今牧輝琉「世間をざわつかせたい!」ミュージカル「No.6」公開稽古・取材会レポート

レポート

10月中旬、ミュージカル「No.6」の公開稽古が都内の稽古場でおこなわれた。本作は2003年から2011年にかけて発行された、あさのあつこによる人気ディストピア小説『NO.6』のミュージカル化作品。理想郷と呼ばれる「NO.6」に住むエリート少年・紫苑と、謎の少年・ネズミの出会いから始まるストーリーだ。メディアクトでは、公開稽古と、稽古終了後におこなわれた取材会の様子をレポートする。

この日は、稽古が始まって2週間ほど。公開稽古の開始時間前、動きやセットの位置などを指定するために床に貼られた目印を確かめながら、各々がゆったりと、しかし気持ちを引き締めた表情で時間を過ごしている。入念なストレッチ、セリフの確認、声出し…。なごやかではあるが、やるときはやる、とメリハリのある座組であることが伝わってくる。取材のために並んだ各メディアを見て今牧が「授業参観みたい!」と驚いた様子を見せると、稽古場に笑い声が上がった。

時間になり、抜き出してのシーン披露が始まった。まずはストーリー冒頭部分。紫苑(今牧輝琉)とネズミ(古田一紀)が嵐の中で初めて出会うシーンだ。12歳の誕生日の日、紫苑はいつもと違う嵐に、言葉にできない胸のざわめきを覚えていた。母の火藍(入絵加奈子)に窓を閉めるよう声をかけられながらも、窓へ近づいていく紫苑。そして紫苑のもとに突然飛び込んできた、怪我をした少年、ネズミ。2人の出会いがスピーディに、そしてスムーズに描かれていく。

ネズミが何者なのかという謎とともに、負傷者に対して何の躊躇(ちゅうちょ)もなく初めての縫合などをしていく紫苑に「不思議な少年だ」という印象を与える大事なシーンだ。

続いて、行方がわからなくなってしまった紫苑への想いを火藍と沙布(熊谷彩春)が歌い上げる歌唱シーン。数々のミュージカルに出演してきた2人ならではの、切々とした想いが伝わってくる歌声が胸に迫る。圧倒的な表現力と豊かな声量が、マイクを通さずとも稽古場いっぱいに広がった。

最後は、オープニング曲をキャスト全員で歌うシーンが披露された。歌唱力、強いメッセージを伝えるセリフ力に定評のあるキャストたちが、本作のテーマが詰め込まれた緊迫感のある歌詞をかわるがわるに歌っていく。これから始まる本作への期待を高める1曲だ。

***

公開稽古終了後、キャストたちを囲んでの取材会がおこなわれた。出席者は今牧輝琉(紫苑役)、古田一紀(ネズミ役)、熊谷彩春(沙布役)、日暮誠志朗(イヌカシ役)、泰江和明(楊眠役)、藤原祐規(白衣の男役)、入絵加奈子(火藍役)、吉野圭吾(力河役)。

――稽古が始まって2週間ほど経ちました。今牧さんと古田さんは、はじめのころと比べてお互いの印象は変わりましたか?

今牧:1か月ほど前に一紀さんと一緒に取材を受けさせていただいたのですが、お会いした当初はちょっと怖かったです!(笑) でも一緒に稽古をしていく中で「何て楽しい方なんだろう!」と思うようになりました。今ではまったく恐怖心は無く(笑)、楽しく稽古をしています。

古田:その油断しているところを、ガッと(首をつかむアクション)やっていきますね!

今牧:もうね、ずっとこうやって俺の首を狙っているんですよ!

古田:(今牧への印象は)いい意味で変わりません。初対面で「こういう人なんだろうな」と感じたそのままが持続しています。

――稽古を重ねる中で、「この人の意外な面を見てしまった!」「こんな姿がすてき!」というエピソードがあったら教えてください。

吉野:(日暮)誠志朗くんの脚がきれいです(笑)。本番は短いズボンなので、ぜひ見ていただきたいですね!

泰江:(今牧)輝琉が誠ちゃん(日暮)とやりとりしているのを見て「“お兄ちゃん”している! すごい!」と思いました(笑)。

古田:自分は、圭吾さんが出演されていたミュージカルを高校生の時に見ていたので「本物だ!」と感動しました。画面の中にいた人が目の前に出てきたような感覚です。本作では、芝居で関わるシーンが多いので「今俺は、その人と一緒に仕事をしているんだ…」と夢がかなった気持ちでいます。

――吉野さんと入江さんは、大人の目から見てこの若いカンパニーの魅力についてどのように感じていらっしゃいますか?

吉野:集中力がすごいですね。(脚本・演出の)浅井(さやか)さんの熱意も。その熱意に絶対応えるぞ! というものを感じます。

入江:私は、皆さんの台本がタブレットであることにびっくりしました(笑) 私は紙の台本の世代なので、タブレット端末に台本を? と。それから、皆さん顔が小さくてとてもかわいいですね。圭吾くん(吉野)も言っていましたが、アンサンブルの皆さんも含めて100%のエネルギーでぶつかってくる情熱が素晴らしいです。稽古の今、この熱さなのだったら、本番ではどうなってしまうんだろう? と楽しみにしています。

――皆さまそれぞれの見どころについてお聞かせください。

日暮:イヌカシが、ネズミと紫苑を力河のところへ連れていくシーンが好きです。それから、イヌカシの登場シーンにはぜひ注目していただけたらと思います!

藤原:とても嫌な人の役をやらせていただきます(笑)。「いろはちゃん(熊谷)になんてことをするんだ!」というほどに。存分に嫌っていただけるように頑張りたいですし、そこに注目していただきたいです。

熊谷:私が演じる沙布は紫苑の幼なじみです。だいぶ(今牧と)打ち解けてきて幼なじみらしくなってきたので、引き続きがんばります。小学生のときにたまたま図書室でこの小説(原作「No.6」)を手に取って、すごくはまっていました。大人になってからご縁があるとは思ってもいなかったです。あらためて原作を読み返して、「普遍的なテーマがあって、いつ読んでも胸に刺さる」と感じました。人同士の対立や壁を、どうやって壊していくか…。それをミュージカルとしてお客さまにお届けできることにワクワクしています。

泰江:楊眠という役をやらせていただきます。この作品は、とてもメッセージ性が強い作品です。紫苑とネズミのことだけではなく、“国”やいろいろなことが伝わってきます。今、この作品を上演することに意味があると僕は思っています。楊眠は、この作品を盛り上げるために代弁しているようなシーンがたくさんあるので、そこを本当に全力でがんばっていきたいと思っています。

入江:自分の手の届かない、不安な場所に行ってしまった息子を信じ続ける。自分の不安に負けずに、彼を信じて待ち続ける母の愛と強さが伝わればいいなと思っております。

吉野:人間というものがとても描かれている作品です。ヘビーで重いシーンがありますが、人間くささを出していくとともに、甘めのスパイスをふりかけられたらと思っています。

今牧:台本や原作を読んでいて、他の人物が紫苑に対して感じている「どこかつかめない」「何を考えているか分からない」ということを、僕自身も感じました。それをどう表現するかを模索している最中です。自分自身や、人を信じる強さや愛もたくさん描かれている作品で、浅井さんが「前のめりになって観てもらえるようにしたい」とおっしゃっていたんです。僕もそう思ったので、ぜひ皆さんもそんな風に観ていただけるとうれしいです。

古田:「前のめり」はあくまでも、心の中の姿勢っていうことね!(笑) この作品に流れているテーマやメッセージはとても重いものです。 でも、観ていただいたからには「ああ楽しかった」と最後には思ってもらえるようにしたいです。圭吾さんが「ふりかけ」なので、俺はネズミとして、つかみどころの無い「麺」となってみんなのトッピングを受け止めたいと思っています。

――最後に古田さんと今牧さんから、お客さまへメッセージをお願いします。

古田:どの公演も、絶対に一生懸命がんばるので観に来てください! 劇場でお待ちしています!

今牧:この作品は、「ミュージカルになったらすごく素敵になるんだろうな」と稽古が始まる前から感じていました。情報解禁でざわついた世間を、初日の幕が開いたらさらにざわつかせたいです。がんばるのでよろしくお願いします!

取材・文:広瀬有希/写真:ケイヒカル

ミュージカル「NO.6」

原作:あさのあつこ「NO.6」(講談社)
脚本・演出・音楽:浅井さやか(One on One)
ステージング・振付:當間里美

期間:
【東京】 2024年11月8日(金)~11月17日(日)
【大阪】 2024年11月22日(金)~11月24日(日)

チケット:
9,800円(全席指定/税込)
サイドシート:9,800円(全席指定/税込)
ローソンチケット https://l-tike.com/play/mevent/?mid=730010
銀河劇場チケットセンター https://www.gingeki.jp/

キャスト:
紫苑   今牧輝琉
ネズミ  古田一紀

沙布   熊谷彩春
イヌカシ 日暮誠志朗
楊眠   泰江和明
白衣の男 藤原祐規

<アンサンブル>
元榮菜摘 山﨑感音/池田航汰 石野滉貴 田代 明 松島朱里 村田一紗 山川大智

火藍   入絵加奈子
力河   吉野圭吾

協賛:ローソンチケット

美術:久保田悠人
照明:大波多秀起
音響:門田圭介(K2sound)
映像:O-beron inc.
衣裳:ヨシダミホ
ヘアメイク:瀬戸口清香
歌唱指導:カサノボー晃
アクション指導:六本木康弘(ジャパンアクションエンタープライズ)
舞台監督:久保健一郎
技術監督:堀 吉行
編曲:関向弥生
演出助手:長谷川 景
制作協力:アンデム
票券:Mitt
宣伝美術:江口伸二郎/奈良友里花
宣伝写真:川面健吾

主催:ミュージカルNO.6製作委員会(ネルケプランニング・講談社・アイア)