【ゲネプロレポート】胸を鮮やかに抉る恋愛劇に生駒里奈・小松準弥が挑む。二人芝居「バイアス」開幕

レポート

二人芝居「バイアス」が、1月6日(火)東京・新宿シアタートップスにて開幕した。

本作のキャストは、ドラマ、映画、舞台と幅広いフィールドで活躍する生駒里奈、小松準弥の両名。脚本を演劇『ライチ☆光クラブ』2025やフジテレビ系「月9」ドラマ『明日はもっと、いい日になる』などで話題の谷碧仁(劇団時間制作主宰)が、演出を舞台「呪怨 THE LIVE」や朗読劇『少年のアビス』などで注目を集める田邊俊喜が担当し、「恋愛」を主題とした骨太な作品づくりに挑む。

メディアクトでは、初日に先駆けて行われたゲネプロ(公開通し稽古)の様子を取材した。

二人芝居「バイアス」ゲネプロレポート

本作の上演時間は約1時間30分。お芝居を最大限堪能するためには、開演の10分前には着席することをおすすめしたい。

Webデザイナーとして働く時田律子(演:生駒里奈)は、交際相手の井手真人(演:小松準弥)と同棲中。だが、ここ半年ほどは会話が激減し、二人の間にぎくしゃくした空気が流れていた。

喧嘩中というわけではなく、明確なきっかけもとくにない。互いを思いやる気持ちにも変わりはないのに、なぜかうまくいかない……。人間関係にありがちな「ボタンの掛け違い」状態が、律子の不安を掻き立てる。

律子は、過去のある出来事により、長年癒えない心の傷を抱えていた。そのトラウマが原因で、性的な愛情表現、とりわけ肉体的接触を受け入れることができない。真人はそれを知る数少ない人物の一人で、交際をスタートさせる際には「性的な行為は一切しない」という条件を快諾してくれていた。

愛情深く穏やかな真人との出会いに、律子は一筋の光のような希望を見出していたのだが……その一方で、真人にはある願いがあった。それは「前進でも後退でもいいから、停滞しているこの状況から抜け出したい」というもの。その願いを実現させるため、真人は律子に結婚を申し込む。

ところが、律子の反応は真人の想像とは違った。「なぜ結婚したいのか」と律子に問われ、真人は自分の本当の願望と対峙し直すことになる。愛情と本能的欲求が入り混じった性衝動に翻弄されながらも、真人と律子は死に物狂いの自己探索へと足を踏み入れていく。

登場人物の欲望を鮮明に暴き、観る者の胸を抉る作風は、脚本家・谷碧仁の得意とするところ。その切れ味鋭いストーリーを、田邊俊喜の演出による「人肌の熱」が包み込む。興味深いのは、ここで感じる「人肌の熱」が心地よいとは限らないことだ。

ステージ上の男女は、観客と地続きの生活感と欠点をにじませている。噛み合わない会話や気まずい沈黙の数々は、こちらまで居心地が悪くなるほどに生々しい。剥き出しにされる心の叫びは共鳴し合うことはなく、彼ら自身とともに観客にも傷を残す。

それでも、本作を観終えた後に感じ取れるのは「絶望」や「拒絶」ではない。生傷を晒しながらも手探りで答えを探し続ける彼らの姿は、「人と接すること」への恐怖をどう扱うか、分かり合えない「他者」とどう共存していくか、という問いへの小さなヒントを与えてくれた。

ミニチュアを活かした印象的な演出や、リアリティにこだわり抜いた繊細な芝居、長所も欠点もそのまま描く物語。その全てから、人間への深い興味と肯定が伝わってくる。「人」を描き出す演劇の醍醐味を存分に実感させてくれる作品だ。

間違いなく個々の人生を歩む「他者」でありながら、観客の鏡のような役割を果たす、絶妙な登場人物たち。彼ら二人の迷いと行動、決断の行方を、ぜひ間近で見届けてほしい。

二人芝居「バイアス」は、2026年1月6日(火)〜1月11日(日)東京・新宿シアタートップスにて上演。一部日程ではアフタートークイベントも予定されている。

全公演チケット購入可能
【チケット予約先】
https://www.confetti-web.com/events/12959

【千穐楽ライブ配信チケット販売先】※アーカイブ有
https://www.confetti-web.com/events/13077
販売期間:1月8日(木)19:00〜1月17日(土)20:59迄


取材・文:豊島オリカ、撮影:ケイヒカル

■公演概要
二人芝居「バイアス」

スタッフ
脚本:谷碧仁
演出:田邊俊喜

キャスト
生駒里奈 / 小松準弥
開催日程・会場

2026年1月6日(火)~11日(日)
東京都 新宿シアタートップス