【ゲネプロレポート】方南ぐみ企画公演『あたっくNo.1』

11人の男たちが繰り広げる青春グラフィティ。
そこには笑顔の青春があった。
2001年に産声をあげ再演を繰り返してきた方南ぐみの代表作！

9月22日（金）から始まる公演に先駆けて、上演されたゲネプロ公演の模様をレポートします。

「真珠湾攻撃」において実際に存在した「伊号第十八」の船を下敷きに物語が描かれます。
乗船員は戦地に向かうことを知らず気ままに過ごしています。たとえば、自身の昇進について焚きつけられ焦る寺内中尉（演：永岡卓也）や、町医者と揶揄される村松軍医大尉（演：牧田哲也）、音程を外してしまうため皆で歌う際に苦言を呈される宇津木整備兵曹長（演：水谷あつし）など。到底、戦地に向かう人間とは思えないような空気です。そんな、緩い空気にいら立ちを隠せない元駆逐艦にいた大滝少尉（演：山田ジェームス武）などもいます。時代は違いますが、今の時代でいうと男子の運動部のやりとりのようにも見えます。

戦争に向かっているということが告げられても、その空気は大くは変わりません。むしろ、アメリカの真珠湾に行くということに対して、ほとんどの者がその勝利を確信して揺るぎない状態なのが、史実を知っている観客としては理解ができないのですが、それがある意味リアルな時代背景を象徴していると感じました。

潜水艦には特殊潜航艇１隻が搭載されており、それが最初の攻撃を加えることになるのでは、という予想に皆が沸きます。立場上、また魚雷の腕などからそこに搭乗するのは寺内になるのでは、という噂が立ち、寺内は誉ある戦争のきっかけを作れるということに喜びを隠せません。なにより、昇進のライバルとして目している古瀬中尉（演：上田堪大）に水を開けられることが嬉しいのです。しかし、実は作戦の事情を知っている宇津木からは、搭乗するのは別の乗組員が選出されていると告げられます。それを聞き、納得できず憤慨する寺内。船内の空気が悪くなり、様々ないざこざがおきますが、それでも「伊18号」は粛々と戦地へと近づいていきます。

物語の終盤には様々な事実が開示され、皆の感情が噴出し物語が一気に広がり、そして収束に向かっていきます。設定からある程度の展開は読めるものの、それでも彼らの人間として「人間として」生きたい気持ちと、それが全てではないという時代背景を、まざまざと見せつけられ……陳腐な言葉にはなってしまいますが、涙腺に響きます。

彼らが何を考え、何を望み、どう生きたか、をその眼でご確認くださいださい。

取材・文：木皿儀／撮影：ケイヒカル