【ゲネプロレポート】「誰も救われない、誰も報われない物語」をキャッチコピーに、血塗られた実在の悲劇をモチーフにして描かれる“王ステ”シリーズの第6弾『黄昏の王』レポート

ILLUMINUSによる「誰も救われない、誰も報われない物語」をキャッチコピーに、血塗られた実在の悲劇をモチーフにして描かれる“女王ステ”シリーズ。その男性俳優版“王ステ”シリーズの第6弾『黄昏の王』が、10月3日(木)東京・こくみん共済coopホール/スペース・ゼロにて幕を開ける。

メディアクトでは、初日に先立ち実施されたゲネプロ公演の様子を劇中写真とともにレポート。ストーリーに関するネタバレは含まないが、作品をまっさらな気持ちで楽しみたい場合は、観劇後に読むことをおすすめする。




舞台となるのは、17世紀後半のイギリス。黒死病が流行するイギリスは、黄昏の時にあった。
ヨーロッパの気候は寒冷化し、飢饉が起こり、戦乱の多発によって人口は激減。悲惨な状況の中、人々は救世主<メシア>を求めていた。
長い旅の果てに霧の都市ロンドンへとやってきたヴラド(演:佐藤弘樹)とヴィンツェル(演:鵜飼主水)は、血を抜かれたような変死体を見つける。連続不審死事件の真相を探るうちに、2人は以前逃したジェリコ(演:磯野大)の存在を感じる。ヴラドとヴィンツェルはジェイ(演:森田晋平)達が率いる革命軍に迎えられ、ジェリコの影を追うことになる。
その先に、さらなる闇が広がっていることも知らずに――。


革命前夜のイギリスを舞台に、救世主<メシア>を巡る悲劇の幕が上がる。
今作は革命が物語の核となるが、分かりやすい正義や悪に留まらず登場人物にそれぞれのドラマがある。深みのある登場人物たちこそ、“王ステ”の魅力の一つと言えるだろう。
ジェリコを演じる主演の磯野大は圧倒的な存在感を放っており、彼が舞台に立つと終始目を奪われる。妖艶な雰囲気を漂わせるジェリコは“人ならざる者である”と一目で理解出来るが、彫刻のように美しい顔の裏には底知れぬ悲しみが垣間見える。薄氷の上に成り立つ繊細な機微を、磯野が今作でも熱演。彼の背負った悲しい過去を思えば、見方によっては誰よりも人間らしい存在のようにも見えるかもしれない。
ジェリコをメシアと称えるロンドンの革命家・エヴァンを演じるのは、足立英昭。その真意は謎めいているが、足立の芝居はエヴァンが秘めた感情を、その眼差しや雰囲気で雄弁に物語っていた。
ヴラドとヴィンツェル主従の無二の関係性は、今作でも健在。何気ない会話や戦闘シーンなど、あらゆる場面で2人の強い絆を感じることが出来る。佐藤はヴラドの高貴さ、うちに秘めた悲しさを見事に表現。その傍らに控えるヴィンツェルを演じる鵜飼は、全身でヴラドへの献身を示し続けた。永遠の旅路を共にする2人だからこその絆に、ぜひ注目してほしい。
ヴラドとヴィンツェルを迎え入れる革命軍の中心人物・ジェイを演じるのは森田晋平。王国軍の捜査から逃れるために公爵という立場を隠し、変装をして活動をしている。田中晃平が演じるブラッドフォードと共に、皆をまとめ先頭に立つ姿にカリスマ性を感じる。革命軍は、他にも考えるよりも先に体が動くブレイク(演:宮脇優)、若手だが心優しいバート(演:石沢瑠架)、知能派のコナー(演:馬越琢己)、ムードメーカーだが怒ると怖いガブリエル(演:武井雷俊)など個性的なメンバーが集まっている。シリアスな空気が漂う中、彼らの掛け合いが物語の清涼剤に感じるようなシーンもある。
革命軍と対立する王国軍は、白金倫太郎が演じるルイスが率いる。ルイスは若くして将軍につき、成果のためなら人を殺すことも厭わない冷徹な心を持った男だ。その脇を固めるのは拷問を得意とする欲深い男ジェフリー(演:服部武雄)、王国軍の在り方に悩むロンドン出身のロイド(演:高岡裕貴)。王国軍の3人とサーヴァントが歌い上げる劇中歌「WW」は威圧感があり、彼らが強さの象徴であるという説得力に溢れていた。
ネーデルランドの総督・ウィリアムを演じるのは米原幸佑。従者のダグラスは上仁樹が演じる。それぞれ過去作の子孫を演じているため、この粋な配役に嬉しくなるファンも多いのではないだろうか。劇場の空気を震わせるような、終盤の歌唱シーンにも注目したい。
様々な人間の思惑が混ざり合う物語はもちろん、多彩でスピード感溢れる殺陣も健在。シリーズを通して出演している鵜飼が、今作でも自ら殺陣師を務めている。

王ステのキャッチコピーは、「誰も救われない、誰も報われない物語」だ。今作もそれに違わず胸を締め付けられるような展開が繰り広げられるが、一筋の光も垣間見える。ジェリコとヴラド、ヴィンツェル達、そして革命軍と王国軍の戦いはどのような終わりを迎えるのか――黄昏を越えて彼らが掴んだ黎明を、どうかその目で見届けて欲しい。

取材:水川ひかる/撮影:ケイヒカル










舞台「黄昏の王」
日程:2024年10月3日(木)~6日(日)
東京都 こくみん共済 coop ホール / スペース・ゼロ
■公演日程
10月2日(水)19:00~ゲネプロ
10月3日(木)14:00①/19:00②
10月4日(金)14:00③/19:00④
10月5日(土)13:00⑤/18:00⑥
10月6日(日)12:30⑦/16:30⑧
※公演時間は休憩含め2時間20分を予定
■劇場
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
https://maps.app.goo.gl/JRZccsouYGYaZZMZ6
■作・作詞・演出:吉田武寛
キャスト
ジェリコ:磯野大
ヴラド:佐藤弘樹
ヴィンツェル:鵜飼主水
エヴァン:足立英昭
ダグラス:上仁樹
ジェイ:森田晋平
ルイス:白金倫太郎 (7m!n)
ブレイク:宮脇優
ブラッドフォード:田中晃平
バート:石沢瑠架 (UNiFY)
コナー:馬越琢己
ガブリエル:武井雷俊
ジェフリー:服部武雄
ロイド:高岡裕貴
ウィリアム:米原幸佑
■舞台公式HP
https://www.kingstage6.net/
■舞台公式X (旧Twitter)
https://x.com/ou_stage