【インタビュー】「かまいたちの夜」30周年記念に恥じない公演に。観客参加型の舞台「かまいたちの夜 〜THE LIVE〜」原作者の我孫⼦武丸さん、演出の野坂実さんインタビュー!

インタビュー

1994年11⽉にスーパーファミコン⽤ゲームソフトとして第1作⽬が発売され、シリーズ累計200万本という驚異的な売り上げを記録した伝説のサウンドノベル『かまいたちの夜』。

「かまいたちの夜」の30周年を記念して2024年6⽉、東京シアター1010と、⼤阪COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホールにて「かまいたちの夜〜THE LIVE〜」を上演いたします。

主演の伊⽉役にヴァサイェガ渉、共演の⽐企⽂哉役として豊⽥陸⼈、⾼柳明⾳、ドロンズ⽯本、塩⽉綾⾹、⽥中孝宗、⼤髙雄⼀郎、槙原唯、⾕⼝就平、そして細⾙圭、安⽥裕など個性豊かなキャストが揃い、舞台オリジナルストーリーを描きます。

今回メディアクトでは原作の『かまいたちの夜』のシナリオ担当であり、本作の監修を務める我孫⼦武丸さんと、構成・演出を務める野坂実さんへのインタビューを実施いたしました。

――『かまいたちの夜』が2024年に舞台化されると決まって、最初にどのような感想を持たれたか、お二人にお伺いしたいです。

我孫子武丸(以降、我孫子):お話があったのが、もう2年ほど前でして。その時に野坂さんは2024年が30周年だということをご存知ではありませんでした。「実は再来年だったら30周年なんですけどね」というお話をしましたね。結果的にずれ込んで、30周年に合わせたような形になりました。
もし具体化するのであれば、できれば原作のシナリオをつまんでやるのではなくて、ちょっと積極的に関わらせてもらえないでしょうか、というご提案をしました。

野坂実(以降、野坂):もともと僕が『かまいたちの夜』のファンで。うちはミステリーを専門に作っている会社なので、企画会議があった時に僕がやりたい、やりたいって駄々をこねました。うちのプロデューサーが上演できるか否かのお話をさせていただく流れになり、我孫子先生とお会いさせていただきました。先生からはいいよ、いいよと、おっしゃっていただき、30周年記念が翌々年にあるというお話を伺いました。それを聞いて、大事な節目の年に舞台を上演させてもらえないかスパイク・チュンソフトさんにお話を持っていったところ、「いいよ」と言ってくださり、話が繋がっていきました。

――もともとは30周年という記念とは関係なく『かまいたちの夜』自体を舞台化したいというご提案から始まったのですね。

野坂:そうなんです。タイミングが合うというのはこういうことなんだねって言いながら僕らは進めていきました。

――原作の要素というものをどのような形で舞台化される予定でしょうか。これまで原作としてシリーズとして何作も出ておりました、そういったものをどこまでどのようにされていくのか、教えていただけますか?

我孫子:基本的には『かまいたちの夜』は、あれで完結している。完結というかいろいろな話が入っていて、それらで終わっているものなのです。
そして『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄(以降、かまいたちの夜2)』というのは、実はメタなエピソードなわけです。話が続いているわけではなくて……だから、印象としては『かまいたちの夜2』を踏まえたものにあっている風に考えていただければ。
『かまいたちの夜』の要素も入っているし、『かまいたちの夜2』の要素も入っている。でも、全然関係ない別の話なんですよ。
詳しくは言えないんですけど……物語の舞台ぐらいは言ってもいいんですかね?(野坂さんに伺う)

野坂:いや、いいと思います。

我孫子:物語の舞台は、三日月島なんです。

――なるほど! 『かまいたちの夜2』ベースなんですかね、あ、トリプル(『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』)も関係ある? どうなんだろう……。
あ、テンション上がってしまってすみません。キャラクターなどは原作のままなのか、今回オリジナルキャラクターなのか、ということなどは非公開でしょうか?

我孫子:オリジナルキャラクター、ということは言ってもいいような気がします。

――ありがとうございます!
『かまいたちの夜』はスーパーファミコン版から長く続くシリーズですけど、ファンである野坂さん、原作者の我孫子さんで、これまで長く愛されている理由とは何だと思いますか?

野坂:僕はもう年代的にスキー・彼女とペンション・雪山に閉じ込められてという世界観が年代ともマッチしていて。山荘というよりもペンション、みたいな。
食事のところの描写も出てくるじゃないですか、うわー、そんなの食べられるんだって思いました。もともと、田舎の子供だったので、印象に残っている作品です。シェイクスピアもそうなんですけど、普遍的なものってやはり強いですよね。『かまいたちの夜』の作品にも普遍的なものというのはいっぱい入っていて、だから時代が動いても色褪せないんだろうなって思います。

我孫子:正直、最初に売り出した時もゲーマー向けじゃないので、そんなに多くの人が遊んだり、ヒットするとも思っていなかったし、いつまでも話題にしてもらえている。特に最近はSNSの時代になって、さらにゲーム実況でプレイする人が増えたりしている。今、改めて実況をわざわざする人がいたり、アクションゲームのゲーム実況とも違うんですよね。その文字を読んでいくだけなので、もしかしたらそれを見ている人はオーディオドラマのように聞いている感じなのかもしれないです。割と実況する方も多く、それをわざわざ見ている方も多いという。そういったことも名前が絶えない理由なのかなと思います。

――舞台では原作のファンの方が楽しめるような要素が組み込まれているのか、逆に全く内容を知らない人でも楽しめるような要素はあるのか教えていただけますか?

我孫子:基本的には全くゲームを知らない人、その出演者の方々のファンの方が来ていただいて楽しめるものになっていると思います。
よくミステリーの原作がドラマ化されて「この人はこうじゃない」とか「全然話が違う」とかって、怒る人もいると思うのですが、僕は同じだったらそれはそれで面白くないんじゃないの? という考えなので、今回は自分の原作のシナリオをそのまま持ってきてほしくはなかった。
知っている話を見てもしょうがない。だからキャラクターも違っていますし、一見繋がりがないようだけれども、一応『かまいたちの夜』を踏まえて作っているので、1や2の知っている要素が出てきたりもするので、原作を知っていればより楽しんでいただけると思います。
あと、いろいろな仕掛けが『かまいたちの夜』にはなかったけれども、舞台化するとこんな風になるんだねって意味で納得していただけるサプライズとかにもなっていると思う。

野坂:我孫子先生の言われた通りの形で、両方なんでしょうね。真ん中責めているというよりは、知らない人が楽しめるように作られているのと、ファンの方がそんな要素がちょっと入っているんだといって面白く感じられるようにしています。すごくマニアックにしているわけではないのですけど、ファンの方がなるほどねと思うはず。あとは分岐の仕組みで、客席の方が「イエス/ノー」を投票して選択できるようにしていて……それは舞台の人間はあまりやりたがらないんです。

――分岐用のシナリオを覚えなければいけなかったりするんですよね?

野坂:そうです。舞台というのは昔からどうしても「お芝居を魅せていく」という形をとるんで、お客さんが参加するという形はなかなか難しいんですよね。今回はそこにうまいこと組み込んで、芝居しながらお客さんも参加できるようにということを心がけて作っているので、そこも楽しんでいただけるかなと思っています。

――かまいたちの夜シリーズは、最初は雪山のペンションであり、2ではメタフィクション設定で物語舞台は絶海の孤島であったり、トリプルではザッピングのシステムを導入したりと、進化していったと思っています。今回の舞台化により、過去の作品の関連性や、システムというものがどこまで再現されるか、そういったお話を教えてください。

我孫子:そういうゲームで積み上げてきたものとはまた別の文脈で、舞台だったらこういうことができるな、と。ゲームを作る時もゲームだからあれができた。じゃあ、それを舞台にするんだったらどうするかというところから考えて作っているので別の文脈ですね。

野坂:面白いですよ。舞台でしか成立しない状態のものをいくつも用意しているので、システムというもので考えていくのであれば、同じ流れに乗っているので、それがゲームなのか舞台なのか、という違いですね。

――先日、野坂さんも関係されていた劇団ヘロヘロQカムパニーさんの『悪魔の手毬唄』を拝見しました。昔の作品を舞台で今やるのであればというすごい形になっていて。そういう意味では『かまいたちも夜』もどのようになるかとても楽しみにしています。

野坂:『悪魔の手毬唄』に関していえば、シチュエーションの形を作る……シーンの形を一生懸命作るために盆を3つ回していく、みたいな。
この『かまいたちの夜』の場合、この形を作る、ということをさせてもらえないんですよ。具体的には言えませんが、小道具を置いて景色を作ればよいわけではなく、映像をいっぱい出せば良いわけでもなく、かといっていろいろなものを同居させていかなければいけないので、そこがすごく舞台の演出をやる人間として、難解だなと思って楽しんでいます。

――すごく楽しみになりました。
それでは我孫子さんにお伺いしたいのですが『かまいたちの夜』が30周年を迎えるということで、『かまいたちの夜』に対する想いとか、印象深い出来事など教えていただけますか?

我孫子:いつの間にか30年経ってしまって、という感じではあるんですけど、やはり一つの代表作になってしまったので……基本的には小説家のつもりでいたので、小説を書く合間にたまたまゲームもやってみます、みたいな感じで。
『かまいたちの夜』の撮影のために、長野県にロケに行きまして、そこから毎年スキーに行くようになったり、割とずっとついて回っている。でもさすがにもう新作も出ないしって思っていたら、今回の舞台の話があり、その前にパチンコというのもあったんですけど、いつまでもこう名前を聞くな、と。
今回、舞台をやるにあたって、舞台だったら、こういうことがしたい、ああいうことがしたいって言って、皆さんとお話してやってる感じが、ゲームを作っていた時と同じような気持ちなんですよ。ここはこういう風にできたら面白いね、って。
ゲーム制作の当時はとにかく自分が面白いと思うこと、みんなが面白いと思うことをやりたかっただけで、こんなに売れるとは思っていませんでした。だからあの時もこんな気持ちでやっていたなというのが印象深いですかね。結局、ずっと自分はこういうことをやっているんだな、という。

――30周年ということで、長年にわたるファンからの意見や感想など耳にすることもあると思いますが、印象に残っているものなどありますか?

我孫子:いっぱいありますが。
ちょうど昨日……おとといか。
中国の方が作ったサウンドノベルというのがsteamで発売されまして、それが『かまいたちの夜』の青いシルエットで、「『かまいたちの夜』を意識して作りました」ってその作者さんが言っているんで面白いなと思って、その作者さんからコードを送るのでプレイしてくださいと。
今ちょっと遊んでいるところなんですけど、今になってそんなのが出るの? っていう。中国に届くのにもちょっと時間がかかるのかな? でも、今はSNSやYouTubeがあるので、ゲーム実況されていて、『かまいたちの夜』とか『428 ~封鎖された渋谷で~』とか。アクションゲームが苦手な人も実況できるし、プレイしていない人でも見ているだけで話が分かるから、ここのところ急激に増えている。

――最後にお二人から舞台を観に来る方々への一言をお願いします。

野坂:一番として「かまいたちの夜 30周年記念公演」みたいな形で舞台やらせていただけるので、 恥ずかしくない作品にしたいなとはずっと思っております。それが今回、我孫子先生からもブレーンとなっていただいて、いろいろなアイデアで、舞台でやる『かまいたちの夜』みたいなものが生まれたので、ゲームをやってたお客様もそうですし、やってないお客様にも楽しんでいただけるものとなっております。ぜひ劇場まで足をお運びください。劇場に入ったところからもう何かが起きているという状態でお待ちしております。ぜひご来場ください。

我孫子:『かまいたちの夜』じゃないように見えても、心根は『かまいたちの夜』ですので、ご存知の方もそうでない方も楽しんでいただけると思います。ぜひ現場に足を運んでください。

――ありがとうございました。

取材・文:木皿儀

<あらすじ>

とある場所に閉じ込められた『かまいたちの夜』の登場⼈物達。
「こんや、12じ、だれかがしぬ」
という⼿紙が発⾒され、本当に殺⼈事件が起きてしまう。
プレイヤーであるあなたは様々な選択肢を選びながら物語を進めていく…。
でも、何かが『かまいたちの夜』とは違う︖
そして、新たな殺⼈事件も発⽣︖
いったい何が本当なのか︖
舞台ならではの仕掛けもたっぷりの本作で、あなたは真の犯⼈は⾒つけられるのか。


<公演概要>
「かまいたちの夜〜THE LIVE〜」

原作︓我孫⼦武丸
構成・演出︓野坂実
脚本︓望⽉清⼀郎
出演︓
ヴァサイェガ渉
⾼柳明⾳
ドロンズ⽯本
塩⽉綾⾹
⽥中孝宗
⼤髙雄⼀郎
槙原唯
⾕⼝就平
細⾙圭
安⽥裕
豊⽥陸⼈ ほか
【東京】2024年6⽉20⽇(⽊)〜6⽉23⽇(⽇)
場所︓シアター1010(〒120-0034 東京都⾜⽴区千住 3-92 千住ミルディスI番館11F)
チケット料⾦(全席指定・税込)︓S席 9,900円/A席 9,000円
【⼤阪】2024年6⽉28⽇(⾦)〜6⽉30⽇(⽇)
場所︓COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール(〒540-0001 ⼤阪市中央区⼤阪城3番6号)
チケット料⾦(全席指定・税込)︓⼀般 9,500円
⼀般発売︓5/29(⽔)10︓00〜
公式 X(旧 Twitter)︓https://twitter.com/kamaitachi_st
公演公式サイト︓https://kamaitachi-stage.com
お問合せ︓stage.contact55@gmail.com
宣伝︓キョードーメディアス
協⼒︓スーパーエキセントリックシアター、スパイク・チュンソフト
主催・製作︓NoSty(ノサカラボ/style office)