【イベントレポート】演劇ユニット『Octolibre』2H ACTイベントレポート+インタビュー

レポート

4月20日(月)、須賀健太と桧山征翔による演劇ユニット『Octolibre(オクトリーブル)』2度目のイベント「2H ACT(ツーエイチ アクト)」が、東京・ルーテル市ヶ谷ホールにて開催された。今回の企画は、短編の作品を本読み、立ち稽古、粗通し(あらどおし/途中で止めずに、全体を把握するために通しておこなう稽古)まで持って行き、2時間でどこまで形にできるのか? というものだ。

「演劇が立ちあがる瞬間をお客さまに目撃してほしい」を目的に、昼夜の回では別々の脚本(執筆・芦沢ムネト/パップコーン)に向かい合ったOctolibreの2人とゲストたち。メディアクトでは、昼の回をレポートするとともに、昼の回が終わったばかりの須賀と桧山にミニインタビューを実施。イベントの感想から、このイベントで伝えたかったことや観てほしかったもの、今後の展望などについて話を聞いた。

イベント開始時、まず目に入ったのは舞台下手(しもて/客席から見て左側)に鎮座するタイマーの電光掲示板。2時間で挨拶と顔合わせ・配役発表・読み合わせ・立ち稽古までおこなう「2H ACT」を、より臨場感あふれるものにするための時間表示だ。同時に、観客にはもちろん役者にも演出家にとっても「時間が過ぎていく!」「時間が無い!」と、はらはらドキドキさせる展開になるだろうと思わせる。

MCは前回同様、芦沢ムネト(パップコーン)。芦沢は今回、昼夜の回ともに脚本も執筆した。芦沢の「スタート!」の合図で、掲示板のカウンターが動き出す。有名海外ドラマのタイムカウントダウンで緊張感を持たせてから、須賀、桧山、そして本日出演のゲスト役者、秋沢健太朗・小坂涼太郎・前川優希・松井勇歩、アシスタントの沸淵和哉が登場。カウンターの数字が刻々と削られていくためか、自己紹介も早口で進んでいく。ここは舞台の稽古で言うところの「顔合わせ」にあたるだろう。

続いて早速「本読み」に。揃っての読み合わせはもちろんこれが初めて。朗読劇とも違う「まずは合わせて読んでいく」作業を、客席も同じく台本をめくりながら進行を見守っていく。15分ほどの読み合わせを終えるとまず須賀から、セリフの立て方・発し方のテンポなどの修正と調整、依頼が入る。その間にも、役作りや関係性について役者から質問が投げかけられ、演出家はそれに端的に回答していく。どのような人物で、どのような気持ちでこのセリフを発するのか、立ち位置はどうなるのか。文字だけの存在であった台本が、演じる役者たちの声をまとって動きだし、演出家の頭の中にあるプランと合わさり始めるスタートラインだ。

続けて立ち稽古に。台本を持ったまま、立ち位置やおのおのの動きなどを確認しながら演出をつけていく。芝居に使える奥行き、左右の広さ(アクティングエリア)も、この時点で把握。まだ大道具は無い状態であり、大道具を使って仕上げる企画ではないが「もしここに大道具が入るなら」という前提で進む。

久しぶりに板の上に立つ桧山に、須賀から厳しくも愛のある要望が入ったりもしながら、スムーズにスピーディに立ち稽古は進んでいく。途中で出る、舞台の専門用語は適時芦沢が解説をしてフォロー。舞台の上ではあくまでも立ち稽古が、しかし観客に「何をやっているんだろう」と思わせず、置いていかない気遣いがされていた。

驚くことに、同じ台本で2度同じストーリーが繰り返されているにも関わらず、役者が立って動き出した時点で物語が急に立体感をともなって動き出した、と感じられた。表情、身体の動きと立ち位置、場所の移動。これらが加わるだけで途端に話に彩りが加わる。場内は、同じ話を直前に見ていて「次に何が来るか」を分かっているのにもかかわらず、読み合わせの時をはるかにしのぐ笑い声や拍手などの反応を見せていた。

また、須賀からのリクエストに役者たちが瞬時に反応してまさに「1を聞いて10を知る」かのごとく「こういうことですね」と芝居を変えていくさまは見事だった。須賀のリクエストの出し方が明確であり、ふんわりとニュアンスや“雰囲気”で伝えるのではなく、役者が受け取りやすい証言で言葉にし、ときに自分でやって見せるスタイルである点が大きいのだろう。須賀が役者それぞれの得意分野、特性などを理解しているからこそだと感じるのとともに、役者たちも須賀と縁の深いメンバーであり、彼の意志を受け取りやすいということもあったのかもしれない。

立ち稽古の最中にSE(効果音)も軽く入れ、全体の雰囲気を把握したところで、止めずにいったん全部通しておこなう粗通しに入った。

照明、BGMも入りだいぶ「舞台作品」の様相となってきた通しは、これに大道具、衣装、メイクなどがついたらどうなるのだろうとワクワクさせる仕上がりだった。実際はここから、小道具の使い方や客席からどう見えるかの調整、人物とストーリーの掘り下げなどがどんどんおこなわれていく。本イベントは、「演出とは舞台をどのように設計していくのか」「役者は演出家の意図をどのように受け取り、返していくのか」をリアルタイムで感じ取れる貴重な場であったと感じる。

イベント終わりにはOctolibreの2人から挨拶があり、さらには10月には本公演を打つとの告知がされた。

桧山「楽しかったです。前回の本読みイベントが緊張だけで終わったので、今回はお芝居を楽しもう! と。今回のイベントをやったのは、前回のイベントのお見送りの時にお客さまが『本読みだけではなく立ち稽古も見たい』と言ってくださったからなんです。またお客さまからのお声があったら今後の参考にできると思います。本日はありがとうございました!」

須賀「手練(てだ)れのメンバーばかりだったので2時間でおさまったのだと思っています。もちろん、(演出家として)用意してきたものもたくさんありますが、役者さんのお芝居を見て稽古をしていく、というのをリアルにお伝えできたのではないでしょうか。2時間では難しいか…? と思ったのですが、できたのは役者、スタッフ、皆さんのおかげです。そして、Octolibreとして10月に初の本公演を打つことになりました。今日、少しでもおもしろかったと思ってくださった方は、劇場に足を運んでいただけたらと思います」

本公演についての詳細は、公式サイト、SNSを要確認だ。

下記、イベント昼の回終了後にOctolibreの2人へおこなったインタビューとなる。

――昼の回、お疲れ様でした! まずは感想を聞かせてください。

須賀健太(演出):楽しかったです。でもこんなに大変だとは!(笑)予想はしていましたが、思っていた以上に頭も体も疲れています(笑)。

桧山征翔:楽しかったです! 本公演以外に定期的に何かを作っていく上で、オリジナルのものを…と思っているので、今後に大きな可能性を感じるイベントになりました。かかわりの深いメンバーが集まってくれたからこそ成立しましたし、ゲストの皆さんにも、MCの サポートの沸淵くんにも感謝しています。

須賀:そうだね、勝手知ったるメンバーだから成立できたと言ってもいいです。本当に楽しかったですね。創作の一歩目と言うのでしょうか。完成した作品ではなく「未完成な領域」をお見せするのは、演劇としては手放しで“よし”とはされていない風潮がある中で、こういった思い切ったイベントができたのはよかったですね。10月に予定している本公演とともに、こういった「過程をお見せしていく」企画も、もうひとつの軸として続けていければうれしいと思っています。

――演劇を作っていく過程はなかなか見られないですから、革新的な企画ですね。前回のユニット結成初イベントは「本読み」をおこなうものでした。今回を「2時間以内にどこまでできるか?」というイベントにしたのはなぜでしょう?

桧山:前回の初めてのイベントに来てくださったお客さまから「次は立稽古を見たい」とご感想やご要望のお声をいただいたのがきっかけです。そこからさまざまなことを検討しました。粗通しなのか、最終通し稽古までいけるのか…。

須賀:作品作りの工程であると同時に「お客さまを入れてお見せするもの」として成立もさせないといけない。ただ立ち稽古をおこなうのではなくて、お客さまが見ていて楽しいレベルに持って行かないと。そのために、2時間という制約をつけたりさまざまな要素を付け加えたりして、このイベントの概要ができあがりました。作品の完成までは、2時間ではとてもいけませんからね(笑)。イベントとして形になったと思うのでよかったです。

――今回のイベントもですが、このように「過程」を見せていくことで、お客さまに何を伝えていきたいですか?

桧山:完成したものだけではなく、「過程」という違う角度から見ることで、演劇への興味がさらにわくかな、と。

須賀:そうだね。僕たちのこの意図をお客さまに押しつけるつもりはないのですが、純粋に作品を楽しんでいただくことの他にも、こういう過程があって、その作品ができているんですよ、と知ってほしい。これを知ると、舞台作品の楽しみ方がもうひとつ増えると思うんです。演劇を、より好きになってほしい。演劇の楽しみ方の広がりを目指しています。

――今日のイベントでは、本読みから立ち稽古に入った瞬間に「演劇」感がさらに高まったのを感じました。

須賀:立体的になったと思います。そういう部分が、見ていてお客さまも興味深いと感じてくださったかもしれませんね。

――時間制限がある中で瞬発的に演出を付けていくのは大変だったと思いますがいかがでしたか?

須賀:本当に!(笑)まる1日ウィッグをつけていたくらいに頭が疲れました。本来であれば、僕は芝居の途中で「いったん止めます」とストップするのが苦手なのですが、今日は思い切って止めて演出をつけさせてもらいました。演出ができる機会はなかなか増やせないですから、こういったイベントを通して演出ができるのが、うれしいとともに研究や経験になってありがたいです。ぜいたくな時間ですね。また、役者さんたちがみんな達者なメンバーだったので、この人たちでよかったです。

桧山:昼の部はコメディだったので、“コメディ感”の分かる役者さんじゃないと難しかったでしょうね。コメディには特有の瞬発力が必要なので、今回のメンバーは、メンバー選びもキャスティングもばっちりでした。夜の部はまた脚本が変わります。今度は、昼公演とは打って変わって笑って泣けて…のお話です。役者さんたちはいったんすべてを抜いて新たに向き合わないといけないのでハードだと思いますよ!

――最後に前川さんが挨拶で「今日は何を試されるか分かりました、楽しむことです」と言っていましたね。

桧山:あれは的を射ていると思いました。演劇は、楽しいことだけではなくしんどいことももちろんあります。でも、楽しいから始めたんですよね。だから楽しまないともったいないですし、作る側や演じる側が楽しんでいるからこそお客さまにも楽しんでいただけると思うんです。僕たち2人とも、これまでの人生の中で演劇の厳しさを味わったこともありましたが、やっぱり楽しんで作りたいです。

――10月にはOctolibre初の、本公演の上演が発表されました。

桧山:楽しみで仕方ありません! 昨年Octolibre を立ち上げて、初めての舞台作品本公演になります。演劇をがっつりと作るのが3年ぶりになるので、不安が大きくなるのかな…と思っていたのですが、今はふつふつと楽しみがわいてきています。

今日のイベントもですが、僕はこのOctolibreでいい意味での初心に帰りたいと考えています。下手だと思われてもいい、恥をかいてもいい。でも、演劇を楽しむことは忘れたくない、外したくない。そう思って。だから10月の本公演は、本当に心から楽しんで芝居をしようと思っています。

Octolibreは、「下の世代に演劇をつないでいく」も理念のひとつとして掲げています。そのためには、誰が観ても楽しいと思える演劇を作りたいです。「演劇って小難しい」と感じさせず、気軽に「おもしろそう」と思っていただけるような作品にしたいですし、気軽に観に来ていただけたらと思います。

須賀:これまでのイベント同様、本公演でも演出で参加します。オリジナル作品で、自分のユニットでの演出は初めてですから、演出家として大きな一歩だと思っています。桧山くんと同じく、僕も楽しむことを忘れずに、わくわくしながら作れたらいいですね。

桧山くんが言ってくれたように、僕たちは「つないでいく」世代になってきたと思います。でもそれだけではなく、自分たちも楽しみながらも物づくりをしていくピュアさを持ち続けていきたいです。本公演の前にこうした創作のイベントを2度打てました。段階を経てようやく打てる1発目の本公演です。いいものをお届けできるように、そしてつなげていけるように、1人でも多くの方に見に来ていただければと思っています。

<役者は「台本のままに役を演じる」だけではない。演出家は、自分のプランを一方的に伝えるだけではない。互いの仕事にリスペクトを持ち、自分の中にある知識や経験を総動員してひとつの作品をより良くするためにお互いの考えをぶつけ合い、納得してさらに高みを目指していくものだと改めて知れるイベントだった。10月の本公演については公式サイトとSNSを確認の上、楽しみに待とう。>

取材/文、写真:広瀬有希