【ゲネプロレポート】 Fantasy Musical「バースデー」バラエティ番組から生まれた完全オリジナルミュージカル

Fantasy Musical「バースデー」が、6月20日(金)に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開幕した。
本作は、芸能事務所PastureとA.storm、テレビ局TBS、そして制作会社S-SIZEの4社がタッグを組み、バラエティ番組「~企画プレゼンバラエティ~これ採用っスカ?」から生まれた完全オリジナルのミュージカル。発案者である福澤侑が演出を手がけ、自身の愛するファンタジーの世界観を、これまで培ってきた手腕で舞台へと昇華。脚本の三浦香とともに、唯一無二の物語を作り上げた。
番組のプロデューサーを務める荒牧慶彦と阿部顕嵐も、舞台でも引き続きプロデュースを担当。テーマソングは廣野凌大、振付はREXが手がけ、事務所の垣根を越えて集結した実力派たちが、豪華なステージを彩る。
メディアクトでは、初日を目前に控えた囲み会見とゲネプロの模様をレポート。本記事ではネタバレを避けているが、作品世界を新鮮な気持ちで楽しみたい方は観劇後の閲覧をおすすめしたい。
物語の舞台となるのは、パレットファクトリーと呼ばれる工場。ここでは、工場長と呼ばれる少年が描いたイラストから誕生したカラーワーカーたちが、少年の心を“真っ白な光”で輝かせるために働いている。彼らが心待ちにしていたのは、まだ見ぬ“緑”のカラーイラスト。しかし少年の誕生日、新たに生み出されたのは“紫”のパプル(演:福澤侑)だった。
パプルの登場、そして少年自身が工場へ連れてこられたことにより、工場内には少しずつ不穏な空気が漂い始める。皆が光を生み出そうとする中、“黒”のZERO(演:荒牧慶彦)は、あるタイムリミットが迫っていることに警鐘を鳴らしていた。様々な色が混ざり合いながら、ステージはカラフルに変化していく。果たして、少年の未来は何色に染まるのか――。
登場人物たちは、それぞれの“色”をモチーフにした、魅力あふれるキャラクターばかりだ。









“赤”のガミネロ(演:雷太)や“黄”のコーンスター(演:田中涼星)、そして“紫”のパプル(演:福澤侑)によるパフォーマンスは、セクシーかつダンディーな魅力にあふれている。キレのあるダンスと存在感のある立ち姿、ステージを支配するような圧巻のオーラで、観客を一気に引き込んでいく。
“白”のF(演:廣野凌大)と“青”のブルブル(演:皇希)のかけあいは愛らしく、ほっこりと心を和ませてくれる。
“水色”のカリブワン(演:持田悠生)や“ミントグリーン”のバニミント(演:高野渉聖)は、舞台全体に無邪気さを振りまき、“マゼンタ”のマゼルナー(演:田中朝陽)はミステリアスな雰囲気を漂わせる。
物語の核となるのは、荒牧演じるZEROと廣野演じるFだ。光と闇という単純な対比構造では終わらない奥行きを持った2人の芝居が、観る者の心を強く惹きつける。
ラスボス然とした存在感と圧倒的なオーラを纏う荒牧は、舞台上に立つだけで空気を支配するような重厚さを見せつけ、まさに物語の核を担うにふさわしい。一方、白の衣装に身を包んだ廣野は、一見天使のような愛らしさで観客を魅了するが、歌唱シーンでは一転、その力強い歌声で舞台を圧倒する。見た目のギャップと役としての深み、そのどちらもが心に残る好演だった。
どのキャラクターも主役級の存在感を放つ中、特に印象的だったのが工場長(立花利仁と髙橋輝によるWキャスト)。繊細な芝居、キレのあるダンスともに、子役とは思えぬ高い表現力を披露しており、今後の活躍がますます楽しみになる。





今作のもうひとつの魅力は、その世界観。劇場の入口から額縁や照明などで彩られた幻想的な空間が観客を出迎えてくれる。大きな時計を中央に据えた舞台セットは壮大かつ精巧で、ここがステラボールであることを忘れてしまうほど。開演前のアナウンスまで物語の一部として組み込まれており、観劇前からしっかりと作品の世界観に浸ることができる。余裕を持った来場をおすすめしたい。
そして本編終了後には、ショータイムが用意されている。本編とは打って変わってモノトーンの衣装に身を包んだキャストたちが、華やかでパワフルなステージを披露。公式グッズのペンライトを手に、思いきり応援しながら楽しみたい。日替わり特典やアフターイベントも用意されており、何度観ても新鮮な気持ちで劇場に足を運べるのも大きな魅力だ。
ゲネプロ前に行われた囲み会見には、出演キャスト9名とプロデュースを務める阿部顕嵐(※映像出演)が登壇。本作への意気込みなどを語った。
初日を迎える心境について、まず荒牧慶彦が「侑の演出が本当に素晴らしく、物語もとても面白いです。絵本のページをめくっていくような感覚で進んでいきますので、その世界観を存分に楽しんでいただけたらと思います」と語り、作品への信頼と期待をにじませた。
続いて田中涼星は、「これだけ豪華なメンバーが集まり、セットもとても素晴らしい仕上がりになっています。僕自身、とてもわくわくしていますし、お客様にも楽しんでいただける作品になったと感じています」と高揚感をのぞかせる。
雷太も「侑くんをはじめ、才能豊かなキャストの皆さんとこの舞台をお届けできることがすごく楽しみです。観に来てくださった方々が幸せな気持ちで帰っていただけるよう、全力を尽くします」と力強くコメント。
福澤侑は「限られた時間の中で、キャスト・スタッフ全員が一丸となって良い作品を届けようと頑張ってきました。あとは、自信を持ってお客様の前にお届けするだけだと思っています」と、演出家としての手応えを語った。
皇希は「とても楽しみにしています。侑が作り上げた世界を、ぜひお客さまにも味わっていただけたら嬉しいです」と静かな期待を込めた。
そんな中、廣野凌大が「改めて思いましたけど…自分って天才だなって(笑)」と廣野節を炸裂させ、会場の笑いを誘う一幕も。「見ていただいた方は僕の天才さが分かると思います」と自信たっぷりに語ると、すかさず荒牧が「それが見出しになるぞ!」とツッコミを入れる場面もあり、座組の和やかな関係性が垣間見えた。
持田悠生は「ワクワクドキドキする瞬間もあって、とにかく世界に引き込まれる作品です。一緒にこの世界に入り込んでいただけるように頑張ります」と、観客との一体感を大切にする想いを表し、高野渉聖は「少年が描いたキャラクターって、少年にとっては自分の家族くらい大切な存在だと思います。僕もこの作品とキャラクターを家族のように愛して、頑張りたいと思います!」と、作品への愛情をにじませた。
最後に田中朝陽は「本編は笑いあり涙ありで面白いですし、ショータイムはテーマパークのパレードのようになっています。皆に笑顔になって帰ってもらえるように頑張ります!」と、初日への意気込みを明るく締めくくった。
続けて、企画の採用から本番に至るまでの道のりを間近で見守ってきた荒牧慶彦と阿部顕嵐が、それぞれの視点から作品の魅力を語った。
荒牧は「番組をご覧になっている方はお分かりかと思いますが、今回は共演歴の長い、仲の良いメンバーが集まりました」と振り返りつつ、「そこに“子役”というキーマンを投入することで、こんなにも作品の味が変わるのかと驚かされました」と語る。「子役が持つ力と、僕たち大人キャストとの化学反応が素晴らしく、その魅力がしっかりと伝われば嬉しいです」と、出演者たちの相乗効果への手応えを感じさせた。
続けて阿部は、「この企画は、侑くんのアイデアからスタートしました。ひとりひとりが持つ感情や思いを作品に落とし込めたんじゃないかなと思います」と語り、「稽古場で通しを見たときに、キャストひとりひとりの熱意とパワーを感じました。こんな素敵な人たちと一緒に作品を作ることができて、本当に光栄です。感謝の気持ちとともに、この作品をお客様に届けていきたいと思います」と、真摯な思いを込めた。
また、演出を担当した福澤侑は、作品づくりで大切にしたポイントについてこう語る。
「出演者ひとりひとりの個性や武器を、しっかりと全面に出せるように意識しました。ストーリーや世界観にしっかりと没入してもらえるように、細部までこだわって作ってきました。劇場の入口からすでに“バースデー”の世界が始まるように、キャスト・スタッフ全員でこの作品を作り上げてきましたので、あとは、観劇された皆さまがその日一日、少しでも幸せだったと感じていただけたら嬉しいです」
Fantasy Musical「バースデー」は、6月29日まで東京・品川プリンスホテル ステラボールで上演される。
色とりどりの感情が交差するパレットファクトリーに、ぜひ足を運んでみてほしい。絵本のページをめくるように展開していく物語の先には、思わず笑ってしまう瞬間も、ほろりと涙がこぼれるような場面も待っている。今作は、観る人それぞれの心にそっと灯りをともしてくれるはずだ。あなたの中にも、きっと新しい“色”が見つかるだろう。
取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル
■公演概要
Fantasy Musical「バースデー」
公演スケジュール:
2025年6月20日(金)~29日(日)
東京都 品川プリンスホテル ステラボール
スタッフ:
企画・演出:福澤侑
脚本:三浦香
テーマソング:廣野凌大
振付:REX
プロデューサー:荒牧慶彦 / 阿部顕嵐
キャスト:
荒牧慶彦 / 田中涼星 / 雷太 / 福澤侑 / 皇希 / 廣野凌大 / 持田悠生 / 高野渉聖 / 田中朝陽
子役(Wキャスト):立花利仁 / 髙橋輝
映像出演
阿部顕嵐 / 植田圭輔 / 高橋祐理
Palette Dancer
佐久本歩夢 / Shunta Tanase / Daicho / 田中啓介 / Hachi / HIROMA / Ryoma / Renju Ando