【ゲネプロレポート】舞台版『Solliev0』ドラマ版から続く物語、2人が選び取った答えとは―

2024年4月1日から5月6日までテレビ神奈川などで放送されたドラマ『Solliev0』（ソッリエーヴォ）。本作の舞台が、8月2日（金）に品川プリンスホテル・Club eXで初日を迎えた。
今作は、異母兄弟の天月冬真（演：和田琢磨）と天月春陽（演：染谷俊之）たちが経営するイタリアンレストラン「Solliev0」を舞台にした物語だ。
舞台版では脚本・演出をほさかようが務め、テレビドラマにも出演した染谷、和田、井阪郁巳、安井一真、谷口賢志のほか、滝澤諒、酒寄楓太、吉田晃太郎、久保侑大、正木郁が出演する。

メディアクトでは、初日に先立って行われたゲネプロ公演の様子をレポート。ストーリーの核心に触れるネタバレはないが、劇中写真を多く含む記事のため、まっさらな状態で観劇したいファンは観劇後に読むことをおすすめしたい。

ドラマ『Solliev0』の舞台となっていたのは、小さなイタリアンレストラン。その店には、料理とは別に来店するお客様の悩みを解決するという「裏メニュー」があった。幼馴染の幼馴染の虎太郎（演：廣野凌大）とその友達、空（演：横田龍儀）と共に冬真と春陽はおもてなしとトラブル解決に勤しむ順調な日々を送っていた。

しかし春陽は、実は大企業「天月ホールディングス」の跡取り息子で、30歳になったら家を継ぐと父親と約束をしていた。期限が過ぎ、父親の秘書、久住楓（演：井阪郁巳）に会社に戻るよう催促される中、父親が病気で余命あと僅かであると知らされる。父親の死期に合わせたかのように、謎の男・新田司（演：谷口賢志）が接触してくるなど、冬真は今までの兄としての姿から少しずつ変容していく。

舞台は、衝撃的なラストを迎えたドラマ最終回の続きから幕を開ける。

虎太郎の死後、冬真は春陽の代わりに天月ホールディングスの代表に就任。春陽は御子柴千大（演：安井一真）や伊藤瑛士（演：滝澤諒）達の手を借りながらSolliev0に身を隠していた。

物語が進むにつれて、過去に起きた春陽の誘拐事件や母親の死の真相が明らかになっていく。過去の出来事や登場人物たちの思惑がつながっていく巧みな脚本は、ほさかようによるもの。舞台から入っても把握できるストーリー展開ではあるが、より深く物語に入り込むために事前にドラマの視聴をおすすめしたい。

冬真の本当の目的とは何なのか―。2人が選び取った答えとは―。周囲の人間達も巻き込みながら、冬真と春陽の愛憎劇は終わりに向かって加速していく。

今作の見どころの1つは、深みを増した登場人物達だ。ドラマ版では点と点で存在していた登場人物たちが、舞台では線につながるような作り方になっている。それぞれの心情が丁寧に描かれているため、物語により没入することが出来る。謎の男として描かれていた新田や楓が抱えていた秘密なども明らかになり、登場人物達の関係性に厚みを持たせていた。

冬真はドラマ版よりも台詞が多く、感情の発露も増える分言葉のひとつひとつが重要な意味を持っていた。和田の表情づくりや視線の動きなど、繊細な芝居が天月冬真という人間に生々しさを持たせていた。
傷つきながらも真実と向き合おうとする春陽は、染谷が熱演。痛々しい姿は観劇していて胸が痛くなることもあるが、染谷が春陽の感情を丁寧に紐解いてくれたからこそだろう。

終盤では言葉と視線を重ねるたびにむき出しになる兄弟の本音が、観客の心を惹きつけていた。

公演時間は休憩なしの約2時間10分。クラブeXの特徴である円形のステージ上の装飾はシンプルで、俳優たちの芝居をリアルに感じることが出来る。座る席によって見える景色や登場人物たちの表情も変わってくるため、受け取る印象も違うのではないだろうか。
Sollievoは、イタリア語で「救い」を意味する言葉だ。2人が選び取った道が誰にとって、どのような救いになったのか―、結末は、その目で見届けてほしい。

舞台『Solliev0』は8月12日(祝・月)まで品川プリンスホテル・クラブeXにて上演される。

取材：水川ひかる／写真：ケイヒカル