【ゲネプロレポート】皇帝ロックホッパー舞台「CHERRY BOYS～GRADUATION～」

『分かりやすく、見やすい』をコンセプトに『嘘の世界に真実を』をモットーに感情に嘘のないエンタメ演劇を主に創作していく「皇帝ロックホッパー」の舞台「CHERRY BOYS～GRADUATION～」が2024年2月2日に上演が開始されました。本稿ではゲネプロ公演の模様をお届けします。また、本公演はキャストがTeam PEACHとTeam BANANAの2パターンに分かれていて、ゲネプロではTeam BANANAの公演となります。

■あらすじ

物語の舞台は現実世界、経済難に苦しみ不況が続く日本です。
そんな時代に就職が決まらず困っている3人が居ました。熱血漢で感情の起伏が大きい赤井（演：栗原 大河）、真面目でノンアルでも酔っぱらってしまう青野（演：福岡 洸星）、穏やかでマイペースな緑川（演：串田 真人）。彼らは同じ境遇を嘆き、3人で居酒屋で管をまいていたところ、アロハにハーフパンツというラフな格好の金剛寺社長（演：西山 哲郎）の目に止まり、就職が内定。会社には他にも黒岩（演：大久保 圭介）という新人がおり、4人は新社会人として新たな生活が始まる……。はずでしたが、その会社はアダルトグッズ販売会社であったことを入社後に知る4人。その事実に狼狽するのですが、その理由が彼らは全員童貞だからなのです。かくして、彼らは自分の知らない未知の世界にどう挑むのか。

という概要から始まる「ドタバタコメディ」です。かつ「青春群像劇もの」という側面も備えています。

テンポの良いやりとりが気持ちの良い「コメディ部分」

終始明るく、ボケてツッコんでの応酬が激しい作品で、めまぐるしく展開が広がっていく作品です。テンポを楽しみましょう。
ボケの内容は、少年漫画などのセリフを多用し、それに対するツッコミもあり、いわゆるメタ構造を感じさせる内容のもので、幅広い楽しみ方を感じられる内容です。採用している作品に偏りがあるため、それらを知っているか否かで笑える度合いは変化するとは思いますが、そこまでマニアックな作品はありませんでした。週刊少年ジャンプの人気漫画を知って入れば大抵理解できると思います（漫画だけではなくドラマなどのネタもあります）。

コミカルに楽しめる作品です。そこまで肩ひじ張らず、肩の力を抜いて、ただただ頭を空っぽにして楽しみましょう。なお、設定として「アダルトグッズ販売会社」としていますが、下品な下ネタはありませんので、そういったことが苦手な人にも配慮したセリフ回しなどで、観劇もしやすいはずです。

（オマージュとして分かりやすいシーン）

気づけば真面目に取り組んでいる「青春群像劇」部分

さて、もう一方の青春群像劇部分です。
物語の中盤「新入社員恒例プレゼン大会！」が実施されることが告知され、その大会の優勝賞品が会社のマドンナでもある桃瀬（演：森田 佳寿美）に童貞を卒業してもらえる、というもの。新人4人は童貞のプライドをかけ、新商品のアダルトグッズの提案という未知の世界への挑戦を試みます。そこへの奮闘、人間関係、ライバル会社との因縁といくつかの物語が同時進行し、観ている人を飽きさせないエンターテインメントを創出しています。

構成もとてもよく。物語自体は新人が入社するところから始まるのですが、それぞれのバッグボーンや性格がまだまだ理解できていません。そんな彼らの奮闘を目の当たりにしていくことで、人となりを次第に理解できていく。ある意味、先輩社員たちの目線としても楽しむことができます。それはつまり、脚本内においての人間的成長を観客席で終えるということになります。ただただトタバタしているわけではなく、人間の内面をしっかりと描いている部分に気付けると「楽しい」だけではない作品と感じられるでしょう。

新入社員の4名はある意味で成り行きで就職し、餌を与えられプレゼン大会に挑んでいくことになるわけですが、自分が何をしたいのか、誰のために行動したいのか、悩む日々を送るにつれ気付いていきます。逃げてはいけないこと、自分が信じていること、誰のためにできることは何か。そういった実は真面目に描いた部分がありますので、エンタメに隠れた青春物語を楽しむことができる作品です。

彼らの成長する行く末を観客として見守ってください。

文：木皿儀／写真：ケイヒカル