【ゲネプロレポート】朗読劇『エイダ』(C公演)「エイダ」とは、何者だったのだろうか
「エイダ」とは、何者だったのだろうか。それがわかる朗読劇。
※本稿は朗読劇『エイダ』の観劇レポートになりますが、『エイダ』に関する核心的なネタバレには触れていません。こちらの記事を読まれた場合でも、マーダーミステリーゲームの『エイダ』を遊べなくなることはありません。
本公演は、マーダーミステリーゲーム(以降、マダミスと省略)というジャンルにおいての人気作『エイダ』を調整した脚本を朗読劇として楽しむ作品となっています(マダミスと『エイダ』については、後述を参照)。声優・俳優・配信者の3つのチームに分かれ、週替わりでアニメイトシアターにて上演されていますが、今回のレポートは配信者チームとなるCチームの公演になります。
こちらの公演は9月15日の夜から開始されますが、それに先駆けて行われたゲネプロのレポートになります。
【STORY】
ここは、リスピア大陸。
人間・獣人族・海人族・竜人族・妖精族の5つの種族が
別々の国を持ち、生活を行っている。
これら5つの種族は大陸における重要な決議を、
リスピア公会議において定めている。
それぞれの国は独自の発展を遂げていたが、
人間の王エイダの尽力により、
この大陸で初となる和平協定が結ばれることとなった。
前回の公会議から10年がたったある日、
エイダは、再び5つの種族が集結する機会を作り出す。
彼は、この集会を「再結会」と呼んでいた。
しかし、エイダと5人の王達が面会した後、
エイダは謎の死を遂げることとなる。
エイダの後継者である王子スタンは、
神妙な顔で各種族の王の顔を見つめる。
自分たち以外に容疑者はいない。
おそらく、この中の誰かがエイダを殺したに違いない。
エイダが死んだ「玉座の間」の中で、
リスピア公会議は、10年ぶりに最悪の形で開かれることとなった。
犯人探しをめぐり、各々の策略や推理が交わされることとなる。
●上演形態
Cチームの公演、今回の登場人物は、人間の王エイダ・ローデン(演:やみえん)と、「再結会」のために集まった人間の王子スタン・ローデン(演:影。)、獣王ヴァル・ドレッド(演:めーや)、海人女王マリン・アントワーネ(演:花幽カノン)、竜王ドラゴ・ヴァルスローダ(演:ちゃげぽよ。)、妖精王女リリー・フローラ(演:詩人さん)の5人です。服装は白を基調としたフォーマルな衣装に、各キャラクターらしいアイテムを纏った扮装となっています。朗読劇とはいえ、ビジュアルでも頼めるように工夫がされています。
出演者は、ステージに向かって左からドラゴ、マリン、スタン、ヴァル、リリーが並び、ほぼスタンディング、奥にはエイダの玉座が控えます。背景のスクリーンには、その時の場面に関する背景美術が映写され、光と音楽の演出が随所に入ることで、物語への没入を手助けしてくれます。
各キャラクターの演技も素晴らしく、スタンは自身に不安を持つ王子として、ヴァルは力強く荒々しい王として、マリンは恭しくかつ欲深き女王として、ドラゴは沈着冷静に落ち着き払った真面目な王として、リリーは純粋無垢でかわいらしい王女として、それぞれの存在感を主張しています。むろん人間の王エイダもその存在感は圧倒的でした。
(左上からドラゴ、マリン、スタン、左下からヴァル、リリー、エイダとなります)
●マダミス×朗読劇
人間の王であるエイダは、「STORY」にある通り、物語冒頭に死体となって発見されてしまいます。
その死体を目の当たりにした各王たちは、状況を整理するために自分たちの特殊な能力などを交えて自己紹介をしていきます。そして、それらは自分たちが何を行え、何ができないかという情報整理の意味もあります。そして、彼らはこの事件はなぜ起きたのか、ということを知るため、本格的に調査を行うことになります。
マダミスにおいての調査(カードによって独自の情報を取得)の部分を、会話劇で公開情報として表現し、それらに加え各々の主観的な意見を交換させるという形式は、ある意味マダミスならでは文法が具現化されていると感じました。次々と出てくる新情報を頭の中で整理しながら、真相を想像して楽しむことはミステリー作品としての正しい楽しみ方とも言えます。
さらに本公演では、チケットの券種によっては特典として「選べるハンドアウト」を受け取ることができます(もしくは追加購入も可能)。ハンドアウト(注1)というのは、キャラクターの設定書のようなもので、それを読み込むことで、あたかもそのキャラクターの気持ちを体感しながら朗読劇を観劇できるようになっているのかもしれません。お時間に余裕があれば、それらを確認することで、疑似的にマダミスを体験できるような設計になっているわけです。マダミスを朗読劇化する意味を感じられる設計なのだと感じました。
マーダーミステリーゲーム(マダミス)について
推理小説(や、それに類する物語)の登場人物となり事件の当事者として物語を体験するゲームです。事件が起きるので、犯人を捜すことが目的ですが、犯人のキャラクターは捕まらないようにするのが目的です。また、各キャラクターには事件以外の目標などが設定されていて、それぞれが思惑を持って物語に身を投じる群像劇でもあります。
推理・キャラクラ―のなりきり・世界観の体験、など複数の要素がある体験型のゲームジャンルとなります。
マダミス『エイダ』について
5人プレイ&3時間超のプレイ時間を誇るマダミス界の中でも屈指の人気作。その人気ぶりから界隈では「エイダはいいぞ」がネットミームとして定着するほど。オンラインプレイがメインとなるため、配信者がプレイすることも多く、視聴するマダミスとしても定着しつつあります。
ゲーム内容としての魅力は、制作者のいとはき氏が得意とする独自のファンタジー世界観と、魅力的なキャラクターが織りなす重厚な物語で、キャラクターに没入することが重要なマダミスの醍醐味を存分に味わうことができます。また、『エイダ』以前以後でマダミスの一つの方向性が生まれたとも考えられる、エポックメイキング的な立ち位置の作品でもあります。
本来であれば3時間から4時間かかるマダミス作品を朗読劇にすると聞いた時、どういう手法を取るのだろうという興味がありました。それは……ただ単に、ミステリー要素のあるシナリオの朗読劇となるだけなのでは? と、穿った先入観を持っていた部分もあります。しかし、実際に蓋を開けてみると、マダミスならではの要素が散りばめられた、かといって初見が置いてきぼりになるようなこともない大変見応えのある作品になっていました。むろん出演者の熱のこもった演技も想像以上に良かったこととや、物語の展開のさせ方なども見事で、何度も心打たれました(筆者は事前にマダミスとしてスタン役で経験していたため、そのことを思い返しながら楽しむこともできました)。
この公演を機に、マダミスに興味を持つ人が増えたり、マダミスを遊ぶ楽しみ以外にも“観る”という別の楽しみ方があるという認識が広がり、双方向に良い実りがあることを期待しています。
※注 ハンドアウト:HO、キャラクターシート、設定書などと呼ぶことも。その人物がどのように生きてきたか、どのように行動してきたかということが記載されている資料です。主に「目標・秘密」や「タイムライン」などが記載されています。目標は、そのキャラクターのプレイ指針、秘密は他の人に知られたくない隠匿情報。タイムラインは、事件前日・当日などの行動履歴が記載されていることが多く、それらを元に推理や議論を行い、犯人追求を行っていきます(犯人であれば犯行がバレないように立ち回ります)。
取材・文:木皿儀隼一
■公演概要
朗読劇『エイダ』
原作:いとはき
イラスト:おとうふ
演出:三貝豪(PLANET KIDS ENTERTAINMENT)
脚本:いとはき 奈良弥志乃(PLANET KIDS ENTERTAINMENT)
主催・企画・制作:株式会社ムービック
日程:2023年9月1日(金)~9月18日(月・祝)
アニメイトシアター
東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店 B2F
チケット:
全席指定(S席):\8,500(税込)
<選べるハンドアウト[※]&アクリルスタンド付き席>
全席指定(A席):\6,500(税込)
配信チケット:¥3,500(税込)
※未就学児童のご入場は出来ません。
●一般販売(先着):イープラス
販売期間 2023年7月27日(木)10:00 ~ 2023年8月30日(水)18:00
https://eplus.jp/eida/
※すでに販売は終了しています。
●配信チケット
対象公演:
・9月3日(日)17:00公演
・9月10日(日)17:00公演
・9月18日(月・祝)17:00公演
販売期間:2023年9月1日(金)10:00 ~ 配信を行う各公演日から7日後の21:00まで
イープラス(配信用お申込みページ)
https://eplus.jp/eida-st/
(チームA)スタン・ローデン:大河元気 ヴァル・ドレッド:橘龍丸 マリン・アントワーネ:相羽あいな ドラゴ・ヴァルスローダ:ランズベリー・アーサー リリー・フローラ:石飛恵里花 エイダ・ローデン:帆世雄一
(チームB)スタン・ローデン:相馬理 ヴァル・ドレッド:佐川大樹 マリン・アントワーネ:坂下陽春 ドラゴ・ヴァルスローダ:新納直 リリー・フローラ:三原大樹 エイダ・ローデン:鷲尾昇
(チームC)スタン・ローデン:影。 ヴァル・ドレッド:めーや マリン・アントワーネ:花幽カノン ドラゴ・ヴァルスローダ:ちゃげぽよ。 リリー・フローラ:詩人さん エイダ・ローデン:やみえん
公式HP:http://eida-reading.com/
公式Twitter:https://twitter.com/eida_reading?s=20
©eida