【ゲネプロレポート】須賀健太「逢」の字に想いを込めて…劇団「ハイキュー!!」新作公演〝出逢い〟開幕

劇団「ハイキュー!!」の新作公演〝出逢い〟が、5月17日(土)に品川プリンスホテル ステラボールにて開幕する。本作は、古舘春一による大人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」を原作とし、演出・須賀健太がけん引する劇団「ハイキュー!!」の第2弾公演。主人公の日向翔陽が所属する烏野高校バレーボール部と、かつての因縁のライバルである東京の古豪、音駒高校との〝出逢い〟が描かれる。
初日に先立ちおこなわれた公開ゲネプロと、囲み会見の様子をレポートする。
公開ゲネプロ
公演がおこなわれるステラボールのホール内に足を踏み入れると、そこはもう烏野高校の放課後だ。ざわざわと聞こえてくる楽しげな話し声。部活中なのだろうか、ホイッスルの音、金属バットのキィンという音もかすかに聞こえる。自動販売機、左右には生い茂る木々。作品の舞台である仙台の、自然の中にいるような気分にさせてくれる。ノルタルジックであり、わくわくした気持ちも同時に感じられ、舞台が始まる前から期待感でいっぱいになるファンも多いことだろう。










今回描かれるのは、烏野と音駒の〝出逢い〟だ。2つのライバル校の〝出逢い〟、それから日向翔陽(演:加藤憲史郎)と孤爪研磨(演:湊 丈瑠)の〝出逢い〟、研磨とバレーボールとの〝出逢い〟。さまざまな〝出逢い〟と、そこで生まれ動く感情が、原作を丁寧に紡ぎながら描かれていく。明らかに感動させようという意図を前面に出しておらず、あくまでも、高校生の日常と部活に向き合う姿を真摯に丁寧に描いているのを感じる。原作の力を信じ、「ハイキュー!!」という作品の面白さと魅力を愛し、生身の人間が演じることで生まれる熱を届けたい、という思いが伝わってくる。
例えば、舞台上で誰かがメインとなりセリフを口にしていても、片隅ではそれにかまわず誰かと誰かが日常のやり取りをしている。登場人物、誰もが1人の人間であり、人生があるのだと感じられる瞬間だ。
日常のシーンから試合のシーンに切り替われば、舞台上は躍動感でいっぱいになる。全員が入り乱れ、時に整列して動き、舞台から飛び出して客席にまで「コート」を広げる。ステラボールが、烏野高校の校内になり、仙台の公園になり、合宿所やバレーボールのコートにもなる。ネットが自由自在に動くことにより、その瞬間にどちらかのチームを中心に描きたいのかがひと目でわかる工夫がこらされている。
日向翔陽役の加藤憲史郎と影山飛雄役の若林星弥は、2作目ということで役へのなじみがさらにしっくりとしてきている。強いリーダーシップを発揮する澤村大地役の磯野 亨の穏やかだがよく通る声、その澤村と大人げなく握手を交わすシーンのコミカルさも見逃せない黒尾鉄朗(演:大村征弥)、日向と出会って心の中の何かが動く孤爪研磨の心情を丁寧に見せてくれる湊 丈瑠。
キャストたちは、総じて身体能力が高い。全員が「これでもか」というほどに動け、飛び込み、バック転まで飛び出す。特に、田中龍之介役の熊沢 学は力強いジャンプを、西谷 夕役の中西智也、海 信行役の奥村等士は華麗なアクロバットを見せてくれる。中でも福永招平役の高岩芯泰は、ここぞという“魅せ”たいシーンで、ハイジャンプを含めさまざまな動きで観客に「この全員はこのくらい跳べる」と印象付けるのに一役買う動きを担っている。高岩と同じく、縁下 力役の益川和久も、2年生としての繊細な芝居と同時にその身体能力を存分に発揮してくれている。
映像演出や、派手な特殊効果は無い。しかし、それが本作にとっては最良の判断だと感じる。演出の須賀健太が長く日向役を務めたハイパー プロジェクション 演劇「ハイキュー!!」とはまた違う、しかし同作でも使われていた一斉唱和やさまざまな部分で「ハイキュー!!」の魂を感じ、違うけれども同じであり、「繋いでいる」と感じることができる。
登場人物たちの1人ひとりが、誰かや何かと出逢って心を動かしていく様を丁寧に描いた本作。「ハイキュー!!」はやっぱりおもしろい、と原作の面白さとメッセージをさらに強く感じ、家に帰ってすぐに原作を読み返したくなる舞台だ。




囲み会見
ゲネプロ前には囲み会見がおこなわれ、演出の須賀健太、日向翔陽役の加藤憲史郎、影山飛雄役の若林星弥、孤爪研磨役の湊 丈瑠、黒尾鉄朗役の大村征弥が登壇した。
加藤憲史郎(日向翔陽役)
吸収することばかりで毎日が楽しく、一瞬で終わったような稽古期間でした。翔陽を演じるにあたって、須賀さんをはじめとしたたくさんの方々にさまざまなことをお聞きして、「今、翔陽が何を思ってこの1本を打つのか」を意識して過ごしました。須賀さんからは、数え切れないほどのアドバイスをいただきました。セリフのひとつひとつ、区切り方、跳び方、目線…。そういったことをたくさん教えていただいて。もうすぐ本番が始まります。キャスト、スタッフの皆さん。「劇団ハイキュー!!」全員の熱意がマックスになっています。その熱意と頑張りを、劇場でじかに感じていただけたらと思っています。応援よろしくお願いいたします!
若林星弥(影山飛雄役)
稽古をしていて「チームごとにこんなにも“色”が出るんだ、おもしろい」と感じました。今回は、実際の速度での試合シーンが多いのですが、僕自身はバレーボールの経験があまりないので、影山としてボールを打つときの思考の選択がはじめはとても難しかったです。でも、バレーボール指導の羽富琉偉さんに色々と教えていただきながら徐々に深めてこられました。「劇団ハイキュー!!」として2作目になります。初心を忘れずに、1公演ずつを大事に演じて参ります。「楽しかった!」と言っていただけるように精いっぱい頑張ります。
湊 丈瑠(孤爪研磨役)
音駒はとても仲のいいチームです。稽古の時間はもちろん、稽古の外でもみんなで和気あいあいとしていました。そういった面を舞台でもお見せできたらいいですね。研磨として、サブタイトルの〝出逢い〟のどのタイミングで心が動いたのかを大切にして稽古に励んできました。全体としても心が動くシーンがあるので、そこに注目していただきたいです。僕は「ハイキュー!!」が大好きで、本作の初演を観たときに本当に感動をしたんです。この感動を本作で皆さんにお届けしたい、とずっと思ってきました。全力でがんばります、応援よろしくお願いします。
大村征弥(黒尾鉄朗役)
稽古では、とても細かい所まで丁寧に積み重ねてきました。黒尾は、しっかりしていてドシっとしたイメージがあるのですが、2年生などとじゃれたりする面もあるんですよね。稽古が進んでいくにしたがって、そういった面にも気を回せるようになってきたので、高校生らしく楽しんでいる部分も作りこんできました。試合以外や、ベンチにいるときも注目していただけたらと思っています。今は、はやく本番の舞台をやりたい気持ちでいっぱいです。僕たちのパフォーマンスに期待して、皆さんに観に来ていただきたいです。応援お願いいたします!
須賀健太(演出)
旗揚げ公演をさせていただけただけでも夢のようだったのですが、こうして2作目を迎えられるのはまた異なるよろこびがあります。みんなが頑張ってくれて、それをお客さまが評価してくださった証(あかし)であり「しっかりと繋がった」とうれしい気持ちです。
前作は、役者たちとスタッフのみなさんがこれまでつないできてくれたバトンを受け取った、ある意味「ボーナスステージ」のようなものだったと感じています。僕たちだけでは成功しえなかった。だからこそ、「今作が1作目」の気持ちで臨まなければなりません。そのため、準備段階からより深く携わらせていただいてきました。準備期間、そして稽古も含めて今日までが本当にあっという間でした。あと半年は稽古をしたいくらいです(笑)。
今回のサブタイトルは〝出逢い〟です。辞書によると「逢う」の字には、「親しい人と出あう」「思いがけず偶然にあう」という意味があるそうです。監督同士の関係性も含めて、烏野と音駒に近いものがあると感じます。演劇における『ハイキュー!!』でもその「逢う」を落とし込めると思っていて、ハイパー プロジェクション 演劇「ハイキュー!!」で烏養一繋元監督役だった木村靖司さんと、同じく猫又育史監督役の大高洋夫さんのお2人に、今作にも参加していただきました。ハイパー プロジェクション 演劇「ハイキュー!!」からのお2人、前作から続投の烏野高校のメンバー、そして今作から参加してくれる音駒のメンバー。この3つが「逢う」ことに集約されます。その点をとても大切に、今作を作らせていただきました。
日向と影山役の2人の関係性は、前作をやっていきながら深まっていったと感じています。日向と影山も、はじめは「個」だったのが、烏野に入ってチームとなっていきます。彼らも、役者として「個」だったのがどんどん距離が近づいて行きました。この2人は、ダンスなどのパフォーマンスもすごいんですよ。僕たちは「踊れない」で有名だったのに(笑)。(「そんなことないですよ!」とキャストたちから声がかかる)。
音駒の2人については、「烏野を倒しにいく」ところからオーディションを始めました。倒せる実力を持った人たちです。音駒は登場時から完成されているチームなので、ある意味、チームの役作りとしては烏野よりも難しかったかもしれません。でも彼らは、自分たちでその「完成されたチーム」を作っていこうと努力してくれました。
本作は、漫画を原作とした舞台作品の中でかなり上位に入るのでは…と思うほどに原作を丁寧に描いています。丁寧に立体化していく作業を、みんなでしてきました。「ハイキュー!!」を好きな方にも、初めて「ハイキュー!!」に触れる方にもおすすめしたい作品です。僕が日向としてこのストーリーのあたりを演じていたころは、まだ原作が完結していなかったんです。烏野と音駒が最終的にどういう描かれ方をするのかが分からない中で作品を作っていました。でも今作は、僕が体験していないものを彼らに体験してもらっています。原作が完結したからこそ作れる〝出逢い〟を意識して本作を作ってきました。1人でも多くの方に観ていただきたいと思っています。
取材/文:広瀬有希・写真:ケイヒカル
※以降、オフィシャル写真















■公演概要
劇団「ハイキュー!!」〝出逢い〟
【期間・劇場】
東京:2025年5月17日(土)~5月25日(日)品川プリンスホテル ステラボール
大阪:2025年5月30日(金)~6月1日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール
【原作】古舘春一 「ハイキュー!!」(集英社ジャンプコミックス刊)
【演出】須賀健太
【脚本】伊藤マサミ
【音楽】和田俊輔
【振付・ステージング】HIDALI
【出演】
日向翔陽 加藤憲史郎
影山飛雄 若林星弥
月島 蛍 灰塚宗史
山口 忠 吉野俊矢
田中龍之介 熊沢 学
西谷 夕 中西智也
縁下 力 益川和久
木下久志 木村和磨
成田一仁 柊⽃
澤村大地 磯野 亨
菅原孝支 野島大貴
東峰 旭 河野凌太
孤爪研磨 湊 丈瑠
黒尾鉄朗 大村征弥
海 信行 奥村等士
夜久衛輔 高橋祐理
山本猛虎 横山統威
福永招平 高岩芯泰
犬岡 走 耀
嶋田 誠 坂田大夢
滝ノ上祐輔 上山航平
武田一鉄 大野瑞生
烏養繋心 碕 理人
烏養一繋 木村靖司
猫又育史 大高洋夫
【チケット料金】S席10,800円 A席8,800円 U-18チケット4,800円(全席指定・税込)
※U-18チケットは来場時に18歳以下の方のみ購入が可能となります。詳細は公式サイトをご確認ください。
【チケット取り扱い】チケットぴあ
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©古舘春一/集英社・劇団「ハイキュー!!」製作委員会