『Run For Your Wife』ゲネプロレポート

レポート

アーティストジャパン製作のロンドンコメディ『Run For Your Wife』が2023年7月12日(水)に上演が開始されます。
本作は、1983年にイギリスで初演されたレイ・クーニー氏の傑作です。コロナ渦で3回の公演中止を経て、2年半ぶりの上演となります。無事に幕を開けることに喜びもひと塩なことでしょう。
今回は、その上演に先駆けて行われたゲネプロについてレポートします。

◎ストーリー
タクシー運転手のジョン・スミスは、真面目で平凡な男。
しかし彼には、人には言えない秘密があった。実はその優柔不断な性格から二重結婚をしていたのだ。早番と遅番を使い分けた綿密なスケジュールで、二人の妻と楽しい日々を送るジョン。
しかし、ある事故によってスケジュールがめちゃくちゃになってしまい、この秘密が発覚しそうになる!
事故の詳細を確認するためにウインブルドンのメアリー・スミス宅にウインブルドン警察署のトラウトン警部がやって来た。あわてたジョンは、メアリーの家の上の階の住人であるスタンリー・ガードナーの助けを借りて、その場を取り繕うことにする。が、そこにU・P・Iの新聞記者まで現れてさらに大騒ぎに。

一方、ストレタムのバーバラ・スミス宅にもストレタム警察署のポーターハウス警部が訪ねて来た。バーバラが、時間になっても帰ってこないジョンを心配して警察に電話したからだ。なんとかメアリー宅を抜け出したジョンがストレタムの家に戻ると、さらにバーバラ宅の上の階に越してきたフリーのドレスメーカーのボビー・フランクリンまでが登場して、ウソにウソを重ねたジョンとスタンリーは悪戦苦闘、さらなるピンチに陥る!

ジョンの二人の妻、バーバラ(左)とメアリー(右)
作中はほぼ全容を知らずに、ジョンやスタンリーのウソに振り回されます。

●悲劇と観るか喜劇とみるか
物語の舞台は1980年代のロンドン。二重結婚を満喫するジョン・スミス(演:山本一慶)に巻き起こるトラブルと、嘘に嘘を重ねたがゆえに芸術的とも呼べる勘違いが面白い。二人の妻はどちらも魅力的で、ジョンを愛しています。先に結婚しているメアリー(演:舞羽美海)は良妻賢母で貞淑にジョンを支え、あとに出会ったバーバラ(演:十碧れいや)はキャリアウーマンだがとてもセクシーで魅力的です。二人との生活を壊したくはないために、友人のスタンリー・ガードナー(演:石田隼)とごまかしにかかります。しかし、それぞれが別々のシーンで嘘をついていくため、各登場人物内での認識がズレていくという事態になり、それをどう取り繕うのか……ジョンが八方ふさがりとなり、右往左往する絶望的なやりとりが見ものな本作。悲観するのか、それを楽しむのかは観る人次第でしょう。

本作は主演の山本一慶が演出も兼ねています。そのあたりにも注目しましょう。

●舞台の使い方が見事な
基本的にはジョンの住んでいる部屋を再現しています。しかし、計算しつくされた扉の出入りや電話の利用で、シーンごとに一つの部屋でやり取りしているよう見せることもあれば、別の部屋でのやり取りしているようにも見えるようになっています。
加えて、外からの来客、上の階からの来客を効果的に差し込むことで、閉鎖的に見えるワンシチュエーションに奥行きを与えてくれます。

●時代背景を真っ当に描いた翻訳版
公式HPでも記載のある通り
「※本作は1983年にイギリスで初演された戯曲で、当時のイギリス社会の風刺をいかした翻訳となっております。現在では一部不適切な言葉使いもございますが、この度の上演にあたりましても、そのままの表現で上演させていただきます。予めご了承ください。」
性的マイノリティや性的表現がやや強めにある作品のため、現代の倫理観で見ると違和感を覚える部分も多々あるかもしれません。
あくまでイギリス的精神、時代風潮を感じることができるということを理解して、楽しむことをお勧めします。

電話を効果的に使うシーンが多いです。
現代ではスマホで、なんでもすぐに調べる・連絡することができます。かつてはそういったことも不便だったということで、時代の変遷を体験することができるでしょう。

ジョンやスタンリーは二つの夫婦があるということを隠すため、様々な嘘つきました。
それは警察などでもお構いなし。

嘘をつかれた同士で会話を行うとすると、全くかみ合わないことも……。

扉をうまく利用することで、ステージの人数をコントロールしています。

優柔不断なタクシードライバーのジョン・スミス。一人で七転八倒の活躍を見せます。

ジョンの妻の一人、メアリー。ジョンとスタンリーに秘密に関係があると、疑心暗鬼に陥ります。

ジョンの妻の一人、バーバラ。ジョンが他の人に「実は男だ」と捏造し、関係がややこしくなります。

ウィンブルドン警察署所属のトラウトン警部(演:松井勇歩)。疑い深く真面目で、ジョンを追い詰めます。

ストレタム警察署所属のポーターハウス警部(演:ピクニック)。いい人キャラですぐ騙される。ジョン達の嘘をすぐに鵜呑みにするため、その嘘がすぐに広まってしまいます。

メアリー宅の上の階の住人。ジョンのウソに振り回され、貧乏くじをひく友人。

ボビー・フランクリン(演:小澤亮太)。ドレスデザイナーで自由なキャラクター。

取材・撮影:ケイヒカル、文:木皿儀

【公演概要】

ロンドンコメディ『Run For Your Wife』

日程:2023年7月12日(水)~19日(水)
劇場:あうるすぽっと
作:レイ・クーニー
訳:小田島雄志/小田島恒志
監修:菅原道則
演出:山本一慶

出演:
山本一慶(ジョン・スミス)、舞羽美海(メアリー・スミス)、十碧れいや(バーバラ・スミス)
松井勇歩(トラウトン警部)、ピクニック(ポーターハウス警部)、石田隼(スタンリー・ガードナー)、小澤亮太(ボビー・フランクリン)
<新聞記者役・日替り出演>
7月12日(水) 14:00…KIMERU
7月12日(水) 18:30…谷水 力
7月13日(木) 18:30…安井 一真
7月14日(金) 18:30…松田 岳
7月15日(土) 12:00…鯨井 康介
7月15日(土) 16:30…鈴木 裕樹
7月16日(日) 12:00…髙木 俊
7月16日(日) 16:30…松村 泰一郎
7月17日(月) 12:00…橋本 真一
7月18日(火) 14:00…竹中 凌平
7月18日(火) 18:30…りゅうと
7月19日(水) 14:00…宇野 結也

料金:7,700円(税込み、全席指定)
企画・製作:アーティストジャパン
お問い合わせ:アーティストジャパン
03-6820-3500
https://artistjapan.co.jp
公式HP:https://artistjapan.co.jp/runforyourwife2023/
公式Twitter:https://twitter.com/aj_rfyw2023