『呪怨 THE LIVE 』ゲネプロレポート

※記事下のギャラリーはネタバレが含まれますのでご注意ください。

8月12日（土）から公演が始まる『呪怨 THE LIVE 』に先駆けて行われたゲネプロレポートをお届けします。

●恐怖体験を体験する新たな試み
本作は舞台作品ですが、随所に特殊な試みがあります。まず注目すべきは、その舞台構造。
普段は客席があるべき場所を潰し、大きな一軒家が外壁のない形で鎮座しています。インパクトの強いその一軒家を取り囲むように座席が配置され、その家が回転するように設計されています。その速度の調整や同時並行で物事を描くことで、本来は一つのシーンだけしか描くことのできない舞台演劇に多角的な視点を与えてくれます。また使うのはその家だけではありません。本来は通路にあたる場所などを巧みに利用することで、家で起きる事柄以外を表現し、物語のメリハリをつけています。むろん、それ以外にも利用する場所はあります……。
加えて、照明と音響、客席までの通路や外壁、影ナレなど様々な要素で世界観の再現に努めています。舞台を観に行く気持ちと、お化け屋敷に入る気持ちを持ち合わせて会場に向かうことをお勧めします。

●見える場所が異なる座席シート、場面
本作では、円形的な座席配置をしているため、座席によって観える場面が異なります。「最凶シート」と銘打たれた、キャストが目の前で恐怖を感じるのを観れるような場所（そしてあなたも……）や、遠くから全体的な風景を眺める「一般エリア」など、自分が体験したい好みに合わせてチケットを購入することができます。座席によって恐怖度が変わりますし、また風景も変わります。一度観たとしても、異なる角度ではどんな表現があったのかといったことが気になる場合、異なる座席でもう一度観るといった楽しみ方もできそうです。

●恐怖だけではない群像劇
本作は群像劇です。惨劇が起きる家に住んでいた家族、事件が起きたことを捜査する刑事、事故物件を売られる夫婦など、時間を超えた彼らの悲劇を観ることになります。しかし、それだけではありません。登場人物たちには考えがあり、行動原理があり、その人数だけ人生があります。ただ無為に呪われるわけではない、彼らがどう生きて、どう末路を迎えるのか、そして、なぜこのようなことが起きたのか。「生と死」が描かれることによって浮き彫りにある人生観、物語体験がそこにはありました。

原作は『呪怨』『呪怨２』ですが、それをそのまま舞台化しているわけではありません。本作ならではライブ感を楽しめるようになっておりますので、原作ファンの方でも、そうでない方でも安心して、恐怖体験を楽しめるようになっていると思いました。 夏という心霊が似合う季節に、ぜひ。

取材・文：木皿儀／撮影：ケイヒカル

※写真はネタバレを含むのでご注意ください。

コピーライト：©清水崇・東映ビデオ／『呪怨THE LIVE』製作委員会