【レポート】アメリカ・ニューヨークから凱旋「進撃の巨人」-the Musical-ゲネプロレポート

2024年12月13日（金）、東京・TOKYO DOME CITY HALLにて「進撃の巨人」-the Musical-が幕を開けた。

「進撃の巨人」は、2009年から2021年にかけて「別冊少年マガジン」（講談社）で連載された諫山創による人気漫画。今回の舞台化では、脚本を畑雅文、演出を植木豪、音楽監督をKEN THE 390、作詞を三浦香が手掛け、その壮大なスケールを演劇にすることは不可能かと思われた本作を、演劇ならではのアナログ的手法と最新のテクノロジー、ギミックを駆使して描き出した。

2024年10月のアメリカ・ニューヨーク公演は大盛況のもと幕を下ろし、各メディアでも称賛の嵐が飛び交ったことが記憶に新しい。

メディアクトでは、初日に先立ち実施されたゲネプロ公演の様子を劇中写真とともにレポート。

幕が上がる直前、会場内には不気味な重低音が響いていた。腹の底を震わせる音が得体の知れない恐怖となり、会場全体を包み込んでいく。

幕が開けた瞬間、そこには巨人たちが蠢く不気味な世界が広がっていた。舞台を駆ける巨人達の姿は異質で歪で、一気に世界観に引き込まれるだろう。

巨人が支配する世界、人類は巨大な3つの壁を築き、その内側に住むことを余儀なくされていた。壁の中の平和は100年続いていたが、ある日「ウォール・マリア」を超える大きさの超大型巨人が姿を現し、鎧の巨人とともに壁の中を蹂躙していく。
エレン（演：岡宮来夢）は、目の前で母親のカルラ（演：舞羽美海）を失い、この世の巨人の駆逐を決意する。

主人公を演じる岡宮は、初演を経て更に磨きのかかった歌唱力で会場を震わせた。岡宮自身の真っ直ぐさが、巨人を駆逐するという信念を持ったエレンの姿と重なる。

ミカサ（演：七木奏音）とアルミン（演：小西詠斗）とのバランス感も絶妙。考察力や判断力に優れたアルミンと、強さと美しさ、そして少女の純真さも併せ持ったミカサ。残酷さや絶望が際立つ世界観だが、彼らの絆が一筋の希望として未来へと繋がっていく。

調査兵団には、他にも魅力的な同期が数多く存在する。サシャ・ブラウス（演：星波）は持前の天真爛漫さで作中における清涼剤の役目を果たしていた。福澤 侑演じるジャン・キルシュタインはエレンのライバルとして衝突が絶えないが、どこか憎めない魅力は舞台でも健在。

エルヴィン（演：大野拓朗）やハンジ（演：立道梨緒奈）、リヴァイ（演：松田凌）達いわゆる大人組の貫録も見逃せない。既に数々の戦いを経てきた彼らが纏う存在感は、調査兵団の核となる強さを物語っていた。

ハンジの飄々とした姿はサシャと同じく重い空気が際立つ作中に軽やかな風を吹かせ、巨人の生態を嬉々として語る姿が魅力的。団長のエルヴィンは堂々たる佇まいで作品に厚みを持たせた。プロジェクションマッピングを背景に疾走感ある戦いで魅せてくれるリヴァイは、まさに人類最強と呼ぶのが相応しい。

Blade Attackersと称されるアンサンブルの存在も欠かせない。時に群衆として、時に調査兵団の一員として世界観を演出する歌唱力や身体能力に目を奪われ続ける。今作はワイヤーアクションやプロジェクションマッピングなど最新の技術はもちろん、生身の人間にしか出せない舞台をめいっぱい使った身体表現も魅力のひとつ。役者によって命を吹き込まれた登場人物たちの存在が、作品への没入感を高めてくれた。

本作は、言わば序章だ。エレンたちが調査兵団に入団し、再び超大型巨人と対峙するという、原作でいう序章部分までが描かれている。まだまだ謎は開示されたばかりだ。今後にも期待が高まるが、まずは英雄たちの“凱旋”をその肌で感じてみてはどうだろうか。

「進撃の巨人」-the Musical-は、2024年12月22日（日）まで東京・TOKYO DOME CITY HALLにて、2025年1月11日(土)〜1月13日(月･祝)）まで大阪・オリックス劇場にて上演される。

取材・文：水川ひかる

©諫山創・講談社／「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会2024