【ゲネプロレポート】トレインライドシアター『このレールはドラマチック』1号車(出演:中尾暢樹、京典和玖、時任勇気)

レポート

2023年11月19日(日)、23日(木・祝)に東京都23区内にて開催された2日間限定公演のトレインライドシアター『このレールはドラマチック』。メディアクトでは本公演に先駆け行われた公開ゲネプロのレポートおよび、中尾暢樹さんと京典和玖さんのインタビューをお届けいたします。

ゲネプロレポート

筆者たちは、冬の訪れを感じる京急品川駅のホームから京急線の1号車に乗り込みました。その理由は、公演は電車の中で行われるからです。
定刻通り、四両編成の電車は動き出します。車内は貸し切りとなっていて、京急蒲田駅までひと時の旅路。普段は退勤の人々でごった返すであろう車内を、座席に座り、ごとんごとんと電車が進む音を楽しむ余裕まであります。社内アナウンスでは車掌からの挨拶。車掌の名前は岩崎う大。そう、本公演『このレールはドラマチック』の作・演出を担当した、かもめんたるのう大さんが車掌として車内に語り掛けてくれます。その声色は穏やかで、少しだけ理屈っぽく吊革にまつわる話などを披露し、さりげなく公演の諸注意もしてくれるのは憎い演出です。

しばらくすると、電車は京急蒲田駅に到着し、ドアが開く。それは自分たちにとっても違和感のない世界。二人の男女と一人の男性が乗車してきます。男女は吊革につかまり、男性は着席。扉は閉まり、電車は次の駅に向かう……。
男女のうちの男性は山下大輔(演:中尾暢樹)といい、中本アカリ(演:京典和玖)という女性とカップルの様子。着席している男性は大学生で、名前は小暮順平(演:時任勇気)といいます。彼は、物静かに文庫小説を開いています。

大輔とアカリは周りを気にしないカップルとして、大きな音量で会話を始めます。たわいもなく、オチもないアカリが発する話題に、波風を荒立てないように話を合わせる大輔。はしゃぐ二人の会話は車内に響き渡り、順平は持っていた本を閉じます。少しは我慢していましたが、ついに苛立ちを抑えきれず「さすがにうるさ過ぎません?」とアカリに注意をします。
注意されたことにより、ひと悶着が生まれる順平とアカリ。そして、それを傍観している大輔。次第にそのひと悶着は、アカリと大輔の関係にひびを入れることになり、別れ話を切り出され、泣きじゃくる大輔。彼は周りの乗客の迷惑を顧みず騒いだと思ったら、アカリから耳打ちをされ、表情を変えます。何があったのか……。重要なところを耳打ちでの会話をされたことで、順平の野次馬精神がざわつきます。「ちゃんと聞こえるように喋って……」先ほどはうるさいと注意したのにも関わらず。このような落語のようなやりとりは二転三転して、物語は終わりへ向かっていきます。

私達は、そのカップルと一人の大学生の少し変わったやりとりを、同じ電車に乗っている人間として、その場の空気感を確かに味わいました。日常的で、少しだけ非日常的な、不思議な空間を。
もちろん脚本を担当されたう大さんの少しウィットに富んだやりとりも交えていますが、それでも誇張され過ぎない温度で、彼らは存在していました。実際に電車は動いていません。動いているようなSEとアナウンス、そして、演者の3人が揺れる仕草や吊革につかまる動作が、疑似的に電車内での騒動ということを創出してくれています。

そこまで長くない時間ですが、ギュっと展開が詰まった濃密な非日常でした。

(もちろん、推しの役者さん目当てで参加するのもお勧めです。ここまでの至近距離で、生の演技を観る機会はそうそうないと思うので、それだけでも十分に楽しめるという側面のある公演でした)

以上が私たちが乗り込んだ1号車の物語でした。


本公演は『ただの偶然ですか?』『ノンストップガール』というシナリオが用意されています。1号車で上演されたのは後者の『ノンストップガール』ですが、4号車でも同演目を別のキャストが演じています。また、2・3号車では別の『ただの偶然ですか?』が上演されていました。
この二つのシナリオはそれぞれ独立して楽しむことができますが、隠れた繋がりがありますので、ご興味がある方は、ディレクターズカット版の配信があるので、そちらでご確認してみてください。

Streaming+(ストリーミングプラス)

URLhttps://eplus.jp/him-films/
販売期間11月24日(金)10:00〜11月30日(木)21:00
配信期間11月24日(金)10:00〜11月30日(木)23:59(アーカイブあり)
チケット料金(税込)視聴券 4,400円視聴券+公演パンフ付 6,900円視聴券+公演パンフ+付録付 7,900円※公演パンフレットと付録は配信期間終了後に自宅へ発送させて頂きます。

インタビュー

終演後、電車が撤収されるまでに短い時間で、カップル役を演じた中尾暢樹さんと京典和玖さんのお二人にインタビューを実施いたしました。


――トレインライドシアターというジャンルを初めて知った時、お話を聞いた時の感想を教えてください。

中尾:ニューヨークの方で劇場型舞台というのがあるというのは知っていたので、まさかそれか? って。すごく興味があったし、かもめんたるのう大さんが脚本で入ってて、すごく面白そうって思いましたね。

京典:電車で演劇? というのと、女の子役で話が来ていたので、クエスチョンマークだらけだったんですけど、挑戦的な作品には常々参加したいと思っているので、ぜひトライしたいと参加しました。

――本日、実際の電車でのゲネプロを実施しての感触はどうでした?

中尾:リアルだと実際の電車が音が鳴ってきたり、稽古場とは違いましたね。普段乗っている慣れしたしんでいる電車だからこそ、見世物と普段のプライベートの合間をうまくとりたいなって思いました。

京典:そうですね、ブレーキとかは本来動いていないけど、実際動いているように意識して演技しました。

――稽古場でのエピソードなどはありますか?

中尾:う大さんがすごい細かくて、こんなに緻密に考えてやっているんだって。一つ一つのセリフの意味とか。

京典:「それは」と「それと」で、違ってくるとか。

中尾:あといきなり、う大さんが笑いだすと新たなギャグとかを思いついたり……下向きながらニヤリっていしていたり。やっぱり好きなんだなぁって愛を感じますね。

京典:実際、その実演もしてくれますからね。わかりやすいです。

――今回、電車内という変わったシチュエーションでしたが、今後、どのような場所で演技をしたいとかありますか?

中尾:それこそホテルを一棟貸し切って、色んな場所で色んなことが起きたりとか、ね。

京典:……電車をやったんで、じゃあ飛行機!

中尾:ハイジャックされたり?

京典:そう。バスとかも……閉鎖的な空間とか。

――電車にまつわるエピソードとかってありますか?

京典:直近だと、それこそ暢樹君と一緒に帰ってて、逆方向に乗ってたってこととかですかね。

中尾:そうそう、ここ違くねーって。気を付けまーす!

――ファンの皆様に一言を願いします。

中尾:みんな初めてのことだと思うので盛大に楽しんでください。ガンガン笑って純粋に楽しんでくれたら嬉しいです。その時その時うまれる間とか、狙い過ぎない! ただ目の前のことをやっていますので。よろしくお願いします。

京典:そうですね……普段乗っている電車で、何かが起こっているというのを楽しんでほしいです!

――お忙しい所、ありがとうございました。

【公演概要】
トレインライドシアター『このレールはドラマチック』

■日程:2023年11月19日(日)・11月23日(木・祝)
■時間:13:00出発/16:00出発/18:40出発(全6公演)
■会場:東京都23区内(会場詳細は、チケットをご購入いただいたご来場者様のみにご連絡いたします。)
■チケット:2023年10月22日(日) 一般発売開始
■脚本・演出:岩崎う大(かもめんたる)
■キャスト:
1号車:中尾暢樹、京典和玖、時任勇気
2号車:瀬戸利樹、七瀬公、八木将康、永沼伊久也
3号車:中田圭祐、松大航也、ゆうたろう、樫尾篤紀
4号車:山口貴也、水石亜飛夢、鈴木勝大
■主催:株式会社デベロップジャパン
■共催:EVOLOVEプロジェクト
■制作:株式会社ピークエンタテインメント
■公式HP:https://www.evolove.life/him/