【インタビュー】舞台『ブラック・コーヒー』キャストインタビュー(アーサー・ヘイスティングス役 鈴⽊拡樹/リチャード・エイモリー役 新⽊宏典)

インタビュー

2026年春、アガサ・クリスティの名作戯曲『ブラック・コーヒー』が舞台化され、話題の豪華キャスト陣による上演がスタートします。本作は、クリスティ自身の書いた戯曲の中では唯一のポアロ作品として知られる本格ミステリー。今回の上演では、名探偵エルキュール・ポアロ役に片岡鶴太郎、相棒アーサー・ヘイスティングス役に鈴木拡樹が出演し、多彩な出演陣が緊迫の密室劇へと観客を誘います。

今回メディアクトでは、アーサー・ヘイスティングス役の鈴木拡樹、リチャード・エイモリー役の新⽊宏典のインタビューを実施。作品への思いや役との向き合い方、そして本作の魅力についてたっぷりと語っていただきました。

――今回舞台『ブラック・コーヒー』の出演が決まった際の率直なお気持ちを、それぞれお聞かせください。

鈴木:僕の場合は、アガサ・クリスティ自体は存じ上げていましたが、小説を読むタイプではなかったので、お話をいただいてから初めて触れた作品でした。

戯曲版を読んで驚いたのが、ト書き(動きの指示)まで細かく書かれていたことです。最初は戸惑いました。「上手奥のドアから出てきて、中央のテーブルへ」といった移動の指示まで書かれていて、最初は情景描写なのかなと思ったんですが、舞台の説明だったんですね。演出家目線の指示が書かれていて、戯曲版とはこういうものなんだと感じました。

一度目は世界観をつかむために少し飛ばして読んだ部分もありますが、今は物語と演出的な面を同時に楽しんでいます。自分も推理している感覚で読んでいました。

新木:僕は、鈴木拡樹さんが出るなら、とお引き受けしました。

――お話があった時は、すでに分かっている状態だったんですか?

新木:はい。すでに拡樹君の出演は決まっている状態でお話をいただいたのですが、スケジュール的には対応できるかどうか、難しい状況でもあったんです。
ただ僕は、舞台『幽☆遊☆白書』で共演した時に、また別の作品で一緒にできたらいいなと思っていたので。

鈴木:本当の話なんですね。

新木:そうそう。

鈴木:初めて聞いた。

新木:拡樹が出るなら調整したいと思って、あらゆる方に協力いただいて強行突破しました(笑)。また共演できるのが嬉しかったですね。

――「ブラック・コーヒー」というタイトルから受ける印象はありますか?

鈴木:このコーヒーによって殺害されるんじゃないか、とまず思いましたね。もちろんそれだけではないだろうとも感じましたが。

新木:最終的にそこに着地するタイトルなのかなと思いました。「お茶会」ではないし、ブレイクタイムに起きるミステリーなのかな、とか。戯曲だからシンプルにしたのかな、という予想でした。
実際に読むと、タイトルの面白さに辿り着けると思います。

鈴木:コーヒーに何かを混入させる展開なのか、コーヒーが淹れられてから冷めるまでの出来事なのか。ブラックという言葉が付いている意味も気になりますよね。

新木:そうですね。「ブラック」が付いている意味がどこかにあるんだろうな、と(笑)。

――ミステリーというジャンルの魅力についてはどう捉えていますか?

新木:原作があり、すでに出版されている作品を演劇で上演するわけですよね。結末を知っている方もいる中で惹きつけなければならないので、プレッシャーがかかりやすいジャンルだと思います。
でも、そのハードルが高い分、稽古場で作り込むものにリアリティと説得力が必要になる。知っているはずなのにミスリードされてしまうような引力を持たせる表現が求められるので、とてもやりがいがあります。

鈴木:事件の核となる部分を、どのバランスで注目してもらうかということですよね。

――知っている方と初見の方がいるのも難しいですよね。

鈴木:すでに読んでいる方には、そのシーンのさりげない行動が「ニヤッ」とできるポイントになればいいなと思います。
初めて観る方も、リピートして観ることで印象が変わるかもしれません。一度では終わらない、噛めば噛むほど魅力が深まる作品になればと思っています。

――普段ミステリーに触れる機会はありますか?

新木:僕は2.5次元作品と呼ばれるジャンルの演劇に多く出演しているので、アニメや漫画を観ることが多いです。その中でミステリーに触れる機会もありますが、『名探偵コナン』はやはり印象的ですね。
数か月で何件事件が起きているんだ、と思うくらいですが、それを成立させてしまう面白さと愛され方はすごい。「ミステリー」という難しいジャンルを子どもも楽しめる形にしているのは本当にインパクトがあります。

鈴木:1話30分という制約の中で伏線を張り、推理させて解決まで持っていく構成は本当にすごいですよね。

――新しい作品に挑む際、大切にしている姿勢はありますか?

鈴木:下調べをするタイプではあるのですが、キャラクターの方向性や関係性は稽古場で構築できると思っています。なので、年代や時代背景などは事前に調べます。今回使わなかったとしても、その時代を生きている人物を理解することは大切だと思っています。

新木:確かに、調べておいた方がいいことはありますよね。知っておくべき雑学のようなものもある。
ただ、それを知ったことで頭でっかちにならないように気をつけています。「これはこうですよね?」と知識を優先してしまうと、素直に演出を受け取れなくなる瞬間がある。なので、ふんわりと余白を残して現場に入るようにしています。

多く知っていること自体は悪いことではないし、共有できる情報も増えます。でも、それをひけらかさないバランスは大切にしています。

鈴木:役者も本当に多様ですよね。台本を忠実に再現するのが得意な人もいれば、インプロ的に空気感を作るのが上手い人もいる。

新木:僕らは一つの駒でしかないですからね(笑)。プレイヤーであることを自覚した上で、クリエイトしすぎないことは意識しています。

鈴木:一人で決めすぎると、演出家と一緒に作れていないことになりますからね。

新木:年齢を重ねると、それがまかり通ってしまう怖さもある。だからこそ、発言には気をつけなきゃいけないなと思っています。

――お互いの第一印象を教えてください。

新木:僕からすると、天才なのに努力をひたすらやる、一番面倒くさいタイプの役者(笑)。

鈴木:(笑)

新木:共演前のイメージは、孤高のオンリーワンでトップに立つ役者。しかも「僕、頑張ってます」という雰囲気をまったく出さないタイプなんですよ。
「これくらいやらないと無理じゃない?」と真っすぐな目で言う。でも、死ぬ気でやってもそこに届いていない人はたくさんいる。周りが諦めるくらいの努力をしている人だと思っていました。
作品を観ていて感じたのは、常に最高値を更新し続けていること。限界を見せないんですよ。次に観たら、さらにその上を見せてくれるんじゃないかと思わせる存在でした。

――少し遠い存在だと感じていましたか?

新木:共演する時は覚悟がいる相手だなと思っていましたね。
でも実際に会ってみると、その通りではあるんだけど、人間味があって愛せる存在でした。すごく可愛いんですよ。

鈴木:気付いてくれてた(笑)。
僕はどちらかというと不器用で、失敗の積み重ねでここまで来たタイプなんです。失敗から学び、それを次に活かすということを繰り返してきました。
器用だと思われていたのは驚きですが、常に「次はもっとできるかもしれない」ともがいてきた結果だと思います。
会う前は尖った役の印象も強くて、もっとストイックな人かと思っていました。でも実際は、とてもマイルドで穏やか。そこは意外でしたね。
視野が広く、あらゆるものに興味を持って吸収しようとする姿勢もすごい。僕もそうありたいと思っていたので驚きました。

例えば、僕は趣味でランニングをしているんですが、共演中に一緒に走りたいと言ってくれたんです。僕は普段から走っているので速いのですが、普通についてきて(笑)。

――なぜ一緒に走ることになったのですか?

新木:拡樹が子どもの頃から走るのが日課だと聞いたんです。ただ地方公演中は、一人で走ると万が一事故があった場合に制作へ迷惑がかかるから走らない、と。
それなら一人にしなければいい。一緒に走ろうと。見失ったら危ないので、僕は必死でした(笑)。

鈴木:そういう理由だったんですね。優しい。

――最後に、本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

鈴木:本作はミステリーなので、ポアロと同じように“灰色の脳細胞”を使って推理しながら観ていただきたいです。それぞれのキャラクターに怪しい瞬間がありますので、そのジャッジを楽しんでほしいですね。
初見のお客様も、すでにご存知のお客様も、そうした視点で舞台を楽しんでいただけたら嬉しいです。

新木:『ブラック・コーヒー』はアガサ・クリスティが初めて書いた戯曲『ブラック・コーヒー』だそうで。セット図面や演出指示が細かく書き込まれている点も興味深いです。
日本人である僕たちが演じることで生まれる違和感や矛盾もあるかもしれませんが、それを極力取り除き、この魅力的な作品を全力で届けたいと思います。
劇場で感じる生々しさや人間の心情の匂いこそが、この物語の魅力につながるはずです。ぜひ劇場で体感してください。
個人的には、感情を前面に出した鈴木拡樹の芝居が好きなので、ヘイスティングスという役をどう演じるのかも楽しみにしていただけたらと思います。

取材・文:木皿儀/写真:ケイヒカル

■舞台概要

【公演タイトル】
舞台『ブラック・コーヒー』

【脚本】
アガサ・クリスティ

【演出】
野坂実

【上演期間・会場】

■大阪公演
2026年4月8日(水)~4月12日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

■東京公演
2026年4月18日(土)~4月26日(日)
ステラボール(品川)

【出演】

片岡鶴太郎
鈴木拡樹

新木宏典
玉城裕規
天華えま
中尾暢樹

凰稀かなめ

横島亘(劇団⺠藝) 泉関奈津⼦(劇団NLT)神農直隆(クリオネ)
河村岳司(劇団AUN)多⽥健悟 成⽥裕也

【チケット】
全席指定・税込
プレミアム席 20,000円(前方確約・特典付)
一般席 12,000円
※未就学児入場不可/各種先行あり

【公式サイト】
https://blackcoffee-stage.com/

ヘアメイク:権田政剛
スタイリスト:藤長祥平