【ゲネプロ】「誰も救われない、誰も報われない物語」王ステシリーズ第5弾「蒼穹の王」レポート（主演：矢部昌暉「DISH//」）

「誰も救われない、誰も報われない物語」をキャッチコピーに、血塗られた実在の悲劇をモチーフに女優のみで描く「女王ステ」シリーズ。その男性俳優版として始まった「王ステ」シリーズ第5弾「蒼穹の王」が2024年2月24日(土)～2月28日(水)まで、IMAホールで上演されます。
メディアクトでは上演に先駆け実施されたゲネプロ公演の模様をお届けします。

退廃的で耽美な世界を歌とビジュアルで彩る

物語の舞台は17世紀、イギリス。
英国の王子オリヴァー（演：矢部昌暉「DISH//」）は父の名により、黒死病が蔓延しているといわれる封鎖された村イーム村に訪れていた。従者として、英国部隊隊長のオリヴァー（演：中村龍介）、無口だが忠誠心の高いレオ（演：足立英昭）、お喋りで好戦的なスペンサー（演：森田晋平）を従え村へと辿り着く。
そこには、王座を密かに狙うデヴォンシャー公爵（演：橋本全一）一行も訪れていた。従者にはかつてオリヴァーの従者で思想の違いで離れたイヴリン（演：米原幸佑）もいる。村の住人に様子を聞くが要領を得ず、さらには風車小屋に現れる謎の双子（演：二葉勇「TWiN PARADOX」／二葉要「TWiN PARADOX」）のことは村の住人すら存在を知らないという。それぞれが思惑を潜めているところに訪れるのが、過去シリーズにも登場しているヴラド（演：佐藤弘樹）とヴィンツェル（演：鵜飼主水）。陰謀渦巻く、物語の幕が開けます。

本作の魅力の一つに様々な楽曲があります。
歌詞は情景描写、心情描写で世界観の掘り下げを行い、楽曲に寄り添う演出で会場の空気感を彩ります。主に情緒に訴えかける楽曲が多いため、より物語への没頭を助けてくれます。

激しく連続的に展開される圧倒的な殺陣

本作の冒頭では、デヴォンシャーを捜索しに来た人物たちが、村の封印を解くところから始まります。そこで見つけるのは、おびただしい死体。中から現れたのはデヴォンシャーの従者であるイヴリン。この村で何があったのか、そこに至るまでを描くのが本編となります。

各楽曲の素晴らしさの他にもう一つ本作の魅力としては殺陣を挙げます。
激しく続く殺陣は、まさに見どころの連続です。圧倒的な迫力と、そのアクション性も高く、使う武器やキャラクターの特徴を活かした戦い方など「殺陣」と一言で言っても千差万別。十分に魅入ってしまいます。

物語中に隠されていた因縁や、過去の出来事などが掘り下げられていき、戦う理由がシーンごとに変化していくということも注目です。各キャラクターの戦う理由がキャラクターの倫理観に基づいているため、オリヴァーの後悔、イヴリンの葛藤、双子の真相……それ以外のキャラクターにも譲れないものがあり、それぞれに感情移入しながらその世界に引き込まれていきます。また、そういった想いがすれ違うことで軋轢が生まれ、物語が進んでいくことになります。
序盤の伏線が終盤になって回収されていくミステリー要素がありつつ、人と人の行動や思想に対してぶつかり合う感情的なストーリーラインが絡まり合い、先の読めない展開を生みます。

誰が最後まで生き残るか、誰が死んでしまうのか。
村で起きた惨劇の一部市場を、ぜひ劇場で見届けて下さい。