【ゲネプロレポート】観客参加型の舞台「かまいたちの夜 〜THE LIVE〜」練りこまれた脚本に秘められた体験できる舞台(ゲーム)として、新たな挑戦! ゲネプロ&囲み取材レポート
1994年11⽉にスーパーファミコン⽤ゲームソフトとして第1作⽬が発売され、シリーズ累計200万本という驚異的な売り上げを記録した伝説のサウンドノベル『かまいたちの夜』。
「かまいたちの夜」の30周年を記念して2024年6⽉、東京シアター1010と、⼤阪COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホールにて「かまいたちの夜〜THE LIVE〜」を上演いたします。
主演の伊⽉役にヴァサイェガ渉さん、共演の⽐企⽂哉役として豊⽥陸⼈さん、⾼柳明⾳さん、ドロンズ⽯本さん、塩⽉綾⾹さん、⽥中孝宗さん、⼤髙雄⼀郎さん、槙原唯さん、⾕⼝就平さん、そして細⾙圭さん、安⽥裕さんなど個性豊かなキャストが揃い、舞台オリジナルストーリーを描きます。
今回メディアクトで初日の公演に先駆けて行われたゲネプロ公演と囲み取材の模様をレポートさせて頂きます。
まずはゲネプロ公演の前に行われた囲み取材の模様から。
※ゲネプロのレポートに関して、大きなネタバレは含んでおりませんが、先入観を無く観劇したい方は、事前にこちらの記事を読まずに観劇することをお勧めいたします。
囲み取材
――いよいよ初日を迎えるにあたって、心境や意気込みをお願いします。
ヴァサイェガ渉(以降、ヴァサイェガ):伊月役を担当いたします、少年忍者のヴァサイェガ渉です。明日から初日の幕が上がるのですけど、みんな思っていると思うのですが「大丈夫か……」って。
緊張もそうだし、マジでセリフが飛ぶみたいな感じで、ゲネプロがこの後あるんですけど、さっきセリフが追加になったり……。毎日毎日みんなですごい頑張って、試行錯誤して作ってきたので、1ヶ月弱のこの稽古を経て、やっと本番を迎えられるということはすごく嬉しいです。いい意味ですごく緊張もしているので、本当に頑張りたいなと思っております。
豊田陸人(以降、豊田):比企文哉役の豊田陸人です。よろしくお願いします。明日もう本番ということで、緊張していてヤバいんですよね。もうセリフを言っていないとだめで、今も裏でずっとセリフを言っていたんですけど、渉にめっちゃ笑われてる。
今からゲネプロも緊張してて、長セリフが結構あるので、いかにそれを止まらずに、お客様に分かりやすく説明するか……そういうところも気にしながら、周りの人にも支えてもらって、千秋楽まで走り抜けたいなって思っています。
高柳明音(以降、高柳):小松絵美理役の高柳明音です。やっぱり今回の舞台の見どころは、お客様が選択したルートにいくっていうところになっているんですけど、稽古の中では、スタッフさんが今日はこのルートでいこうって決めたり、決めずにその場の投票でやってみたりしたんですけど、これだけのお客さんの数を数えることは試していないのでどうなるか全然わからないです。
これまでは、2、3票ぐらいの差でやってきたんですけど、今回ミステリーということでいろいろと事件が起きて、本当に最後の最後まで誰が犯人なのか分からない中で、お客さんがどういう判断をするのかがすごく楽しみです。
今まで舞台をやってきた中で、本番が始まってからじゃないとどうなっていくのか全く分からないというドキドキであり、楽しみでありって感じで、今日ゲネプロがあって、明日も本番。ルートもたくさんあるので、どう変わっていくのか楽しみながら、初日を迎えられたらと思っております。
ドロンズ石本(以降、石本):初めまして能坂役のおじさん忍者、ドロンズ石本です。今回ですね。先ほど皆さん三人が言った通り、すごいセリフをね、若い皆さんが頑張っていただいているので、それをサポートしながら、なおかつちょっと皆さんが悩むような、そして皆さんが推理しながら楽しんでもらえるような作品になっていますので、ぜひ楽しんでください。
塩月綾香(以降、塩月):和良裕子役の塩月綾香です。本当にみんなが言ってる通りなんですけど、トリックに次ぐ、トリックに次ぐトリック! みたいな感じで、もういろいろなトリックが次々に出てくるのを、みんなで頭を抱えながら稽古場でやりました。途中で、これ気づいちゃったんですけど……って苦い顔をして野坂さんに言いに行くっていう時間がすごいあったんですけど、そのおかげで和気藹々としたチームワークが出来上がったと思います。本番もこのチームワークを発揮して頑張りたいと思います。
細貝圭(以降、細貝):皆さんおっしゃってる通りなんですけど、僕も舞台を長いことをやらせていただいてるんですけど、ほんと初めての体験で、もう何回も僕はもう頭のキャパオーバーで。
やってく中で、みんなでああでもないこうでもないっていう、台本がいろいろ変わったり。変わったりしてても、この若い二人のヴァサとトヨリクが本当にしっかりと真摯に作品を向き合っていく背中を見て、僕らも頑張らなきゃいけないなっていうことをすごく感じました。ぜひ、たくさんの方々に見て頂きたいです。
野坂実(以降、野坂):通常のお芝居だと台本があって、覚えながらお芝居の作り方、キャラクターを深めていくことをやっていくんですけど、トリックが多いのと、その現場で立ち上がって動いてみて、あ、こうだっていうことに気づいたりしたので……脚本がなんかね、大体60パーセントぐらい変わっている。(キャスト一同爆笑)
それを稽古初日から変わっていったもんで、役者さんたちは、ほぼセリフが入れ直しの状態になっているにも関わらず、稽古場で和気あいあいとしていて。今日も劇場でおいしいものを頬張りながらしゃべっているのを見た時に、なんていいチームワークかと。危機的な状況が訪れてない状態でのチームワークの良さじゃなくて、結構大変な状況の中で、みんながずっとニコニコしながら作り上げているの、なんか大人の多い現場だなって思っています。
――ヴァサイェガさん、今回主演となりますが、役の見どころ、本作の見どころの方をお願いいたします。
ヴァサイェガ:役の見どころは……結構、ストーリーテラー? テーラ? テラ、テーラ、ストーリー……
野坂:じゃあ、テーラにしとこう。
ヴァサイェガ:ストーリーテーラ。
結構、伊月は推理するキャラクターで、なおかつ、物語の後半に行くにつれて、段々と伊月の違う一面が見えたりとか、そこがやっぱり一番の見どころなのかなって思ってます。
舞台の中でも、いろいろな見せ方があるので、それが違うようにお客さんに伝わるかが心配なんですけど、野坂さんにいろいろ教えてもらってやってきました。そこが一番の見どころかなと思っております。
――ヴァサイェガさん、稽古場取材会の時にはまだ一言目のセリフのマインドをお悩まれていましたが、その後、いかがでしょうか? また、役の見どころをお願いします。
豊田:その後ですか。その後……そうですね。ほぼあの頃の俺とは全く違うんですけど。あの頃は、すごく思い悩んではいたんですけど、今はもうがっちりとセリフとか脚本が固まっているので、80パーセントは定着しています。残りの20パーセントは本当に初日に発するまで悩みたいと思っていて。残りの20パーセントは本当に初日に発するまで悩みたいと思っていて。今決めちゃってもなんか後悔しそうだなと思っていて。本当に最後の最後まで悩んで、比企文哉という人間を完成させたいなと思っているので、今は80パーセントとさせてください。
――今回、同じグループヴァサイェガさんとの共演となりました。そちらの方はお二人いかがでしょうか。
ヴァサイェガ:完全な同期なんですよね。入所して13年目なんですけど、初めてなんですよ、こうやって外部の仕事を二人でさせていただくのは。
でもなんだろ、やっぱすごい長いし、仲が良いんでめちゃくちゃやりやすいです。超やりやすいのでたすかりました。しかも、こういう作品だったからこそ、話すことが大事ですね。これってこうだよね、これってこうだよねって話すことが大事だったので、めちゃくちゃやりやすい。稽古が終わっていつも一緒に帰っているんですけど、その話ばっかりしていて、ここさっき変わったけど、本当にこれで合ってる? みたいな。
――続いて高柳さん、細貝さん。高柳さんは出演が決まってから、細貝さんは小さい頃に原作のゲームをプレイされたことがあるとのことですが、原作を知っているからこそ楽しめるポイントをぜひ教えて下さい(ネタバレにならない範囲で)。
高柳:本当にゲームの中で流れる音楽が劇中で流れたりとか、見覚えのあるフォントの文字だったりとか、かまいたちの夜には選択肢が本当にいろいろあるんですけど「そうはならんやろ」って選択肢があったりするんですけど、今回の舞台にもそういった風なものがあって、原作のファンの方たちも喜んでもらえるポイントなのかなって私は思っています。
細貝:かまいたちの夜が選択をしていくゲームじゃないですか。それによってキャラクターの人生が変わっていくみたいな、ゲームをプレイしていくとその責任も背負わされていくみたいな。その気持ちでぜひお客さんにも教えていただけたらなって。
あなたの選択によって僕たちの人生がもしかしたら変わってしまうかも、こうなってしまうかも、みたいな。そういうドキドキハラハラも持ちつつ、楽しんでいただけたらなってあります。
――石本さん、塩月さん。今回マルチエンディングになりますが、稽古場ではいかがでしたでしょうか? これまでの稽古で通じて印象的だったことなどございましたらお願いします。
塩月:最後の結末が28通り、そして、他の選択肢もあるとちょっとずつ違ってて。本当にちょっとずつセリフが違ったりして、人が固まっているのを見て、あ、なんだっけ? 間とかが流れるような稽古だったんですけど……混乱しながらここまでこぎつけました。
石本:皆さんが言ってるように、かまいたちの夜は大人気で200万を売れたゲームなので、やってくれた方が来ることもあれば、出演者のファンの方も来ていただいたり、推理好きの方が来ていただいたりとか、たくさんの方が来てくれると思うのですが、かなり今回は難しいと思います。
お客さんが推理して答え合わせをするんですけれど、そのお客さんの推理で自分が選ばれたくないみたいなお芝居したりする方も増えてきたりするんですけど、やっぱ平等に見たら本当にみんなが怪しくなったりとか、みんなが選ばれるになってるんですよ。なので僕はその辺を注意しながら、あとでダメ出ししたいと思いますね。
ヴァサちょっと選ばれたりしてたなとか、みんな選ばれたりしてたみたいなお芝居しないように。野坂さんの演出の通りやっていれば、全員が全員怪しくなるので、その辺を楽しんでいただきながら、自分なりの推理をしていただいて最後まで楽しんでください。
――野坂さん。「かまいたちの夜」の大ファンということで、演出面のみどころはどんなところでしょうか。本作ならではの楽しみ方を、ファンの目線と演出の目線からお願いします。
野坂:すごく大事なお話になるんですけれど、(原作の)我孫子先生と一緒にやりましょうといって、先生がブレーンに入ってくださった時から何が舞台でできるのか、舞台ってどういうトリックが展開できるのかっていうことを2年前ぐらいから話し始めていき、本作にこぎつけていったんですけれども。その過程の中で、かまいたちの既存の作品からちょっとこう、外れていったりとかする時もあったりしたんです。
やっぱりかまいたちの1の世界が欲しいですとか、2の世界が欲しいですってことで、書き直しとか、役者さんに届く前に多分10何個以上書き直していただいてできあがっている脚本なんです。
ネタバレじゃないと思うんですけど、3種類の演技を求められる状態で、脚本においては3本の脚本構成になってます。それプラス100通りの選択肢があるので、やってて初めて気づいたのが、こんな舞台があるんだなっていうすごい作品になっております。
ファンの方が見られた場合は、要所要所にもこそばゆいところがいっぱい準備してありますので、ここでこういう形の1で使っていたネタが、2のところがこういう風に使われるんだみたいなものは、もう随所に随所にあります。
初めて見られる方にも用意できるものは用意して作ってあるので、楽しんでいただければと思います。
とにかく舞台ならではのトリックなんで、見に来ていただけるとわかるんですけれども、言葉で説明してくれって言われちゃうと……見ないとちょっとわからない。なおかつこれが動画配信とかしてできればよかったんですけれども、動画配信とかは一切しなくて、劇場に来てもらわないと見られなくなっちゃいますので、ステージ数少なめなんですけれども、ぜひ劇場に足運んでいただいて、僕たちが作ってるお芝居見てほしいなと思います。
――最後にヴァサイェガさん。最後に、楽しみにしていらっしゃる方に一言お願いします。
ヴァサイェガ:そうですね、昨日ちょうど「かまいたちの夜×3(トリプル)」というswitchのゲームが発表されて、すごく良いタイミングでこの舞台ができるので、30周年の記念としてこの舞台、そしてゲームと。すごい盛り上げる年になってるので。本当にゲームのファンの方もそうじゃない方も、舞台を見に来ているけどゲームをしている気分で、純粋に楽しむ気持ちをもって見ていただけたら嬉しいと思っております。
明日から初日ですが、本当にみんなで誰一人欠けることなく、精一杯頑張りたいと思っております。
ゲネプロレポート
結論からお伝えすると、本作は昨今のマーダーミステリーやイマーシブシアターに類する、体験型エンタメに近い存在です。客席が参加できる「キャラクターの選択肢」ということに留まらない仕掛けが随所に盛り込まれていていました。
また、舞台の構造は実に綿密に設計され、全体像を理解するには一筋縄ではいかない内容になっています。それだけに全体像を理解できた時の、自分たちが物語に没入していることに気づいた時の気持ちよさは格別なものになるはずです。
原作のゲーム画面を意識した背景ビジュアルに走るドット絵テイストの文字列。
聞き馴染みのあるほのぼのとしたり、疑心暗鬼を生み出す原作では緊張感のあるBGM。
舞台が始まった瞬間に、グッと『かまいたちの夜』の世界に引き込まれます。
登場人物たちは、聞き馴染みのあるキャラクターたちの名前であり、死体として転がっているのも原作通りのキャラクター。死に方さえ違えど、まさにスーパーファミコンで体験した『かまいたちの夜』が目の前に再現されます。
陸の孤島と化した雪山のペンションによるクローズドサークル。突然現れた死体をよそに、生きている人間同士が疑心暗鬼となっていく……。ここまでは、元々想像していた『かまいたちの夜』の舞台化という印象で、ファン目線としても「これこれ!」と嬉しいものではありますが、そこから何かがおかしく、変容していきます。
スクリーンを多用し、多重構造の物語がひも解かれていくうちに、数多くの死体が生まれていきます。
そして、中盤には全体構造にメスを入れる大きなうねりが発生し、その全体像の片鱗が垣間見えます。そして「あのシーンはそういう意味だったのか……?」という気付きに至ると、グググっとさらなる物語の深淵に踏み込んでいることでしょう。
キャストはシーンによって役割が変わっていきます。
ストーリーテラーという役割を担うことになる伊月(演:ヴァサイェガ渉)は、時にキャラクターとしてコミカルに、時に名推理を披露する探偵役を担う。そのフレッシュで真っすぐな演技は客席は選択肢を選ぶことで、彼の行動に介入できるということが、俯瞰的な感覚から主観的な没入度を生み出していきます。
伊月とは別の意味でキーパーソンとなる、比企(演:豊田陸人)も中盤から存在感を示し、物腰の柔らかい雰囲気から想像もできない鋭い推理は会場の空気を変えてくれます。
脇を固める、他のキャストもアドリブ要素の強い本作を臨機応変に物語を紡いでいき、見事に舞台を支えています。
ゲームという主観的なコンテンツから舞台という受動的なコンテンツとして再現された『かまいたちの夜』の新しい形。そして、それだけに留まらない形へと昇華している本作。
脚本・演出、キャストはもちろん、観劇する側への挑戦とも考えられます。キャスト、制作陣、そして客席が一体となって作り上げる体験型舞台、気になっている方はぜひご覧ください。
取材・文:木皿儀/カメラマン:ケイヒカル
<公演概要>
「かまいたちの夜〜THE LIVE〜」
原作︓我孫⼦武丸
構成・演出︓野坂実
脚本︓望⽉清⼀郎
出演︓
ヴァサイェガ渉
⾼柳明⾳
ドロンズ⽯本
塩⽉綾⾹
⽥中孝宗
⼤髙雄⼀郎
槙原唯
⾕⼝就平
細⾙圭
安⽥裕
豊⽥陸⼈ ほか
【東京】2024年6⽉20⽇(⽊)〜6⽉23⽇(⽇)
場所︓シアター1010(〒120-0034 東京都⾜⽴区千住 3-92 千住ミルディスI番館11F)
チケット料⾦(全席指定・税込)︓S席 9,900円/A席 9,000円
【⼤阪】2024年6⽉28⽇(⾦)〜6⽉30⽇(⽇)
場所︓COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール(〒540-0001 ⼤阪市中央区⼤阪城3番6号)
チケット料⾦(全席指定・税込)︓⼀般 9,500円
⼀般発売︓5/29(⽔)10︓00〜
公式 X(旧 Twitter)︓https://twitter.com/kamaitachi_st
公演公式サイト︓https://kamaitachi-stage.com
お問合せ︓stage.contact55@gmail.com
宣伝︓キョードーメディアス
協⼒︓スーパーエキセントリックシアター、スパイク・チュンソフト
主催・製作︓NoSty(ノサカラボ/style office)