【ゲネプロレポート】舞台「十角館の殺人」“新本格ミステリの金字塔”が舞台ならではの演出で開幕!

レポート

原作は、日本を代表するミステリ作家・綾辻行人のデビュー作にして、新本格ミステリの金字塔『十角館の殺人』。最近では映像化もされた話題作が、今回ついに舞台化される。
舞台「十角館の殺人」が、2026年5月10日の開幕を前に、同日、横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールにて公開ゲネプロを実施した。
今回、メディアクトではその模様をレポートするが、核心的なネタバレはないものの、先入観を持たずに観劇を楽しみたい方は、これ以降を読み進めないことを勧める。

ゲネプロレポート


物語の舞台は、絶海の孤島・角島に建つ奇妙な十角形の館「十角館」。K大学ミステリ研究会のメンバーたちが合宿のために島を訪れるところから物語は始まる。一方、本土では元メンバーの江南が、死んだはずの建築家・中村青司から届いた手紙をきっかけに、謎の真相へと迫っていく。やがて孤島と本土、それぞれで不可解な事件が連鎖し、物語は思わぬ展開へと突き進む。

脚本・演出を手がけるのは中屋敷法仁。原作の持つ緻密な構成とトリックを、舞台ならではの演出で立体的に表現し、観客をミステリの世界へと引き込む。

限られた空間の中で複数の場面が交錯する演出が印象的だった。孤島と本土という二つの舞台が並行して進む構成により、観客は断片的な情報を積み重ねながら物語の核心へと迫っていく感覚を味わうことができる。
背後から絶え間なく聞こえる波の音、天井に吊るされた十角形をかたどったモニュメントを巧みに使った演出なども、世界観の再現に功を奏している。なお、座席表自体にも十角館を彷彿とさせる形になっているほど、制作者側のこだわりを感じる。

主演の梅津瑞樹は、冷静な観察眼を持つ島田潔を知的かつミステリアスに体現。小西成弥は、事件に巻き込まれながらも真相を追う江南孝明を親しみやすく等身大に演じ、観客の共感を誘う。
物語の舞台となる十角館を建築した中村青司役を演じるのは、奇しくも名前を内包する中村誠治郎。物語のストーリーテラーとも言うべき存在として、観客をその世界へと誘っていく。
また、ミステリ研究会のメンバーたちを演じるキャスト陣も、それぞれの個性と役割を明確に打ち出し、群像劇としての魅力を支えている。閉ざされた空間の中で徐々に高まっていく緊張感と不信感が、物語に濃密なサスペンスをもたらしていた。

本作の大きな魅力は、観客自身が謎解きに参加しているような体験。円形に配置された客席によって、観客は舞台との近い距離感を味わうことができる。
情報が少しずつ明かされていく構成と、視点の切り替えによる演出が相まって、終盤に向けて一気に物語が収束していく展開は圧巻だ。
ミステリの醍醐味を舞台上でどのように成立させるのか。その難題に真正面から向き合った本作は、原作ファンはもちろん、初めて触れる観客にも強い印象を残す作品となりそうだ。

ここからは原作をご存知の方への内容となる。
元々の原作小説すら映像化不可能とされていた本作。ドラマ版では、いわゆる“あの一文”を見事に映像として成立させたことでも話題となったが、本作ではまた異なるアプローチで描かれているので注目だ。

取材・文:木皿儀/写真:ケイヒカル

■公演概要
舞台『十角館の殺人』

■公演期間
【横浜】2026年5月10日(日)〜20日(水)
【名古屋】2026年5月27日(水)〜31日(日)

■劇場
【横浜】横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
【名古屋】中日ホール

■原作
綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)

■スタッフ
脚本・演出:中屋敷法仁
音楽:伊 真吾
ステージング:中村 蓉
美術:池宮城直美
照明:大波多秀起
音響:山本能久
衣裳:伊藤祥子(I-stage)
ヘアメイク:瀬戸口清香
演出助手:石井麻莉(SPM)
舞台監督:田中 翼(capital inc.)/福元大介
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:神ノ川智早
制作:S-SIZE

出演
島田 潔 役 梅津瑞樹
江南孝明 役 小西成弥

エラリイ役 田村 心
ポウ役 皇希
カー役 益永拓弥
アガサ役 岡部 麟
オルツィ役 永田紗茅
ルルウ役 高野渉聖
ヴァン役 砂川脩弥

中村青司 役 中村誠治郎

■公式サイト
https://jukkakukan-stage.com

■公式X
@jukkakukan_st

■主催
舞台「十角館の殺人」製作委員会

©綾辻行人・講談社/舞台「十角館の殺人」製作委員会