【公開ゲネプロ】鈴木拡樹 主演『最遊記歌劇伝－外伝－』レポート

■ゲネプロレポート
物語は、舞台中央に咲きほこる満開の桜の下で繰り広げられます。

『最遊記』の世界から遡る事500年。幕開けは、闘神不在の時代、天界の軍人である天蓬元帥（演：藤原祐規）と捲簾大将（演：平井雄基）の出会い。
オープニングで、風に舞う桜のもと「咲きほこれ　咲きほこれ　この命とともに」と出演者一同が歌い上げる場面は圧巻です。

天蓬元帥と捲簾大将の出会いから数年後、天界で退屈な日々を送っていた金蝉童子（演：鈴木拡樹）は観世音菩薩（演：髙﨑俊吾）の命により、下界の巨岩から生まれ災いの象徴とされる金晴眼を持つ幼児・悟空（演：椎名鯛造）を育てることに。
本編よりも幼い無邪気な悟空を演じる椎名鯛造が元気に舞台を駆け回り、最遊記歌劇伝の初演から共演を重ねてきた鈴木拡樹との息の合った芝居で、平和な時がコミカルに演じられます。

そして物語は初登場の哪吒太子（演：北村諒）と悟空の出会いへ。殺人人形と呼ばれる哪吒太子と異端児とされる悟空の幼い2人が友情を育み、いたずらっ子な2人の心底楽しそうな様子は観客を微笑ませます。

その後、陰謀渦巻く天界で金蝉童子と悟空、そして天蓬元帥と捲簾大将は出会い、4人は絆を深めていきます。
軽口を叩き合う4人とは反対に、真面目で冷静な突っ込みを随所で挟むのは西海竜王 敖潤（演：佐奈宏紀）。三浦香の演出により、堅物な西海竜王 敖潤が客席を沸かせる一場面も。

一幕の主な語り部は観世音菩薩です。その歌唱力と演技力で、4人の物語を導きます。
舞台にはプロジェクションマッピングも使用されており、風に散る桜は効果的に場面を彩ります。役者たちの歌い上げるナンバーは、しっとりとしたバラードから荘厳な雰囲気のもの、そしてポップでアップテンポな曲まで、幅広く観客を飽きさせることがありません。そして、迫力と熱気あるアンサンブルが賑やかに展開を盛り上げます。
また、合間には三上俊はじめ、過去の最遊記歌劇伝に出演した役者が日替わりゲストとして登場し日替わりネタを披露します。

一幕後半、平和な日常は哪吒太子の父親である李塔天（演：山﨑雅志）の企みによりかげりを見せます。不穏な雰囲気の中、何事にも無関心だった金蝉童子が3人との出会いで徐々に視野を広げていく様を鈴木拡樹が繊細に演じ上げます。

父・李塔天の呪縛のもと、悟空の殺害を命じられた哪吒太子の悲しい選択。そして4人を取り巻く運命は、希望と破滅に向かって動き出します。

舞台では原作の名場面や台名詞が終始丁寧に織り込まれています。
桜の下、全力で生きる彼らがどのような運命を辿るのか。ぜひ劇場で舞う花びらとともに見守ってください。

取材・文：岡 里衣奈／撮影：ケイヒカル