【ゲネプレレポート】プレイングシアター『ベルヒモス夫妻の休日』選んだ複数の選択肢のよってエンディングが変化する! 能動的に体験するイマーシブシアター的エンターテインメント

レポート

2024年7月13日~15日まで実施される『ベルヒモス夫妻の休日』。一般的な演劇とは異なり、昨今の体験型エンタメに類する新ジャンル「プレイングシアター」を提唱した作品です。今回は、特別に前日に実施したゲネプロ公演を体験させて頂きましたので、そちらのレポートをさせて頂きます。

※ゲネプロのレポートに関して、大きなネタバレは含んでおりませんが、先入観を無く観劇したい方は、事前にこちらの記事を読まずに観劇することをお勧めいたします。

プレイングシアター
「演劇」×「ゲーム」の新感エンターテイメント。【プレイングシアター】
お客様が主軸に物語を進め、キャストから情報を集めたり、アイテムを使ったり、上質な選択肢を乗り越え複数あるエンディングにたどり着くのを目的とした一風変わった作品になります。
脱出ゲームやマーダーミステリーに並ぶ作品にしたい。その記念すべき第一弾が、リカバリートランプシリーズになります。

世界観設定:リカバリートランプとは
異世界平和維持団体であり、人間の心に巣食う破滅衝動【トランプの火種】を回収する存在である。
彼らが言うにはこの地球に住む住民は【トランプの火種】を回収できる特異体質にあるらしくあなたたちに協力を求めてくる。
あなたたちは様々な異世界を飛び回り、異世界人の中に眠る【トランプの火種】を回収することになる。


会場は、閑静な住宅街にぽつんと佇む「月兎耳館」。あいにくの雨模様ですが、会場に到着すると進行役の「創雪院銀仁朗」さんが招き入れてくれます。その時点から、自分を客人として扱って頂き、今回の異世界平和維持団体に自分が属する過程が描かれます。
その後、案内された箇所で異世界平和維持団体のメンバーとやりとりを行い、今回の「トランプの火種」を回収する業務に入る形になります。導入からここまでの進行で、一切のメタ的要素のない案内となっており、世界観への没入を手助けしてくれます。そして、そこから異世界へと向かい、心理カウンセラーとしてそこにいる住人たちと対話や部屋の探索、そして選択を行っていくことになります。

※写真のプレイヤーは筆者ではありません。

体験した感想としては変則的な「イマーシブシアター」です。
一般的なイマーシブシアターは、目の前で行われる演劇、各キャストの目線を楽しむという要素に特化した進化した演劇です。キャストとの交流もあるものもあります。したがって、本作はそれに内包されるか、もしくは延長線上にあるものと考えて下さい。また「脱出ゲーム」を嗜んでいる人に分かりやすく伝えると「ルーム型」の謎解きゲームの、謎解き要素よりもキャストとの交流が豊富な作品、という印象を受けます。

登場人物は三人いますが、個別に会話を楽しむことができます。それそれが知っていること知らないこと、アイテムを提示することで物語が進展することもあります。そういったキャストとの交流を楽しみたい人には、とてもお勧めのシステムでした。筆者もまじめに取り組むべき部分には真摯に会話と思考を巡らせましたが、少し余裕があるような部分ではふざけて、その場の空気を変えるような発言を楽しみました。リアルに反応してくれるキャストとの交流ができるタイプのコンテンツの醍醐味ですね。
具体的な内容には触れませんが、今目の前にいる「人」に対してどんな言葉を投げかければいいのか……そういった言葉を丁寧に選ぶという行為が新鮮でした。それはゲーム的な設定もありますし、シチュエーション設定がセンシティブな部分だからということもあります。難しいです……だからこそ「楽しい」という感覚もあります。言葉や会話というものを改めて考えることができる体験に感謝の意を表します。

また本作の特徴として、物語の分岐があります。
ただし、アドベンチャーゲームの様に明確な指示や選択肢が提示されるわけではありません。あくまでシームレスにプレイヤーが判断して行動したことが、何かしらの分岐につながるという形になっています。筆者もエンディングまで、自分がやりたい形の行動を取っていったのですが、どこに選択肢の分岐があったか(いくつかは分かりましたが)全容は把握できませんでした。そして、自分が選んだ行動によるエンディングを体験することで、自分たちだけの物語体験という部分も感じられます。これはいわゆるマーダーミステリーに近い印象も受けました。

筆者は『ダイヤ』エンド。他にも多くのエンディングがあるそうで、マルチエンディングというのも本作の魅力。色々な物語を体験したくなる、リプレイ性も兼ねているのが特徴です。

◎世界観への没入体験が好きだ
〇キャストとの交流を楽しみたい
〇自分だけの物語を体験したい

といったイマーシブシアターや脱出ゲーム、マーダーミステリーといった体験型コンテンツの一つという形で、物語体験を楽しむのが好きな人にお勧めです。昨今、様々な体験型エンタメが生まれてきている機運がありますが、新たな試みとして今後の展開も楽しみな公演でした!

取材・文:木皿儀

公演詳細
『ベルヒモス夫妻の休日』

期間 2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)
劇場 月兎耳館
出演 半井糸士、大月健三、楓怪髏子
脚本 創雪院銀仁朗
演出 創雪院銀仁朗
料金(1枚あたり) 2,000円 ~ 3,500円
【発売日】2024/05/29
前売り・一般…3500円
U-25…2500円
(感謝状割引…-500円。前作の参加者にお配りした感謝状データを当日ご提示ください。)
オンライン…2500円
公式/劇場サイト
https://garapagosginji.wixsite.com/my-site
※正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

タイムテーブル 7/13 13:00~
7/13 16:00~
7/13 18:00~(生配信あり)
7/14 11:00~
7/14 13:00~
7/14 16:00~
7/14 18:00~(生配信あり)
7/15 11:00~
7/15 13:00~
7/15 15:00~
7/15 18:00~(アフタートーク生配信のみ)

あらすじ
あるところに父、母、息子の3人で暮らす幸せな家族があった。
その息子の両親は、息子の誕生日に熊の人形を買い与え、息子は家族みんなでピクニックに出かけようと提案した。
それが崩壊の1歩だとは知らずに..
あなたは心理カウンセラーとして、この家族の蟠りを解消する事はできるだろうか。
全てはあなたの「選択」次第である。

スタッフ 企画・制作 劇団ガラパゴス
脚本 創雪院銀仁朗
演出 創雪院銀仁朗
演出補佐 吉沢萌々茄
音響 山内美怜奈
カメラマン 平はるむ
宣伝美術 日向猫猫