【ゲネプロレポート】韓国で生まれた大ヒットミュージカル「インサイド・ウィリアム」2025年3月13日(木)開幕!

レポート

ミュージカル「インサイド・ウィリアム」が、3月13日から23日まで東京・三越劇場で上演される。

「インサイド・ウィリアム」は、韓国・ソウルのテハンノで2021年に初演されたミュージカル作品。国内で再演が重ねられているほか、2022年には中国・上海、イギリス・ロンドンでも上演された。
今作では台本・演出を西森英行、日本語翻訳・訳詞を安田佑子、音楽監督を宮崎誠が担当。本公演はダブル・トリプルキャスト制を採用しており、全18公演すべてで異なるキャストの組み合わせを楽しむことができる。

メディアクトではシェイクスピア役を平野良、ロミオ役を橋本祥平、ジュリエット役を岩田陽葵、そしてハムレット役を宮島優心(ORβIT)が演じたゲネプロ公演の様子をレポート。囲み取材の様子も合わせてお届けする。

ゲネプロレポート

物語は、シェイクスピアがマニュアル本を参考に執筆をするところから始まる。

シェイクスピアは周囲からの評価や迫る締め切りに悩みながら父親の復讐に成功した王子「ハムレット」や家門の反対を乗り越え愛を成し遂げる「ロミオとジュリエット」を執筆していた。
執筆活動に没頭していると、突然爆風が吹き付けてきて2つの原稿が飛び散り作品がごちゃ混ぜになってしまった。その結果、なんと物語の中からハムレットとロミオ、ジュリエットの3人が飛び出してきたのだ。

悩める作家、シェイクスピアを演じるのは平野良。シリアスからコメディまで自在にこなし、盤石の歌唱力で物語を彩る。語るように歌い、歌うように語る。絶妙なバランスが、シェイクスピアという人物の躍動感をより鮮やかに浮かび上がらせる。また、広い視野を持ち、共演者の反応を巧みに拾いながら芝居を広げていく手腕も見事。まさに平野良の魅力が存分に発揮された舞台であり、ファンならずとも必見の仕上がりだ。

橋本祥平が演じるロミオは、いわゆる“残念なイケメン”である。どこまでも愛されるおバカな男――ジャンルを問わず、常に主人公でありたがるロミオは、その表情をくるくると変えながら、観客の心を掴んで離さない。無邪気さと純粋さが入り混じるその姿は、まさにチャーミングの極み。舞台上では次々とポーズを繰り出し、その一挙手一投足が自然と視線を引き寄せる。見れば必ず好きになる、そんな魅力に満ちたロミオが、ここに誕生した。

ハムレットを演じるのは宮島優心。原作では復讐に燃える激情の人物だが、今作では詩を書くことに新たな喜びを見出す。その心の揺れを、宮島は見事に演じ分ける。復讐に燃え鋭い眼差しを光らせる瞬間と、詩に没頭する時の優しく繊細な表情。そのコントラストが絶妙。その変化の妙に引き込まれ、彼が紡ぐハムレットの新たな一面に魅了されるだろう。

岩田陽葵が演じるジュリエットは、誰もが好きになる存在だ。――そう断言できるほど、彼女のジュリエットは魅力的だ。可憐で愛らしいだけではなく、今作では剣を手に取り、自らの運命を切り開こうとする強さも持ち合わせている。用意された愛の物語に従うのではなく、自分の心に正直に生きる姿に勇気をもらえる観客も多いのでは。澄んだ歌声は時に繊細に、時に力強く響き、ジュリエットの感情を余すところなく伝えてくれる。美しさと強さを併せ持つ彼女の姿に、きっと誰もが心を奪われるに違いない。

彼らは物語の中のキャラクターでありながら、定められた運命に従うのではなく、“それぞれが望む結末”を探し求める。シェイクスピアや世間が望んだ結末ではなく、自分だけの“パラダイス”を見つけることはできるのか? たとえ名作の主人公でなくても、自らの物語の主人公として生きることはできるのか? 結末は、ぜひその目で見届けてほしい。

登場人物たちが自らの未来を切り開こうとする姿は、多様な価値観が生まれ続ける令和の今だからこそ、より多くの人に届けたい物語でもある。
自分だけの結末を探し求める彼らの姿は、観る者に新たな視点と勇気を与えてくれるはずだ。

囲み取材

――ゲネプロが終わり、いよいよ初日を迎えますが、今のお気持ちは?

平野良: 1ヶ月稽古をして、ゲネプロを終えて……ついに初日だ、という気持ちですね!(笑)。今回の舞台は毎回キャストが変わるので、お客様と一緒に、その日ごとに新鮮な作品を作り上げていくんだろうなと感じています。

橋本: 事前に歌の稽古もあったので、普段より長くこの作品に携わることができました。思い入れがありますし、本番ではこれまで掴みきれなかった何かが生まれてくる予感がします。どの公演も、ぜひ楽しんでいただきたいです!

岩田: いよいよ初日を迎えるということで、お客様が入ったときにこの作品をどう受け取ってもらえるのか、ワクワクとドキドキが入り混じっています。本番では舞台に立つのは4人だけですが、キャスト全員で初日に向かって走ってきました。千穐楽までしっかりバトンをつないで、全力で駆け抜けたいと思います!

宮島: メッセージ性の強い作品だと感じています。大切な言葉や台詞がたくさん散りばめられているので、それをお客様にしっかり届けられるようにしたいですね。この舞台が、観た方にとって明日への希望や活力につながるよう、精一杯演じたいと思います。

――回替わりのキャスト編成について、魅力を教えてください。

鍵本:もう、魅力しかないですね! 10人のキャストそれぞれが得意とするものが違うので、その組み合わせによって毎公演、まったく違う化学反応が生まれると思います。18公演もあるのに、実は1回も組み合わせが叶わなかったチームもあるんですよ。……これは事務所NGなんですかね?(笑)毎回少しずつ味付けの違う作品を、ぜひ楽しんでいただきたいです!

舞羽:本当に、キャストがひとり変わるだけで舞台の熱量や役者たちの想いがまったく変わるんです。同じ作品でも、回ごとにまるで違うものを観ているような感覚になると思います。舞台上で巻き起こる化学反応がとんでもないことになっていますので、お客様にも存分に楽しんでいただきたいですね! 唯一無二のキャラクターたちがシェイクスピアを巻き込んで大暴れする姿を、何度でも観に来てください!

大澤:本編はもちろんですが、歴史あるこの劇場も大きな魅力のひとつです。劇場に足を踏み入れた瞬間、まるで二階席のバルコニーにジュリエットがいるかのような雰囲気を感じられるんですよ。そんな特別な空間で上演される舞台を、ぜひじっくりと味わっていただけたらと思います。

吉宮:やっぱり、ミュージカルならではの音楽の素晴らしさですね! 心に響く楽曲や、思わず楽しくなるようなナンバーを、生演奏で聴けるのは大きな魅力だと思います。目がいくつあっても足りないくらい見どころが詰まっているので、ぜひ集中して楽しんでください!

野崎:僕も、生演奏が作品の大きな見どころだと感じています。生演奏があることで、お芝居や歌にさらに熱量が加わるんですよね。また、それぞれのキャラクターにも注目していただきたいです。特にロミオとジュリエットが本格的にタンゴを踊るシーンや、求愛ダンスには魂を込めて表現しているので、ぜひご注目ください。

磯野:公演ごとにキャストの組み合わせが違うので、ぜひ複数回観ていただきたいですね。同じストーリーでも、キャストが変わることで生まれる違いや、新たな魅力を感じてもらえると思います。

――今回のキャスト編成だからこそ、難しかった点や楽しかった点を教えてください。

鍵本:自分の中にお芝居のプランはあるんですが、良くん(平野さん)は僕にないアイデアをどんどん出してくるので、毎日「くそ…!」と思いながら見ていました(笑)。でも、唯一勝てるシーンを見つけた時は楽しかったですね。劇中でチャールストンステップを踏む場面があるんですが、ここだけは僕のほうが上手い!(笑) 稽古を重ねるたびに新しい学びがありました。

平野:ステップはね、一切足が動かないんですよ(笑)。でも、稽古中は楽しいことしかありませんでした。全員、出自も芸歴も培ってきたメソッドも違うので、それが組み合わさるのがすごく新鮮で面白かったです。僕は「ここにいるみんな、生まれてきてくれてありがとう!」という気持ちで、全員を愛でながら稽古をしていました。

橋本:僕は今回、初めてダブルキャストを経験しました。最初は「バチバチのライバル関係になるのかな?」と緊張していたんです。海外ではそういう話もよく聞きますし。でも、実際は全然違っていて、むしろ一つの役をみんなで作り上げる空間の素晴らしさを感じることができました。

岩田:同じ役や台詞でも、人によってこんなにもメッセージの伝え方や受け取り方が違うんだなと改めて実感しました。それがすごく楽しくて。自分が演じることはもちろんですが、ほかのキャストの芝居を受け取ることも楽しかったですし、それをどう自分なりに伝えるのかを考えるのも面白かったですね。毎公演、違う魅力を楽しんでいたので、その楽しさがお客様にも伝わって、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

宮島:ハムレットについてみんなで話し合いながら作り上げていく過程がとても楽しかったです。毎日、稽古場に来るメンバーが違うので、それも刺激になりましたし、ワクワクしながら稽古に向かっていました。

舞羽:とにかく稽古中は楽しかったですね! キャストが違うとエネルギーや見え方が変わるので、すごく勉強になりました。ただ、稽古期間中にあまり一緒にできなかった組み合わせもあるので、舞台上でどうなるのかドキドキしています。でも、その新鮮な気持ちを大事にしながら楽しんでいきたいです!

大澤:僕は今回がミュージカル初挑戦だったので、大変なことだらけでした。まるでエリート校に入学した新入生の気持ちでしたね(笑)。演出の西森さんを中心に、演技や役作りについて熱心にご指導いただき、今後に活かせることがたくさん学べました。大変ではありましたが、得るものが多い稽古でした。それに、キャストの皆さんが本当に温かくて。僕は緊張しやすいタイプなんですが、皆さんのおかげで助けられました。ありがとうございました!

吉宮:キャスト一覧を最初に見た時、「すごい先輩方がいる…!」とドキドキしました。ジュリエット役のお二人も先輩なので、不安もあったんですが、本当に優しくて、いろいろ教えていただきました。3人で作り上げたジュリエットを舞台で演じるのが、今から楽しみです!

野嵜:僕は祥平くんと6年ぶりの共演だったんですが、また一緒に舞台に立てて、しかも同じ役を演じることができたのが本当に光栄でした。いろいろと学ばせてもらいましたし、一生の機会を得られたことに感謝しています。

磯野:今回、トリプルキャストが初めての経験だったので、稽古中からずっと新鮮な気持ちでした。困ったことがあっても3人で集まって相談できたので、すごく心強かったです。本番期間中に2日間空くことがあるんですが、それも初めてのことなので、いい緊張感を持って臨みたいと思います。

――意気込みをお願いします。

平野:今回は、配信や円盤化の予定がありません。すべてが“一期一会”の舞台になります。だからこそ、なるべく多くの方に劇場に足を運んでいただけるよう、全力で頑張りたいと思います。劇場を出ると、お高いお皿や茶器がたくさん並んでいますが(笑)、それに負けないくらい価値のある作品にしたいです。よろしくお願いします!

鍵本:シェイクスピアという題材ではありますが、この作品は今の時代に通じる部分が本当に多いと感じています。現代は、人の評価やSNSのコメントなど、さまざまな目を気にして「本当にやりたいこと」を表現できないことが多いのではないでしょうか。でも、この作品を通じて「何も気にしなくていい、望んだ道を進んでいいんだよ」というメッセージが伝わればいいなと思っています。皆で切磋琢磨して創り上げた舞台を、精一杯お届けしますので、よろしくお願いします!

取材/文:水川ひかる、写真:広瀬有希

【公演概要】

■公演タイトル : ミュージカル「インサイド・ウィリアム」
■公演日時   : 2025年3月13日(木)~3月23日(日)18回公演
■会場          : 三越劇場
■チケット料金 : 全席指定 ¥11,550(チケット代¥10,500+税)
■出演キャスト
シェイクスピア役 : 平野良 / 鍵本輝(Lead)
ロミオ役 : 橋本祥平 / 野嵜豊
ジュリエット役 : 岩田陽葵 /舞羽美海 /吉宮瑠織
ハムレット役 :宮島優心(ORβIT) / 大澤駿弥(ORβIT) / 磯野亨

■公式ホームページ : https://inside-william.com/
■公式X : @inside_William
■公演に関するお問い合わせ先 : inside.william.info@gmail.com