【レポート】俳優・荒牧慶彦がプロデュース一夜限りの演劇バトル『演劇ドラフトグランプリ THE FINAL』開幕!
2024年12月10日、東京・日本武道館で一夜限りの演劇バトル『演劇ドラフトグランプリ THE FINAL』が開催された。
俳優・荒牧慶彦がプロデュースする革新的な演劇の祭典として2022年、2023年と開催してきた「演劇ドラフトグランプリ」。今回ついにファイナルを迎え、5つの劇団が熱い戦いを繰り広げた。
メディアクトでは、当日の公演内容をレポート。(※グランプリや演目の内容についてのネタバレも含みます。)
オープニングアクトを務めたのは、結成から解散までを彗星のように駆け抜けた『THE FIRST STAR』。一夜限りの再結成に、会場も大盛り上がり。
その後は各劇団員たちが登場。
『雪猿』の座長でありプロデューサーである荒牧慶彦は「この最強のメンバーでグランプリを獲りに行きたいと思います」と、3回目にしてファイナルに賭ける意気込みを語った。
『演劇やろうぜ』の座長染谷俊之は「ちょっとした伝説を作りに来ました」、『SADAMEN』の座長玉城裕規は「我々の運命を皆さまにお預けします。一夜の祭典を共に楽しみましょう」と語った。
『勝部の』七海ひろきは「最強のメンバーで熱い演劇をお届けします」、最後に『アクタゴン』の座長須賀健太が「皆さまに忘れられない演劇体験をお届けしたいと思います」と締めくくった。
トップバッターを担ったのは、『演劇やろうぜ』。タイトルは「約束のピクニック」
ピクニックに来た5人の男たち。ゲストのためにお弁当を作ろうとするが、様々なアクシデントに見舞われてしまう。それでも必死にお弁当を作り続けようとするうちに、実はメンバーの1人が昨年交通事故で亡くなっていることが明らかになる。
“実は死んでいる”という展開をオチに持って来るのではなく作中の早い段階で明かすことで、皆が前を向いていく姿や思い出に寄せる優しさが際立ち、心温まるストーリーだった。
実際にステージ上でお弁当を作るというライブパフォーマンスも衝撃的。かつて武道館のステージでピカタを作り、おにぎりを握り、卵焼きをあんなにもうまく焼いた俳優たちがいただろうか。まさに「ちょっとした伝説」となる作品だった。
続くのは『SADAMEN』。タイトルは「運命(さだめ)」と知るべし」
兄弟の絆を中心に描いた今作。戦国の世にあるまじき仲の良い兄弟たちは、兄の息子である千代丸(演:植田圭輔)が初陣で命を落としたことをきっかけに関係に亀裂が入り始める。兄を守るべしとして生きてきた弟の運命は――…?
テンポの良い応酬や雰囲気の緩急など完成度の高さが光る作品で、20分とは思えない濃密な演劇体験は実力派の俳優たちが揃っていたからこそだろう。座長の玉城の表情ですべてを物語る表現力は圧巻。服部は説得力のある存在感で舞台に深みを持たせ、座組全員で作り上げられた一分の隙もない作品が観客の心を掴んでいた。
『雪猿』はコメディ路線に挑戦。タイトルは「ツンドラクリーム」
物語は、女の子の誘拐事件が起きたというニュースから始まる。犯人を捜して雪山にやってきた山岳救助隊(雪猿)は雪女に出くわす。あわや命の危機――かと思われたところに、ギャル2人が登場。続けてトナカイと人間のハーフなども登場し、物語は予想外のところに向かって加速していく。
美し過ぎる雪女に可愛すぎるギャル2人、そしてトナカイ男。あまりにも濃すぎる登場人物達が集まったが、すべての伏線を回収する脚本や、シリアスな展開の中に盛り込まれる笑いによって観劇後はあたたかい余韻を感じることができた。思わず「ギャル、最強!」と叫びたくなってしまうほどに可愛い廣野凌大と持田悠生の姿は後世に名を残してほしい。ビッグラブが光る、冬にぴったりの心温まる作品だった。
続けて『アクタゴン』が登場。タイトルは「再生する」
ステージに現れたのは、真っ白な衣装に身を包んだ5人の男たち。引っ越しシーンから始まるが、どうやらこの引っ越しはお芝居の一部のようで…?
コントのようなやり取りやテンポの良い台詞回しに、懐柔は終始笑いに包まれていた。途中はまさかの全員一時退場と、武道館のメインステージが無人になるという驚きのシーンも。しかし今作は、笑いがただの笑いで終わらない点が魅力的。何気ない会話すら伏線のひとつだと気が付いた瞬間の連続に驚き続けた観客も多いのでは。
実は5人はすでに亡くなっており、無限地獄に落ちている――と、伏線回収に鳥肌が立ってしまう匠な脚本が光っていた。照明や音楽は一切なく、俳優たちが体当たりで挑んでいたという点も印象的。また、舞台上には過去に演劇ドラフトグランプリで上演された作品についても織り込まれていたりと、演劇を愛する者達が演劇へのリスペクトをもって挑んだ作品だった。
トリを飾ったのは、『勝部』。タイトルは「敗部の叫び」
引退を控えた応援部の木津と高橋が、1人で活動を続けている演劇部員椎名と出会い、外部顧問の萩野の指導のもと1ヶ月後のコンクールに挑むことになった。
かつては名のある劇団員であった教師の七海も加わり、皆が真っ直ぐと演劇に向かう姿が印象的。演劇に対するひたむきさや愛を衒いなく真っ直ぐと叫んだ今作は、まさに演劇の祭典と呼べる今日にふさわしい作品だと言えるだろう。真っ直ぐなエールを送る姿は、どこまでも誠実だった。
大きなどんでん返しや伏線回収はなく、最後までひたむきに演劇と向き合う登場人物たちの魂の叫びが観客の心臓を震わせた。
名作が集まった中、グランプリに輝いたのは『雪猿』。
演出家の三浦 香は、「荒牧さんにどうしても(グランプリを)獲って欲しかった。これから寒いなと思ったら、雪女とトナカイがケンカをしているところを思い出して心をあたためてもらえたら」とコメントした。
3年目を迎えた演劇ドラフトグランプリも、今回で終了。最後に荒牧は2.5次元という文化、演劇への愛を込めたメッセージを語り、ファイナルと銘打つにふさわしい輝かしい祭典は大盛り上がりの中幕を下ろした。
たった一夜限りの祭典だからこその眩しさもあるだろうが、ここで終わりを迎えてしまうのはあまりにも寂しすぎる。いつかまた、演劇愛に溢れた者たちのお祭りに出会えることを楽しみにしたい。
配信情報
LIVE配信を購入した方全員に、一位のチームを決める「投票券」と見逃し配信のあとに「メイキング映像」がついてくる! さらにTHE FINALを記念して『スペシャル特典付きチケット』もご用意しました!
【配信日時】
2024年12月10日(火)17:00
【チケット販売期間】
2024年12月3日(火)19:00〜2025年1月5日(日)20:00
【見逃し視聴期間】
配信終了後〜2025年1月5日(日)23:59まで
※12月20日(金)20:00よりメイキング映像が追加されます
(追加後も本編の視聴は可能です)
【チケット料金】
一般チケット:4,500円(税込)
スペシャル特典付きチケット:5,500円(税込)
【視聴ページ】
https://www.theater-complex.town/ja/articles/aGWp2kNadg3sqqYqF59Sg1
開催概要
荒牧慶彦プロデュース
「演劇ドラフトグランプリTHE FINAL」
【日程】2024年12月10日(火)17:00開演【場所】日本武道館◆総合演出
植木豪
◆総合司会
山寺宏一
◆ナビゲーター
阿部顕嵐
◆現場レポーター
高野洸 福澤侑
◆審査員
集英社「週刊少年ジャンプ」編集長:齊藤 優
小学館「週刊少年サンデー」編集長:大嶋一範
秋田書店「週刊少年チャンピオン」副編集長:福田裕子
ナターシャ「ステージナタリー」 編集長:熊井 玲
◆オープニングアクト
THE FIRST STAR
◆各劇団(出演者・演出)
劇団『雪猿』
【座長】荒牧慶彦
【演出】三浦 香【演劇テーマ】雪山【劇団員】砂川脩弥廣野凌大松田昇大持田悠生
劇団『演劇やろうぜ』
【座長】染谷俊之
【演出】毛利亘宏【演劇テーマ】ピクニック【劇団員】佐藤信長田中涼星富田 翔古谷大和
劇団『SADAMEN』
【座長】玉城裕規
【演出】中屋敷法仁【演劇テーマ】運命【劇団員】植田圭輔髙木 俊服部武雄松島勇之介
劇団『勝部』
【座長】七海ひろき
【演出】私オム【演劇テーマ】部活【劇団員】木津つばさ椎名鯛造高橋祐理萩野 崇
劇団『アクタゴン』
【座長】須賀健太
【演出】川尻恵太【演劇テーマ】引っ越し【劇団員】唐橋 充松井勇歩三井淳平山﨑晶吾
©演劇ドラフトグランプリ THE FINAL
撮影:小境勝巳・佐藤 薫・高田真希子・冨田唯我