LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく！」ゲネプロレポート

“後藤ひとり”が、そこにいた！

8月11日（金）から公演が始まるLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく！」に先駆けて行われたゲネプロレポートをお届けします。

●生のぼっちちゃんの生演奏
主人公である後藤ひとり（演：守乃まも）の再現度に驚愕しました。その挙動不審な言動、がに股気味で猫背の姿勢、震える声色、ズレた発想など、ぼっちに至る理由を事細かに説明せずとも、現状に至った理由がしっかりと分かるようなキャラクター描写ができています。
一転、演奏シーンになると、うつむいた姿勢からひたむきにギターをかきならし、ぼっちならではのギターヒーローに覚醒。その指の動き、体の姿勢に目が離せなくなります。まさに“そこ”にぼっちちゃん（後藤のあだ名）がいることに感動を覚えました。

本作の終盤で描かれるライブシーン。まだ知名度も何もない彼女たちのバンド「結束バンド」は少ない客入りであり、かつほぼ誰も興味がない状態。演奏される曲はオーディションでも演奏した「ギターと孤独と蒼い惑星」。ここまで積み重ねてきたものがあるのにもかかわらず、いつもの調子が出ないまま演奏は終わってしまう。客席は冷えたまま。次の曲にいる直前、「このままじゃ、嫌だっ！」という気持ちと共にかきならされるぼっちのギターソロ。魂の籠った演奏は他のメンバーに伝播し次の曲「あのバンド」へ。その熱い気持ち、メンバーの絆がうねりとなり、客席の心を動かす。
アニメでも印象深いエピソードではありますが、彼女らが生でそれを演じながら演奏する姿は、舞台を観ている客席の心も動かす、そんな演奏でした。

後藤ひとり（演：守乃まも）。「結束バンド」のギター担当。一人ぼっちでちやほやされたいから始めたギターを通じて、バンドを組み、仲間との友情を育むことになる主人公。不思議と応援したくなる魅力があります。

伊地知虹夏（演：大竹美希）。「結束バンド」のドラムス担当。ぼっちをバンドに誘った張本人。バンドの後ろから、笑顔でメンバーの音と結束を支える。「あのバンド」以降の表情の変化に注目です。

山田リョウ（演：小山内花凜）。「結束バンド」のベース担当。クールな性格で表情は崩さず虹夏と息を合わせてリズムをキープし、コーラスでボーカルを支える。キャラクターイメージを崩さない表情が見事です。

喜多郁代（演：大森未来衣）。「結束バンド」のギターボーカル担当。ぼっちちゃんとは正反対の明るく友達が多く、SNSが得意。リョウに憧れたかわいらしい性格ではありますが、歌唱中は前を見据える視線と声に力強さがこもっていました。

アニメらしい演出と舞台らしい演出それが融合した、実に2.5次元作品として、一つの完成系を目の当たりにした気がします。原作ファン、出演者ファン、そしてそれ以外の舞台を観た全ての人の心を動かす、力強さがそこにはありました。出演者の演奏もさることながら、アニメ的演出を丁寧に描く小道具や映像、見せ場のライブシーンに盛り上がりを持っていく脚本、ぼっちの心情を描くイマジナリーフレンドのぼっちーずなど、アニメ自体の人気にあぐらをかくことなく、良い作品を作ることへの意思を強く感じました。
とはいえ、ライブシーンを楽しむという意味でも、観劇する場合は、ぜひ原作・アニメなどを事前に履修してから本作を観ることをお勧めします。

取材・文：木皿儀隼一／撮影：ケイヒカル

©はまじあき／芳文社・アニプレックス
©LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく！」製作委員会