【ゲネプロレポート】令和のデジタル×ストレート時代劇芝居が融合、舞台『忠臣蔵』レポート

舞台『忠臣蔵』が12月12日(金)に東京・明治座にて開幕。初日に先立ち、囲み会見とプレスコール(本編から選り抜きの数シーンを披露)、ゲネプロが11日(木)に同劇場にて行われた。
本作は、堤幸彦演出、鈴木哲也脚本、上川隆也主演の令和版『忠臣蔵』。元禄時代に実際に起こった仇討ちを題材に、歌舞伎で取り上げられて以来何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作を、新解釈にて豪華キャストで上演。師走の風物詩とも言われる本作であるが、特に今作は実際に討ち入りの時期に合わせて、東京では討ち入り当日の12月14日(日)にも上演がおこなわれる。
囲み会見では、上川隆也(大石内蔵助役)・藤原紀香(大石りく役)・高橋克典(吉良上野介役)への質問を中心に、本作の見どころや稽古についての他、ゆかりの地を訪れたことなどが話題に上がった。
――初日を明日に迎え、今のお気持ちはいかがですか?
上川:緊張と高揚感、それにつきます。
藤原:舞台袖で見ていましても、キャスト、アンサンブル含め全員がこの物語に没入している感じが見て取れますので、あとは初日を待つばかりです。早く観ていただきたいと思います。いざ! ということで。
高橋:早く観ていただきたいです!
――稽古で労力をかけたのはどんなところだったでしょうか。
上川:一番の見せ場である討ち入りのシーンも含めて、背景にはLEDを使用して、それをさまざまに変えながら物語を進行させています。実は舞台の上には、柱も床もない。まったくの“素”の空間にLEDが輝いて背景を映し出しているんです。稽古場から一貫してその状況のもとで、稽古を続けて来ました。そのため、何を目の当たりにして、どんな空間を共有しているのか、何を描こうとしているのかを、皆で想像し、補てんし合いながらここまでやってまいりました。
「気持ちをひとつにする作業」とでも申しましょうか。ひとつの絵を皆で作り上げていく、その作業に何よりも労力を重ねて描き出した物語です。そこに皆の力を注ぎました。
――稽古はどんな雰囲気で進んでいたのでしょうか?
藤原:時代劇ということで、所作や作法など姿勢がのびるような緊張感がありながらも、例えば上川座長が赤穂側の義士と積み重ねていく…お芝居以外のところでのやり取りがあったり、吉良側では清水一学(近藤頌利)などが吉良さまに質問をしていたりなど。所作や作法、殺陣などの先生はもちろんいらっしゃるのですが、それ以外のところで雰囲気ができていて、和気あいあいとしていて。緊張感がある中でのそのような感じを、とてもほほえましく感じておりました。
――(高橋へ)吉良の仕上がりはいかがですか?
高橋:今まで描かれていない吉良上野介像が、今回の『忠臣蔵』にはあります。そこはぜひ観ていただきたいところです。今藤原さんが「和気あいあい」とおっしゃっていましたが、(討たれる側の)私はまったく和気あいあいではなく(笑)。はじめに、皆が大勢で「あいつ(高橋/吉良)を討ってやろう」と大声で言っているのを目の前でずっと見て来ましたから。これを本番ですべて返してやろうと思っています。

――上川さんと高橋さんは(別々で)現地をお参りなどで回られたそうですが、その時のことを教えてください。
上川:訪れた日が天候に恵まれたこともあって、赤穂の土地を好ましく感じました。勝手な想像ではありますが、浅野内匠頭を“殿”とするこの国のまとまり具合が感じられたようにも思います。だからこそ家臣たちは殿への忠義を尽くしたのだろう、と確信を得た旅でした。お参りにあたっては、(舞台の)成功と無事。これに尽きます。
高橋:(上川さんは)「成功と無事」とおっしゃいましたが、僕は(討たれて)殺される方ですからね(笑)。僕は、(愛知県)の吉良町や、(忠臣蔵の聖地である、東京高輪の)泉岳寺、領国にある吉良邸跡、東京にある吉良家のお墓に行きました。全て天気がよくて「いい土地だ、やっぱり吉良公は悪くないんだ」と爽やかな空のもとでそう思いました(笑)。
――堤さん、作品全体の見どころや演出のポイントを教えてください。堤:先ほど上川さんからも(LEDについて)お話がありましたが、「デジタル活劇」と言えば分かりやすいですね。ほぼ“素”の舞台の中で大きなLEDを使い、当時の雰囲気を、日本人にとって馴染みのいい浮世絵で場所や時代や空気を説明しています。デジタルの背景の前で、たくさんの生身の肉体が、動き、声、何とも言えないパワーを皆で出していく舞台になっています。ぜひ体感していただきたいです。

居並ぶベテランの皆さまもさることながら、若者たちも大変素晴らしく「本当に切れているのでは?」と思うほどの接近戦や肉弾戦の迫力たるや、演出している私もドキドキしてしまう、そんな舞台になっています。
――藤原さん、珠城さん。女性目線から本作を楽しむコツを教えてください。
藤原:時代は変われども、その時代を生きた覚悟や、母として妻として、ひとりの女性として、その時代の方々どういう思いでこの忠臣蔵の時代を生きたか…。何百年も前の話ではありますが、ご覧になっている女性のお客さまはそれぞれに、作中に登場する女性の方々に想いをうつして観ていただけるのではないかと。男の方々の魂のぶつかり合いといった忠臣蔵の男たちの世界の側面で女性たちが生きた思いを感じていただけたら、と思っております。
珠城:討ち入りの場面が、とてつもない臨場感とエネルギーで皆さん演じていらっしゃって、それを見ているとき、いつも胸を打たれる瞬間がたくさんあります。女性目線で…と限ると少し難しいのですが、私個人としては、立ち回りは観るのもやるのも大好きです(笑)。とても近い距離感で皆さんが演じているのを、お客さまもご覧になれますので、ご自分が赤穂浪士となって討ち入りをするのであれば、どのように立ち回りをするのか…。先ほど堤監督もおっしゃっていましたが、一緒に体感して同じ気持ちで作品の中に入り込んでご覧いただけたらもっと楽しんでいただけるのではないかな、と思っております。
――最後に上川さんから、上演を楽しみにされている皆さまへメッセージをお願いします。
上川:今回ならではの視点で描き出す忠臣蔵。何かを発見していただけたら僕たちとしても大変うれしいです。誠心誠意を込めて上演いたします。各キャラクターたちの心のこもったお芝居を、ぜひ目の当たりにしていただきたいと思います。お待ち申し上げております。 この後おこなわれたプレスコール(劇中から選り抜きの数シーンをプレス向けに披露)では、3シーンが披露された。



まずは、クライマックスとなる吉良邸への討ち入りシーンの出だし。LEDのパネルと実在のセットが混在する舞台上で雪が舞い降り、えも言われぬ臨場感を演出する。「これぞ忠臣蔵」と手を叩きたくなるような名シーンだ。続いて大迫力の殺陣シーンでは、四十七士と吉良側の家来が入り乱れ、良い意味でどこに誰がいるのか分からぬほどの動きを見せる。当日もきっとこのような大混乱の中で激しい戦いが繰り広げられたのだろうと想像できる。



LEDの背景にはこんな使い方もあったのかと驚くばかりであり、役者たちの動きと合わさり、新しい表現の形として「デジタル活劇」とはまさに、と感じる。しかし役者たちの殺陣は皆どこまでもアナログで泥臭く、しかし美しい。役者ひとりひとり、キャラクターごとの特性を生かした殺陣や、その中で生まれる関係性にも注目してほしいシーンだ。 次に、大石内蔵助と妻・りくが心を通わせるしっとりとした名シーン。ここは、劇中を通して積み上げてきた関係性や、りくの思いがあふれるシーンのため詳細には触れられないが、2人の絆の強さを改めて感じ、この後に控えていることを思うと胸が苦しくなるほど切ないシーンとなっている。


最後に「忠臣蔵と言えば」とも言える、松の廊下の刃傷シーン。この刃傷事件をきっかけとして物語が大きく動き出す、忠臣蔵きっての名シーンであり重要なシーンだ。江戸城本丸の松の廊下で、吉良と浅野が出会い、それまで辛抱を貫いてきた浅野がついに吉良へ斬りかかる。劇中では序盤の出来事ではあるが、最後の最後まで心にとどめておきたいシーンだ。また、浅野を演じる立石俊樹は、舞台後半では吉良方の剣士・小林平八郎を演じる。悲しいまでに真っすぐで、家臣を心から愛していた浅野と、見るからにダーティな雰囲気を漂わせる小林との演じ分けにぜひ注目を。


創作の世界においては“悪役”として描かれる機会の多い吉良上野介の別方向からの解釈もありつつ、四十七士の関係性、その時代に生きた女性の芯の強さ、主君への忠義心と言った、「これが観たかった」忠臣蔵ならではの見どころももちろん盛り込んでいる本作。本筋はしっかりと伝えながら、令和の今に生きる我々へのメッセージも込められていると感じる。
松平健の説得力のあるナレーション、ベテラン勢の重厚感、特に後半は、息を詰めて見入り、まばたきをするのも惜しいほどのシーンの連続だ。ぜひ、この年末の風物詩を体験しに、劇場へ足を運んでほしい。 舞台「忠臣蔵」は、東京・明治座にて12月12日(金)から28日(日)、2026年1月には 名古屋・高知・富山・大阪・新潟で上演。
取材/文、写真:広瀬有希










<公演概要>
【作品】 『忠臣蔵』
【演出】 堤 幸彦 【脚本】 鈴木哲也
【出演】 上川隆也 藤原紀香 立石俊樹 藤岡真威人 崎山つばさ
岐洲 匠 石川凌雅 近藤頌利 藤林泰也 唐木俊輔
財木琢磨 松田賢二 徳重 聡 珠城りょう 高橋克典
俊藤光利 日向野祥 真島光平 和田有徳 横山一敏
【公演日程】
★東京公演 2025年12月12 日(金)~28 日(日) 明治座
<アフタートーク>
12月14 日(日)16:00開演:上川隆也 崎山つばさ 岐洲 匠 松田賢二 珠城りょう
12月23 日(火)16:00開演:髙橋克典 立石俊樹 藤岡真威人 近藤頌利 徳重 聡
12月25 日(木)16:00開演:藤原紀香 石川凌雅 藤林泰也 唐木俊輔 財木琢磨
★名古屋公演 2026年1月3 日(土)~6 日(火) 御園座
<アフタートーク>
1月5日(月)11:00開演 立石俊樹 岐洲 匠 藤林泰也 財木琢磨 珠城りょう
★高知公演 2026年1月10 日(土) 高知県立県民文化ホール
<アフタートーク>
1月10日(土)16:00開演 藤岡真威人 崎山つばさ 石川凌雅 近藤頌利 唐木俊輔
★富山公演 2026年1月17 日(土) 富山県民会館
★大阪公演 2026年1月24 日(土)~27 日(火) 梅田芸術劇場メインホール
★新潟(長岡)公演 2026年1月31 日(土) 長岡市立劇場
【公式HP】 chushingura-ntv.jp
【企画・製作】 日本テレビ



