【ゲネプロレポート】「必ず生きて日本へ…」髙橋颯・福本大晴Wキャスト+鈴木勝吾のW主演 音楽劇「無人島に生きる十六人」

レポート

音楽劇「無人島に生きる十六人」が1月25日(土)に東京・日本青年館ホールで開幕。初日に先立ち、同劇場にて公開ゲネプロがおこなわれた。

本作は、遭難、漂流、無人島でのサバイバル生活の様子が描かれた海洋冒険譚「無人島に生きる十六人」(須川邦彦・作)をもとにした音楽劇。2022年4月に上演された舞台版から、今回は音楽劇として再演。国後孝夫役には新たに髙橋颯・福本大晴がWキャストで、その他も多くの新キャストを迎え、もう1度この物語が描かれる。(ゲネプロでの国後役は福本)


明治31年。帆船・龍睡丸は太平洋を航海中に大嵐に遭う。座礁した船はマストも折れ、航行不能に。このままでは全員海のもくずになってしまう…。中川船長(演・良知真次)は、ボートを出して船員全員の退避を指示。ボートに乗り込んだ船員たちは、漂流を経てある島にたどり着いた。そこは、食料はもちろん、飲み水も日陰さえもない無人島。手持ちの食料である缶詰は残りわずか。飲み水のタンクは破損して水はない。果たして彼らは、全員生き残り、日本に帰れるのだろうか――。

現実の遭難と無人島生活の話がもととなった原作。それを舞台用に脚色した本作は、主人公の国後と幼なじみの小川仁太郎(演・神永圭佑)、範田ウィリアム(演・鈴木勝吾)と父島ケレップ(演・安里勇哉)を中心に、それぞれに見どころが用意されている。

範田、ケレップ、小笠原チャールズ(演・柳瀬大輔)の、アメリカにルーツを持つ小笠原組。浅野達之助(演・富園力也)、秋田康成(演・飯島颯)の学生コンビ。

声が大きくにぎやかな報効義会の青年・川口雷蔵(演・小野健斗)。信澤与一(演・添田陵輔)、高崎和平(演・浅野郁哉)、池本善太郎(演・寺島レオン)の、とにかく海が大好きな水夫たち。杉田丑五郎(演・加藤靖久)、杉田傳(演・DION)の水夫親子。航海士・榊原作太郎(演・岡田亮輔)、漁業長・鈴木孝吉郎(演・飯田寅義)、船長・中川倉吉(演・良知真次)の大人組。

食料も飲み水もない無人島での生活を描いているだけに、これだけの過酷な環境に置かれればすぐに仲間割れを起こしたり、始終問題が勃発したりするだろうと想像をするが、中川船長と、ベテラン船乗りの小笠原を中心に、彼らは船に乗っていたときと変わらず規律正しい生活を送っていく。

さまざまなルーツがあり、背景も性格もばらばらの人間たちが集まっているからこそ、いさかいも起こるがひとたび心をひとつにしてまとまれば、強い力を発揮することができる。それをまとめあげるのが船長である中川だ。強いリーダーシップと深い思いやりの心で乗組員たちに接し、彼らの精神的な支柱になっている。

ゲネプロで国後を演じた福本は、自分の命に対して重みを持っておらず、良い意味ではない方向で「いつでも死ねる」と思っている国後を好演。過酷な環境にあってもどこかふわふわとしたところがあり、しかしさまざまな困難なできごとにぶつかり、命に対して向き合うようになっていく。遭難前から国後がどう変わっていくのかが本作の大きな見どころのひとつなので、Wキャストの髙橋颯バージョンとぜひ見比べてほしい。

物語のもう1人の主人公・範田は鈴木勝吾が演じる。国後へ強く当たり、船乗りたちの中でもひときわ頑固で攻撃的とも受け取れる存在であったが、少しずつ変わっていく範田の成長も大きな見どころ。鈴木の迫力のある歌声も、ぜひ堪能してほしい。

初演は航海中の嵐のシーンから始まったが、今作は出航前の様子を描いていることで、より「この人たちが遭難をしたのだ」と心に迫って来るものがある。また、客席を使った航海中のとある演出で、自分たちが座っている場所が太平洋の海であるかのような感覚をおぼえる。また、会場全体が太平洋の海や、無人島・パールアンドハーミーズ環礁の島になったかのような映像効果が印象的だ。

本筋のストーリーの他にも、アメリカにルーツを持つ人々と純日本人たちの物の考え方の違い、若者を気遣う大人たちのまなざし、何かいいことがあるとすぐに気持ちが切り替わる若者たちのたくましさなど、本作には見どころが満載。過酷なサバイバル生活だけではなく、「愉快な生活を」と指示されていたこともあり、ところどころに、思わず笑顔になってしまうようなやりとりも用意されている。また、日替わり演出であろうと感じられる箇所も何か所かあるので、複数回の観劇を予定しているファンは楽しみにしてもらいたい。今作でも、観客が無人島に生息するアザラシやウミガメになれる演出が用意されている。

遭難と、いつ助けが来るのか分からない過酷な生活の物語だけに、描き方次第では最後までずっと辛くハラハラとした展開にもなってしまう題材だが、本作は1つひとつの問題をテンポよくクリアし、解決していく。ストレスがたまらないストーリー展開であり、カタルシスの積み重ねで観劇後は実に爽快だ。

ぜひ、彼らがどのように困難を切り抜けていくのかを劇場で体感してもらいたい。公演は2月2日(日)まで日本青年館ホールにて。

取材/文:広瀬有希、撮影:ケイヒカル

<公演概要>

■公演期間:2025年1月25日(土)~2月2日(日)
■劇場:日本青年館ホール
(〒160-0013 東京都新宿区霞ヶ丘町4-1)

2025年
1月25日(土) 開演18:30●
1月26日(日) 開演13:30★ / 開演18:30★
1月27日(月) 開演13:30● / 開演18:30●
1月28日(火) 休演日
1月29日(水) 開演13:30● / 開演18:30★
1月30日(木) 開演13:30★ / 開演18:30★
1月31日(金) 開演18:30●
2月 1日(土) 開演12:00★ / 開演17:00★
2月 2日(日) 開演12:00● / 開演17:00●
※★team seal=国後役:髙橋颯/●team turtle=国後役:福本大晴

■スタッフ
原作   :須川邦彦
脚本   :大野裕之
演出・振付:良知真次
作曲   :鎌田雅人

■キャスト
髙橋颯(WATWING)・福本大晴(Wキャスト)
鈴木勝吾

神永圭佑
安里勇哉
小野健斗
富園力也
飯島颯(SUPER★DRAGON)
DION
添田陵輔(世が世なら!!!)
浅野郁哉
寺島レオン

岡田亮輔
飯田寅義
加藤靖久
柳瀬大輔

良知真次

■チケット料金
S席:12,000円(税込)
A席:9,000円(税込)

■チケットスケジュール
【オフィシャル先行(抽選)】
2024年12月18日(水)12:00~12月22日(日)23:59

【プレリクエスト先行(抽選)】
2024年12月23日(月)12:00~12月25日(水)23:59

【一般発売】
2025年1月11日(土)12:00~

■公式HP:
https://worldcode.co.jp/mujinto-stage2025

■公式X:
https://x.com/mujinto_stage

■企画・製作: World Code

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