【ゲネプロレポート】対局が歌やダンス、ステージングで表現される舞台化! 歌絵巻「ヒカルの碁」序の一手 ゲネプロ公演&フォトセッションレポート

レポート

1999年に連載スタート、2003年の完結までに小説やコンピューターゲーム、アニメなどさまざまな形でメディアミックス化され、囲碁ブームを巻き起こしたほったゆみ原作の少年漫画『ヒカルの碁』。今もなお愛され続けている今作が、完結から21年の時を経て、東京・サンシャイン劇場にてついに初の舞台化。


史上初となる囲碁漫画の舞台化に挑むのは、主演の糸川耀士郎をはじめとした実力派の俳優たち。脚本・演出・作詞を毛利亘宏、作曲・音楽監督を和田俊輔が務める今作・歌絵巻「ヒカルの碁」序の一手は、7月5日(金)に幕を開けた。
メディアクトでは、初日を前に実施されたゲネプロ公演とフォトセッションの様子をレポートする。

ゲネプロ公演

小学6年生の進藤ヒカル(演:糸川耀士郎)は、ある日蔵で古い碁盤を見つける。
その瞬間、碁盤に宿っていた平安の天才棋士・藤原佐為(演:小南光司)の霊がヒカルの意識の中に入り込んだ。時代を越えた二人の運命の出会いから、物語は動き出す。
囲碁のルールも知らないヒカルだったが、「神の一手を極めたい」という佐為の一途な想いを受け、徐々に囲碁の世界へと足を踏み入れていく。


対人で囲碁を打ちたいという佐為のために訪れた碁会所で、ヒカルは塔矢アキラ(演:赤澤 燈)と出会う。トッププロ棋士である塔矢行洋(演:広瀬彰勇)の一人息子であるアキラは、ヒカルと同年齢でありながらプロ級の腕前を持ち、周囲からも将来を期待されていた。そんな相手とは知らずに、佐為の指示通りに囲碁を打ったヒカルはアキラに圧勝してしまう。ここから、二人のライバルとしての果てしない道が始まるのであった。


時は流れ、中学生になったヒカルは幼馴染の藤崎あかり(演:生田輝)や将棋部の加賀鉄男(演:真野拓実)、囲碁部部長の筒井公宏(演:岩佐祐樹)、同級生の三谷祐輝(演:北出流星)らと共に、囲碁の世界を更に広げていく。
一方海王中学に入学したアキラは、力量的に不相応な中学囲碁の大会へ出ることを決め、周りと軋轢をうみながらもヒカルとの再戦を強く願っていた。
その後実現が叶った対局でヒカルは自身の力で戦いたいと考え、佐為の力を借りずに正面からアキラに挑んだ。その結果、ヒカルは惨敗。素のヒカルの実力に失望したアキラは、声を荒げてその場を去ってしまう。
アキラに失望されたヒカルは、いつか自分の力でアキラと対等に戦いたいと願うようになる。また、囲碁が打ちたいという佐為の願いを叶えるために、夏休みを利用して『sai』のハンドルネームでネット碁を始めることになった。


その実力から、saiはすぐに世界中から注目を浴びるようになる。日本で開かれたアマチュア世界選手権の騒動でsaiの存在を知ったアキラは、その場でsaiと対局することとなり、その打ち筋からヒカルとの2回目の勝負を思い出す。佐為との対局で急速に力をつけたヒカルは、アキラがプロになったと知り、その後を追いかけるために院生となることを決める。

今作では、原作の第5巻までが描かれている。ヒカルとアキラ、追って追われてのライバル関係はまだ始まったばかり。今後も熱い展開が待っているからこそ、続編に期待が高まる。

主人公のヒカルは、運動が好きで頭を使うことが嫌い。どこにでもいる、ごく普通の小学生だ。そんなヒカルがアキラや佐為、仲間たちとの出会いを経て囲碁にのめり込んでいく姿に、思わず胸が熱くなる。情熱をもって芝居と向き合う糸川自身の姿が、ヒカルの魅力を最大限に輝かせていた。
ヒカルのライバル・塔矢アキラを演じるのは、赤澤燈。普段は物腰が柔らかく上品な振る舞いが目立つアキラは、囲碁に真摯に向き合うがゆえに時折その感情を強く表に出すこともある。奥行きのある芝居を見せてくれる赤澤が、繊細な演技でアキラの心情を丁寧に描いていた。
物語の始まりでもある藤原佐為は、女性と見紛うほど美しい容姿をしている。舞台上の佐為は息を飲むかのような美しさが際立つが、時折お茶目な一面も垣間見える。美しさと愛らしさが絶妙なバランスで同居している佐為は、小南が演じたからこそだ。


また、ヒカル達の周りに集うキャラクター達も、まるで原作から飛び出してきたかのような生き生きとした魅力を放っていた。
葉瀬中将棋部の部長・加賀鉄男役を演じるのは真野拓実。不良然とした振る舞いに反して、囲碁の実力は確かなもの。常にひょうひょうとした空気をまとっており、軽快な声調子や演技の余白が強者としての余裕を感じさせる。
ヒカルと同学年の三谷祐輝を演じたのは、北出流星。小遣い稼ぎのために碁会所で賭け碁をしていた三谷は、ヒカルから勧誘を受け囲碁部に入部することになった。当初は一匹狼的な雰囲気が強かったが、終盤には熱心な様子を見せるようになる。囲碁に真剣に向き合うようになったからこそヒカルとぶつかる姿は、感情の発露が見事。三谷の成長を強く感じさせてくれた。


葉瀬中囲碁部の部長、筒井公宏は岩佐祐樹が演じる。優しく誠実な良き先輩である筒井は、イカサマをした三谷の入部を最初こそよく思っていなかったが、後に和解。常に真っ直ぐ囲碁と向き合う姿を、岩佐が爽やかに演じた。
紅一点のヒロイン、藤崎あかりとして舞台上に軽やかな空気を運んでくれるのは生田輝。くるくる変わる表情や愛らしい動きから、あかりの魅力を目一杯感じることができる。
これ以外にも、海王中学囲碁部部長の岸本薫(演:松永有紘)や、海王中学囲碁部顧問の伊(演:益永拓弥)も高い再現度で登場する。院生の和谷義高(演:石渡真修)も登場するため、続編が制作され、再び彼に会えることを期待したい。
プロ棋士の緒方精次(演:北村健人)や塔矢行洋も登場するのでお楽しみに。プロとして圧倒的な存在感を放つ二人。塔矢プロは対局シーンはもちろん、歌唱シーンでも力強い歌声がその力量に説得力を持たせていた。


また、今作は『歌絵巻』だ。ヒカルとアキラの対局はじめとしたさまざまな名局が、歌やダンス、ステージングで表現されている。アンサンブルも舞台上を動き回り、刀を用いた殺陣や生演奏など、終始躍動感に溢れた演出が印象的だった。
「囲碁は静かなもの」というイメージを持つ者も、少なくはないだろう。事実プロの対局は静謐に包まれており、常に緊張感が漂っている。現実の対局からは想像出来ない演出の数々はどれも新鮮で、かといって突飛なわけではない。囲碁の楽しさを全力で伝えてくれるため、ルールを知らなくてもすんなり作品に入り込むことができる。
作曲・音楽監督を務めるのは和田俊輔。サックスとマリンバを基軸とした音楽の一音一音が碁石が碁盤を打つ力強さを表しており、躍動感ある対局を彩っていた。


原作「ヒカルの碁」が連載されていたのは、約20年以上も前のことになる。しかし、何かに夢中になっている人間のひたむきさや眩しさは、どれだけ時が流れても変わらない。ヒカル達が未来を切り開こうとする姿に、胸を打たれる観客も多いのではないだろうか。

歌絵巻「ヒカルの碁」序の一手は7月14日(日)まで、東京・サンシャイン劇場で上演される。

フォトセッションの模様

取材・文:水川ひかる/写真:ケイヒカル

公演情報】
<タイトル>歌絵巻「ヒカルの碁」序の一手


<出演者>
進藤ヒカル役:糸川耀士郎、藤原佐為役:小南光司、塔矢アキラ役:赤澤燈、加賀鉄男役:真野拓実、三谷祐輝役:北出流星、藤崎あかり役:生田輝、筒井公宏役:岩佐祐樹、岸本薫役:松永有紘、和谷義高役:石渡真修、尹役:益永拓弥、緒方精次役:北村健人、塔矢行洋役:広瀬彰勇

<スタッフ>
脚本・演出・作詞:毛利亘宏、振付・ステージング:本山新之助、作曲・音楽監督:和田俊輔、美術:秋山光洋

<開催期間>
7月5日(金)~7月14日(日)
※公演時間、詳細は公式HP、SNSをご確認ください。

<会場>
サンシャイン劇場
(〒170-8630 東京都豊島区東池袋3丁目14サンシャインシティ 文化会館4F)

<チケット>
SS席(特典付・前方3列以内) \12,000
S席(特典付) \10,000
A席(特典付) \8,000
※申込状況により、一般発売まで抽選の受付がない公演日(土日・千秋楽日等)、
 または、受付がない席種があることもございます。予めご了承ください
<年齢制限>※未就学児童のご入場は出来ません。

<チケットスケジュール>
●一般発売 
2024年6月22日(土)10:00 ~
https://w.pia.jp/t/hikarunogo/

主催・企画・制作ムービック / サンライズプロモーション東京
制作協力クオラス
お 問 合 せサンライズプロモーション東京 お電話:0570-00-3337(平日12時~15時)

■公式HP:https://hikarunogo-stage.com/
■公式X:@hikarunogostage

ⓒほったゆみ・小畑健/集英社 ⓒ歌絵巻「ヒカルの碁」製作委員会