【ゲネプロレポート】舞台「遠き明日への子守唄」マーダーミステリーの新たな挑戦「魅せマダ」を体験！

舞台『遠き明日への子守唄』が2024年5月3日（金）～5月12日(日）に麻布バルーンにて上演されます。この度、メディアクトでは、本公演に先駆けて実施されたゲネプロ公演（チームB）の模様をレポートします。

まず本作が一般的な舞台と異なるということをお伝えします。
原作はマーダーミステリーゲーム作品であるイマーシブマーダーミステリー『遠き明日への子守唄』であり、主催の「これからミステリー」が提唱する「魅せマダ」というジャンルになります。

このような特徴を持ち合わせ、「マーダーミステリーゲーム」を自分で楽しむものから、観て楽しむものを制作しようとする新しい試みとなります。したがって、まったく知らない状態でマダミスを遊ぶように楽しむことも、すでに内容を知っているとしてもマダミスを見学するような俯瞰して楽しむことも、人によって多様な受け皿を持った新ジャンルとなっています。

また、冒頭に、GMも兼任するマイヤ（演：AGATA）からマーダーミステリーについて、今回の舞台についての説明がありますので、マーダーミステリー自体を知らない人でも安心して体験することができます。

物語は宇宙のどこかの無人惑星に避難した、少年少女と一人の女性の物語となります。
一人の女性はマイヤ（演：AGATA）。みんなを優しく見守ってくれています。

ハッシュ（演：原田えりか）は、元気で少しだけお調子者の14歳の男の子。父に憧れパイロットになることを夢見ています。
ギミー（演：彩咲えみ）は、少しクールな面倒見の良い14歳の男の子。機械をいじることが好きでロボット工学者になりたい。
キラリ（演：ゲスト）は、ニーナの妹の13歳の女の子。星空を見るのが好きで、天文学者になりたいと思っています。
ニーナ（演：しらりら）は、キラリの姉の16歳の女の子。みんなを見守ってくれているマイヤに憧れ、マイヤのような女性になりたいと考えています。
カタル（演：田島春那）は、最年少の12歳の女の子。物語を書くことが好きで、色々と一人で書いています。
シン（演：松田麻矢）は、13歳の男の子。将来の夢などは特にない、とマイヤには伝えています。

このような登場キャラクターが仲睦まじく過ごしていく中で、とある変化が起き、そして事件が起きます。衝撃的な出来事を目の当たりにする少年少女ですが、真相を知りたい探求心から、彼らは見守り役のマイヤの目を盗み、真相を解き明かすために言葉を重ねていきます。

導入から事件発生までが描かれると、マーダーミステリーの議論のような形で意見交換と新たな情報を集める時間となります。自分たちの行動を説明したり、自分たちが住んでいる宇宙船の中を調べて、見つけた手掛かりを確認しあいます。原作のゲームにおいて情報はカードで取り扱われていますが、実際のリアルなアイテムなどで表現されているところも舞台ならではのリッチな仕様となっています。
議論に関しては、台本が設定されていないような、まさにマーダーミステリーゲームでの議論のようなやりとりが展開されます。時には疑心暗鬼になり、それぞれが疑いあう事にもなります。
観劇する気持ちとしては、事件に関係ある情報、ない情報が入り乱れてやりとりされるため、どれが真相につながる情報なのかを自分たちも考えながら楽しむ、マーダーミステリーならではを疑似体験しながら観ることができるでしょう。筆者はすでに原作をプレイ済みだったのですが、自分が遊んだときの思い出と照らし合わせて、他の人たちであればこういったやりとりになるのか、ということを考えていました。

事件の真相を知るために情報を集め、意見を交換し、新たな展開が生まれ、物語は真相に迫っていきます。誰がこの事件を起こしたのか、その真相は、そして少年少女は決断を迫られる……。

感情を大きく揺さぶられる展開もあります。

本作はイマーシブマーダーミステリーと銘打たれた、マーダーミステリーの日本の歴史において初期の頃から好評を得ている作品で、実際に今遊んでもその体験感は色あせることない名作です。その作品をギュッと詰め込み、自分たちがマーダーミステリーをプレイしているように体験しているように感じられる舞台となっていました。
マーダーミステリーゲームは遊ぶ人で展開が変わるジャンルのゲームです。それを再現するため、「Aチーム・Bチーム」と演じるキャストが変わったり、公演ごとのゲストキャストがいるなど、一度だけではなく、また観たくなるような試みの挑戦しています。展開が違えば客席で観る側が感じる印象も異なることでしょう。客席から投票できるシステムを組み込んでいるため、それも変化し、もしかしたら物語の結末も変化するかも……。

そこが本作の大きな魅力でもあります。

原作を知っていても知らなくても楽しめる工夫と、マーダーミステリーゲームを魅せるものにしようと創意工夫が感じられる挑戦的な作品でした。
新たな挑戦と可能性。ぜひ、その目でご覧ください！

なお、本作は現場での観劇のほかに配信でも視聴が可能です。
もし現場に見に行くことが難しい場合は、そちらでご覧いただくのもおすすめです。

記事：木皿儀／写真：浅井心晴