不尽さ、僕らの信念や想いがこの物語に込められているので全力で表現したい」、吉満は「親子愛のあるシーン」とそれぞれが感じる公演の見どころをコメントした。

取材陣から“役者人生の中で価値観が変わった出会いは?”を問われると、吉満は役者人生のきっかけを作った「小林俊一監督」、富田は『名奉行!大岡越前』での共演を振り返り「北大路欣也氏」、椎名は20歳の頃から虜になったという「舞台」、井出は俳優部でプロとして活動することを意識したという「(舞台等の)クレジット」を挙げた。今江は「吉田鋼太郎さんです。舞台を初めて拝見した時、客席まで伝わってくるエネルギーがすごくて、そこから彩の国シェイクスピア・シリーズのDVDを買ったり、舞台にのめり込みました」と明かし、共演者を驚かせた。

本番に向けての意気込みについて、主演の今江は「精一杯この舞台上で“生きたい”と思います」と話し、共演者たちも深く頷いた。続いて、井出「稽古でも脚本について解釈したり、役割を磨きました。この情熱を届けられたら」、椎名「全員で作り上げてきた舞台。一丸となって作品をお伝えしたい」、富田「舞台のひとつの醍醐味、座組みの力をお見せできれば」、吉満「今江くんとの共演シーンがほとんどでして、侘しさやちょっとした愛を伝えたい」、中染「込められたメッセージを大切に紡ぎながら毎公演お届けできたら」、髙橋「みなさんの心や記憶に残る舞台にできるよう誠心誠意がんばります」、設楽「毎公演ごとに演技も変わってくるはずなので、会話を大切にやっていきたい」、石川「作品の熱を共演者みなさんの力をお借りして伝えられれば」、宇佐美「素敵な座組みに参加でき、初日を迎えられて嬉しい。全身全霊で頑張っていきます」、寺本「楽しみながら毎公演向き合えたら」と、それぞれが2月24日(火)までの公演に対する熱意を語った。

取材/文、写真:広瀬有希

公演概要
■タイトル
TBS 舞台『パイロット』

■公演期間
2026年2月18日(水)〜2月24日(火)

■劇場
赤坂 RED/THEATER
(〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-9 赤坂グランベルホテル B2F)

■出演
今江大地
井出卓也
椎名鯛造
中染雄貴
髙橋真佳把
設楽賢
石川貴一
宇佐美真仁
寺本晃輔
富田翔
吉満寛人
草野仁(映像出演)

■スタッフ
脚本・プロデュース 津村有紀
演出 寺本晃輔(ファーベルとルーデンス)

■チケット
全席指定 11,000円(税込)

■公式サイト
https://tbs-docs.com/title/80.html

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■主催
TBS