【体験レポート】『UMEZZ HORROR HOUSE~漂流教室と思考実験展~』 絶望の世界へ“漂流”し、極限の選択に挑む

レポート

楳図かずおの生誕90周年を記念した没入体験型ホラーイベント、『UMEZZ HORROR HOUSE~漂流教室と思考実験展~』が、2026年7月17日(金)から9月6日(日)まで、東京・吉祥寺のGALLERY ZENONにて開催される。

本イベントの舞台となるのは、楳図かずおの代表作のひとつである『漂流教室』。
参加者は作品を外側から鑑賞するのではなく、時空を超えて隔絶された荒野へ飛ばされた世界へ、自ら“漂流”することになる。原画を鑑賞する一般的な展覧会ではなく、参加者自身が物語の登場人物となって進む、約60分間の没入体験型ホラーハウスだ。

さらに本作は、東京・大阪で累計2万人以上を動員した体験型イベント『思考実験展』と融合。恐怖の中を歩くだけでなく、「誰を信じるのか」「何を犠牲にするのか」といった正解のない問いを突きつけられ、参加者自身の価値観や倫理観が試される構成となっている。

『漂流教室』とは
『漂流教室』は、ある朝、突如として大和小学校の校舎が姿を消し、子どもたちや教師が荒廃した世界へと飛ばされるところから始まるSFホラー作品。食料や水が限られ、死の危険が迫る極限状態の中で、子どもたちは生き延びるための選択を迫られていく。
怪物や異常現象による恐怖だけでなく、追い詰められた人間が見せる狂気やエゴ、集団の中で生じる対立など、人間そのものの恐ろしさを描いている点も本作の大きな特徴だ。

『UMEZZ HORROR HOUSE~漂流教室と思考実験展~』では、そうした『漂流教室』の根底にある“日常を奪われる恐怖”を、参加者自身が当事者として体感することになる。

本イベントを単なるお化け屋敷とは異なるものにしているのが、『思考実験展』の要素だ。
『思考実験展』は、「もしも別の世界に行けたなら、あなたはどう生きるのか?」をテーマに、参加者が物語の登場人物としてさまざまな問いに答えていく体験型エンターテインメント。選択を重ねることで、普段は意識していない自分自身の価値観が浮かび上がっていく。
今回参加者が置かれるのは、安全な場所から冷静に答えを選べる状況ではない。暗闇や緊張感に包まれた『漂流教室』の世界で、案内人に導かれながら極限の選択を迫られる。
恐怖の中で下した判断は、本当に普段の自分と同じものなのか。同行者が自分とはまったく異なる選択をしたとき、それを受け入れられるのか。本作では、恐怖演出と心理的な問いが組み合わさることで、自分や他者の思わぬ一面が露わになっていくという。

それでは開催前の内覧会で体験したレポートを、革新的なネタバレが無いように記載していく。
先入観なしに楽しみたい場合は、これ以降は読み進めないように。

体験レポート

体験の冒頭、参加者は「思いやり」「正義」「絆」「命」「記憶」「理性」「信頼」「勇気」「希望」「尊厳」の中から、自分が最後まで守りたい大切なものをひとつ選ぶことになる。どのような状況に陥っても、それだけは手放さない。そう決めたはずの信念が、極限状態の中でも最後まで変わらずにいられるのか。その問いこそが、本イベントを貫く大きな軸となっている。
筆者たちは7人での参加であったが「絆」1名、「命」2名、「記憶」1名、「理性」1名、「信頼」1名、「希望」1名、とバラけ、それぞれの思考の違いを最初から感じられた。


物語が始まると、参加者たちはある事情から『漂流教室』と同じようなサバイバル状況へ投げ込まれる。生き残るためにはどうすればいいのか。元の世界へ戻る方法はあるのか。次々に与えられる過酷な状況の中で、参加者は自ら選択を下さなければならない。

「自分ならどうするのか」「ほかの人は何を考えているのか」。限られた情報と時間の中で判断を迫られるため、体験は次第に疑心暗鬼にも近い緊張感を帯びていく。普段からよく知る相手であっても、思いがけない決断を下したり、これまで見たことのない表情を見せたりすることがある。非日常的な状況だからこそ垣間見える、人間の本音や価値観の違いも、本作の大きな魅力だ。

緊張感を伴う選択の連鎖の先に、参加者はどのような結末へたどり着くのか。そして、最初に選んだ信念を貫いたまま生き抜くことができたのか。物語の中で答えを選ぶだけではなく、自分自身の判断や価値観そのものを揺さぶられる、まさに新しい形の「思考実験」となっていた。

筆者たちのグループも紆余曲折あり、終盤。思いがけないドラマの連続で、色々な思惑が交差し、大盛り上がりとなった。

最後のゾーンでは、体験中の選択をもとにした思考実験の結果を受け取れる。
その後、フォトスポットでの撮影も楽しめる。同行者と結果を見比べながら、なぜその判断に至ったのかを振り返る時間も、体験の一部となっている。


体験時間は約60分だが、次々と状況が移り変わるため、体感としてはあっという間。密度の濃い体験ができた。
プレイ感覚は、テーマパークのアトラクションをより濃密かつ豪華に仕立てたような印象で、空間演出やキャストとのやりとりを通じて、物語の中へ深く入り込むことができる。

タイトルには「HORROR HOUSE」とあるものの、筆者が体験した限りでは、急に驚かせることを中心としたホラー要素は比較的控えめだった。一方で、暗い場所や狭い空間を進む場面はあるため、そうした環境が極端に苦手でなければ、過度に身構えず楽しめるだろう。
参加するなら、普段から仲の良い2〜3人ほどで訪れるのもおすすめだ。互いの考え方を知っているつもりでも、極限状態で選ぶ答えは意外と異なるかもしれない。もちろん、同じ回になった初対面の参加者と行動する可能性もあるが、知らない相手の価値観に触れながら進むことも、本イベントならではの面白さといえる。

さらに、会場では『漂流教室』の世界観を取り入れたコラボメニューも展開されている。体験本編だけでなく、結果の振り返りや撮影、飲食まで含め、入場から退場まで作品世界を存分に味わえるだろう。
原作ファンであれば、作品を象徴する世界観や極限状態に置かれた人々の心理を、自らの身体で追体験できる。一方で、『漂流教室』をまったく知らなくても、状況や目的は体験の中で理解できるため、予備知識がなくても問題なく参加できる。原作への入口としても、自分自身の価値観を確かめる体験としても、幅広い人におすすめしたいイベントだ。

『UMEZZ HORROR HOUSE~漂流教室と思考実験展~』は、2026年7月17日(金)から9月6日(日)まで、東京・吉祥寺のGALLERY ZENONにて開催。7月17日(金)から31日(金)までの来場者には、本展限定の早期来場者特典も用意されている。
『漂流教室』の絶望的な世界で、あなたは誰を信じ、何を犠牲にするのか。自分の中に潜む“本当の姿”を確かめる覚悟がある人は、吉祥寺から極限の世界へ漂流してみてはいかがだろうか。

取材・文:木皿儀/写真:ケイヒカル

イベント概要
UMEZZ HORROR HOUSE~漂流教室と思考実験展~

開催期間
2026年7月17日(金)~9月6日(日)
※火曜定休。8月11日(火)は開催

開催時間
平日:13:00~20:00(19:00最終入場)
休日:11:00~20:00(19:00最終入場)

会場
GALLERY ZENON(ギャラリーゼノン)
東京都武蔵野市吉祥寺南町2-11-1
JR中央・総武線、京王井の頭線「吉祥寺駅」より徒歩約5分

体験時間
約60分

定員
1グループ最大7名
※15分単位の日時指定制

料金
平日:5,000円(税込)
休日:5,500円(税込)
学割:4,500円(税込)
※学割は平日16:00の回限定

主催
コアミックス、NO MORE

制作
NO MORE

特別協力
一般財団法人UMEZZ
小学館集英社プロダクション
CRAZY BUMP

公式HP
https://umezz-horrorhouse.jp/

©楳図かずお