【レポート】人類が消えた未来でどう生きる?舞台『7SEEDS~春の章~』レポート

レポート

舞台『7SEEDS~春の章~』が、12月20日(金)こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて開幕した。

原作「7SEEDS」(小学館「フラワーコミックス」刊)は、『ミステリと言う勿れ』『BASARA』など多数の人気作で知られる漫画家・田村由美による名作SF。隕石衝突により人類が滅亡した未来、文明が絶え荒廃した世界を生き抜く男女を描くサバイバルストーリーだ。

メディアクトでは、初日に先駆けて行われた公開リハーサルおよび記者会見の模様をレポートする。

舞台『7SEEDS~春の章~』公開リハーサルレポート

初日公演に先駆けて行われた公開リハーサルでは、冒頭部分(約10分間)に加え、オリジナルキャラクターが登場する研究所のシーン、新巻の過去が明かされるシーンが披露された。

「7SEEDS」舞台化第1弾となる今作『7SEEDS~春の章~』では、原作の1巻からではなく「春のチーム」を中心とした部分に焦点を当てて物語が紡がれる。

全36巻(本編35巻+外伝1巻)に及ぶ超大作のストーリーラインを大胆に組み換えた西田大輔は、脚本・演出家として、オリジナルから2.5次元まで多くの作品を手掛けている。今作でも、多数の人物が複雑に絡み合って織りなす「7SEEDS」の世界観を、演劇ならではの手法で丁寧に描き出している。

冒頭のシーンでは、主人公・花を含む「春のチーム」の目覚めから現在までが描かれる。初対面同士である彼らは見知らぬ土地で目覚め、「ガイド」を名乗る年長の男から衝撃的な事実を知らされる。

直前まで普通の若者として人生を送っていた彼らは、突如訪れた過酷な運命に戸惑いながらも、協力しあって2週間を生き延びていた。

しかし、生命線である飲み水を確保する際、チームのガイド・柳が負傷したことで、物語は急展開を迎える。未知の生物との死闘、そして人間関係の悪化……。運命は、やがて最悪の方向へと走り出す。

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深い傷を負いながらも進み続ける「春のチーム」。

そして、とある理由から単独行動を取るようになった花は、「冬のチーム」のメンバーだという新巻と出会うのだった。

今作では、舞台オリジナルキャラクターとして、村上、柴田という2人の男が登場する。彼らは群像劇を構成する一員であるとともに、観客が物語を理解しやすくするためのサポート役としても活躍してくれる。

謎多き世界に隠された答えとは? 「7SEEDS」が意味するところとは?

登場人物一人ひとりの過去とともに、パズルのピースが1つ1つ観客の手に託される。原作が好きな人も、舞台が好きな人も、この群像劇の見事な厚みをぜひ体感してほしい。

隕石衝突も「現実的に思えてくる」|記者会見レポート

記者会見には、相楽伊織(末黒野 花役)、國島直希(雪間ハル役)、山本涼介(角又万作役)、田口 涼(新巻鷹弘役)、仲田博喜(百舌役)の5名が登壇。公演への意気込みや作品の見どころなどを語った。

――ご自身の役の見どころについて教えてください。

相楽:末黒野 花役の相楽伊織です。この舞台の原作にあたる田村由美先生の漫画『7SEEDS』は、2001年に連載がスタートした近未来SFサバイバルストーリー。作品が始まったのは20年以上前なのですが、今の時代にもすごくリンクしたストーリーです。

「地球に隕石が衝突する」と、言葉だけで聞くと現実味が無いように思えますが、この作品を通してこの世界を生きてみると、それがとても現実的に感じられます。みんなで必死に、まさに全力で生きるような稽古を重ね、あえて皆さんに「届けよう」とせずとも、その熱量やスピード感が自然と伝わってしまう作品になったと感じています。ここで必死に生きている私たちを、劇場で感じていただけたら嬉しいです。

私が演じる花という役は、一見みんなを引っ張っているように見えるけれど、じつは周りのみんなからたくさんのものを与えてもらっている人物だと思っています。そこは紙一重で、演じる上でバランスを取るのが難しい部分でもあるんですが、舞台を観に来てくださった皆さまにも、私や花と一緒に全キャストの思いを受け取ってもらえるように頑張りたいです。

國島:雪間ハル役の國島直希です。僕は今作で初めて、脚本・演出の西田大輔さんとご一緒しました。照明や音響、演出が本当に素晴らしく、センスに溢れて美しく、迫力も満点の舞台です。「7SEEDS」は非常に壮大な物語ですが、その壮大さに負けない演出がついていますので、ぜひ楽しみに観に来てください。

ハルの見どころは、やはり花と一緒にいるシーンでしょうか。ハルは大人数でいるときはツンケンしちゃうけど、花にだけは少しずつ心を開いていく役柄です。なので、花と2人きりのシーンは、僕自身も一番大切に演じています。

山本:角又万作役の山本涼介です。本当にギリギリまで場当たりを行い、たくさん準備を重ねてきました。國島くんも言ったとおり、とても素敵な照明や音に囲まれて、その中で必死に生きる僕らの姿をぜひ見ていただけたら嬉しいです。

角又の見どころは、なんといっても「弓」ですね。(荒廃した世界でも)和服を着て、弓を持って戦っています。そのアクションにご注目いただけたらと思います。

田口:新巻鷹弘役の田口 涼です。本日は記者会見にお越しいただきありがとうございます。本当に素敵な作品が出来上がっていますので、良い記事を書いていただけると嬉しいです。

見てのとおり1人だけ衣装がボロボロですが、これは決して共演者にいじめられているわけではなく、新巻が他のメンバーよりちょっと大人であることとも関係しています。「冬のチーム」のメンバーである新巻が、「春のチーム」の人々とどんなふうに関わりを築いていくのかというところに注目していただけたら嬉しいです。

仲田:百舌役の仲田博喜です。百舌はあまり饒舌に喋る役ではないのですが……、どうか頑張って文字起こしのほど、よろしくお願いいたします(笑)。

百舌はミステリアスなキャラクターで、色々秘めていることが多い。チームに所属していない百舌がストーリーにどう絡んでくるのか、また、舞台オリジナルキャラクターとなる村上・柴田の2人とどういう絡みを見せるのか、というところをぜひ楽しみにしてほしいです。

――相楽さんに質問です。これまで出演されてきた舞台作品と比較して、今作でご自身が成長したと感じる部分はありますか?

相楽:脚本・演出の西田さんとご一緒するのは私も初めてで、以前からお名前を伺っていたこともあり、とても楽しみでした。実際の稽古では、予想をはるかに超える演出手法に感銘を受けました。舞台を良いものにすることだけでなく、役者一人ひとりを見て演出を考えてくださり、細やかな気遣いでお芝居をやりやすい流れを作ってくださるので、本当に演じやすかったです。

アドバイスやヒントを受けて実際に動いてみて、「ああ、こういうことだったんだな」と分かることも多々あり、私自身も気づかなかった部分を引き出していただけたので、そういう意味で大きく成長できたかと思います。

――続いて、仲田さんに質問です。今作のキービジュアル、百舌は帽子を深くかぶっており、顔がかなり隠れる形になっています。公開時に見てびっくりされた方もいらっしゃるかと思いますが、仲田さんご本人のご感想は?

仲田:そうですね、舞台作品のキービジュアルで顔を隠すというのは異例なことですが、百舌は多くを秘めたキャラクターなので。そこは原作に忠実な表現をしたいと思い、ああいう形になりました。あえて顔を隠したことで、原作ファンの方、舞台ファンの方、そして僕自身や他の役者のファンの方々に、色々な想像を膨らませていただいたり、楽しみだなと思ってもらえたりしたら嬉しいなと思い、僕自身もこだわって撮影していただきました。

撮影当初は影の部分をもっと真っ暗にする予定だったんですが、カメラマンさんや制作の方と相談して、少しずつ明度を上げていき、公開されたものは「よく見るとほんの少しだけ目元が見える」という絶妙な状態になっています。

相楽:じつは私、ビジュアルを最初に見たとき、お顔があまりに綺麗なので「女性なのかな?」と一瞬思ってしまいました。もちろん仲田さんが男性だということは知っていたんですが、それくらいミステリアスな仕上がりになっていたので……。

仲田:本当に? そんなふうに褒めてもらえるなら、他の作品でも積極的に顔を隠していこうかな(一同:笑)。

――続いて、皆さんに質問です。今回、極限状態での人間ドラマが描かれているということで、キャストの皆さんそれぞれにもさまざまなドラマが生まれたかと思います。そうした中で、今個人的に思い入れを感じている小道具や衣装、セットなどがあれば教えてください。

田口:僕、あります。小道具ではないのですが、舞台の上に(「冬のチーム」の)吹雪と美鶴さんが、"居ます"。観ていただければ分かるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

國島:僕は、今も身につけているこの手袋と……あとは、オカリナです。この2つには、やはり特別な思いがありますね。

相楽:私はですね、(花の恋人の)嵐や、お父さんとの繋がりが感じられる小道具がたくさんあって、その1つ1つを心から「大事だな」と思いながら、抱えて演じています。

山本:僕は……やっぱり「弓」ですかね。今回初めて弓を扱ったので、そこも含めて思い入れがあります。

仲田:僕は、小道具の中ではナイフかな。ただ、形の無いものでいえば、登場人物それぞれが生きてきた思い出ですね。思い出がとても大事なものに感じます。

――ありがとうございます。最後に、皆さんを代表して主演の相楽さんに質問です。稽古中に難しさを感じた部分や印象的なエピソードはありますか?

相楽:私にとっては殺陣そのものが初めての経験だったので、そこがまず第一関門となりました。殺陣以外にも、ひたすら走っているシーンや、もう本当に死んでしまうのではと思うくらいギリギリまで出し切って演じているシーンがあります。でも、そこを乗り越えたことは自分にとって今、1つの自信になっています。

アクションはかなり大きな見どころなので、ぜひ一手も見逃さずに見届けてほしいです!

舞台『7SEEDS~春の章~』は、12月20日(金)〜29日(日)こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演。公演ごとに異なるアフターイベント(カテコフォトセッション、アフタートーク、プレゼント抽選会など)も予定されている。

取材・文:豊島オリカ、写真:広瀬有希

公演情報
舞台『7SEEDS~春の章~』

日程・会場
公演日 12/20(金)~12/29(日)
会場 こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

原作
田村由美「7SEEDS」(小学館「フラワーコミックス」刊)

脚本・演出
西田大輔

出演
相楽伊織
國島直希、山本涼介
澤田理央、須藤茉麻
西山蓮都、藍染カレン、村田洋二郎
田口 涼
佐藤たかみち、久保侑大
仲田博喜

公式HP
https://officeendless.com/sp/7seeds_stage/

公式X
https://x.com/7SEEDS_stage