【公演レポート】岡田藩側の視点から、藩主の葛藤や時代のうねりを描く『義民』開幕

レポート

2025年7月23日、東京・新宿村LIVEで『義民~2025~』が開幕した。

本作は、2023年に上演された舞台『義民』を大幅にリメイクしたもの。岡田藩側の視点から、藩主の葛藤や時代のうねりを描くエンターテインメント時代劇だ。実話をもとにした骨太な物語に、迫力ある殺陣や人間ドラマが加わり、より深みと魅力を増した作品となっている。

メディアクトでは、劇中写真と共に本公演の様子をレポートする。
※物語の核心に触れるような大きなネタバレは避けていますが、事前情報なしで観劇を楽しみたい方は観劇後に読むことをおすすめします。

公演レポート

物語の舞台は、江戸時代初期・慶長20年。場所は備中国。
岡田藩の先代当主・伊東長貞(演:鹿島良太)の死をきっかけに、若くして藩主となった伊東長救(演:佐藤弘樹)は、「国とは何か」を己に問い続けながら、日々藩のために奔走している。民たちは慎ましくも穏やかな日々を送っていたが、その静けさは長くは続かなかった。

ある日、長救の妹・きよとその夫である苗木藩主・遠山友春(演:碕理人)が長貞の墓参りに訪れたことで、物語に不穏な空気が立ち込め始める。
跡目争い、遠山たちの策謀、そして突如として起こる義民騒動。時代の波は容赦なく岡田藩を飲み込んでいく。
長救は先代の遺志を継ぎ、果たして藩と国と民を守ることができるのか。命を懸けて直訴に臨む義民四人衆の行方は——。
物語は後半に向けて一気に加速し、激動の時代を駆け抜けていく。
公演時間は休憩なしの約130分。気がつけば物語に引き込まれ、あっという間に時が過ぎていることだろう。

時代劇と聞いて、堅苦しい印象を持つ人もいるかもしれない。しかし、今作は史実をもとにした作品であるにもかかわらず、物語がすっと頭に入ってくる。丁寧に構成された脚本と、登場人物たちの真摯な生き様ゆえだ。
中でも、物語の要となる長救と池田門左衛門(演:鵜飼主水)の存在感は圧巻だった。
長救は穏やかで誠実、常に国と民を思う理想の藩主。亡き父の遺志を背負い、立派な君主であろうとする姿は、どこまでも人間的だ。衣装や佇まいには品格がありながらも、苦悩し葛藤する姿を繊細に演じる佐藤の芝居が、観客の心に問いを投げかけてくる。

一方、長救の忠臣・池田門左衛門を演じる鵜飼は、愚直なまでに真っ直ぐな人物を全力で体現。どこか抜けた一面が観客の笑いを誘いながらも、剣を抜けば一転、鋭い殺陣で実力を見せつける。視線ひとつで主君への忠義を表現する演技は圧巻で、愛らしさと格好よさの両方を感じさせる名演だった。

鹿島良太演じる先代藩主・長貞は、物語全体の空気を引き締める存在。厳格な佇まいの中に、父としての愛情をにじませる演技が印象的だった。
また、本作の演出を手がけた小原卓也は、自らも新本村の村長・小坂逸八を演じる。物語の転機となる重要な役どころで、舞台を力強く牽引している。

他にも可憐でありながら芯の強さも持ち合わせる長救の妻・ふみ(演:花崎那奈)やしっかり者の家臣・浅見半兵衛(演:咲良)など、岡田藩の人々は真っ直ぐで眩しい存在——言うなれば「光」の印象が強い。一方、苗木藩側には、冷静で計略に長けた藩主・遠山をはじめ、「闇」の印象がつきまとう。しかし、遠山の奥底にある信念や過去を碕理人が熱演し、単なる敵役では終わらせない奥行きを見せてくれた。

本作の魅力は、主要キャラクターだけでは語りきれない。登場する農民一人ひとりにまで名前と背景があり、それぞれの人生が想像できる作りになっている。
物語の中心はあくまで長救の苦悩と決断だが、誰の視点に寄り添うかによって、作品の見え方は大きく変わる。一度と言わず、二度三度と劇場に足を運ぶことをおすすめしたい。数多くの人生に触れているうちに、自分自身が「守りたい」と思う何かが見えてくる。ともすれば理不尽とも思える時代に懸命に生きる人々の姿は、今を生きる私たちに勇気を与えてくれるだろう。

新宿村LIVEは、演者の熱を間近に感じられる贅沢な空間だ。プロジェクションマッピングと共に繰り広げられる熱のこもった殺陣、俳優たちの息遣いまで届きそうな距離感。この空間でしか味わえない、舞台の「いま」がそこにある。

『義民2025〜国への想い〜』は、7月27日(日)まで上演中。この夏、猛暑に負けない熱い芝居を、ぜひその目で見届けてほしい。

取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル

■公演概要
舞台『義民2025〜國への想い〜』

公演日:2025年7月23日(水)~2025年7月27日(日)
会場:東京都 新宿村LIVE
殺陣:小笠原竜哉

出演:
佐藤弘樹 / 鵜飼主水
 
碕理人 / 咲良 / 榎木薗郁也 / 村上渉 / 花崎那奈 / 樫村みなみ / 倉本琉平 / 明日翔 / 仙波好基 / 眞砂佳奈子
 
いろは:葛飾心 / 絃ユリナ / 神﨑飛鳥 / 平森友捺 / 百瀬うか
ほへと:織田俊輝 / 柊木みずほ / 工藤広誠 / 美波花音 / 水川碧
 
小泉丞 / 湯浅雅恭 / 村上拓哉 / 吉田愛花 / 倉本みな / 橘佳蓮
 
小原卓也
 
鹿島良太

チケット:(全席指定・税込)
前方 S席 9,800円・前方 2列目までの席を確約 ※ 1
前方 A席 8,500円・前方 3列目〜 5列目までの席を確約 ※ 2
通常 A席 6,900円・ 6列目〜 9列目
通常 B席 4,000円・ 10列目以降
バルコニー席 7,700円・数量限定の特別席
https://ticketme.io/event/group/e1288efd-4699-4707-96a4-c9459d99af77/97b6750f-51cc-4c8a-a380-bc70597f4320
※ 1 公演パンフレット+非売品 2L版ブロマイド(サイン付き)特典付き
※ 2 非売品 2L版ブロマイド(サイン付き)特典付き

STAFF:
脚本:卜日十也 / 演出:小原卓也(皇帝ロックホッパー) / 舞台監督・美術:本多亮太(LDA) / 演出部:前田圭一(LDA) / 舞台映像:坂内友樹(ビッグバンバン)・Ume(ビッグバンバン) / 音響照明:DISCOLOR Company / 主題歌:『想い華』栗原大河 作・編曲:野田"s.i.s"浩平 / 振付:栗原大河(皇帝ロックホッパー) / 殺陣:小笠原竜哉(JAE) / 衣装・小道具:劇団KⅢ / 物販撮影:Rocky / 物販ヘアメイク:望月香織 / 演出助手:丸山紗代(SPM) / 宣伝美術:坂藤秀峰 / 制作・票券:玉永賢吾(SENTRAL PRODUCE) / 主催:株式会社Vtoly / 企画:皇帝ロックホッパー / プロデューサー:小原卓也(皇帝ロックホッパー)

協力:
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