【ゲネプロレポート】劇作家・末満健一が「TRUMPシリーズ」15周年アニバーサリー公演、舞台『マリオネットホテル』

レポート

2024年9月14日(土)より上演される舞台『マリオネットホテル』。初演から15周年を迎えた末満健一のライフワークとも呼べるTRUMPシリーズの最新作。今回メディアクトでは、初日の公演に先駆けて実施されたゲネプロ公演の模様とキャストの開幕コメントをお届けする。

ゲネプロレポート

完全階級社会である吸血種の世界。特級貴族であるダリ・デリコ(演:染谷俊之)のもとに、差出人不明の一通の手紙が届く。手紙に誘われたダリが或る古びたホテルに赴くと、支配人ムンク・ミーラン(演:神農直隆)や従業員たちに歓迎される。

そのホテルは従業員や宿泊客の全員が、何者かによってイニシアチブを掌握されている《マリオネットホテル》であった。

そこにはダリと婚約破棄となったフリーダの妹であるジョー・ヴェラキッカ(演:愛加あゆ)と弟のエゴ・ヴェラキッカ(演:梅津瑞樹)、ダリの亡き父クロードの部下であったモネ・スタンフィールド(演:瀬戸かずや)、ダリの旧友であるゲルハルトの妹フランチェスカ・フラ(演:川崎愛香里)、他にも名門デリコ家に縁のある者たちが集まる。
ダリから婚約破棄されたことを問い詰めるジョーには適当にあしらうダリ。その態度に激高する姉想いのエゴは人形を片手にダリを責め立てる。このように様々な人間模様が見え隠れする中、イニシアチブの命令によってホテルの外に出れないことが発覚し、ますます真相が遠のいていく。

状況を作り出した「人形遣い」は誰なのか? この秘密を解き明かそうとするダリたちだが、様々な因縁が糸のように絡み合っている……。

本作は「TRUMP」シリーズに含まれ、2017年の『グランギニョル』の前日譚に当たり、その世界観が物語に盛り込まれている。そして、クローズドサークル(外界との往来が断たれた状況・事件)を利用した、ミステリー作品でもある。

さて、ミステリーには本格と新本格といたカテゴライズがあるが、本作はクローズドサークルを利用した、特殊設定ミステリー作品である。特殊設定ミステリーとは、現実では到底あり得ない状況がはじめから設定として盛り込まれているものを呼ぶ。そこに特殊設定ならではの理由によるクローズドサークルが形成され、ワンシチュエーション作品として構成されている。
吸血種(ヴァンプ)、繭期、イニシアチブ……そういった現実には起きない設定を理解し、それらを精査することで真実が見えてくる構造である。
特に重要なものは「イニシアチブ」という設定。ヴァンプがヴァンプを噛むと、噛んだ者と噛まれた者の間に主従関係が生まれ、上位からの命令には逆らえず、遵守するようになる。今回の「マリオネットホテル」に関係するものは誰かにイニシアチブを結ばれており、しかし誰に奏されたかは記憶していない。つまり、そういった命令を去れているのではないか、というところから紐解いていく。

新たな情報が出てきては二転三転していき、黒幕が誰かを突き止める大謎以外にも不可思議な状況や複雑に絡み合う人間関係が、思考するミステリー作品としての重厚感を与えている。伏線が散りばめられ最後まではどうなるかわからない物語は、休憩なしの2時間20分をあっという間に溶かしてくれるだろう。

このように特殊設定ミステリーの真相を解き明かすワクワクがありつつ、ヴァンプとしての悲哀や特殊な人間関係が随所に盛り込まれていて、「TRUMP」シリーズらしい独特の雰囲気も楽しめる。
この作品単体で内容を理解できるような丁寧な作り方をされているが、他のシリーズ作品に関わる人間関係なども描かれているため、既存シリーズを追っているファンの方々はそれらを。これを機に様々なメディアで展開している作品を追っていくのも良いだろう。
主人公ダリ・デリコを演じる染谷俊之も、後日談となる『グランギニョル』につながるキャラクター造形で、横柄で皮肉屋なところは踏襲しつつ、また少し違った温度感を楽しむことができるので注目だ。

キャストコメント

●初日を迎える今の気持ち

【染谷】
サンシャイン劇場というのは、本当にいろんな思い出が詰まっています。『グランギニョル』もここから始まりましたし『COCOON~星ひとつ~』もここでした。それから月日が経って過去の『グランギニョル』の前日譚を『マリオネットホテル』としてまたこのサンシャイン劇場で迎えて、お客様に届けられるというのはすごく嬉しく思います。

【愛加】
約1 か月間稽古をやってきて、いよいよ本番を迎えます。何作か出させていただいた大好きなTRUMP シリーズ、その中でも『グランギニョル』はとても思い出深くて大好きな作品なので、その前のお話を前日譚に出演させていただけるということがすごく嬉しいです。
参加させていただけることへの感謝の気持ちと共に、お客様がどんなご感想を持たれるのかドキドキしています。

●見どころ、注目ポイント

【染谷】
挙げたらキリがないのですが、伏線がいっぱい散りばめられてるので過去の作品を観てから伏線を楽しむのもいいと思いますし、このクローズドサークルというミステリーを純粋に楽しんでいただくのもありなんじゃないかなと思います。

【愛加】
個人的には一緒に『グランギニョル』をやっていたダリ・デリコ、みんなの大好きなダリちゃんがまた帰ってくるぞというのが見どころです。もちろん他のみんな皆さまもとても個性的なのでそれぞれの生きざまもポイントかなと思います。

●観劇に来てくださる皆様へメッセージ

【染谷】
この『マリオネットホテル』は『グランギニョル』の前日譚で、過去にあった作品に繋げるというちょっと珍しい形の試みです。でも、今日までたくさん力を合わせて稽古してきましたので、この『マリオネットホテル』単体でもきっと楽しんでいただけると思います。末満さんもとっても頑張っていますので(笑)、千穐楽までみなさん応援よろしくお願いします。

【愛加】
TRUMP シリーズは観れば観るほど奥深くて、色々発見のある作品だと思っているので何度でも観に来ていただきたいところではありますが…有難いことにほぼ完売と聞いています。私たちは全力で毎公演努めますので、劇場や配信で楽しんでいただけたらとても嬉しいです。お待ちしております。

取材・文:木皿儀

■公演概要
舞台『マリオネットホテル』

作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
出演:染谷俊之、愛加あゆ、梅津瑞樹、神農直隆、川崎愛香里、トヨザワトモコ、末満健一、瀬戸かずや
池之上頼嗣、井上望、貴田由佳子、小松育海、中道杏菜、真弓
スウィング:笠原希々花、中山脩悟

日程・会場:
2024年9月14日(土)~29日(日)東京・サンシャイン劇場
2024年10月3日(木)~6日(日)大阪・サンケイホールブリーゼ
チケット料金:11,000円(全席指定・税込)/一般発売:8月3日(土)10:00/主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント

■舞台『マリオネットホテル』公式ホームページ
https://marionette-hotel.westage.jp/

[TRUMPシリーズ公式サイト]
https://trump10th.jp/

[公式X:ワタナベ演劇公式]
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